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   やまのい和則の
     「軽老の国」から「敬老の国」へ

     - Yamanoi Kazunori Mail Magazine -

            第56号(2000/10/23)

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メールマガジンの読者の皆さん、こんにちは。
国会が正常化し、急に忙しくなりました。

今回のメールマガジンは精神医療がテーマです。

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10月25日水曜日午前10時から1時間、衆議院の厚生委員会で、
津島厚生大臣に、医療法改正の法案質疑で、精神医療についての
質問をします。

私は二度目の国会での質問。この厚生委員会は傍聴可能ですので、
ご関心のある方はご一報ください。(なお、質疑の様子は録画・
議事録で、ホームページで見られるようにします)

その質問のために、精神病院を毎日訪問しています。その報告。

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-----一般質疑と法案質疑-----

今週は「法案質疑」です。医療法の改正か、健康保険法の改正に
ついての質疑に限られます。
「一般質疑」では、私の専門の介護保険・グループホーム
・ユニット型老人ホームについてや、民主党がまとめた介護保険
への「7つの提言」の質問ができるのです。

このまま、秋の臨時国会で、介護保険については、全く議論なく
終わるのでしょうか、それが心配です。

私は、医療法については、詳しくないのですが、日本の病院が、
人員や病室の広さでも、国際的に劣っているのは明らかです。
私は総合的に質問しても意味がないので、精神医療に絞って質問
することにしました。

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-----なぜ、私が取り組むか-----

「老人福祉が専門の山井は、精神医療にも関心があるのか」
と不思議に思われるかもしれません。
収容隔離の老人福祉の問題点の根本はまさに、精神病院と根っこ
は同じです。
私がライフワークとする、痴呆性高齢者向けグループホームも、
痴呆性高齢者を病院から地域に戻そうという運動であり、
精神医療と同じ問題です。

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-----精神医療の現実-----

日本の精神医療は「精神病院に患者さんを隔離収容している割合
が高い」理由で、残念ながら、世界の中で大きく遅れています。

70年代から80年代にかけて、諸外国は、精神病院を減らしまし
た。日本は、逆に、増やしました。
今では、人口当たりの精神病院のベッド数は、世界の3倍程度。
平均入院日数は、諸外国の2倍から10倍。
日本の157万人の精神障害者のうち、34万人が精神病院に入院。

これほど多くの障害者を入院させている国はありません。
おまけに入院患者さんの半数は、社会的入院であり、地域の住居
やグループホームや訪問看護などの、受け皿があれば、退院可能
なのです。それを怠ってきた責任は大きい。

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-----なぜ、改正されないのか-----

このような遅れた日本の精神医療を改善させるチャンスが、
今回の医療法改正でした。

精神病院は一般病院よりも医師は3分の1(患者48人に1人)、
看護婦などは3分の2(患者6人に1人)、でよいと、
精神科特例で、決まっています。
これが諸悪の根源です。
これが今回の医療法の改正でも変わらないのです。

本当なら地域で暮らせる精神障害者を病院にずっと入院させてお
くのは犯罪です。人権無視です。

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-----病院訪問記-----

以下、私が書くことは、もしかしたら精神病院の現場の方に失礼
な部分があるかもしれませんが、最初にお断りしますが、現場の
医師や看護婦さんが悪いとは思いません。貧困な制度が悪い。
厚生行政の問題です。

まず、見学と話を聞く
20日金曜日に、ある精神病院を訪問し、3時間滞在。
大学の博士課程で、精神医療を研究する竹端君に案内されて、
見学の後、お医者さんなどの話を聞きました。

そして、滞在記
昨日22日日曜日午後ずっと、一人で病棟に滞在し、患者さんや
看護士さんの話を聞きました。
以下、感じたことを書きますが、良心的な病院なので病院を悪く
言うつもりはありません。あくまでも今の現実です。

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-----独房-----
症状が不安定な患者さんは、鉄格子がはまり、中からは鍵が開か
ない、保護室という独房があり、ここに入れられます。

-----プライバシー-----
部屋は四人部屋から個室までありますが、プライバシーはありま
せん。時々カーテンはあるが。
「この方は20年もここに住んでおられるのですよ」と聞き、
びっくり。やさしそうな顔をしておられる。

多くが精神分裂病の患者さんだ。一番長い人は45年も入院。

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-----スウェーデンにはない-----
私が2年留学したスウェーデンはほとんどの精神病院はなくな
り、グループホームやケア付き住宅に精神障害者は住んでいる。

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-----ペニシリンとグレイ-----
四人部屋でカーテンのかげで、イヤホンをつけてテープを聞いて
いる高校生がいる。
「何しにきたん。この部屋にお兄ちゃんも入院するんか」と気さ
くに声をかけてくれる。
「勉強にきたんや」と軽く答える。
「お兄ちゃんは、ペニシリンとグレイどっちが好きや」と聞く。

その後、ロビーでいっしょにグレイの曲を聴く。彼は交通事故を
きっかけに精神障害者になったという。
「お風呂が週に二回は少ない」などと苦情を聞く。

横で「なんで薬飲まないかんの(飲まないといけないの?)。薬
ほんまに効くの」と20歳代男性の患者さんが看護士さんに聞く。

多くの患者さんが精神安定剤を飲んでいる。幻覚が見えたりする
からだ。

「なんでこんな病気になったんやろ。この病気、日本で150万人
もいるから100人に一人やろ」とその患者さんは言う。

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私は病棟に数時間も滞在するのははじめて。

最初、案内してくださったお医者さんが、「患者さんはしっかり
していますから、山井さんが病棟に座ってたら
『この人何しにきはったん(来られたの?)。医者か看護士か
研究者かって、きっちり聞いてくると思いますよ。
はっきり、自分は政治家で、精神病院をよくするために、国会で
質問をすると言われたほうがいいですよ』といわれた。

