第七回 ルンドでの思い出めぐり その1

  すっきり、ばっちり目が覚めました。
  今日はとってもいい天気です。

  朝食は、やはりここルンどのホテルでも北欧風バイキングです。
  今朝も朝食魔人一家は健在です。
  今日は朝はルンド散策を行い、
  わがボス、シュラー博士のおうちでランチをご馳走になる予定です。
  昨日フロントに伝言があって、
  今日のお昼にここまで迎えに来てくれるとのこと。
  それまでに時間が惜しくって、皆で街に繰り出そうと早起きし、
  しっかり朝食を詰め込みました。
  懐かしい街を実感するため、まずは、はるなやみちるが通った
  バーンティマ(幼稚園のようなものです)の場所や、
  バレースクールの場所、よくいったスーパーや
  店などなどを見て歩きました。さすがはルンド。
  全く時の移り変わりを感じさせませんでした。
  つい一週間前までここで暮らしていたのではないかと思うくらい、
  全く建物も雰囲気も変わりません。  

  ルンドはセントラムを中心に、
  街中に大学の建物や関係施設が点在しています。
  一番有名なのはドムシェルカンの横にある
  ルンダゴードといわれる、
  大木に囲まれた中に建つ「メインビルディング」です。
  そして、その大木の中に、
  我々が昔から「樫の木おじさん」と呼んでいる巨木があります。
  初めてルンドに着いた時、この木がクリスマスのために
  電球が一杯つけられていました。当時は日本では
  そのようなイルミネーションは見たことが無く、とっても驚きました。
  その樫の木おじさんにしっかりと2人娘の成長を報告しました。
  本当は何の木なんだろう??
  当時、NHKの「おかあさんといっしょ」では、
  「にこにこぷん」をしていました。
  その木の姿は圧巻で、見たとたんに「樫の木おじさん」になったのです。
  そして、この木は時々日本から送ってもらっていたテレビの録画ビデオ
  とともに、いつも子供達の身近な存在でした。
  だから、彼女達の今回の訪問リストに
  もちろんピックアップしてありました。
  坂道を大学病院の方へ上がっていくと懐かしいツタのからまる
  存在感たっぷりの建物が次から次へと出てきます。
  図書館とアルヘゴナ教会…。
  もう一息で病院というところで、残念ながら引き返すことにしました。
  もう一つ決めていたことがあったからです。
  どうしても会いたかったアネットという
  バーンティマの先生を訪ねることでした。
  昨日訪問したドムシェルカンの関係の施設で働いているはずでした。
  彼女とはクリスマスカード交換を続けていたのですが、
  今回の旅のことは報告していませんでした。
  ドムシェルカンのインフォメーションに
  家内が恐る恐る声をかけると…
  すぐわかって、彼女に電話をしてくれました。
  こわごわ内線での「This is Yoko.」に
  彼女は、「Oh my God!!」とびっくり。
  「この電話はどこからなの?!」
  最初は自分は仕事中だから、こっちに来てと
  道を伝えようとしていたのですが、
  「あー、とにかくそこで待ってて、私がすぐに行くわ」と。
  しばらく待っていると、
  向こうの方から見たことのある女性が走ってきました。
  再会できました!
  信じられないの連発でした。
  「Haruna!」「Michi!!」とハグハグ!!
  特にとっても小さかったみちるの成長に驚いて、
  「45cmのベイビーだったのに、
  こんなに大きくなって。Oh my God!!」
  それを聞いたみちるがそっと日本語で
  「私も大きくなったけど、アネットも大きくなったよね」って。
  確かに!!アネットも貫ろくたっぷりになっていました。
  残念ながら、彼女も勤務時間に抜け出してきてくれていたので、
  しばらく立ち話をして、再会を祝し、お別れしました。
  時間も押してきていたので、ホテルへ帰ることのしました。
  ホテルに帰ると、ほどなく例によって「ハロー、ハローハロー」と
  シュラーが現れました。以前シュラーが日本にレクチャーに来た時が
  最後のはずですから、当院の開院と同じ時期です。
  まだ引越しがちゃんとできていなかったけど、
  シュラーに家具や家を見せたのを覚えています。
  しかし、シュラーに会うとやはり朝感じた
  不思議なタイムスリップをしたような感覚を再確認しました。
  なんかこの空間のこの雰囲気が懐かしくあたたかく
  我々を包んでくれているような気がしました。
  (よほどスウェーデンの水があっているんですかね?)
  昨日まで一緒に仕事をしていたかのような気がしました。  
 
