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介護保険の意義と問題点

  以上3つのケースを通して、おおまかな介護保険のイメージを説明した。
国民が薄く広く負担を分かちあい、家族が倒れないように、また、プロの手によりお年寄りの自立心を引き出すサービスが介護保険で期待される。

 その一方では、「1回の初対面の人の訪問調査で、正確に認定されるのか」
「特に、低所得者にとって負担が大幅に増える」
「保険料は払っても、十分なサービスはあるのか」という問題点も深刻だ。

 これらの点についてはそれぞれ、訪問調査員の研修の徹底や、痴呆症が軽く認定されないような認定方法の確立、低所得者の負担軽減策、そして、介護サービスの充実を急がねばならない。

政府の見直し案について

 介護保険についても、改善せねばならない点が多いが、方向性としては、今までの受けにくい福祉制度から、介護保険への移行は時代の流れである。

 しかし、今回述べたように低所得者に過重な負担を求めるのには無理があるので、

 しかし、いま国会で議論されていることは、的外れであり、逆ではないか。
お金を払える人々に対しても一律に保険料は最初の半年は無料にするという。
市町村は保険料を徴収する準備をしてきて、多くの市町村が、
 「保険料を徴収しないと、逆に混乱がおこる」
 「半年後にとり始める時に説明がつかない」と言っているのに、
 「保険料は取るな。とった自治体には交付金は出さない」という。

 政府の見直し案は、おおまかに言えば次の二点。

 これについては、多くは書かないが、全国の市町村が保険料徴収のために必死で努力してきたのに、すでに申請も始まっている今になって「保険料を徴収しない」というのは、市町村の現場に大混乱を招く。

 これから本格的な高齢社会に向かって、
 「必要なサービスを整備するためには、負担も増やさざるを得ない。そこをどうか理解してほしい」と訴えるのが政治であるのに、
 「負担は後世に回して、今は無料でサービスは提供します」というのは無責任すぎる。

 実際、5年前に介護保険をスタートさせたドイツでは、介護保険の財政が悪化しないように、日本とは逆にサービス提供の半年前から、保険料徴収はスタートさせているくらいだ。

家族慰労金

 また、家族慰労金も市町村の介護サービス充実の意欲をそぐという意味で大問題だ。
 要介護5なら月36万8000円、年間約440万円のサービスが利用できる。
 それを1年間我慢して利用しなかったら、10万円あげます。
 市町村にとっては、慰労金を受けとってもらったほうが、はるかに安上がり。
 「サービスがなくても、慰労金を出せばすむのか」という逃げ道を与えれば、市町村の介護サービス充実の意欲は一気に低下してしまう。

 そもそも介護保険は、介護サービスを充実させる市町村に損をさせないための財政システムであったのに、今になって、
 「介護サービス充実よりも、金を配ったほうが市町村にとってははるかに安いですよ」という慰労金の導入は、介護保険を壊すものとしか言いようがない。 


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