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   やまのい和則の
     「軽老の国」から「敬老の国」へ

     - Yamanoi Kazunori Mail Magazine -

            第33号(2000/09/02)

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 メールマガジンの読者の皆さん、こんにちわ。
ご無沙汰してしまい申し訳ありません。

 スウェーデンからメールマガジンを発行するつもりが、私のパ
ソコンではうまく国際メールが送れず、断念しました。
設定の仕方がわからなかったのです。申し訳ありません。

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 今は、帰りの飛行機の上。
日本時間で9月1日(金)晩の10時43分。3時間ほど前にウイ
ーンを飛び立ち、いまはモスクワの上空。現地時間は午後3時40
分です。機内食を食べながら、このメールを書いています。

 このメールマガジンの発行は、おそらく9月2日になると思い
ます。今回も政治と福祉とグループホームのメールマガジンの内
容は同じ。3つの内容が混ざっているのです。申し訳ありません。

 スウェーデンの政治・経済、スウェーデンの高齢者福祉、スウ
ェーデンのグループホームの最新情報をお届けします。

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 4日間のスウェーデン滞在調査で、書きたいことは山ほどあり
ますので、すべてメールマガジンでは書ききれないので、何回か
に分けるか、一部はホームページに載せるかになると思いますが、
とにかく、書き始めます。

 幸運にも私が座っているエコノミークラスのオーストリア航空
の隣の席は空席なので、気にせずパソコンを打てます。

 帰路は、ストックホルムを朝の10時40分に出て、ウイーンで
乗り換え、関西空港へ。合計14時間。往復で14万円です。

 妻はあと1週間スウェーデンに残り、高齢者福祉や地方自治、
痴呆、オンブズマンなどを調査。

 私は予定が9月2日の朝から入っているのでスウェーデンに
4日間滞在で帰国です。

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 日本に着くまであと9時間。
バッテリーがある限り、パソコンを打ちつづけます。このパソコ
ン本体で1時間。外付けのバッテリーでさらに3時間。合計4時
間ほど打てると思います。
 眠るためにワインを飲みながらなので、大雑把な内容になるこ
とをお許しください。

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 さて、7年ぶりのスウェーデン訪問は、正味4日間。
非常に有意義でした。

 私が、国会議員になって初めての、海外調査であり、妻と二人
で全額自己負担。もとを正せば、歳費という国から私が毎月もら
っているお金の一部で、調査に行かせてもらうのですから、
「しっかり勉強せねば申し訳ない」との気持ちが強い調査でした。

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 さらに、あとで詳しく触れますが、痴呆性高齢者向けグループ
ホームを初めとした、「スウェーデンの高齢者福祉」視察が大き
な目的でした。

 最大の目的は、私の一番の恩人であるブラウアー英子さんのお
墓参りでもありました。

 私と妻がスウェーデンのべクショー市でのホームステイを初
め、過去10年、本当にお世話になった英子さん(当時65歳)が
4年前に、すい臓ガンで亡くなられました。
 その頃は、前回の選挙の前であり、スウェーデンに駆けつける
こともできず、今回、当選してやっとお墓参りに行けました。

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 今回の滞在のスケジュールは、
 8月27日(日)の朝11時に関西空港を飛び立って、
27日の晩9時に、デンマークの首都コペンハーゲンに到着。
そこからスウェーデンのマルメに汽車で移動。夜はスウェーデン
南部の都市、ルンド泊。

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 8月28日(月)は、朝から私の母校、ルンド大学の社会学部
を訪問。指導教官であったペールグンナル教授にはお会いできま
せんでしたが、秘書のボーフリアさんと再会。
 
 昼食は「スウェーデンの地方自治」の著者であり、「スウェー
デンの地方分権の父」とも言われるルンド大学政治学部のアグネ
・グスタフソン教授の家でご馳走になりました。
 そして、スウェーデンの現状の話を聞きました。アグネ先生は
私の妻の指導教官でした。
 午後は、7年前に住んでいた家を訪問。隣の家のおばあさんと
7年ぶりの再会。ご夫妻ともかなり年をとっておられましたが、
健在で安心。

