やまのい和則の
     「軽老の国」から「敬老の国」へ

            第155号(2001/06/13)

 メールマガジンの読者の皆さん、こんにちは。
今日(12日)はいろんなことがあったので、少し長くなるかもし
れませんが、今日の報告を書きます。

■6月12日(火)

◆朝8時から9時すぎまで、民主党の介護保険チームの会合。
厚生労働省から12名の介護保険担当者が出席。

私たちがまとめた介護保険の見直し「10の提言」について議論。
民主党は、金田誠一議員、中村哲治議員、土肥隆一議員と秘書さん
10人が出席。書き出すとキリがないので、書かないが、

「介護保険について多くの問題点があるではないか。早急に改善す
べきだ」と迫る私たちと、
「趣旨はわかる。目指す方向は同じだが、もう少し時間をかけて改
善する」と答える厚生労働省側とで議論はあまりかみあわなかった。

ただ、私たちの思いは通じたと思うので、8月末の来年度の概算要
求で少しでも反映されることを祈るのみだ。

◆9時半から来客があり、11時からは総務部門会議で郵政事業に
ついての議論。その後、昼食をはさんで来客と取材が二人。

◆13時から衆議院本会議。
私の隣の席の武正公一議員(松下政経塾の2年先輩)が、「選挙制
度見直しや道路財源の一般財源化など肝心の改革の具体策がすべて
参議院選挙後に決めるのはおかしい。参議院選挙前に明らかにそれ
で選挙で信を問うべきだ」などと質問した。

塩川財務大臣や福田官房長官からは明確な答弁はなかった。

◆14時から17時までは衆議院総務委員会。
◆それと重なって15時からは、小規模作業所の全国連絡協議会と
の懇談会。
関係者全国から100人くらいお見えになる。こちらは、視覚障害者
の堀利和参議院議員、釘宮議員、福山哲郎議員、私。

「行政からの運営補助金が少なすぎる。高齢者には予算が多いが、
障害者には少ない」などという声を聞く。私の地元である宇治の共
同作業所からもスタッフの方と車いすに乗った利用者が参加してお
られ、感激。

◆また、同じ15時から16時までの時間に。ヤコブ病問題の議員懇
談会の打ち合わせ。

これは、薬害エイズに続く薬害であり、7月に裁判の判決が出る。

 遅れて私が懇談会に出席すると、桜井充参議院議員が、「山井、
ちょうどいいところに来た。お前、このあいだ、ヤコブ病の原告の
人の話聞いて泣いてただろう。お前、民主党の世話人をやれ」との
こと。

よく聞けば超党派の議員懇談会で、代表は自民党の中川昭一元農林
水産大臣。事務局長が桜井議員。民主党の世話人が私ということに
なった。

 ヤコブ病の問題も深刻な問題だ。また、後日詳しく説明します。

◆また、総務委員会に出席した後、17時半から樋口恵子さん(前
全国自立生活センター代表)と共に街頭演説をするために、国立(く
ちたち)駅に向かう。

 しかし、ある駅で飛び降り自殺があったため、電車が途中で止ま
る。遅刻して国立駅に到着。民主党組織委員会での私のボスである
坂上さんと引継ぐ。国立駅には樋口さんだけでなく、車いすに乗っ
た自立生活運動の仲間が15人くらい集っていた。

 移動して昭島駅に。1時間街頭演説とチラシまき。車いすの仲間
の方々がマイクを握り、「樋口さんのような障害のある当事者が政
策決定の場に行くべきです。バリアフリーな社会は、障害者だけで
はなく、高齢者にもやさしい。誰もが年をとるのです」と演説。感
動した。

◆その後、車で立川駅に移動。移動の車中で樋口さんと、日本版ADA
法案(障害者の権利法)について議論。日本の障害者福祉を向上さ
せるためには、障害者の権利法が必要である。樋口さんは次のよう
に言った。

 「その法案には、障害者の権利とは、どういうものか具体的に書
いて欲しい。そして、その権利がおかされた場合は、裁判ができる
ものでなければならない。そうしないと福祉は向上しない」

 そして、具体的に樋口さんは次のような障害者の権利をあげた。

(1)地域で暮らす権利(住宅の確保、介助者の確保)
(2)移動する(駅、バス、タクシー、電車)
(3)情報を得る
(4)働く権利
(5)教育を受ける権利(どこでどんな教育を受けるかを選べる)
(6)投票する権利

