第三十四回  「私と娘のことば事情」(洋子編)

   

●おとなりさんからのプレゼントのブランコ。
お兄さんからのおさがりです。
よそのお庭でも見かけるポピュラーな遊び具です。
数ヶ月の生活を経て、私自身、
スウェーデンでの生活をより豊かに
より深くしていくための手立ては
"言葉をバージョンアップ"するしかない
と強く感じ始めていました。

その一方で、街やスーパーでみかける
スウェーデン語の安売りの
ポスターの字も
発音はできなくっても記号として

理解できるようになってきていました。

また、英語もイザとなったら
自分の言いたい事だけを伝えてしまう

「切り替えし技」その名も
"By the wayの術"も覚えてしまったりして、

このままでも何とかなるかな〜って、
ついついなまけ心に
流されてしまう日々でした。


そして、その言い訳は…
「子供達がいるから無理」というのが

常套手段…
でも、まてよ…子供達がいるからこそ、
色んな人と出会えて

生活の幅がどんどん広がって
充実してきているのに、

彼女達のせいにして
逃げてばかりでいいのかな〜?

ばちがあたるかも…。
と言うわけでようやく一念発起して、

「言葉の達人」になるべく
"できること探し"をはじめたのでした。

      それでは、英語とスウェーデン語
どちらの達人をめざす??
と自問自答!
せっかくスウェーデンに来たのだから、
片言のスウェーデン語は
話せるようになりたい…

でも、それより英語をもっと自由に
話せるように
なった方がいいのかも…と、
どっちつかずのまま調査開始です。
まずは、スウェーデン語

街に確かKB(コーベー)という
公的なスウェーデン語学校

があることが解りました。
ここはスウェーデンに移住したり、

長期滞在して仕事や学業をしようとする
人の為の
「本格的な学校」で
うわさによればスウェーデン語の
ABCから始まり、
ネイティブへの道を
目指すという、とってもハードな内容の
学校であるとの事。

これは聞いただけで無理なのでパス。

次に英語
外国人が習う英会話教室なんて
誰に聞いても聞いたことがない

(でも、私にとってはスウェーデン語で
英語習ってもしょうがないですから)

とこれまたダメ。けれども、
このちょっと"がっかり"したような

"ほっと"したような気分の私は
2つの願ってもない出会いに恵まれました。

   
●庭での外あそびは、
ナナちゃんの日光浴とよくご一緒しました。
「エクササイズ」とよく遊んでくれました。
まず、一人は帰国間近の
日本人の方から紹介して頂いた生粋の

スウェーデン娘アナちゃん。
前回ちょっと紹介しましたよね!

彼女はプライベートの保育所の保母さんです。
彼女が週1回、
私と子供達の
家庭教師にきてくれることになりました。

なにせ、保母さんの彼女。
歌もお遊戯も人気のお菓子もおもちゃも

私たちが知りたいことをたくさん知っている
「なんともたのもしい存在」でした。


はるなとみちるとは
歌ったりおどったり遊んだり。

私とは『バンティメで歌った歌を
必死でカタカナでひろって

アナちゃんに聞いてもらう。
その歌詞をスウェーデン語で

書いてもらってカタカナと照らし合わせ、
その意味を英語で教えてもらう。

あとで意味をはるなやみちるに伝える』とか
『よく聞く言葉をメモしておいて、
意味や正しい発音を教えてもらう』とか

その反対で『使いたい言葉、
言い方を教えてもらう』とか…。


このレッスンは、
長い休暇を幾度もはさみながら

帰国するまで続きました。
そして、この時間の積み重ねで、
実に効率よく生活に密着した
欲しいスウェーデン語だけを

手に入れることができました。
学問には王道はないらしいけれど、
スウェーデン語習得?には

こんな王道があったという感じが
今でもしています。
   
●バンティメで歌った歌を必死でカタカナでひろいました。
そして、もう一つの出会いは英語編
英語の勉強をしたいとルンド大学のLUFF
(前に主人が書いていたと思いますが、
留学生とその家族のサポートをしてくれる
事務局です)
に相談に行くと、
他にも同じような希望を持った人がいるのと、

アルバイトをしたいという留学生がいるから
英会話教室を
開いてみようかと
LUFFがアレンジしてくれる事になったのです。


先生はアフリカのイギリス領だった?
国から来ているという、

(もちろん公用語は英語)お兄さん。
(非常に残念なことに国も
彼の名前も思い出せません)

生徒は私と同じ立場のドイツ人と
韓国人とロシア人2人の計5人と
みちる。

場所はルンド大学の教室。
週1回午前中の2時間。

夏の休暇をはさんだら
自然消滅になってしまったのですが、

これもまたすてきでしたよ。








●2人がだいすきだった「長くつ下のピッピ」ごっこ。
アナさんの洗濯かごがお船でした。


英語は全く上達しなかったけれど。
大学の教室で過ごす2時間は、

なんとも心を豊かにしてくれて、
お勉強をしているという満足感は
すばらしいものでした。


みちるはどうしていたかって…?
大きいベビーカーにピクニックシート、
絵本やおもちゃと好物のくだものや

おかしをたくさん詰めこみ
大学へ一緒に通学。
大きい教室の
かたすみに机を寄せて、

シートを敷いてその上で
自由に遊んでいました。
けっこう彼女も
その時間を気に入っていて

(勝手にそう思っているだけかも?)
ご機嫌で過ごしていました。いい娘です。

こうして、どちらか一方と思っていた
「言葉の学習」は巡り合わせが

重なって2つ同時に始まりました。
学習成果は達人どころか、
やっぱりどっちつかずのままで

終わってしまいましたが…。

でも、このときの思いつきが
いくつかの新しい出会いのきっかけに

なり、ちょっとオーバーに言えば
同じルンドの中で知らないままに

終わってしまったかもしれない
新しい世界と関わりが持てたことが

何よりの大収穫であったと、
今振り返るとこれもまたよかったと

自己満足に浸っています。