 私はルンド大学で1年半、高齢者福祉を研究しました。
その前の半年は、べクショー市のシグフリッド国民高等学校で、
イラクやソマリア、カンボジアからの政治難民とともに全寮生活
をしながら、スウェーデン語の勉強をしていました。

 8月28日の晩はべクショーに列車で移動し、べクショー大学
経済学部教授、鈴木満先生のお宅で、夕食をご馳走になりながら、
スウェーデン経済について、話を聞きました。
 IT革命の成功により、スウェーデン経済は好調で、失業率も
低下しています。

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 8月29日の午前は、7年前に私がよく訪問した「ダルボ」ケア
付き住宅と併設されたグループホームを訪問。
 7年間でグループホームはやっぱり変わった。

 ここには、地元新聞のスモ―ランドポストの記者が来て取材。
私のグループホーム訪問は、翌朝大きくとりあげられました。
そのあと、母校であるシグフリッド国民高等学校に訪問。

 午後は、ブラウアー英子さんのお墓参り。
そして、べクショー大学訪問。晩は、国民高等学校の恩師でもあ
るオリアン市会議員夫妻と夕食。

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 8月30日は朝6時15分の飛行機で1時間。
スウェーデンの首都ストックホルムへ。

 まず、スウェーデン大使館に、日本の厚生省から出向している
森さんから、スウェーデンの近況についてレクチャーを受ける。

 午前中は、日本スウェーデン議員連盟の事務局を訪問。
来年5月に日本に来るスウェーデンの国会議員の視察の受け入れ
について相談。

 午後は、グループホームを訪問調査。
ここにもスウェーデンラジオの記者が来て、「日本の国会議員が
スウェーデンのグループホームを訪問」という取材を受けました。

 その後、スウェーデンの国会を訪問し、旧友であるカーリン・
ウゲストロム国会議員と再会。
 彼女に改めて国会を案内していただき、意見交換した後、
スウェーデン国会の厚生委員会スタッフと、高齢者福祉政策など
についても意見交換。

 夕方からは、ストックホルム在住20年、福祉研究家である
奥村芳孝さんと、カールマル在住の藤倉カールソン篤子さんと
7年ぶりの再会。

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 8月31日は、午前中はグループホームとケア付き住宅を訪問。
午後は、痴呆協会を訪問。

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 9月1日の朝、ストックホルムを発ち、今この飛行機に乗って
います。

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 さて、これから調査などについて報告しますが、非常に長くな
ると思いますので、適当に読み流してください。
(注・期待してお読みください。メルマガ担当)

 1つ1つのインタビューや、訪問調査をすべて報告すると
1冊の本になります。ここでは、そのエッセンスをお届けします。

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 まず、スウェーデンの経済は好調です。経済成長率3.8%。
失業率5%。これは非常な好景気です。

 そもそもスウェーデンでは女性も90%が外で仕事を持ち働い
ているので、それで、失業率が5%というのはかなりの低さです。

 1992年から1993年までの2年間、私は妻とスウェーデンに
留学していましたが、その時は、日本の景気が良くて、スウェー
デンの景気が悪かったのですが、今は逆です。

 スウェーデンでは、財政再建が成功し、財政が黒字になり、
さらに、IT革命が成功し、輸出も好調。羨ましい。

 ただ、福祉現場は以前よりも苦しい雰囲気。
また、7年前は1クローナ=17円でしたが、今は12円。円はは
るかに強くなり、日本人はスウェーデンでは安く滞在できます。

 これは数字だけではなく、7年前に比べて、
街を走る車が新しい。
タクシーがつかまらない。
レストランも満員。
などで実感できた。街の車も日本車が減ったEUの影響だろう。

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 まず、IT革命の成功について。
スウェーデンはフィンランドに次いで、世界で二番目にインター
ネットが普及している。