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-----何しに来たの?-----
その20歳代の男性から、
「この人、何しにきたん。患者か」と私を指差して、看護士さん
に質問が出た。
「精神病院がよりよくなるために、お医者さんや看護士さん(私
が滞在したとき、患者さんが33名、看護婦さん2名、看護士さ
んが3名だった)を増やしたり、部屋を大きくしたりすることを
研究してるんです」と私がまじめな顔で言うと、

「何言うてんねん。うそつけ。入院やろ。わかってるわ(何を馬
鹿なこと言ってるのか、入院するために来たのだろう)」と笑う。
看護士さんも苦笑い。

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-----余裕がない-----
看護士さんは「夕方は看護士が2人。33人いる病棟で、落ち着
かなくなって、暴れる人が出たら、もう対応できない。ほかの病
棟から助けを呼ぶが、とても大変。今の基準では、医師も看護士
も少なく、一人一人に余裕をもって接することができない」と。

-----病気になるで-----
患者さんが言う。「看護士さんもかわいそうや。一日中忙しく走
り回って、お医者さんからも『そんなに、忙しくしてたら病気な
るで』と言われてる」とのこと。

私の訪問に同行してくださったのは、非番なのにわざわざ来てく
ださった看護士さん。私と同じ学年で、意気投合した。

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-----来るはずないやん-----
その後も、いろんな話をする。さきほどの若者が再び聞いてくる。
やはり、見ず知らずの私のことが気になるのだろう。

「なあ、この人、ほんまはなにもん。入院やろ(本当は何者?
入院するのでしょう?)」と看護士さんに聞く。

看護士さんは「実は、政治家や」と答える。

「えっ、うそやろ!」。
「国会議員」と看護士さんが言うと、噴きだすように彼は、
「そんな見えすいた嘘をよう言うわ。なんで国会議員がこの病棟
に来るねん。この人も入院やろ。わかってるわ」と笑う。

おまけに、「国会議員やったら顔も知ってるわ」とのこと。
私が「ほんまに議員なんです」というと、
「うそやん。その顔、薬飲んでる顔つきや。ほんまは入院やろ」
と言われる。

看護士さんいわく。「ほんまやて。そもそも国会議員ちごたら、
なんで俺が休みの日やのに付き添いで、来てるんや」と説明。

-----国会議員って仕事してるの?-----
何度か説明してやっと納得してもらった。
「へえ、何党。ぼくも国会に関心あるねん。細川さんの時に政権
交代したのに、あれが惜しかったなあ。国会議員ってちゃんと
仕事してんのん」などといろいろ聞かれた。

国会の説明で話が盛り上がる。

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-----世間の偏見-----
横に座っていた50歳過ぎの患者さんが口を開く。
「話を聞いてると、ほんまの議員さんらしいけど、お願いしたい
のは、精神分裂病や、精神の病気に対する世間の偏見を、取り除
いてほしいということですね。

私も自分がこんな病気になるまでは、偏見を持っていたけど、
今の忙しくて勝った負けたとばかり言ってる社会。頭がおかしく
ならんほうがおかしいわ」という。

「政治家も精神医療に関心もって欲しいですわ」とのこと。

「水曜日には厚生大臣に質問しますけど、なんか言うことないで
すか」と聞くと、
「言うといてほしい。大臣も選挙通ったんやろうけど、その大臣
がもらった票の何%かは精神障害者の票も入ってるんやから、
精神医療のことも真剣に取り組んでほしい」とのこと。

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-----現場の声を届けてほしい-----
私に付き添って下さった看護士さんは、休みの日なのに来てくだ
さった。申し訳ない。
「本当に有難うございます。病棟に滞在したいと、私が急に申し
出て、貴重なお休みの日に申し訳ありません」と謝ると、
「いいんです。はっきり言って、この病院に国会議員さんが来て
下さるのは初めてです。ぜひ、この問題に取り組んで、現場の声
を届けて欲しいと思います」ときっぱりおっしゃった。
責任の重さを痛感。

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-----なかよし-----
患者さんとは、数時間滞在してすっかり仲良くなった。
ひとことで言えば、愛すべき方々との出会いであった。しかし、
その愛すべき方が精神分裂病に苦しむ姿は痛々しかった。

私が滞在したのは急性期の病棟だが、重い人は部屋で寝ていたり、
保護室という独房に入っているので、私が廊下の椅子で話せたの
は軽い人ばかりだったと思う。

 さきほどの国会に関心のある若者から、
「また来てくれるん?」と帰り際に聞かれる。
「また、来るわ」と笑顔で答える。

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-----専門分野に-----
生まれて初めての精神病院での数時間滞在。
私は、今まで高齢者福祉や痴呆性高齢者が専門だったが、精神医
療も私の専門分野として取り組まねばと感じた。

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-----今もどこかの病院に-----
明日月曜23日(正確には今日)も竹端君とともに、3ヶ所の
精神病院を訪問し、月曜最終で東京に行く。

24日火曜日には厚生省の方が質問内容を聞きに来る。
午後は衆議院本会議。
夕方からは、この精神病院の改善を遅らせている「精神科特例」
の廃止の全国決起集会が台東区民センターであり、出席します。
水曜日朝10時から質問。

-----ご意見を-----
にわか勉強だが、委員会では、精神病院の患者さんやご家族、
働いておられる現場の声を、国会に届けたい。

「この点を質問して欲しい」などあればメールでお教えください。
いつも長いメールマガジンですみません。
           やまのい和則 拝

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