介護保険制度を巡る
当面の課題と対応について


  1.   高齢者保険料の減免問題
  2.   利用者負担の低所得者対策
  3.   訪問介護の家事援助の取扱い
  4.   いわゆる介護タクシーの取扱い
  5.    訪問通所サービスと短期入所サービスの支給限度額の一本化
  6.   特別養護老人ホーム等の施設整備費補助金の不正受給疑義について
  7.  介護サービスの質の向上
  8.  介護支援専門員(ケアマネジャー)に対する支援策
  9.   要介護認定のあり方の検討
  10.   痴呆介護の充実

(1)               高齢者保険料の減免問題

      ア 一部の市町村で、災害などの特殊な事情の場合以外に、低所得者である高齢者(第一号被保険者)の保険料を単独で減免する動きがある。(昨年10月1日現在で保険料の単独減免を実施している市町村数は72

イ 介護保険制度は、介護を国民皆で支え合おうとするものであり、保険料を支払った者に対して必要な給付を行うものであることから、

(ア)保険料の全額免除
(イ)資産状況等を把握しない一律の減免
(ウ)保険料減免分に対する一般財源の繰入れ

は、保険料の単独減免を行った市町村については、財政安定基金の交付の対象とはならないが、貸与の対象としている。


(2)              利用者負担の低所得者対策

低所得者の利用者負担は、既に、負担月額の上限についての特例措置や、訪問介護利用者の経過的軽減措置などを実施するほか、社会福祉法人が利用者負担を減免する措置が講じられているが、この措置が全国的に十分に浸透していない状況にあることから、以下の取り組みを実施。

ア 全国的な実施の推進(社会福祉法人への協力要請を含む)
イ 対象となる低所得者の範囲を被保険者の(2%から)1割程度へ拡大。


(3)       訪問介護の家事援助の取り扱い

訪問介護の家事援助の取扱いについては、昨年9月に与党より保険給付として適切な逸脱した家事援助の是正についての方策が示されたところであり、これを受けて、

ア リーフッレトの作成・配布による周知徹底
イ ケアプランへの家事援助への必要性の記載
ウ ケアマネジャーへの研修

等により引き続きその改善方策を推進。

(
参考1)家事援助中心型を利用できる場合

・利用者が一人暮らしの場合
・利用者の家族等が障害や疾病等の場合
・利用者の家族等が障害や疾病でなくても同様のやむを得 ない事情により家事が困難な場合

(
参考2)家事援助の範囲

介護保険で利用できる家事援助とは、掃除、洗濯、調理など日常生活のためのサービスであり、原則として以下のようなサービスは保険給付の対象外。
・本人以外の部屋の掃除など、家族のための家事
・庭の草むしりなど、ホームヘルパーがやらなくても普段 の暮らしに差し支えないもの
・大掃除など、普段はやらないような家事


(4)               いわゆる介護タクシーの取扱い

ア 介護保険の訪問介護の指定を受けているタクシー会社(いわゆる介護タクシー)については、実態調査等を踏まえ、次の方針により対応。

イ 介護タクシーによるサービスの取扱い

(ア)介護タクシーによる通院介助等のうち、自宅から病院等までの移送(運転)中は、運転に専念することとなるため、従来どおり介護報酬の算定対象としない。
(イ)乗車前・降車後の介助に関する介護報酬については、それぞれ別個の2つのサービス提供とし算定するのではなく、両者を合算して1つのサービス提供として算定するよう、取扱いを統一。

ウ 介護タクシーに係る指定の取扱い

(ア)様々な訪問介護サービスを行っている場合
乗車前・降車後の介助に特化することなく、身体介護や家事援助のサービスを手広く行っているのであれば、指定対象となる。
(イ)通院介助等に特化している場合
乗車前・降車後の介助に特化している場合には、運営基準違反として改善指導、改善が見られない場合は指定の辞退・取消によって都道府県が対応(省令改正)

エ 基準該当サービスとしての取扱い

特化によって指定の対象外となる場合や、一旦受けた指定の辞退又は取消があった場合にも、保険者(市町村)の判断によって、乗車前・降車後の行為に特化した事業者によるサービスを、基準該当サービスとして保険給付の対象とすることを認めることとする。(省令改正)

なお、介護保険による訪問介護とは別に、介護タクシーによる移送を、介護予防・生活支援事業(外出支援サービス事業)や、介護保険の市町村特別給付の対象として実施することは可能。