以上のことを、哀れみとしてではなく、権利として保証されるべき。

 何とかこの法案を具体化させたい。

◆立川駅は昭島駅より通勤客がはるかに多い。樋口さんを応援する
車いすの方の数も増えて、車いすに乗りながら、樋口さんのチラシ
を配り、応援演説をしている。総勢25人。素晴らしい光景だ。

 一番驚いたのは、電動車いすに乗って、顔面しか動かず、あごで
電動車いすを動かしている障害者が、マイクを介助者にもってもら
い、樋口さんを宣伝する演説をしているのだ。

「障害を持った当事者を政策決定の場に送る必要があります」と必
死で訴えて下さった。

●しかし、その時に事件が起こった。酔っ払いのおじさんが食って
かかってきたのだ。「お前らは仕事もしないで、行政から金をもら
って、偉そうなことを言うな! 俺なんか行政から一銭ももらえな
いんだぞ。遊んで金もらってるお前らの顔を見ると殴ってやりたく
なる・・・・・・」

 そのおじさんは、マイクを握り演説する車いすの方に殴りかから
んばかりの剣幕である。私はあわてて飛んで行って、演説する車椅
子の方と酔っ払いのおじさんの間に割って入った。

 「こいつらは、遊んで金をもらってるんだ。恵まれた奴らだ!」
と叫ぼうとするおじさんに、「どうしたんですか。そんなことを言
わないで下さい」と私。

私と一緒に駆けつけた石毛えい子衆議院議員も、「みんな必死に生
きてるのよ。どうしてそんなこと言うの」と優しく語りかけた。

 「俺は仕事もねえんだ。金もねえんだ。毎日、ゴミをあさって食
べて、空缶をひろって売って、野宿して生きてるんだ。働きもせず
に、金をもらっているこいつらが許せない」とおじさん。

 これは、ゆっくり話を聞いてなだめるしかないと思った私は、お
じさんの隣に座り、「どうしたんですか」と尋ねた。「近寄るな。
お前の顔なんか見たくない!」とおじさんは殴りかかろうとする。
「お話を聞かせてください。どうしたんですか」と私。

 「本当は土木作業の仕事がしたいんだけど、土木作業は30代、40
代しか雇ってくれない。仕事を探そうと電話しても、まず、年齢を
聞かれて、63歳と言ったら、ダメですって断られるんだよ。俺だ
けじゃねえよ。この立川駅だけでも晩だけで30人くらいが寝てる
よ。世の中で一番困っているのが、俺らなんだ。俺らを何とかして
くれよ。なのに、こいつらは働きもせず、金をもらってるのは許せ
ない」とおじさん。

 「そんなことを言うもんじゃありませんよ。みんな困ってるんで
すから。それに、この人たちも市役所などに言って粘り強く交渉し
て制度を受けられるようになったのですから。おじさんは立川市役
所に行ってないんですか」と石毛議員。

 「市役所に行ったけど、怒られて追い返されたよ」
「どうして追い返されたんですか?働きたい。仕事をしたいと言っ
たらいいじゃないですか」(山井)、
「だから、63歳じゃどこの土木現場も雇ってくれないって言って
るじゃないか」

「いつから野宿してるんですか」(山井)、
「3年前だよ」
「それまではどうしてたんですか」(山井)、
「昔は建設会社に勤めてたんだよ。でも、18年勤めて会社がつぶ
れて、そうしたら、20年も勤めてないからという理由で年金もも
らえないんだよ。そのあとはずっと日雇いさ」

「なぜ、日雇いを辞めたんですか」(山井)、
「3年前に職業安定所で並んでいたとき、順番抜かしをされたんで
暴れてガラスを割っちゃったんだよ。それ以来、仕事にありつけな
くて。お金がなくなってアパートにも居られなくなって野宿になっ
たんだよ。毎日、ハンバーガーだよ。10時ごろになれば店から捨
てられるから、それを待ってるんだよ」

「でも、ハンバーガーばかりじゃ身体に悪いでしょう。サラダとか
食べないと」(山井)、「毎日、腹が減って死にそうだよ。立川市は
食事券もくれないんだよ」「でも、いまペットボトルに日本酒を持
ってるじゃないですか」(山井)、「夜中に居酒屋の前をまわって、
表に出してあるビンの底にたまってる酒を集めてるんだよ」

「出身は?」「佐賀県東久留米市生まれ」「家には帰らないんです
か」「15歳でこちらに出てきたから、もう帰れないよ。五人兄弟の
末っ子だよ。もう毎日、腹ペコで目がまわって、いつホームに飛び
込もうかと死のう、死のうと思ってるんだよ」 

