第十一回 春爛漫!


  春の幕開けは、突然でした。
  人々の装いも、帽子とジャンバーの世界から、突如Tシャツとサングラスに一変します。
  ずっと曇りの日が続いた後の久々の晴れの日!サンサンとした陽ざし…。
  私たちはやっぱり日本人なのでしょうか…。ふとんやら、じゅうたんやらを
 「お日さま」にあてたくなりました、
  家内はジャブジャブいっぱい洗濯をしたくなったようです。
  身の回りのものに「お日さまのにおい」をいっぱいしみこませたい気分になりました。

 ところが、スウェーデン人達は、自らのからだいっぱいに陽を浴びようとします。
  道を歩くときは、好んで陽の当たる方、天気の良い日のお昼のお茶は外のテラスで
  たっぷりと時間をかけて。冬場は誰もいなかった公園の芝生では学生が輪になって
  授業をしたり?!子供達が走り回ったり…。

 そして、春と言えばピクニック!!籐のバスケット(なぜかみーんな持ってます、
  私たちも後に買いました!)にマグカップとコーヒーの入ったポット(これは必携です)と
  パン、ハムやチーズ、レバーのパテ、そしてなんとテーブルクロスまで詰め込んで森に出かけます。
  森にはいろんなところにベンチとテーブルがあり、気軽に森の中でピクニックが楽しめます。
  私たちも早速、スウェーデンのお友達にスウェーデン流のピクニックスタイルを教えてもらうべく、
  出かけました。気に入った場所で気に入ったテーブルを見つけて、
  サーッとテーブルクロスをかけて、我が家の居間を森の中につくってしまう…、そんな感じです。
  新緑の緑がとってもきれいでしょう?
  写真をよく見てください。インセビンセ号とともに写っているのは、
  お友達のペーターさんの愛車「ボロボ…」いや「ボルボのアマゾン!」現役で走っていました。
  さすがにブレーキが少し効きにくかったような気がしましたが…。
  スウェーデンで見る、ボルボやサーブは本当に長寿命?です。
  もちろんベンツやベーエムもそうですが、でも日本の車はそんなに古いのは
  走っていなかったような気が…。やっぱりガタイが違うんでしょうか?

  
  
         ●インセビンセ号(左)とアマゾン

 4月になるとイースター。スウェーデンではイースターの日に女の子たちは魔女の扮装をし、
  街を歩いたり知り合いの家を訪ねまわり、キャンディーやチョコレートをもらう習慣がありました。
  タマゴ料理を食べるとか、タマゴをいろんな色に塗ったりして飾るとか、
  羽飾りを飾るとかももちろん行われます。街は飾りやお菓子を売る店で一杯です。
  イースターの頃から魔女の活動が活発になると思われていたからだとかとか!
  
    
●魔女に変身!
我が家にも2人のかわいい魔女ができあがりました。
さっそく、二階のセベリン家を訪ね
「お菓子のいっぱい詰まったタマゴ」をもらってご機嫌でした。
この頃からさらに日は長くなります。オーバーではなく1日に
10分も20分も長くなる感じです。
夕方になると「カラス」が裏の森に(あのスキーラの森です)
ご帰還になるのですが、その時間が日に日に遅くなるんです。
スウェーデンに来たとたん、毎日真っ暗な中で
朝ごはんを食べていた頃、
はるながよく「ねえ、これは何ごはんなの?」と聞いていました。
今度は、カンカンと照っている陽ざしの中で食べる夕ごはんの時、
「ねえ、これは何ごはんなの?」と聞くようになりました。
自分たちの生活ペースの激変に予備知識もなく
体ごとぶつかっていた娘たちには、私たちよりも不思議がいっぱい、
驚きがいっぱいの世界だったようです。

  そして4月30日、大学での伝統行事?があるというので出かけました。
  なるほど、今までルンドでこんなに多くの人を見かけたことがないほど多くの人が
  ルンド大学のメインビルの付近に集まっていました。ほとんどの人は「白い学生帽」を
  手に持っていました。まず、ブラスバンドの演奏が始まります。
  周りはだんだんと気分が高まってきます。すると突然、バルコニーから学生代表が現れました。
  そして「春がきた!」と宣言。これを合図に、
  みんなが手に手に持った白い学生帽をサッとかぶるのです。
  たったこれだけの事でしたが、これだけのことにこんなに多くの人が
  集まる事に驚くと同時に「春がきた」喜びをみんなで分かち合う、彼らにとって
  本当に大きな喜びであることが、たった5ヶ月足らずの滞在の私たちにも、もはや肌で解りました。

    
            
●春がきた

 同じ日の夜、公園では「ワルプルギスの夜祭り」が行われました。
  大きな大きなたき火を焚いて、悪霊を追いはらい、やはり春の訪れを祝うのです。 
  私たち家族も暗くて寒くて長い冬を過ごして、春が来たことが本当にうれしく、
  スウェーデン人とともに夜まで大騒ぎをしてすごしたのです。