広がる地域密着型サービス
〜グループホームと宅老所〜
  介護保険も実施まであとわずかとなった。
 そんな中でいま注目を浴びているのが、グループホームや宅老所という地域密着型のサービスだ。

 厚生省は、このたび新ゴールドプランに続く、介護サービス基盤整備計画「ゴールドプラン21」を発表した。
 その中でも痴呆性老人対策が重視され、その切り札がグループホームである。
 厚生省は、この計画で初めて
 「グループホームの整備目標、2004年までにグループホームを3200か所整備する」を明らかにした。
 現時点では、グループホームが100ヶ所あまりであることを考えると、4年間で30倍という急増計画である。

 最近の高齢者ケアには2つの流れがある。
 1つは、グループホームや宅老所のような「地域密着型」という流れ。
 もう1つは、「ユニット(小規模)ケア」という流れだ。
「ユニットケア」とは、老人ホームの中をいくつかのグループ(5−10人)にわけてケアするという手法だ。
 両方に共通するのは、「家庭的な雰囲気」「その人らしさを尊重する個別ケア」「その人の生きがいや趣味を楽しんでもらうアクティビティー」などである。

 この1〜2年、グループホームや宅老所のシンポジウムなどは、どこも大盛況であり、1999年秋に開かれた日本初の「ユニットケア」シンポジウムも超満員であった。

 このレポートでは、今までの大規模集団ケア「姥捨て山」、と言われた隔離ケアの反省として、いま、注目を集める地域密着型の宅老所やグループホームについてご紹介したい。

 

宅老所とは?  
  −知り合いの家に遊びに来ている居心地の良さー

 私も過去10年以上、国内外の100以上の老人ホームを訪問したが、その中でも「最も居心地がよい」と感動したのが、宅老所「よりあい」(福岡市)である。
 そして、この「よりあい」が起爆剤となって、今や宅老所は、全国に400あまりにも増えている。

 宅老所をわかりやすく説明すれば、民家を改造して、そこで日中、デイサービスという形でお年寄りを預かる。
 さらに、必要なら、時には泊まれる(ショートステイ)というものだ。

 「よりあい」はダイエーホークスの「ダイエードーム」から徒歩10分の住宅地にある。
 空き家を、スロープをつけたりしてバリアフリーにし、トイレやお風呂もお年寄りにやさしく改築したものだ。

 1991年にスタートした当初は、行政からの補助はなかったが、のちに社会福祉法人の運営になり、福岡市からE型デイサービスとグループホームの委託を受けている。

 日中は8〜10人のお年寄り(ほとんどが痴呆症)が集まってデイサービスを利用し、泊り込み住み込んでいるお年寄りが7人、時々泊まるというショートステイのお年寄りも日に2〜3人いる。

 このような宅老所の良さは、まず、民家を改造してできるから、町外れでなく、住み慣れた地域にできるという点。
 また、老人ホームのショートステイの場合は、急な環境の変化で、症状が悪くなるお年寄りが多い。
 宅老所の場合は、普段、デイサービスで通い慣れている家に泊まるわけだから、居心地がよい。
 おまけに、「施設」という雰囲気でないので、お年寄りも「知り合いの家に泊まりに来ている」と違和感がない。

 「よりあい」の場合は、住み込んでいるお年寄りもいるが、多くの宅老所は、デイサービスだけである場合が多い。

 

グループホームとは?  
      〜そこから愛が生まれる!〜

 宅老所が、デイサービス主体であり、時には、泊まれたり、生活できたりするものであるのに対して、グループホームは、5〜9人の痴呆症のお年寄りが共同生活をする場である。
 グループホームは「痴呆対応型共同生活介護」とも呼ばれ、介護保険に在宅サービスのメニューとして入っている。
 要介護認定で要介護1以上に認定された痴呆症のお年寄りが利用できる。一方、宅老所の場合は、痴呆症でないお年寄りも利用できる。

 宅老所とのもう1つの違いは、宅老所は民家を改造し、地域の中に存在するものが主だが、グループホームには、病院や老人ホーム、デイサービスセンターなどとの併設型、民家を改造したような単独型、ビルやマンションの一角にある合築型などがある。

 痴呆症のお年寄りは、「孤独」「混乱」「自信喪失」に苦しんでいるといわれる。
 さらに、環境の変化により、ますます痴呆症が悪化する。
 そのため、「住み慣れた地域で」「10人足らずの少人数で」「料理や掃除などをスタッフの援助のもと、いっしょにすることで、役割を持つ」という宅老所やグループホームが有効である。

 宅老所やグループホームのケアの特徴は、お年寄りに残っている能力を引き出し、自尊心を高めることである。
 それにより、脳が活性化され、痴呆症状がやわらいだり、痴呆の進行が遅くなったりするのだ。
 たとえば、あるグループホームでは、昔、料理屋に勤めていたお年寄りは、最近のことは覚えられないが、刺身をおろすのはスタッフよりもうまい。
 昔、クリーニング屋に勤めていた男性は、痴呆症になった今でも、スタッフの誰よりもアイロンかけがうまく、グループホームではアイロンかけの仕事をして、みんなから喜ばれている。

 今までともすれば、日本では、痴呆症や身体が不自由になったお年寄りは、住み慣れた地域から隔離し、町外れの大きな老人ホームや病院に入らざるをえないケースも多かった。
 しかし、今回、ご紹介した宅老所やグループホームは、地域に溶け込んでいる。
 ある人が言った。「グループホームや宅老所ができると、そこから愛が生まれる」と。
 つまり、住み慣れた地域に気軽に立ち寄れる宅老所やグループホームができれば、そこがボランティアのネットワークの核にもなり、福祉の気風が、温かな雰囲気がそこから地域に広がるのだ。

 このような地域で生まれつつある草の根の宅老所や、グループホームの運動が介護保険の中で、さらに広がるように精一杯私も運動のお手伝いをしたい。

 なお、宅老所は全国に約400ヶ所、グループホームは100ヶ所余りあるが、下記の事務局に連絡すれば、近くの宅老所やグループホームの情報が入手できる。
 私も両方の会員であるが、趣旨に賛同して下さる方は、会員になれば、定期的に会報や行事予定が送られてくる。

              やまのい和則  99/12/24

宅老所・グループホーム全国ネットワーク 詳細こちらへ

全国に点在する8つの連絡会と、現在運営している宅老所やグループホームの有志が1991年1月に設立した全国的なネットワークです。
     (代表世話人 槻谷和夫、高木俊江、下村恵美子)

宅老所・グループホーム全国ネットワーク
   〒989−3201 宮城県仙台市青葉区国見ケ丘7−141−9
      電話 022−727−5830 

全国痴呆性高齢者グループホーム連絡協議会 詳細こちらへ

 「痴呆であっても、安らぎとよろこびのある日々を、そしてその人らしく最後まで」を合言葉に1998年5月30日結成。
 痴呆のお年寄りが本当に安心して暮らせるように全国に1つでも多くのグループホームが設立されること、また量的拡大と同時にサービスの質を保証し向上を図ることを推進、目的としている団体。
                  (代表世話人 福島弘毅)

 全国痴呆性高齢者グループホーム連絡協議会
 〒222−0001 神奈川県横浜市港北区樽町2―10―26 第一樽町ビル
          電話045−549−4177 ファックス 045−549−4178


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