  何度か自宅にもお邪魔したことはあったのですが、 
  おうちに向かう前にぐるっとルンドを案内してくれま した。
  ルンドはやはり大学が中心の町で、専門学校などもたくさんあり、
  コペンハーゲンとマルメの間の橋の開通をきっかけに、
  いわゆる産学共同でのプロジェクトが
  たくさんできてうまくいっているようです。
  でも、周辺は開発がどんどん進み工場や会社、
  家やアパート等が建ち並び、道は混むし、
  家や家賃は高くなるしと、古くからの住人達は
   住みにくくなっているとのことです。
  (都市化すると日本でもスウェーデンでも事情は同じなんですね)   

  懐かしいおうちに着きました。
  驚いたことに、シュラーが家事を先頭をきってやっています。
  現役の時は、スウェーデンの家庭ではめずらしいパターン
  でもっぱら奥様が料理をしシュラーは何もしてくれないと
  おっしゃっていましたは、今は立場が逆転しているようです。
  奥様は現在世界をまたにかける「水彩画家」さんで、
  スウェーデンだけではなくEUのほかの国でも個展を開催する
  ようになっておられるそうです。私達がルンドにいたころは、
  世界をまたにかけて仕事をしていたのはシュラーで、
  奥さんはその裏方で思うように自分のキャリアを積めずに
  ちょっと不満で、でも趣味の絵を、
  それなりに楽しんでいらっしゃる印象でした。
  奥さんいわく、ようやく彼がリタイアしたので、今度は私の番と
  思い切ってみたら、どんどん世界にチャンスが広がってきたとか。
  スウェーデンの人たちの生活、人生のスタンスの素晴らしさに、
  とても刺激を受けました。あこがれちゃいます。
  シュラーは時々、カバン持ちでお供もしているとか。
  ほほえましいですね。   

  さて、今日のランチのメニューは…
  スウェーデンキャビア等のカナッペ、サラダ、ラザニア、
  アイスクリームにスウェーデンのベリーを添えて
  という豪華メニューでした。とってもおいしかったです。
  そうそう、例によってシュラーが
  スイスアーミーナイフをポケットから取り出して使おうとしたので、
  出発時のスイスアーミーナイフの件を告白すると…
  シュラーも何度も私と同じように取り上げられているようです。
  (師匠も取り上げられているなら、
  仕方ないかと妙に納得してしまいました。)   

  時間はあっという間に過ぎてしまいます。
  奥様のライラさんの絵も数点いただきました。
  ルンド大学のメインビルでビング等の貴重な絵です。
  我々以外の方にはあまりありがたがられないかもしれませんが、
  我々にとっては、とっても貴重です。
  (一般に画材にはならないでしょうからね。)
   
 
    そして、シュラーにつれられて大学病院へ行きました。
外来機能は病棟と分けられていました。(当時はいっしょでした。)
外来部門に行くと、
なんと当時働いていた看護師さん2名が歓迎してくれました。
一人は主任になっておられ、
もう一人は手術室の看護師さんだったのが、
ペースメーカー部門の看護師になっておられました。
もちろん?私のことは覚えていてくれて、
再会できたことを喜んでくれました。
ペースメーカーチェックは現在は
教育を受けた看護師さんがしているようでした。
  シュラーも後の予定があるようだったので、
  時間がそろそろなくなってきました。
  どこに送ろうかと聞かれたので、すかさず「モビリア」と答えました。
  モビリアは郊外の大きなショッピングセンターで、よく行ったんです。
  懐かしくって、ここも絶対いこうと決めてたんです。
  シュラーはその横にできたNOVAという
  ショッピングセンターの方がおすすめだろいうので、
  とりあえず、そっちで降ろしてもらうことにしました。
  ブラブラ歩いて、やはりモビリアへ移動。
  懐かしいお店で、住んでいた時と同じ感覚で買い物が出来ました。
  ここで欲しかったチョコ、コーヒー等を買い込みました。
  帰りはもちろん4番バスです。
  勝手知ったる4番バスです。
  フェリエバーゲンを通ってセントラムへ行くのが
  4番バスですからね。
   
 
  夕飯はおなかもいっぱいだったので、
  これまた懐かしいマックへ行きました。
  ここはスウェーデンへ行ってすぐに
  太田先生と会った懐かしい店です。
  今日もたくさん歩きました。
  普段はまったく忘れてしまっていても、
  その場所に行ったり、物を見たりすると
  湧き上がってくる思い出があります。 
  4人が4人ともピンときたもの、1人がピンときて、
  それに刺激されてみんなでピンピンピンと共有できたもの。
  脳みそも、心も、筋肉もフル活動でした。
  私達のことを覚えてくれている人にも、たくさん会えました。
  みんな再会をよろこんでくれて、それを楽しみました。
  とっても嬉しい時間でした。    


  ホテルに帰ってきて気付きました。
  私のジャケットが無いのです。
  いろいろ考えたら、どうもシュラーのお家に置いてきたみたいです。
  シュラー先生、今度取りに来るので、置いといてくださいね。
  明日は友人のお家に行く予定なので、そろそろおやすみなさい。