どんぶりこぼればなし


 第十三回  「お家」でできて「施設」でできない医療行為?!

 秋ですね〜、プロ野球のドラフト会議が行われ、ストーブリーグの話題がしきりです。
 今年は監督の交代も多そうですね。
 読売巨人軍もその例に漏れず堀内監督が成績不振の責任を取って退任し、原監督復帰が発表されました。
 楽天の田尾監督も3年契約だったのに、1年でお払い箱になってしまったようです。
 でもあの弱小チームで、良く監督を引き受けたと思いませんか。
 すぐに結果が出るはずがないのですから、もっと長期で物事を考えないとね〜と思うのは私だけでしょうか??

 田尾さんは元々京都の大学出身ですし、中日ドラゴンズにおられたので
 密かに楽天を応援していたのですが…田尾さんの後釜はかの野村監督とか?
 仙台のファンも田尾監督を支持しているようですし、どうも良く解らないですね。
 仰木オリックス監督、広島の山本監督も退任されるようですね。

 プロ野球の話題はこれくらいにして、サッカーはガンバが元気良いですね〜。
 目下首位を走っています。
 J2ではサンガがもうJ1復帰を決定って勢いです。
 我が日本代表もヨーロッパ遠征に出発しました。
 今回はオールスターとも重なるため、何名かは国内に残り、
 欧州組で久しぶりに松井や大久保が復帰するようです。
 彼らがどれだけ力をつけたのか…見物ですね。

 書かずに置こうと思ったのですが、阪神タイガース優勝おめでとうございます。
 我が中日を振り切って、本当に最後は見事でした。
 来年もドラゴンズと良いペナントレースをしましょうね!
 でも、最近の話題ではあの「村上ファンド」が阪神電鉄株の38%を保有し、
 まだ買い増しを続けているとか…来年は阪神タイガースではなくなっているなんて噂もチラホラですね。

  


 さて、前回は番外編でしたが、今回は通常のこぼれ話に戻ります。
 「シュートステイ、デイサービス等の介護施設での医療行為について」が話題になりました。

 実は当院に、ある病院の「地域医療連携室」から電話がありました。
 脳梗塞の後遺症で軽い麻痺と飲み込む時にむせたりする患者さんが退院されるので、
 在宅医になってほしいとの依頼でした。
 患者さんは娘さんとお孫さんとの三人暮らしで、
 娘さんとお孫さんが交代で介護しておられるとの事でした。
 週末は施設にショートステイに行かれ、その合間に娘さんは、
 たまっていた家事労働をされているようでした。
 よく、誤嚥(飲み込めずに食べ物や飲み物、時には唾液が気管や肺に入ってしまうこと)され
 肺炎を起こして入院されることもしばしばで、最近は退院期間がだんだん短くなってきているとのこと。

 主治医の先生は胃瘻管理(胃に穴を空けてチューブを入れて栄養の補給をする事)
 をすすめられているようですが、ご家族は何とか口から食事を食べさせてあげたい
 と一生懸命とろみ食や刻み食を作られているようです。
 聞くところによると徐々に痩せてこられてきているとのこと、むせたり、
 咳き込んだりするために食事にも時間がかかり充分食べられないのでしょう。

 こういった病状をお持ちのご家族とお話すると、
 胃瘻を作ると全く食事を取れなくなると勘違いをされている方が多いようです。
 胃瘻をつくって、栄養は充分胃瘻から注入し、楽しみのためにお口から少量食べるという方法もある
 ということを説明すると、たいていの御家族はビックリ!
 この患者さんの娘さんも、「そんなこともできるんですか?」という反応でした。
 それを踏まえて、主治医の先生と充分相談するようにと話をして別れました。

 数日後、「やっぱり今回は胃瘻は作らず退院します。」という返事でした。
 あれだけ、説明し理解され前向きだったのにどうしてだろうと思う間もなく、退院となりました。

 訪問に行って見ると、ヤッパリ喉の辺りで「ゴロゴロ」言っています。
 食事をとるとむせるそうです。
 唾液すら誤嚥されているものと思われます。
 痰は自分では吐き出せないとの事です。

 こんなことじゃ、また誤嚥を起こして入院という事になるんだろうな〜と思っていたら
 …3日後に入院となりました。
 誤嚥性肺炎でした。

 今度こそ、もうご家族も納得されて胃瘻を同意されるだろうと思っておりました。

 数日後ケアマネージャーさんから、連絡があって、
 「胃瘻管理には同意されました。でも、在宅はあきらめられました」とのこと??
 今までより誤嚥等の危険もなくなって、管理し易くなったのに、
 あきらめたって一体どういうこと??と思ったら、大きな落とし穴がありました。

 胃瘻を作ると施設のショートステイやデイサービスでの受け入れが困難になるそうです。
 週末にショートステイに入れる事が、在宅で生活をして行く重要なファクターであった
 このご家族にとっては、在宅をあきらめざるを得なかったということのようです。

  



 胃瘻を作ることは誤嚥を回避し安全を確保することです。
 正直、全く気づきませんでした。こんなことが拒否の理由だったなんて。
 胃瘻を作ることによって、今までよりずっと安全に充分な栄養を与える事が
 できますし安心なはず。

 でも、社会的には受け入れ先が減ってしまう、こういう矛盾を抱えていたのです。
 どんぶり仲間でも色々と議論が分かれていましたが、
 現状では病院以外の施設では老人保健施設も含めて
 胃瘻の管理が必要な利用者さんの受け入れには問題があるようです。

 じゃあ、インシュリン注射は?
 酸素の必要な方は?
 導尿の必要な方は?
 喀痰の吸引の必要な方は?

 と色んな医療的処置が必要な方がおられるわけです。
 それを、全部一律に「医療的処置」とくくってしまうのも乱暴ですよね。
 その上、こういった医療的処置は介護職であるヘルパーさん等では、
 特殊なケースを除いては出来ない事になっているのです。

 在宅におられたら、御家族の協力で出来ている事が、
 施設になると看護師さんしか関われなくなるところが問題なのです。

 だから、施設としては、今回のような「誤嚥のある利用者さんにとっては危険なはずの
 食事介助は出来ても、より安全な胃瘻の管理は出来ない」といった状況が生み出される訳です。
 制度が現場に追いついてきていないんでしょうね。

  

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