第8回 ルンドで思い出めぐり その2

  今朝は、朝食のパンを少し持ち出しました。
  なぜって?
  ルンドにはスタッドパーケンという大きな市民公園があります。
  留学で我々がルンドへ来て、先ず最初の外出をしたのがここ。
  充分な防寒具を持っていなかった私達を連れて、
  真冬にラトコとアナが連れてきてくれました。
  フィエリエベーゲンの家からも歩いてすぐ近くだからです。

  その帰りに、生活必需品である「防寒用の靴」を買いに行くことを決心し
  隣町の靴屋さんへ連れて行ってもらったのを思い出します。

  ここには池があって、カモや白鳥がすんでいます。
  初めて来た時は当然、噴水もとまって氷がはっていましたよ。
  住んでいたことは、よくパンくずを持って行ってえさをやったものです。
  それを誰からともなくやろうということになったわけです。

  4人でウインクして朝食のパンを懐にしのばせました。
  さあ、いざゆかん。
  我々のホテルは駅と公園の中間に位置し、
  公園まではこれまた徒歩圏内です。
  道はなつかしい石畳のままでした。
  ルンドの街中はほとんどすべて石畳です。
  昔は、我が家の前のフィエリエベーゲンも石畳だったのですが、
  今回訪れると、舗装された道路に変わっていました。
  石畳の範囲がセントラム、だから我が家はセントラムにあるのだと
  自慢していたラトコでしたが、舗装はお家を手放す前だったのかな?
  あとだったのかな??

  スタッドパーケンへ足を踏み入れると、
  なんだか最初に来た時に戻ったかのような
  懐かしい感じでした。
  遊び場には、あの時と同じ色々な「遊具」がありました。
  子供達が大好きだった、中をくぐったり、
  滑り台のようになっている石のモニュメント。 

●石のモニュメント
  定番の「クモの巣」のような遊具。
  シーソー、ままごと小屋、ぶらんこも。
  きっと世代交代しているのでしょうが、
  どれもがこんなに昔のままで良いのかしらという感じの
  配置で今も並んでいます。

  ただただ、娘達が大きくなって、
  サイズ的にフィットしなくなっただけ?
  ということは、我々も歳をとってるってこと…。
  

●クモの巣のような遊具

  でも、そんなことは気にせず、童心にかえりました。
  ちょっと乗ってみずにはいられないという感じで娘達も大はしゃぎ。
  当時の懐かしいエピソードも誰からともなくよみがえり、話題にも花が咲きました。
  公園のあちこちで寄り道し、奥にある例の池にまでようやくたどり着くと、
  いました、いました。

カモやら、ハクチョウやら、なぜかカモメらしき鳥も。

以前は人が近づくと、すでにたくさんのカモがエサをもらいに
池から外に出てきたように思ったのですが、
今回は、ちょっと遠慮がちに近づいてきました。

パンをちぎって投げてやると、
我先に運動能力の高いやつがゲットしてしまいます。

  心優しい我々は、できるだけ運動能力の低そうなやつに近いところに投げてやるのですが、
  なかなかうまくいきません。
  カモとハクチョウにエサをやりたいのに、カモメの運動能力は非常に高く、
  サッと横取りしてしまいます。
  でも、同じカモでも想像以上に運動能力の高いやつがいました。
  水の中を泳ぐ速度は少なくとも見積もっても1.5倍はあるのではないでしょうか?
  私達はひそかに「ジャイアン」というあだ名をつけて見守ったのでした。

  4人、思っていた以上に、このパン投げに盛り上がってしまいました。
  あっという間にパンが底をつき、明日はもうチョッとたくさん持ってこようと
  スタッドパーケンをあとにしました。

  今日の午後からは日本人の奥様を持つスウェーデン人の
  友人のお宅にお邪魔する予定になっています。
  11時30分にホテルに迎えに来てくださるとのことなので、
  それまで再度街を散策しました。
  ドムシェルカンも、昨日はアネットに会うのが精一杯で、
  じっくりと雰囲気を味わうまでにはいたらなかったので、
  再度訪問しました。
  あの空間、壮厳な雰囲気…
  これだけの建築物がこんな小さな街に存在することが、
  正直驚きです。
  ヨーロッパを巡っても、ドムシェルカンほどの大聖堂は、
  あまり見られないと思います。

●ドムシェルカンのなか

  しばし大聖堂の椅子に腰をおろし、聖堂にこもる音、光、香り、
  独特の空気につつまれ、4人静かな時をすごしました。

  時間通りにイングヴァーさんは、SAABに乗って颯爽と迎えに来てくださいました。
  実は我々には今日中にルンドでしたいことが残っていました。
  昨日思いがけず以前住んでいたおうちを訪問し、
  ご挨拶をしたのですが何も記念になるものをお渡しできなかった
  (だって、そんな展開は予想していなかった)ので、
  日本からつれてきた記念品をお渡ししたかったこと。

