第十三回 病院も夏に備えて…?!
ふと、留学記を振り返ってみると…。
遊びと旅行との話ばっかりであることに気がつきました。
でも、それはそれ、本当は遊んでばっかりいたわけではないのだけれど
こういう格好で書き始めるとどうしても楽しい話を書きたいし、難しい話しもしたくないし…。
そういう事情をご理解いただいて、おつきあい願いたいと思うのです。
でも、今回は医療事情と病院のシステムの違い等にも少し触れてみたいと思います。
5月、6月とどんどん日が長くなっていきます。
「黒昼?」から「白夜」の世界に変わっていくのが日々実感されます。
裏のスキーラの林に「カラス」の大群が住んでいるのですが、
昼間はえさ場にお出かけになって日暮れにはご帰還になります。
なにぶん空がカラスで真っ暗に?なるほどの大群ですから、
いっせいにご帰還の折りには羽音と鳴き声はすさまじいものです。
ヒッチコックの「鳥」(なんて言うと年がわかってしまうかも…)という映画のシーンを見るようで、
そのご帰還の時間が毎日遅くなることで日が長くなっているのがわかります。
復活祭が過ぎ、メーデーも過ぎる頃になると、人々は気分もウキウキし、夏休みの計画を立て始めます。
夏休み(バケーション)は6月下旬のミッドサマー(夏至祭)から新学期の始まる9月までの間で
交代で取ることが多いようです。
スウェーデン人にとって3週間、4週間といった連続の長期休暇はごく当たり前で、
大学町であるルンドは人影もまばらで半ばゴーストタウンのようになってしまいます。
研究に来ていた友人たちの話を聞くと、研究所の研究補助の秘書さんも
長期休暇を取るし実験動物さえも手に入りにくくなって実際問題として研究もままならないようです。
公共交通機関であるバスは本数が激減します。
スーパーでも人が少なく本当に人口が減っているって感じがします。
病院も驚く無かれ病棟ごと封印されてしまいます。
信じられますか?病棟ごとバケーションのために閉鎖してしまうのです。
手術も緊急の手術が中心になって、待機的な手術はバケーション後に先送りされます。
もちろん医師も交代でビッグな夏休みです。
日本のように2日とか3日づつの「ブツ切れ」の休みではなく、医師も長期休暇を取るのです。
それを社会が当然のことと認めています。不思議だったのはここです。
日本では主治医が「夏休みで不在」なんて堂々と言えますか?
「学会出張」すら堂々と言えないような雰囲気があります。
でも、スウェーデンでは「彼は今バケーション」というのが最大の言い訳になります。
極端な例ですが、朝から手術をうけ病室に帰ったところで再手術が必要になったとしましょう。
日本なら当然朝から手術をした先生がまた出てくるでしょう。
でも、スウェーデンではもう彼の勤務時間がすぎていたら、帰宅していて顔も見せません。
それに対して、患者さんも家族も何にも言いません。
術者が仮にバケーションでどこかに行ってしまっていても「彼はバケーション」といえば、
「アラ不思議!!」みんな納得してしまいます。
逆に言えばそれだけ社会がバケーションを認め合い、大事にしているということなのかもしれません。
ある日、ペースメーカーセンターのナンバー2であるトーマス(彼は水彩画が本業?と言っています。
医業は趣味だって言います。)が雑誌を片手に走ってきました。
一体なんだろう?と思うと、スウェーデンの雑誌に「日本のお医者さん」が紹介されていたんです。
細かい内容は忘れましたが、「日本のお医者さんは1日に○人の患者さんを診察し、
月曜日から土曜日まで診療。
休日は夏に数日、お正月に数日の計○日、年収は○○クローネ位」といった内容だったと思います。
トーマスは「これは本当なのか?そんなのは、バケーションでも何でもない!」と真顔で聞きます。
絶対に信じられないって。
それはそうでしょう。
逆に日本人の私たちからすれば、夏に3週間も4週間も休みが取れることが信じられないのですから…。
どんな職場もバケーションのために、ある程度の余剰人員を確保しています。
普段は基礎医学的な研究をしている医師がバケーションの季節は、
臨床の現場でアルバイトをしたりもしているようです。
![]() ● ルンド大学のペースメーカー外来ルーム |
私の職場?はペースメーカーセンターです。 前にも書きましたが、 3人で交代で でも、バケーションの季節には |
通じない方の場合は、ヘレンが通訳してくれました。
真っ黒になった私が写っているのが、ルンド大学のペースメーカー外来ルームです。
2年いると6ヶ月ごとのチェックでも4回会うことになりますから、患者さんとも顔見知りになります。
変な日本人ですから、よけい印象に残ったのでしょうね!
![]() ●看護婦さんたち |
そうそう、手術室もちょっと紹介します。 メインの手術室はもっぱら予定の手術が入るので、 看護婦さんたちもちょっと紹介しますね。 メインの手術室は朝から遅くまで |
![]() ●手術室の中にりっぱな休憩室が… |
なんと、手術室の中に 手術室の控え室で手術着のまま、 この中で時折スウェーデンの伝統的な |
また、簡単な送別会やお誕生会も行われていました。
スウェーデンではお誕生日にはなぜか自分でケーキを持って職場に行くのです。
そして、みんなにケーキを食べてもらうのです…??
なぜでしょうね??ご存じの方があれば、是非お教え下さい。
日本では、考えられないことばかり!!
こうして徐々にスウェーデンのお仕事にも生活にも慣れ、
私もいよいよ“生まれて初めて”の「バケーション」に突入です!