(5)               訪問通所サービスと短期入所サービスの支給限度額の一本化

ア 短期入所サービス(ショートステイ)が利用しにくいとの指摘があり、これについては、本年3月に講じた振替措置及びその受領委任化により、相当程度解決したが、利用者の利便性や選択性を向上する観点から、両サービスの支給限度額について一本化をはかり、同じ支給限度額の中でいずれサービスも利用できる措置することを決定。

イ 実施時期については、市町村等の準備期間等を考慮し平成14年度1月とするが、それまでの間も、上記振替措置において、1月当り2週間としている限度を、訪問通所サービスの利用枠の範囲内で30日まで拡大。
(実質的な支給限度額に一本化の前倒し:平成
131月実施)


(6)               特別養護老人ホーム等の施設整備費補助金の不正受給疑義について

ア 社会福祉法人の特別養護老人ホ−ム等の整備に当り、建設工事請負業者から法人への金銭が還流。それがさらに理事長等の個人に還流されており、その金を国税当局が法人からの所得と認定し、追徴課税を実施した事案が発生(北九州市、三重県、香川県について同様の事案が報道)。現在、関係県市において実態調査を継続中。

イ 施設整備費補助金の不正受給に対するこれまでの取り組みとしては、平成8年度の彩福祉グループ事件を契機に、社会福祉法人の許可、補助金のあり方などの総点検を実施し、平成9年度以降に、

(ア)建設工事契約について、公共工事に準じた競争入札を義務化
(イ)入札に市町村職員に立ち会わせるとともに入札結果を公表
(ウ)一括下請け(いわゆる丸投げ)の禁止
(エ)都道府県・市による建設工事中間点及び工事完了時点における現地調査の徹底

などの改善措置を講じたところ。

ウ さらに、発注者と受注者間における資金還流ではないかと疑惑をもたれるおそれがある寄付金等の取り扱いについて、今後、以下の基本的考え方に基づき必要な通知の改正を予定している。

(
参考)
寄付金等の取扱いについての基本的な考え方

1.補助事業を行う社会福祉法人は、当該事業に関わる建設工事請負業者又は備品納入業者から寄付金を受領する行為(ただし、共同募金会にたいしてなされた寄付金を除く)。及び実質的に当該法人が寄付金を受領したものとみなされる行為をしてはならない。(これを補助金の交付の条件とする)。

(1)建設工事請負業者又は備品納入業者
・当該事業に関して、当該法人と請負契約等を締結した業者及びその下請け業者
・上記業者の役員(個人)

(2)寄付金
・現金及び有価証券全般(使途を当該事業に指定していないものも含む)。
・現物(社会常識を超えない程度のものを除く)

(3)実質的に当該法人が寄付金を受領したものとみなされる行為
・当該法人へ寄付を行うの者が請負業者等から金銭を受領すること。
・上記以外の場合で、法人の理事、監事、評議員及び職員が請負業者等から受領すること。

2 仮に、1の条件に違反していた事実が判明した場合は、その金額を総事業費から差し引き、補助金の載算定を行った結果、過大に補助金を受給していた場合は、交付決定の一部を取り消し、過大受給した補助金の返還を求めることとする。


(7)               介護サービスの質の向上

(1)身体拘束廃止へ向けての取り組み

ア 介護保険法の施行に伴い、身体拘束が原則として禁止されたが、その趣旨を徹底し、実効をあげていくためには、現場において身体拘束を廃止するための努力を重ねるとともに、それを関係者が支援していくことが重要。

イ そのため、介護現場での使用を年頭においた手引きの作成普及など身体拘束の廃止を実現するための幅広い取り組みを「身体拘束ゼロ作戦」として取りまとめ、以下のような取り組みを関係者の協力の下に推進。

(ア)身体拘束ゼロ作戦推進会議の開催
(イ)介護現場での使用を年頭においた手引きの作成
(ウ)車いすなどのハード面の改善の検討
(エ)都道府県における推進会議の開催と相談窓口の設置、研修の実施
(オ)「身体拘束ゼロシンポジュウム」の開催(327日)

(2)介護サービス評価についての取り組み

ア 利用者による事業所の選択に役立つような評価の手法等を検討することを目的として、「介護保険サービス選択のための評価の在り方に関する検討会」を設置し、昨年112日に第1回、1218日に第2回を開催。
イ 本年度は、訪問介護及び訪問看護を中心として、利用者がサービスを選択する際にポイントとなる情報を整理し、事業者からの情報提供や自他のサービス利用を通じて得た情報を材料に、主として利用者自身が活用するための「チェックリスト」の作成を検討。
今後、第3回検討会(2月下旬目途)において、チェックリストの原案をもとに議論を行う予定。

