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介護保険のここが問題 14−3 

(三)「保険料が高くなっても、よいサービスを!」と声をあげる

 身近な自治体議員に、この介護保険を地方議会で優先課題として議論するようにと、働きかけるのも効果的です。

 介護保険が導入され、今まで老人福祉に使っていた市町村の財源が浮く部分があります。
 この部分を介護以外に回すのではなく、介護保険で自立と判定されてサービスが利用できなくなった人へのサービスや「上乗せサービス」「横出しサービス」に使うように、行政や議会に働きかけることも効果的です。
 また、いたずらに保険料が高くならないように、療養型病床群を増やしすぎないように働きかけることも大切です。

 しかし、「介護サービスを充実させてほしい」と言えば、「保険料は高くなってもいいの?」と返ってきます。

 「より安くて良いサービスが理想」。これは当たり前ですが、よりよいサービスには人手や財源がいるのも明らかです。
 ここが介護保険のポイントです。
 今までは行政に対して、
 「福祉を良くしてほしい」と声をあげていればよかったのが、これからは介護サービスの充実と保険料のアップをセットで考えねばなりません。
 「保険料は安いほうがいいが、サービスは増やしてほしい」というのは通らないのです。

 介護サービスを充実させると、その市町村の65歳以上の介護保険料がアっプします。
 ですから、おおまかに言えば、介護サービスを利用しているような切実な人は、「保険料がアップしても、介護サービスの充実を!」と考える。
 一方、介護問題がまだ切実でない人や保険料アップの直撃を受ける65歳以上の人は「介護サービスはまあまあでよいから、保険料を安く」と考える傾向があります。

 議論は対立し、簡単に答えは出ません。答えが出ないと、市町村としては、「まあ、横並びで近隣との市町村と同じくらいの保険料とサービスにしておこう」となってしまいます。

 しかし、こんなことでは安心して年をとれる社会はつくれません。
 介護保険は市町村が主体で、市町村が、良い意味でのサービス競争をし、より安い保険料でよりよいサービスをいかに実現するかを競い合うのが、介護保険の意義です。

 よい介護サービスを増やすための市町村同士の競争を促す意味でも、私は、介護サービスの充実を願うならば、住民も腹をくくらねばならないと思います。  そして、勇気を持って、「保険料は多少高くなっても良いから、満足なサービスを受けたい!」という声を、行政や議会に、伝えるべきだと思います。

 その時には、「介護サービスはまあまあでよいから、保険料は安い方がよい」という反対意見も出てくると思います。
 最終的にどちらの住民の声が大きいかということで、市町村のサービス水準が決まります。

 もちろん、この議論には前提があります。保険料がアップすれば65歳以上の低所得者を直撃しますので、そうならないように市町村は軽減措置などを検討すべきでしょう。

 このように介護保険は、住民が介護サービスのレベルを選択できる画期的な制度です。

 介護保険の導入により、「老後の沙汰は金次第」ではなく、「老後の沙汰は住んでいる市町村次第」と変わりつつあります。

 2000年の4月になって、もし、自分の住んでいる地域が「保険あって、サービスなし」になってしまったら、その責任の一端は、そうなるまで声をあげなかったあなたにもあるかもしれません。
 安心して年をとれる地域は、住民・介護現場のスタッフ・行政・議員などみんながともに汗を流し、知恵を絞り、議論を重ねつくりあげるものです。

「安心して年をとれる社会は、天からは降ってこない」

 この言葉を締めくくりの言葉にしたいと思います。


 「介護保険のここが問題」 おわり


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