第十六回 初めてのバケーション3(忘れられない夜)
今回の私たちの「旅のバイブル」は、スウェーデンの本屋さんで購入した
大きな一枚のヨーロッパ地図と分厚い道路地図帳、
そして「地球の歩き方」(日本から送ってもらいました)です。
デンマークへの練習旅行から始まり、ドイツでのここ数日でちょっとした
"私たちの旅における1日のスタイル"ができてしまいました。
ざっと紹介すると…。
朝、"昼ごはんのおにぎり"を作って、
ホテルの朝食をたっぷりとって出発。
お昼頃に"おにぎりパーティー"午前中も午後も観光と移動を続け、
夕方5時には目的の宿泊地に到着しホテル探し。
ホテルが決まったところで、地元のスーパーに買いだし。
この各地のスーパー巡りはその土地土地でめずらしいものに出会え、
人々の生活を感じ私たちの毎日の楽しみの一つでした。
スウェーデンでの日常の買い物はどこかで日本円に換算して、
これは高いとか安いとか判断していたのに、
ドイツでの買い物ではスウェーデンクローネに換算して高い安い(ほとんど安かったのですが)
を判断している自分たちに気がついたときは、おかしくなってしまいました。
ドイツのなかでの日用品の相場もわかり、
ここはこれが安いと思うとまとめ買いをしたりと次第に通になっていく喜び?も感じてきました。
紙おむつ、ミネラルウォーター(ドイツは発泡水ばかりで普通の水を見つけるのも大変でした)
の調達、お菓子の補充。そして、夕食を食べて、翌日の行き先を決めるミーティング。
日本と違ってドイツでは車の渋滞というのがほとんどありませんでした。
距離÷速度でかかる時間がほぼ正確に予想できました。
これは自動車旅行にとってはすごく楽なことです。「バイブル」を参考にメインの行き先を決めてから、
大きな地図を開き全体像を確認。移動時間を計算しOKとなれば道路地図で細かくチェックします。
これで準備万端!その後、洗濯。そして就寝。こんな繰り返しでした。
こうして、その翌日のメインテーマは
カッセルの"水の芸術"(きっとドイツ語の直訳なんでしょう)に決まりました。
実はなんだかよくわからないんだけれど、とっても良い見どころだって本に書いてあったもんで
是非今日はカッセルにと相成りました。
ところで、メルヘン街道ってなんだか知っていますか?
ドイツの北部の港町、音楽隊で有名な「ブレーメン」から
グリム兄弟の誕生の地「ハーナウ」までの約600Kmをそう呼んでいるようです。
その道沿いには、既に行った「ハーメルン」、グリム兄弟が教鞭をとった大学がある「ゲッティンゲン」、
赤ずきんの「シュバルムシュタット」、
そうそう動物園公園の「ザバブルグ」には「いばら姫」のお城もありましたっけ。
そして今日行こうとしている「カッセル」、「マールブルグ」、「ハーナウ」と続くわけです。
グリム童話とグリム兄弟にまつわる色んな街を結んでいるわけです。
私たちのこれまでの行程は、ほぼこの街道沿いに進んでいるわけです。
●てっぺんのヘラクレスわかりますか? |
カッセルにはグリム童話博物館もあるようでしたが、 何はともあれ今日は「水の芸術?」がメインテーマ。 とにかくその舞台となる 「ヴィルヘルムスヘーエ城」へ向かいます。 カッセルの街に入って、お城を探します。 どうやら、街外れのはるか山のてっぺんが 目指す城のシンボル「ヘラクレス像」のようです。 (てっぺんのヘラクレス解りますか?) 仕方なくふもとの駐車場に車をおいて ハイキングとなりました。みちるは歩けるようには なったけれど、都合の悪いときは パパの背中の特別席が逃げ場になります。 スウェーデンでは当たり前に使われている 子供を背負うためのリュックです。 日本では外出時はお母さんのだっこや おんぶが一般的ですが、スウェーデンでは乳母車か、 このお父さんの"しょいこ"がポピュラーでした。 実はこのリュック、シュラー先生の案内で ルンド到着早々にマーケットに出かけたとき 「これは絶対に必要だから買いなさい」 と言われたものの中の一つでした。 ヨーロッパではどこにでもあると思っていたのですが、 後に行ったイギリスでは非常に珍しがられました。 パパにとってはとっても大変なんですが、 これのおかげでみちるも自分の足で登れない 教会の塔や鐘楼にも連れて行くことができました。 |
みーんなでブラブラとハイキング約1時間?もっとかな?
登ったらようやくヘラクレス像に着きました。
ふと、後ろを振り返ると、カッセルの街並みが一望に見渡せました。
上ったかいがあったというものです。
さて、水の芸術は?と思って聞いてみるとそのスタート時間は約1時間後!