●こんなやりとりの横で、樋口さんや車いすの方がマイクを握り演
説を続けている。車いすの若者がおじさんのところに近寄ってきた。

「僕たちも何度も市役所に行って、交渉してきたんだよ。おじさん
も市役所に行って、助けて下さいって言わなきゃダメだよ。生活保
護はもらえないの」
「生活保護は65歳以上でないとダメだんだよ。俺はまだ63歳だ」
「じゃあ、あと2年じゃないですか」(山井)、

「それまでに死んじゃうよ。それに生活保護は居住地は決まってな
いとダメなんだよ」
注(厚生労働省は、「居住地がなくとも生活保護は申請できる」とし
ているが、都道府県は居住地が決まっていないと真性を受け付けな
い場合が多い)

 「あんたたちもこんなとこで何を演説してるんだよ。そんな暇あ
ったら、俺を助けてくれよ。仕事もない、食事もない、俺が最も困
ってるんだから」
「実は、私たちは国会議員なのよ。そして、ちょうど私もこのお兄
さん(山井のこと)と一緒に、野宿者の人たちが仕事を得て、屋根
のあるところで暮らせるようにする法律をつくってところなのよ」
(石毛議員)、

「じゃあ、なんで良くならないんだ?」
「私たちの政党の力が弱くて、法案が通らないのよ」(石毛さん)、

「国のてっぺんにいる人たちがちゃんと考えてくれなきゃダメだよ。
この駅だけでも何十人も野宿者がいるんだから。先日も一人死んじ
まったよ」
「私たちは必死に野宿者の皆さんのことを考えてるんですけど、国
のてっぺんにいる私たちより偉い人たちはお金のことしか考えてな
いのよ」(石毛さん)、

「ところで、いまの首相ご存知ですか」(山井)、
「知らねえよ。新聞もテレビも見ないんだから。池田か」
「池田勇人はかなり昔ですよ。今は小泉首相です」(山井)、
「知らねえよ。小泉なんか。とにかく、俺は毎日、死にたい、死に
たいと思ってるんだ」
「そんなこと言わないで。でも、石毛さん、立川市の国会議員は誰
でしたっけ?」(山井)、「川田悦子さんよ」(石毛)、「おじさん、
川田悦子さんは厚生労働委員会で私の席が隣だから、今度おじさん
のこと言っときますよ。ところで、おじさんのお名前は?」(山井)、
「西田・・・」

●そうこうしてる間に街頭演説が終わり、樋口恵子さんが歩み寄ってこられた。
「おじさん、どうしたんですか。お騒がせしてすみませんでした」
「俺のような底辺の人間を救ってくれよ」とおじさん。
「わかりました」と樋口さんとおじさんは固い握手を交わしました。
「おじさんもわかってくれて良かったわ。もう死ぬなんて言わない
でよ」と石毛さん。

 これで、一件落着かと思われた。

●しかし、少し離れたところで車いすに乗った若い男性が二人抱き
合って泣いておられた。嫌な予感がした。

「お前ら悔しくないのか!」と、まわりの車いすの仲間に叫びなが
ら一人の男性が涙をぬぐっている。

 そうなのだ。石毛さんや私が必死でなだめすかしたとは言え、何
度も野宿のおじさんが、「こいつらは恵まれている。働きもせずに
金をもらって。顔を見るだけで腹が立つ」などと暴言を連発してい
たから、その言葉に障害者の方々が傷ついたのであった。

当然だろう。誰も好き好んで障害のある身になったわけではない。
その光景を見て、私も目頭が熱くなった。

 何ともやり切れない思いが残った。

◆その後、解散。私は障害者団体の代表のMさんと、スタッフの
青野さんと遅い夕食をとった。

日本版ADA法(障害者の権利法)のあり方について議論をした。
夕食を済ませ、電動車いすのMさんと共に駅のバリアフリーチェ
ックをしながら帰路についた。

◆朝から介護保険、小規模作業所、ヤコブ病問題、障害者福祉、
ホームレス問題など、多くを考えさせられた一日であった。

 以上、例のよって長いメールマガジンですみませんでした。
                   合掌 やまのい和則 拝

■追伸:
駅で配った樋口恵子さんのチラシは、非常に読み応えがありました。
障害がある人も自分の好きな地域で自立して暮らせるよう社会をつ
くろう!という内容です。

私も祈るような気持ちで配りました。
その内容は、樋口さんのホームページ
( http://www.ilpeer-net.com/index.html )に出ています。よかった
ら見て下さい。
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    (2001/06/13現在 読者数 1524)

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