介護保険で我が家の老親介護はこう変わる |
<手続き、費用、選べるサービス> |
やまのい高齢社会研究所長
山井和則
来年4月から介護保険がスタートする。国会でも介護保険が大きな議論となっているが、さて、親の介護は介護保険でどう変わるのか。
介護保険の目指すもの |
日本人の貯蓄率は世界一の高さだ。
それは、「老後に寝たきりや痴呆(ちほう)になった時にいくらかかるかわからない」という介護の不安から、高齢者の貯蓄率が高いからだ。
この高い貯蓄率が、消費を鈍らせ、長引く不況の根本原因とさえ言われている。
さらに、日本は世界一、寝たきりの高齢者の割合が高く、介護による共倒れのケースも増えている。
家族だけに任せてきた介護の限界が明らかになってきた。
そんな中で、介護を家族だけに任せていては、本人にとっても、家族にとっても、そして、社会にとっても良くないという理由で、介護保険がスタートしようとしている。
さまざまな改善すべき点もある介護保険だが、最初にそのねらいを4点まとめると次の通りだ。
まず、最初に保険料について述べる。
保険料はいくらか? |
〜加入者と保険料〜 |
介護保険制度は、40才以上の全員の強制加入だ。
40歳〜64歳までの保険料(推計) |
組合 | 保険料(月額) | 負担 | 支払方法 | |
大企業の会社員 | 健康保険組合 | 平均 3400円 (個人支払額1700円) |
事業主が 半額負担 |
給与天引き 扶養家族分含む |
中小企業の会社員 | 政府管掌健康組合 | 平均 3000円 (個人支払額1500円) |
事業主が 半額負担 |
給与天引き 扶養家族分含む |
自営業者 | 国民健康保険 | 平均 2600円 (個人支払額1500円) |
国が 半額負担 |
40歳以上全員 保険料支払い |
40歳〜64歳の人は加入している、それぞれの健康保険の種類によって保険料は違う。半額は事業主負担であり、国民健康保険の場合は、半額が国の負担になる。専業主婦は支払わない。
65歳以上の保険料 (3000円を基準とした場合の推計) |
本人住民税課税 (所得が250万円以上) |
基準額(3000円)×1.5 | 4500円 |
本人住民税課税 (所得が250万円未満) |
基準額(3000円)×1.25 | 3750円 |
世帯主住民税課税 本人住民税非課税 |
基準額(3000円)×1 | 3000円 |
世帯全員が 住民税非課税 |
基準額(3000円)×0.75 | 2250円 |
世帯全員住民税非課税 老齢福祉年金受給者 |
基準額(3000円)×0.5 | 1500円 |
65歳以上は、月に1万5000円以上の所得がある場合は、年金から天引きで、これが全体の約8割。
全国平均でみると、約2900円程度の介護保険料が徴収されることになる。また、図のように、65歳以上は所得により基準額を基準に五段階に保険料が異なる。
基準額は居住自治体によって変わる。
それは保険者が国でなく、各市町村になるからだ。
地方分権の試金石とも言われるのは、この点だ。
65歳以上は全員が保険証をもらえる |
保険料を支払い、介護保険証を受け取り、サービス給付を申請できるのは1号被保険者の65歳以上の人だ。
2号被保険者の40才から64才までは、介護が必要になった時に保険証をもらう仕組みだ。というのは、40才から64才までは、若年性痴呆など15種類の老化に伴う病気が原因で介護が必要になった場合だけ、サービスが受けられる仕組みだからだ。
だから、64才までの2号被保険者が仮に交通事故で、車椅子生活を余儀なくされたと言うように要介護になったとすると、原因が老化ではないので、介護保険料を支払っていても介護保険によるサービスは受けられない。従来の福祉を利用することになる。
このような保険料だが、いま国会では最初の半年は無料に、そして、その後1年も半額にという検討が行われている。しかし、このレポートでは、以下、予定通りの保険料として推計を行った。 |
以上のことを踏まえて、実際、介護保険で老親介護がどのように変わるかをケースをもとに、説明したい(登場人物は仮名とする)。
(つづく→)
★ | 痴呆症の母親と同居の場合 | (介護保険のしくみ) |
★ | 痴呆の母親を引き取ったが、老人ホームを利用したい場合 | (施設について) |
★ | 介護疲れで共倒れ寸前の老夫婦の場合 | (巡回型ホームヘルプ) |
介護保険の意義と問題点 | ||
まとめ |