  以前住んでいたときの大家さんのラトコとアナに
  残念ながら今回は会えなかった(なぜって?
  彼らは今ユーゴスラビアで休暇を過ごしているんだとか…
  連絡がついたのがちょっと遅かったので残念ながら会えなかったのです)
  そこで、日本から連れてきたおみやげを彼らのルンドの自宅に送りたかったのです。
  イングヴァーさんにその旨をお伝えすると「お安い御用」って感じでOKとなりました。

  まずは、再度フィエリエベーゲン21へと立ち寄り、おみやげを渡しました。
  また今度来た時に、いやなやつだと思われないようにね!

  それから、SAABは隣町のシェルビンゲへ向かって走り出しました。
  郵便局を探して小包を無事発送できました。
  さあ、これですっきり。
  イングヴァーさんのおうちまで楽しみは一直線です。
  高速を走ろうか?それともカントリーサイドが良いか??と聞かれたので、
  すかさず「カントリーサイド」とリクエストし、
  しばしスコーネの景色に見入ってしまいました。
  目的地であるおうちの前に、
  ヘルシンボリにあるシェルーナンに連れて行ってくださいました。

  ヘルシンボリは対岸のヘルシンオワとの間が非常に近く、
  最初にルンドに来た時にフェリーで上陸した、
  これまた我々にとって特別の街です。(北欧留学記第二回参照) 
  シェルーナンに登ると対岸はデンマーク、天気がよければクロンボー城も
  はっきりと見渡せるはずなんですが、残念ながら小雨でモヤーッと見えているだけでした。
  しかも、風が強く長居はできず、早々に下りてきてしまいました。

  お家に向かって再度走り出したら、小雨だったのが、だんだん本降りになってきました。
  お家が近づいても残念ながら雨はやみません。
  イングヴァーさんのお家には晴れた日にうかがいたかったのになあ。
  イングヴァーさん家は以前にもお邪魔したことがあります。
  実は第39回のジム君のお父さんがイングヴァーさんなのです。
  お天気の良い日はリビングから庭のむこうに海が臨める素敵なお家なのです。

  いったん懐かしいお家にお邪魔してひと休み。
  イングヴァーさんは、実はお宅のすぐそばの
  古くておしゃれなお城のレストランでのランチをセッティングして下さっていました。
  海へと続く庭が見渡せる素敵な席を予約して下さっていたのです。

素敵な雰囲気の中での豪華なお料理。
サーモンの前菜、サーモンのステーキ、
アナナスとココナッツのアイスクリーム。
ボリューム、美しい盛り付け、味、
すべて抜群でした。
素敵なお料理を頂きながら、お話をしていると…
風向きが少しづつ変わってきて、
ドラマチックといってもいいほど霧が晴れてきました。

 向こう岸のデンマークがコペンハーゲンが見えてきました。
  陽も差してきました。まさにドラマです。
  (やっぱり我々は日ごろの行いがよいからね、なんて)
  このレストランで、
  あのジム君は結婚式を挙げたそうです。

  素晴らしいロケーションで過ごした北欧のなんと優雅な時間だったことでしょう。
  食事を思い切り堪能しコーヒータイムはゆっくりお宅でという、
  これまたうれしいセッティングで、再度おうちへともどることになりました。

  ご近所にある、バイキングの遺跡を案内してもらい、
  今は高級住宅地になっているという昔の漁港の周辺を案内してもらって、
  お家に帰りました。

陽はまだまだ高く、非常に天気も良くなったので、
お庭のテラスで皆でお話をしました。
我々あこがれの海の見えるお庭でのティータイム。
おなかも心もフルコースで大満足です。
本当にいい天気になりました。
  空は青く、風は心地よく、
  本当にこのまま居座りたいと思いましたが、
  そうもいきません。
  陽の光がやさしく、長く続くのでついうち時間の感覚が
  なくなってしまいます。かなり遅くになってしまいました。

 

  残念ながら、明日はルンドともお別れしコペンハーゲンに移動する日です。

  イングヴァーさんには申し訳ないけれど、またルンドまで送っていただきました。
  その途中で見た、夕焼け、夕日に映える海…とっても綺麗でした。
  これが日常だなんて、なんてうらやましい。
  やっぱりスウェーデンのゆったりとした時間とともに流れている
  ライフスタイルには、あこがれてしまいます。

  夜、みんなで一日をふりかえり「あれもした」「これもした」とびっくり。
  今日もなんと盛りだくさんな楽しい1日を過ごせたことか。
  明日への期待と元気につながります。