(3)介護相談員の推進に向けた取り組み

ア 介護保険制度実施に伴い、サービス利用が措置を中心としたものから、契約によるものへと大きく変更。この新たな仕組みが「利用者本位」の仕組みとして定着するためには、高齢者が自分自身のニーズに合ったサービスを適切に選択し、利用できるような環境整備が重要。
イ 介護相談員派遣事業の実施により、介護相談員が現場を訪問し、気軽な雰囲気の中で介護サービス利用者の介護サービス等に関する疑問や不満にきめ細かに応じることで、苦情に至る事態を未然に防止するとともに、併せて介護相談員が市民の目を通してサービスの実態等を把握し市町村に提言を行うことなどで、介護サービスの質の向上や市町村の介護保険の円滑な運営、さらに介護問題にとどまらない「地域づくり」にもつながる効果を期待(本年度は約160の市町村で実施)。
ウ また、本年125日には、介護相談員及び介護相談員派遣等事務局間の情報交換の場の提供等を通じ、介護相談員派遣等事業の円滑な業務遂行や一層の事業の充実を図ることを目的とし、「介護相談・地域づくり連絡会」は発足したところ。


(8)               介護支援専門員(ケアマネジャー)に対する支援策

ア 制度施行当初においては、ケアプランの新規作成、各種事務への不慣れなどから、現場の作業量も多かったが、施行以来数ヶ月を経て、こうした点についてはある程度安定してきたと考えられる.

イ しかしながら、介護保険制度の要としてのケアマネジャーの活動を支援するために、先般の与党3党合意においても、ケアマネジャーの資質の向上等に向けた取り組みを推進するよう指摘されているところ。

ウ こうした指摘等を踏まえ、

(ア)現に実務に携わっているケアマネジャーに対する現在研修の実施
(イ)介護報酬で対応できていない、短期入所の振り替え利用手続きの業務や住宅改修の理由書の作成業務について、保険外サービスである「介護予防・生活支援事業」として助成(平成131月から)
(ウ)事務負担軽減やケアマネジャー支援の取組み事例の収集と情報提供など、各般の支援策を実施。


(9)               要介護認定のあり方の検討

ア 要介護認定の一次判定(コンピューター判定)については、
(ア)痴呆性高齢者が低く評価されているのではないか。
(イ)在宅における介護の状況を十分に反映していないのではないか。などの指摘があることから、昨年8月に「要介護認定調査検討会」を設置し、一次判定の仕組みについて専門的・技術的な検討を行っている。

イ 今後、本検討会における議論を踏まえ、高齢者介護実態調査、それを受けてのモデル事業を実施することとしている。

今後のスケジュール
12年度>(12月 予備調査)2~3月 本調査
13年度>前半 調査結果分析 後半 モデル事業実施


(10)           痴呆介護の充実

ア 痴呆性高齢者に関する問題は、今後の最大課題の一つである。このため、痴呆介護を充実する観点から、(1)研究の推進、(2)人材養成、(3)介護サービスの充実に取り組んでいるところ。
イ 現在、全国3ヶ所(東京都、愛知県大府市、仙台市)で整備が進められている「高齢者痴呆介護研究センター」が近々開所する予定(大府センターについては、2月15日開所済)であり、このセンターを中心に痴呆介護に関する研究や痴呆介護指導者養成研修(30日間)が本格的にスタートすることとなる。
また、都道府県・指定都市でも、研修センターで実施される痴呆介護指導者養成研修の受講修了者等を中心として、現場の担当者を対象とした痴呆介護研修事業を実施し、これによって全国的な痴呆介護研究・研修ネットワークを形成。
ウ また、痴呆介護サービスとして、「痴呆性高齢者グループホーム」の整備に積極的に取り組んでいる。グループホームは昨年末で約800ヵ所となっており、平成16年度までに3,200箇所の整備を見込んでいる。

このため、グループホームに対する施設整備費補助の充実(従来の「併設型」に加え「単独型」、社会福祉法人等に加え「NPO法人」も補助)を図る一方、グループホームが有する「密室性」などの点も踏まえ、サービスの質の確保・向上を図る観点から、住宅地への立地、スタッフの研修義務づけ、サービス評価の義務付け、情報公開の義務づけ、市町村の関与等を柱とする「質の確保」対策もあわせて講じているところ。

1号保険料の収納状況について へ
(定点市町村における調査結果の概要)

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