医療制度改革チームの集中講義 & 身体拘束ゼロ作戦レポート & 痴ほうケア講演会

            第184号(2001/09/14)

メールマガジンの読者の皆さん、こんにちは。9月13日は日帰り
で東京。今は帰りの新幹線の中です。今日は、今日の報告と「身体
拘束ゼロ」に向けた素晴らしい事例の報告です。

■9月13日、
7時10分京都発の新幹線に乗り、東京へ。
◆国会は閉会中だが、総務委員会が臨時で開かれ、新宿ビル火災に
ついて議論。10時から12時半まで。

○事故のあったビルは、何度も消防法違反で警告を受けていたが、
その警告を守っていなかった。もっと厳しく取り締まるべきだと、
私の同僚の民主党の武正公一議員が、消防庁長官に質問した。

○ただ、歌舞伎町は危険な地域で、消防署員の方の発言によると、
「実際の消火作業よりも、歌舞伎町の立ち入り調査のほうが危険。
立ち入り調査の際には、警察官にも同行して欲しい」とのことであ
った。

 このままでは、同じような火災事故が再発してしまう。

◆12時半に国会事務所に戻り、厚生省の担当者2人から、厚生労
働省の来年度の概算要求の介護部分について説明を受ける。
(1時から医療制度改革チームの会合で、30分しか時間がないので、
失礼ながら、私はお弁当を食べながら、話を聞かせてもらう)

 私は今までに何度も説明は聞いたが、改めていくつか質問した。

○身体拘束ゼロの取り組み(車いすやベッドに痴呆性高齢者などを
ベルトやヒモで縛り付けたりすることをやめる取り組み)について
は、資料になかった。「去年は、年間3800万しかなく少なすぎた」
と言い、調べてもらうと、

「今年は100万増やして3900万円を要求しています」とのこと。
もっと増やしてほしいと思う。

○また、今の厚生労働省の考えでは、これから新設する特別養護老
人ホームは全室個室が望ましいとのこと。

同じ特別養護老人ホームの一部だけを四人部屋にすると、個室でな
い四人部屋の入居者だけホテルコスト(家賃、月5-6万円か?)を
とれなくなる。

ひとつの特別養護老人ホームで、たとえば、四人部屋は月6万円、
個室はホテルコスト(家賃など)を加えて11万円というようなの
はおかしいということらしい。

○また、今回の予算の目玉は今述べた「個室・ユニット型新型特別
養護老人ホーム」とケアマネージャーの支援であるそうだ。

ケアマネージャーリーダーというケアマネを指導するリーダーを増
やすそうだ。

○なお、厚生労働省の社会保障制度審議会の介護給付費部会のメン
バーが近日中に決まるようだ。このメンバーが10月から会合を持
ち、介護保険の介護報酬の見直しを議論する。

◆なお、石毛えい子議員から「民主党も、介護保険チームで近いう
ちに現場の方々からヒヤリングを行い、介護報酬についての要望を
まとめよう」という話になった。

◆さて、12時59分にその質疑応答を終え、走って、海野政策秘書
と衆議院第二議員会館一階の会議室に向かう。1時2分に到着。

民主党の医療制度改革チームの集中講義だ。走りこむと、このチー
ムの座長の今井澄参議院議員から、「はい、山井さん、このチーム
の事務局長だから司会」と言われる。

国会議員が18人参加、秘書も含めると34人。大盛況だ。みんな医
療制度改革に関心を持っている。

○講座の前半の講師は、慶応大学教授の田中滋先生。
「生活の安心がないから、消費が伸びず、株にもお金がまわらない。
ここ数年、日本は不況なのに貯蓄が増えている。不安だからだ。医
療を充実させ、暮らしの安心感を高めることが、景気回復のために
も必要。建設業よりも医療は同じ投資額で2倍雇用を生み出す効果
が高い」などと講演。
さらに、医療制度改革のあるべき姿もお話くださった。

○後半は3時から5時まで厚生労働省の3人の担当者の話。
9月25日厚生労働省の医療改革案を提示するとのこと。それをた
たき台に年末まで政党などが議論することになる。

○詳しい報告は書かないが、小泉改革で医療費は伸びを抑制されて
いるので、厳しい改革の内容になりそうだ。

◆厚生労働省の担当者の考え、田中教授の考え、そして、私も共通
しているのは、下手に保険料を下げるために、公的な医療保険を基
礎部分に制限し、それ以上の医療は自己負担に、という形にすれば、
結局、私たちは貯金に励んだり、民間保険に入らねばならなくなる
と、結果的には、負担は増えてしまうという考え方だ。

