第八回 インセビンセ号登場
子供たちはいつでもどこでも元気です。日本からの時差を越えてもです。
ところで時差って何で起こるんでしょうか?
バイオリズム(この言葉なんか懐かしい感じですね。)の問題だとは思うんですが。
大人は色々と考えて早く時差を克服しようとするから、よけいにしんどいのだと思います。
スウェーデンについた我が家の娘たちは実に自然に、夕方になると「すやすや」と寝始め、
早朝に起きだして元気に遊びます。
もちろんパパとママも起こしてくれます。なんと、それが約2週間続きました。
結果的に2週間で時差は自然に克服できることもわかりました。
それと同時にはるなが退屈しはじめました。
家で遊んでいても、お友達もできないし、公園に行ってもこの真冬に誰もいないし…。
「そうだ、幼稚園を探してみてはどうだろう。」ということになりました。
例によって、「お耳をダンボ」にして情報を収集しました。そこでわかったことは、
プライベートスクールに通うか、教会の「バンティマ」に通うかしか選択肢はないようでした。
なんでって、公立の保育園は生まれたとたんに予約しないと入れないそうです。
プライベートスクールはもちろん私立の幼稚園といった感覚です。もちろん、お金もかかります。
しかし、バンティマは教会の「子供の時間」ということですから、お金もあまりかかりません。
即決定、もちろん「バンティマ」です。
それで、家内は早速近所の教会に行って手続きをしてきました。
「ペーターズゴーデン」というのがその教会です。例の住民登録に行った教会でした。
運良く定員に空きがあり週に1回通えるようになりました。
はるながそのバンティマに通うようになって、 色んなものを我が家に運んでくるようになりました。 はるなはもちろん、家内にも子供たちを通じての 「お知り合い」ができるようになりました。 スウェーデンの習慣や生活、食事やおやつも 仕入れてきました。 バンティマにはおやつの時間もあり、 親も一緒にコーヒーを飲んだりするようです。 「クネッケ」という味のないカンパンのようなものに マーマーレードを塗ってスライスチーズを乗っけて 食べるとか、スウェーデン流インスタントパスタの 料理法とか、色々と幅が広がりました。 |
●バンティマのおやつの時間 |
また、スウェーデン語の歌も覚えてきます、お遊戯も覚えてきます。
メリーさんの羊は「ベーベービタラム」となります。今でも私も歌えます。
お遊戯の中で我が家に最初に飛び込んできたのは「インセビンセ、スピンデル」という
フレーズのクモのお遊戯でした。
話は全く変わりますが、スウェーデンで有名なものの中には自動車産業があります。
ボルボ、サーブなどは世界的にも有名ですよね!スウェーデンでは鉄鋼が
有名で(世界地理で"スウェーデン鋼"習ったでしょう?)ボルボは「転がり続けるもの」という
意味だそうで、ボールベアリングの工場がその前身だとか…。
サーブは航空機メーカーで今でも飛行機も作っている非常に個性的な会社です。
スウェーデンに行くまでは、サーブやボルボばかりが走っているものだと思っていました。
しかし目に付くのはボルボのバスとサーブのパトカーばかり。
実際には乗用車は国産車のサーブやボルボより外車のドイツのフォルクスワーゲンや
日本のトヨタやマズダ(マツダがなぜかマズダになります。)の方をずっとよく見かけました。
実は私は「スウェーデンに行ったらボルボのワゴンを買って、帰国の時には日本に持って帰るんだ。」
と心に決めていました。例の大家さんはサーブのオーナーでした。
「車が買いたいんだ。」と申し出ると「どうして?」との質問。
「夏休みにはヨーロッパ大陸に旅行に行きたいし、買い物にも便利だし、
帰るときには日本につれて帰りたい。」と何とか説明しました。
ラトコ「何が欲しいんだ?」
直「ボルボ」
ラトコ「どうしてボルボなんだ?」
直「ボルボが欲しいから。それ以外に理由はない。」
ラトコ「では、見に行こう。」
ということになりました。
幸か不幸か、雪が降っています。つもっています。道は凍っています。
実は京都ではほとんど雪は降りません。めったにつもりません。大学時代に試験に
遅れそうになって慌ててチェーンを巻いたことはありますが、
その後雪の運転などしたことはありません。ラトコの運転でみんなでボルボのディーラーに着き
中古車を物色しました。しかし、その高いこと高いこと驚きました。
当時1クローネが25円〜27円位していたので余計にそう思ったのだと思いますが、
とても中古車の値段とは思えませんでした。
街にボルボを見かけないわけがわかったような気がしました。
あきらめて、帰ろうと思ったときラトコが又聞きました。
ラトコ「何でサーブじゃだめなんだ?」
直「前輪駆動の車には乗ったことがないし、それにボルボが好きなんだ。」
ラトコ「自分の教え子がサーブを売っているんだ。紹介するよ。安くしてくれると思うよ。」
直「安く…。」
ということで、早速ボルボのディーラーの駐車場でラトコのサーブの大試乗会になりました。
実際に走ってみると、そろそろ走ったせいもあるのだとは思いますが、「なかなかいい感じ。」
あまり前輪駆動の違和感もありません。そこで早速家族会議となりました。
何よりも、「安く」につられ、さらに「知り合いが売っている」のは何かと安心です。
「よし、サーブだ!」ということになり、ラトコに結論を伝えるとその場で電話してくれました。
数日後にセールスの彼と会い、車種と色と内装色とオプションを決め注文書にサイン。
手続きは何もかもラトコとアナが手伝ってくれました。
スウェーデンではオートマなんてほとんどありません。また売るときには非常に損になるようです、
だからもちろんマニュアル。エアコンもついていません。必要がないからです。
でも、我が家の車にはエアコンは装備しました。
( ヨーロッパ大陸に旅行に行くことと、日本につれて帰ることを想定しました。)
ラジオは付けませんでした。(スウェーデンの放送はわかりませんから。)
車種は当時出たばっかりのSAAB900S色はグリーンのメタリックにしました。
やれやれと思ったのですが、納車までには約1ヶ月以上かかるとのこと。
「げげげっ!」と思ったらラトコもすでに車の注文をしており、もうすぐ納車されるとの事、
今の愛車を借りられることになり決着。首をながーくして納車の日を待つことになりました。
納車の日の直後、早く帰れる日があったので皆でドライブに行きました。
見てください、うれしそうな顔!!
これで、どこにでも行けます。人のお世話にならなくてもお買い物もできます。
ヨーロッパ大陸にもドライブで行けます。日本にもつれて帰れるかもしれません。
そして、命名「インセビンセ号」とあいなりました。
もうお解りでしょう!当時我が家で一番人気のクモのお遊戯から名前を頂戴しました。
大きな買い物をし、これでまたまた自信を付けてしまいました。
●インセビンセ号!(SAAB900S)