第四十二回  "パントリー"からのこぼれ話



  ●Tadashiの超得意技。
  ペーターさん直伝のピザ作り 
   
食欲の秋、皆様いかがお過ごしでしょうか。
いろいろな秋の味覚を倍増してくれるのは、
おいしい"新米"
北欧の料理でのこのお役目は、
"ニーオポターティス"つまり「新ジャガ」です。
新ジャガの季節は初夏。
外国ではお米のかわりはパンだと思っていたのですが
スウェーデンではジャガイモでした。
お米にいろいろな銘柄、ランクがあるように、
ジャガイモにもいろいろな種類がありました。
そして家族の主食となると一度に買う量もかなりのものです。
20Kg、30Kgの袋の単位で売っていました。
Severin家の地下の一室は食物庫でした。
日本と違って湿気がないので、暗くて温度も低く一定で、
食品を保存するにはうってつけでした。
ジャガイモ、小麦粉、砂糖、ナッツ類をはじめ、
棚には手作のジャムや保存食が瓶詰めになって
きれいなラベルで整頓されて並んでいました。
その部屋の一角に"小川家のコーナー"を作ってくれたので、
私も20Kgの小麦粉の袋とバケツ1杯づつのジャガイモと
タマネギを常備していました。
この、小麦粉とジャガイモの思い出話を今回は…。
   

  お料理上手なアナさんに、パン作りやクッキー作りを教えてもらってほどないある日、
  ラトコから電話がかかってきました。"Yoko, do you want フラワー?"彼によれば、
  今、フラワーを買いに来ている。Yokoも欲しかったら買って帰るよとのこと。
  何で急に私に花を買ってこようかなんて電話をしてきたのだろう…と思いながらも
  "Yes, please."とうれしそうに答えてしまったのを覚えています。
  (訳が解らない時は、とりあえずYesと答えてしまう私でした…)
  ほどなく、見覚えのある大きくて茶色の小麦粉の袋をドスンと届けてくれました。

  なんと、フラワーは粉だったのです。
  ラトコはいつも街はずれの水車小屋にいって直売している小麦粉を買っていました。
  ひきたての小麦粉で質も味も値段もすべてよしとのことで、おなじみさんでした。
  最初、あまりの重さにいったいいつ食べきれるのかと思ったのですが、
  不思議、不思議ドンドンなくなるのです。小麦粉はすてきです。何にでもなるのです。
  パン、うどん、ピザ、ケーキ、ビスケット、そば…。
  この日の私の勘違いがきっかけで、大きな小麦粉の袋は、我が家の常備品となったわけです。

●Tadashi作 結婚記念日のケーキ
「Tとyのエレガントなハーモニーに
ご注目を!」アシスタントのラトコより
●アナさんのお料理教室
この日の生徒ははるな
●子供たちのお誕生日ケーキ

  スウェーデン料理の味付けはとてもはっきりしています。
  それと一緒に頂くジャガイモのお株は我が家でもどんどん上がってきていました。
  2年目の夏のある日、恒例の週末の市場への買い出しで、
  ジャガイモの山の前の普段より多い人だかりにのせられて、
  私たちもそこでジャガイモを買ってみることにしました。留学もその年限り。
  記念に?いちばん値段の高いのにしてみようと1種類なんだか他のと比べ
  とっても高価なジャガイモを買ってみる事にしました。

  当時、Severin家とはこのパントリーを介して、足りない食材の貸し借りをしていました。
  たまたま、その日ラトコからジャガイモを少し貸してもらえないかと言われました。
  いつもおいしいものを頂いてばかりだったので「このジャガイモは上等でおいしいぞ〜」
  と内心いばってプレゼントしました。次の日、ジャガイモをかえしに来てくれた時、
  味の感想をたずねたところ、「なぜだ?」と聞かれ、訳を話しました。ラトコとアナは大喜び。
  なぜだと思います…、あれは"種いも"だったのだそうです。
  どうして種いもと食べるお芋を並べて売っていたのよ!!
  それとも、もしかしてあの人だかりは"種いも市"だったの?
  味は…何か違いがあったのかな。
  期待通りおいしかったのだろうか…。
  くやしいけれど覚えていません。

  そして、食物庫の瓶詰めの棚、これも私にはいつもとても気になる存在でした。
  イチゴ、ラズベリー、マーマレード等のジャム類。
  洋なし、リンゴ、イチジクのワイン漬け…などなど圧巻でした。
  どれも、これも、旬の時、アナさんとラトコがたくさん集めて
  (彼らの友人のお庭に様々な果樹があり、食べ頃になると連絡が入りました)
  加工したものです。

  ある時、イチゴの調達にイチゴ畑に行くから一緒に行こうとお誘いを受けました。
  スウェーデンで"イチゴ狩り!"なんてステキ。持ち物は帰りにイチゴを入れるもの、
  なるべく大きいものがいいという彼らの指示に従って、ザル、ボール、ナベをもって外に出ると、
  なんとアナさん達はバケツと洗濯のタライなど家で見かける
  ありったけの大きな入れものを持っていました。
  ミルクやクリームはどうするんだろう…と思っているうちに畑に到着。

  だけど、ビニールハウスも、石垣もない、何筋もの"うね"が長く続いているだけ。
  よく見ると青空の下の"うね"にわんさかイチゴが実っているのです。
  時間制限もなく食べ放題。
  持ち帰りのイチゴの料金は、入園する時に容器の重さを量っておいて、
  帰りにイチゴのつまった容器をもう一度量り、その差で計算します。

  イチゴ畑はピーターラビットの世界でもありました。
  茶色の野ウサギがピョンピョンしているのです。もちろんウサギもイチゴ食べ放題?!
  ウサギのかじりかけもあるけれど畑の主人も客もおかまいなしです。
  野ウサギよりももっと驚いたのは、うねの間で顔に帽子を置いて仰向けに倒れている人を見つけた時。
  一日中イチゴ畑にいて、イチゴを食べたり、イチゴの香りをイッパイ吸いながら本を読んだり、
  日光浴をしたりしてゆっくり過ごすというおしゃれなイチゴ狩りのスタイルもあるそうです。

  Severin家のイチゴ狩りは大忙し。あっという間にバケツ数杯の完熟イチゴを収穫してしまいました。
  私たちは時々パーンとなる"ウサギよけ"の音にウサギたちより驚きながらもそれなりに大満足。
  家に帰ってもSeverin家の大忙しは続いていました。
  ジャム、シロップ漬け、冷凍…とイチゴ工場のようでした。
  我が家は4人ともイチゴだけでおなかをいっぱいにしたというステキな体験をしました。
  娘達はおぼえているかな?

  P.S.ノーベル賞の田中さんへ
  奥様と"ぜひ"ダンスを踊ってきてください。

●いちごたっぷりのお誕生会ケーキ
●留学最後に病院で
お世話になったスタッフにおごちそうしたケーキ。
●お誕生会ケーキは
スウェーデンのお友達バージョンと
日本のお友達バージョンがあります。