 貯金や民間保険で対応するくらいなら、多少保険料が高くなるほ
うが、まだ、安心感や自由に消費に回せるお金は多いと思う。

○さらに晩まで民主党内の議員と秘書さんとでこの勉強会を続け
た。さすがに、いい勉強になった。今井議員は「臨時国会が始まれ
ば、毎週1回の勉強会のペースで民主党の意見を集約する」と言う。

私もこの改革チームの事務局長なので忙しくなりそうだ。一度、病
院の現場を視察に行き、現場の声を聞かねばと思う。


■では、このメールマガジンの後半は、老人保健施設に勤務する私
の尊敬する知り合いのレポートを、本人の許可を得て、転載させて
頂きます。施設名ははずさせて頂きました。わかりやすいレポート
ですので、お目通しください。


■〜悪循環から良い循環へ〜 
       介護老人保健施設の介護福祉士さんによるレポート
【はじめに】
 高齢者の自立支援に向け身体拘束(施設内のお年寄りをヒモやベ
ッドで椅子や車いすに縛ること)が禁止され、「身体拘束ゼロ作戦」
として拘束のないケアの実現に向け様々な取り組みが進められてい
る。

当施設において、実態調査行ってみると100名の入所者のうち、
つなぎ服8名、ベット4点柵15名、拘束はしない方が良いと思う
がやむを得ないと感じているスタッフが82%もあり、身体拘束ゼ
ロへの道のりが遠く感じられた。

そこで身体拘束廃止委員会での勉強会、マニュアルつくりと平行し、
入所者一人ずつに焦点を当て取り組みを開始した結果、スタッフの
意識改革ができ身体拘束ゼロに向け前進する事ができた。
事例を通して報告する。

【経過】
  O氏 78歳 要介護度4 痴ほう性老人ランク4

入所時のO氏は、急な立ち上がりのため安全ベルト使用、不潔行
為のため終日オムツ・つなぎ服着用。痴ほう症状として、夜間せん
妄、脱衣行為、暴言暴力がみられた。

家族も骨折を恐れ、抑制して欲しいとの要望である。
そこでO氏のアセスメントを行い、家族と共にケアの方向性を決
めた。

(1)安全ベルトを使用せず随時見守る。危険を予測し訪室回数を
   増やす。
(2)不潔行為は不快感が原因と考え、清潔を心がけ排せつリズム
   をつかむ。
(3)自ら起き上がり下肢を動かしていたため、筋力トレーニング
   をすることで歩行が可能と考え、リハビリプログラムを作成
   した。

【結果ー考察】
  プラン実施
2週間は転倒の危険が何度も見られたが、行動を制限せずスタッフ
が必ず付き添って行動した。
つなぎ服をやめると、不潔行為、オムツはずしがあった。

オムツでは、かさ張り違和感があり、また尿失禁後のパットが不快
へとつながったためトイレ誘導し、終日リハビリパンツにて排せつ
リヅムをつかんだ。

3ヶ月の期間を要したが、自ら尿意を訴えることができるようにな
り、夜間では自らポータブルトイレにて排せつを行えるようにまで
なられた。

また、時間の経過と共に自力歩行しようとする本人の意志が見られ、
筋力アップと共に4ヵ月後にはシルバーカー歩行まで可能になっ
た。

 この事例を通じ、今まで行っていたケアが過剰予防といえるので
はないかと感じた。拘束廃止に取り組んだことでスタッフの質の向
上が図られたと考えられる。

(1)自由に歩行できることが、精神安定につながり、問題行動が
  無くなった。また抑制を外したことにより、表情は明るくなり
  自ら話しかける場面が多くなった。

(2)拘束をしてでも安全第一を考えていた家族も、ひとつひとつ
  拘束が外れていく課程で自由を奪われていた親の姿を思い浮か
  べ、苦悩し後悔していた。拘束をしないことにより「自由」に
  なれるのは入所者だけでなく、家族の心も開放された。

(3)拘束は最終手段と考え、なぜ必要なのかの原因を見つけ出し、
  できる限りの、ケアでカバーしようとするアセスメント能力が
  向上した。拘束廃止委員が発足し、事例検討を行っていく中で
  再度実施調査を行ってみると、つなぎ服0名。ベット4点柵3
  名、拘束はやむを得ないと感じているスッタフは、17%へと
  大幅に減った。