もっとゆっくり登るか、グリム童話博物館にでも寄ってくるんだった…。
と思ってももう後の祭り。アイスでも食べて休憩のお時間としました。
もうそろそろ時間かな?と思っていたら、 一斉に待っていた人が移動を始めました。 いったい何がおこるのか全くわからず、 その場にいた私たちは、 そのただならぬ他の人々の行動にビックリ。 すると、そのとたんに水の放水が始まり もっとビックリ。通路のように思っていたところは 実は水路!遺跡のように見えていた 石のアーチも実は水路だったんです。 一斉に人々は水を追いかけて 来た道を一斉に逆に下っていきます。 その水量は半端ではありません。 水しぶき、流れる音までも ショーの演出に計算されているのではと思うほどです。 下りきったところには大きな池ができていました。 みんなその周りを取り囲んでいました。 |
![]() ●水の放水が起こってびっくり |
|
何かいるのかなと見ると「白鳥」が泳いでいます。 「ふーん、白鳥を見ているのか」と思ったら、 突然、バッシャーンと大噴水!! 池に突然水が吹き上げました。 あまりの意外性、ダイナミックさに さらにビックリ!大興奮!! ついつい時間を忘れていましたが、 今日はもう少し南へ進まないと予定が狂ってしまいます。 後ろ髪を引かれながらとにかく「アウトバーン」へ。 |
●突然の大噴水にびっくり!! |
カッセルで思いの外時間を使ってしまい、
アウトバーンを使っても宿泊予定地のハーナウに着いたときはもう夜でした。
安直な「ツーリストインインフォーメーションの術」は通用しません。
グリム兄弟記念像を横目で見て、宿探しをしましたが暗くなってきて…。
数件の宿に飛び込みましたがダーメ。気分も落ち込み、真っ暗になりました。
言葉もドイツではやっぱりドイツ語がメイン。
(当たり前でした)観光地でもあまり英語が通じない。
田舎町はもっと通じない事も解ってきました。
えーい、しょうがない。都会に移動だ!と大英断!!
再度アウトバーンに戻ってフランクフルトを目指しました。
フランクフルトといえば、
ソーセージの名前にもなっているくらい(関係ないですかね)の大都会。
夜だろうが何だろうが宿くらいなんとでもなると信じていました。
フランクフルトが近づいてきました。
アウトバーンの表示にもフランクフルト○○○っていう標識が出てきました。
でも、どこがフランクフルトの中心なのか全く解りません。
暗いし、既に宿探しで今日は失敗してるんでよけいに弱気です。
走っても走っても解りません。
ぐるぐると同じところを回っているような気がしました。
後で考えると実際環状線のようなところをグルグルと回っていたんだと思います。
それではどうにもなりません。思い切ってアウトバーンを降りてみることにしました。
フランクフルトの詳細な地図なんて持っていません。やむを得ず降りたところは…。
ちょっと走ると住宅街!こんなところに絶対に!ホテルはありません。
仕方なく走る走る、大きな道を見つけては
中心に向かいそうな方向に勘を頼りに進みました。
すると今度は大粒の雨が、バタバタと降ってきました。
これで、道行く人もさっといなくなってしまいました。
疲れ、失敗、雨、子供たちはお腹がすいたってさっきまで騒いでいましたが、
疲れて寝てしまいました。「俺だって泣きたいよ」って思いながらとにかく走ります。
すると…。「ハウプト バーンホフ」の文字が目に入りました。
「ハウプト バーンホフ」は中央駅って事です。
「やった、これで助かった。」と思いました。
案内の通りに走っていると、小さなホテルを見つけました。
私は疲れ切っていたので、家内が聞きに行きました。
すると、部屋はいっぱいでダメとのこと。
また途方に暮れていると、ホテルマンが同情してくれたのか、
知り合いのホテルを紹介し電話をしておいてくれるとのこと。
「地獄に仏」と教えられたようにホテルに向います。
そのホテルは、中央駅の直ぐ隣、駅前ホテルのはずです。
疲れた我々にはもう、どこでもOK、少々高くってもOKの気分でした。
やっぱり、真っ暗で雨もバシャバシャ降り続いています。
探せども探せども聞いたホテルはありません。
道を間違えたのかとも思うのですが、もう前のホテルにも戻る道が解りません。
八方ふさがりになってしまいました。
聞いたホテルとちょっと名前はちがうけど駅の前に似た名前?のホテルを見つけました。
![]() |
家内がそこに飛び込みました。 けれども待てど暮らせど帰ってきません。 いったいどうなったんだと思った頃、 探しに行こうかと思った頃、 顔面を紅潮させて出てきました。 「OK」サインです。 「ヤッター、ベッドで寝られる。」 正直言って今晩は車で寝る覚悟でした。 アウトバーンのサービスエリアの 駐車場で寝る覚悟もできていましたから 本当にうれしかった! でも、家内に聞くと交渉はとっても難航、 大変だったようです。 フロントで予約しているかを聞かれ、 前のホテルのホテルマンに 紹介してもらった事を伝えても 「知らない」と 「予約がないと泊まれない」 との返事。困って事情を説明すると 奥から責任者らしき人物が登場。 (クレーム処理係でしょうか?) |
翌日の朝、ホテルを出てとにかく駅に行きました。
さすがに大都会、でも大きな街はもうこりごり。
今後は大きな街は避けて田舎巡りをするぞと心に誓ったのでした。