 国民の60%がパソコンを利用。子供からお年寄りまでもが
パソコンに親しみ、幼稚園から大きなパソコンに親しませている。

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 まず、驚いたのは、スウェーデンの主要新聞であるダーゲンズ
・ニューヘテルを初め、すべての新聞では、記事のあとに新聞記
者の署名とその記者のメールアドレスが書いてある。
 
 ですから、読者が、記事に質問や意見があれば、すぐに記者に
アクセスできる。

 実際、今回、スウェーデンに行くにあたって、恩師であるルン
ド大学のペール・グンナル教授への連絡は、日本からルンド大学
のホームページにアクセスし、その中にペール教授のメールアド
レスがあり、そこにメールを送って連絡した。
 
 スウェーデンは、国会議員のメールアドレスも、大学教授のメ
ールアドレスもすべて公開。
つまり、完全な情報公開だ。

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 さらに、スウェーデン政府や、スウェーデン厚生省の高齢者福
祉の報告書を買おうと思ったら、以前は、街の本屋で買えたのが、
今ではインターネットでしか買えなくなっています。
これも人員削減の一環らしい。

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 街では日本と同様に、携帯電話があふれる。
メーカーはノキアとエリクソン。
この携帯電話の威力は、はるか日本まで、携帯電話で通話ができ
る。スウェーデン人が来日しても、スウェーデンと連絡がとれる
こと。
 ただ、iモードはない。これには、「日本のほうが進んでいる!」
と誇らしく思った。

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 また、母校のルンド大学のホームページも充実している。
スウェーデン語と英語の両方があり、日本からアクセスしても、
どの教授が最近どのような論文を発表しているかがわかり、その
論文も取寄せられる。

 そのホームページを担当しているビルギッタ・ボーフリアさん
から、「カズ(筆者)も日本から選挙や政治活動の写真を送りな
さい。ホームページに載せてあげるわよ」と言われた。

 ルンド大学事務室の掲示板に、私の選挙のパンフレットが貼っ
てあり、笑った。
(ここで内臓バッテリーが終了。あとは外付けバッテリー。残り
日本到着まで8時間。バッテリーが続く限り打ちます。なくなれ
ばその時点で終わりです)

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 私はルンド大学福祉学部で、7年前に客員研究員として、1年
間研究した。スウェーデンの福祉が参考になるのは、日本よりも
高齢化が10年早く進んでいるので、スウェーデンの現状を知る
ことにより、日本の10年後を予見することができるのだ。

 しかし、今後10年、スウェーデンは高齢化率は横ばい。
そして、日本は高齢化が、急速に進む。
日本はスウェーデン以上に、高齢者福祉に力を入れねばならない。

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 なお、IT革命については、スウェーデンではもともと教育に
非常に力を入れている。

 教育にも2つある。
 幼稚園から大学に至るまで、コンピューターに親しむ教育をし
ている。
 成人教育も無料で世界一充実している。

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 そして、スウェーデンでは失業者に対する教育も充実している。

失業させて、ただお金を出すだけではなく、スウェーデンでは失
業者に対して、コンピューターなどの職業訓練を受けさせ、たと
えば、金属工場の仕事を失業した人が1〜2年後には、コンピュ
ーターの仕事につけるようにしている。

 あるいは、一般の事務で失業した女性が、介護の勉強をし、
1年後には、老人ホームで働けるように再教育する。

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 つまり、高齢化や情報化という時代に合った人材育成に力を入
れている。

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 このIT革命とともに、失業率を下げる政策について言えば、
スウェーデンには、労働市場担当大臣がいて、労働市場政策
つまり、失業率を下げることに非常に力を入れている。

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 日本では、今までは企業が終身雇用という形で、雇用を保証し
ていたので、政治の世界では、雇用は、それほど重要なテーマで
はなかった。