今後の対策として、
つなぎ服は排せつケアの工夫で不要となる見通し。
不快なオムツ状態を放置せず排せつリズムをつかみ随時交換する。
紙おむつの異食行為の対応には布オムツとする。
ベット柵への対応としては見守りの強化とべットの高さ調節、床に
直接マットレスをしくなどの工夫を考えた。

 高齢者を拘束することにより、自由が奪われ身体機能の低下が生
じてくる。その結果、二次的な障害を招くこととなる。それが悪循
環となるのである。

高齢者の自立支援に向け、良い循環に変えていかなければならない。
今後も施設独自のマニュアルを作成し、入所者ひとりひとりの状態
に合わせた個別ケアを充実させ、良い循環、拘束ゼロに向かって努
力していきたい。

【終わりに】
 自立支援が目的である以上、拘束の介護ではなく見守りの介護で
なければならない。家庭復帰施設である以上「拘束したままでは家
庭に帰せない」をスタッフ全員の意識目標とし、今後も入所者のた
めの介護を考えていき、また職員個々が誇りとやりがいのあるケア
を喜びとして実感できるようにしていきたい。 以上
http://www.wao.or.jp/yamanoi/siryou/1/yoijyunkanhe.htm


◆身体拘束をなくすことは私のライフワークである。しかし、口で
言うのは簡単だが、現場の努力は大変である。このレポートには私
も感動しました。

■なお、この身体拘束ゼロ作戦の日本のリーダーである吉岡充先生
の講演が9月15日に京都であります。
詳しくは、ホームページをご覧ください。
http://www.yamanoi.net/grouphome/information/01/010915.htm


明日14日予定、
*午前中は、京都でユニット型特別養護老人ホームの訪問。
*午後は敬老会に参加。
*16日の国政報告会と福祉学習会の資料印刷(多くのボランティ
  アさんが印刷やホッチキス止めを手伝って下さいます)。
*夜は奈良で介護保険の講演です。

 いつもながら長いメールマガジンにお付き合いくださり有難うご
ざいました。
             やまのい和則 拝


■<おすすめ講演会です!>
素晴らしい講演会です。佐々木先生は痴呆ケアの第一人者です。
 
<説明>
 介護保険制度に実施により、痴呆性高齢者ケアのハード面(グル
ープホーム及び大型施設ケアユニット化)は少しずつ整備されてき
ました。今後はソフトの面で磨きをかけることが大切と考えます。
痴呆性高齢者はコミュニケーション障害者ともいわれています。

 超コミュニケーション法といわれている「バリデーション(共感
的理解)」について共に学びたいと考えます。

 「バリデーション」は共感のセラピーとして最近スウェーデンで
盛んに取り入れられているもので、日本でもまだまだ知られていな
いセラピーです。たくさんの方に参加していただければ、幸いです。
自由に参加できます。
http://www.yamanoi.net/grouphome/information/01/011013.htm

  日 時  10月13日(土)13:30〜16:30
             (受付開始 12:30)
  場 所  京都アスニー 4階ホール
      (丸太町七本松西入る)075−802−3141

 パネルディスカッション
  共感のセラピー「バリデーション」がケアを変える
              〜スウェーデン教育実践から学ぶ〜

 コーディネーター  佐々木 健氏(きのこエスポアール病院長)

 パネラー ( 外人の講師の方はスウェーデンからの講師です)
  *クリスティーナ・テレルード氏 (バリデーション教育担当)
  *ジェーン・リンデルールングテン氏 (バリデーションケア
              専門家・作業療法士・理学療法士)
  *篠崎 人里氏   (きのこエスポアール病院・本部長)

 参加費 無料
 募集人数 400名(先着順)
 申し込み方法
    郵便 〒607-8062 京都市山科区名神インター横
    宛先 洛和会本部 佐々木まで
       FAX 075-581-8831
 申込書記載内容 参加者氏名・返信はがき送付先・電話番号
 受付締め切り 10月5日(金)

 問合せ先
    洛和会本部 佐々木 または 出野(いでの) まで
         電話 075-593-7220

 共催 呆け老人をかかえる家族の会・
    京都新聞社会福祉事業団・社団 洛和会
 後援 京都府・京都市・京都府社会福祉協議会・京都市社会福祉
    協議会・京都市在宅介護支援センター連絡協議会
 協力 きのこエスポアール病院(岡山県笠岡市)


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☆やまのい和則の「軽老の国」から「敬老の国」へ☆
    (2001/09/14現在 読者数 1769)

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