第六回 銀行のストライキ???

  日本の冬とスウェーデンの冬の一番の違いは何かって? 寒い事だと思いますか? 
  クリスマスの事だと思います? いいえ、暗い事だったのです。 
  前にも書いたように、この暗さがどうにもこうにも体にこたえるわけです。

  翌年、一冬越して気が付いたんですが、秋口、日没がどんどん早くなっていきます。
  そうすると、人々はなんとなく元気がなくなっていくんです。
  街行く人は気のせいではなくうつむき加減になり、
  気持ちは確かに落ち込んでいきます。またあの「暗くて長くて寒い冬」が足早にやってくる。
  そんな気持ちが人々を落ち込ませるのだと思います。

  12月は冬の中では、楽しい行事がいっぱいあってまだ良いんです。
  しかし、逆に冬の大きな楽しみが12月に集中しているのです。

  ファーストアドベント、ルシア祭、
  そしてクライマックスはなんと言っても「クリスマス」です。
  クリスマスが近づくと、各家々の窓は独特の
  イルミネーションで飾られます。
  三角形に並んだキャンドル(もちろん今は電球なんですが)は
  本当に美しいものです。暗い北欧の冬の窓辺を美しく飾っています。
  ルシア祭?これはスウェーデン独特のお祭りです。
  ご存知ない方も多いと思います。
  職場でも、町でも、学校でもその年のルシア姫を決めて
  朝まだあけやらぬ時から(9時くらいまでは明けませんから…)
  サフランパンとグレッグという赤ワイン(温めてスパイスで
  味付けをし、干しブドウとアーモンドの入ったもの)を
  皆にふるまうのです。

●4本のロウソク
「アドベントキャンドル」
  その時になぜか「サンタルシア」を歌うのです。
  お供には、「スターボーイ」という
  男の子を従えています。

  ミスコンではないのですが、
  そんな様相があるようにも見受けました。
  幼稚園などでも同様にこのお祭りは行われますが、
  差別なきように「ルシア姫になりたい子」は
  皆ルシアになります。

  ルシア姫のトレードマークは真っ白な衣装に赤い帯、
  そして極めつけはロウソクの冠です。
  一歩間違えれば「八つ墓村」の世界に
  なってしまうのですが…。

  そこは、北欧のブロンド娘さん達がするわけで、
  決してそうはなりません。
  不思議な本当に美しいお祭りです。

●ロウソクの冠が美しいルシア祭

  こうして、駆け足でクリスマス、新年が過ぎました。新年はなんと2日から仕事。
  お正月気分は既に無く、2日から松の内気分の日本人を後目にバリバリとお仕事でした。
  その代わりといっては何ですがクリスマス休暇があります。
  実は23日から年始までほぼお休み状態でした。
  ここだけの話ですが、一年目はクリスマスを楽しむどころではなく、
  変な風邪にかかり発熱で寝込んでいました。
  不思議と一年目はよく風邪を引きましたが、2年目はその反対に全く引かなくなりました。
  (今まで出会ったことのないウィルスとの出会いだったのでしょうか??)
  しかし、新年の2日「とにかく挨拶に行って、事情を伝え出勤はもう少し先にしよう。」
  との思いで病院に行ったところ、摩訶不思議、熱は下がってしまいました。
  家内には、「もう本当に日本人なんだから…。休みが終わったら熱が下がるなんて…。」と
  少々嫌みを頂戴しましたが、なぜか治ってしまいました。

  仕事にも一応慣れ、日常生活にも少し余裕がでてきた様に感じ始めた2月。
  突然我々を驚かせる事件が起こりました。
  銀行がストライキを行うというのです。両替も送金ももちろんできなくなります。
  ドルのトラベラーズチェックの両替で食いつないでいた我々にとってこれは本当に衝撃でした。
  そろそろ、そのトラベラーズチェックも底をついてきていましたが、どうしようもありませんでした。
  しかし、さすがにヨーロッパはキャッシュレス社会。
  スウェーデン人はあまりあわてる様子はありませんでした。
  クレジットカードがあれば、スーパーはもちろん、コンビニでも売店でも何でもOKでした。
  さすがに朝市広場の買い物ではカードを使っている人は見ませんでしたが、
  ほとんどの場面でOK、納得しました。
  キャッシュがついに底をついた我々も恐る恐るスーパーでカードを使用し始めました。
  でもやっぱりキャッシュもいります。再び恐る恐るスーパーにあったキャッシュ貸出機?
  (よくスーパー等にあるクレジットカードのマークのついたやつです。)にカードを入れ、 
  言われるままに暗証番号を入れると…、あーら不思議、打ち出の小槌のようにスウェーデンクローネの
  キャッシュがでてきました。これで本当にほっとしました。
  スウェーデン人と同様に大騒ぎしなくても良くなりました。でもなんと約2週間続いたんですよこれが。
  信じられますか?旅行者の方たちはいったいどうされたんでしょうか?

  こうやって、色んなトラブルを越えるたびにどんどん度胸がついて行きました。
  いろんなところにも出かけたくなりました、しかし、行動するにはどうしても車が必要でした。
  ドライブ旅行はもちろん、日本食を買いに行くにも郊外に散歩やハイキングに行くにも必要でした!?! 
  次回は初めての海外旅行とインセビンセ号登場!!です。