 しかし、リストラが増え、企業が終身雇用を、維持できなくな
った今、日本の政府も、雇用政策に真剣に取り組む必要がある。

 そのためには、スウェーデンのような職業訓練や失業者への再
教育が必要だ。

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 では、IT革命で日本はなぜ遅れをとっているのか。

 確かに、日本でも森首相がIT革命を提唱している。

 たとえば、日本では今回の衆議院選挙でも候補者のホームペー
ジは禁止であった。

 つまり、インターネットを活用した選挙は、アメリカでは真っ
盛りなのに、日本では禁止。

 これでは、「IT革命を全力で推進します!」という掛け声と、
実際が違いすぎる。

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 これについて自民党は、「まだまだ、パソコンやホームページ
を使っていない国会議員が多いので、インターネットを活用した
選挙は、インターネットを使っていない政治家に不利になる」と
いう理由を述べている。

 さらに、「インターネット利用者の7割が民主党支持」という
統計もあるので、下手に解禁すると、自民党に不利になると自民
党は考えているのであろう。

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 国の未来よりも、自分の政党の保身に走っているように思う。
 こんなことではIT革命は進まない。
 政治家が率先垂範をせねば。

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 次に、福祉、特に、グループホームの話にうつる。

 さる8月4日、厚生委員会で、私の初質問で、痴呆性高齢者向
けグループホームのことをとりあげた。

 グループホームのことが、日本の国会で取り上げられたのは、
これがほぼ初めてである。とりあげた以上は、私も責任を持たね
ばならない。
 そんな気持ちで今回も、4日間で4ヶ所のグループホームを、
訪問した。非常に考えさせられた。

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 7年前に比べて、グループホームの入居者が、非常に重度化、
高齢化している。

 グループホームについて詳しくは、私のグループホームのホー
ムページを見ていただきたいが、グループホームの最大の目的は、
痴呆性高齢者が、グループホームで食事の準備などを、手伝いな
がら残存能力を発揮し、それにより、痴呆の進行を遅くしたり、
症状をやわらげることだ。

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 しかし、今回訪問した4ヶ所で痛感したのは、いわゆる一緒に
食事をつくったりする「生活リハビリ」が、もはやできない、高
齢で重度な、痴呆性高齢者が、増えているということだ。

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 順に紹介する。
 べクショーの「ダルボ」グループホームは、120人入居のケア
付き住宅の一角を、痴呆性高齢者向けのグループホーム(7人)
に改築したものだ。

 7年ぶりの訪問で痛感したのは、7人中、2人が車椅子である
こと。さらに、4人が介添えがないと歩けない。歩ける痴呆性高
齢者が、スタッフと一緒に、パンを焼いていた7年前とは、かな
り雰囲気が違う。

 一言で言えば、ミニ老人ホーム(グループホームではない)。

ここに開設以来、11年間、勤務している、介護職員のイングリ
ッドさんは、「ひとりも料理を手伝える入居者は、今は、もうい
ない」と言う。

 7年前に、私と一緒に、ダンスを踊っていた入居者アンナさん
も92歳で昨年亡くなってしまったという。

 ただ、入院が必要にならない限り、死ぬまで入居者はグループ
ホームに入居していられる。

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 グループホームには、入居待ちで1年くらいの待機者がある。

「生活リハビリができない重度の痴呆性高齢者は、老人ホームに
移ってもらい、生活リハビリがまだできて、グループホームを本
当に必要とする、中度の痴呆性高齢者を、優先的にグループホー
ムに入れたほうがよい、という意見はないのか」と質問した。

「そのように考える職員もいるけれど、ここは住居。お年寄りの
“自宅”なのだから、誰も無理やりお年寄りを追い出すことはで
きない。特に、本人は意思表示はできないけれど、家族がずっと
グループホームで預かってほしいと言う」とイングリッドさん。

 ここで残念ながらバッテリーがなくなりました。続きは、日本
に帰ってからのちほど送ります。ご期待ください。
                  やまのい和則 拝

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