【介護保険制度における在宅サービスの利用状況(アンケート調査から)】

1.介護保険による在宅サービス利用量の変化
  1. 制度導入前後におけるサービス利用量の変化
  2. 介護保険実施による新たな利用者の増加状況
  3. サービス利用量の伸びの状況

2.在宅サービスの利用状況(支給限度額に対する利用割合)

  1. 定点市町村を対象とした支給限度額に対する利用状況調査
  2. 家族構成と支給限度額に対する利用割合の関係
  3. 要介護度分布と支給限度額に対する利用割合の関係
  4. 介護保険導入による在宅サービス利用者/家族の状況変化
  5. 利用者と時宜容赦の関係

【介護サービス事業者の状況】
介護サービス事業者参入の状況

【介護給付費の支払い状況】
介護給付費の支払い状況(暫定集計値)】


  1. 制度導入前後におけるサービス利用量の変化

    定点市町村(全国108保険者)の1,263人に対する平成12年3月と7月とのサービス量の変化の状況(厚生省実施)
  サービス量が増加 ほぼ同じ サービス量が減少
合計 852(67.5%) 187(14.8%) 224(17.7%)
要支援 111(52.9%) 42(20.0%) 57(27.1%)
要介護1 145(67.8%) 30(14.0%) 39(18.2%)
要介護2 148(70.0%) 38(18.0%) 25(11.8%)
要介護3 143(68.8%) 24(11.5%) 41(19.7%)
要介護4 156(73.9%) 30(14.2%) 25(11.8%)
要介護5 149(71.3%) 23(11.0%) 37(17.7%)

 全体の7割近く(67.5%)の人がサービス量が増えており、介護保険の実施によりサービス利用が伸びていることが伺われる。

 また、要介護度別にみると、要支援の方にサービス量を減らした方が相対的に多くなっているが、これは、介護保険の実施により、介護の必要度に応じて給付がなされる事となった結果と考えられる。


(参考)介護サービス量が減った理由

(「減った」と回答した224人についての調査:複数回答あり:単位(人))

理          由 人数 割合 全体割合
1.これまで受けていたサービスが現在の利用限度額を超えていたため 25 11.0% 2.0%
2.短期入所を緊急時のため取っておく 11 4.9% 0.9%
3.サービス事業者が予約でいっぱいだったため 2 0.9% 0.2%
4.家族との同居によりこれまでほどサービスが必要でなくなった 10 4.5% 0.8%
5.利用者負担を支払うのが困難だったため 32 14.3% 2.5%
6.利用者負担は支払えるが、従来受けていたサービスが必ずしもすべて真に必要なサービスではないと考えたため 35 15.6% 2.8%
7.その他(本人の状態の回復、入院のため) 40 17.9% 3.2%
8.回答なし 81 36.2% 6.4%

(注)「割合」はサービスが減った人に対する割合、「全体割合」は調査対象全体に対する割合

 調査対象(1,263人)のうち、「利用料負担を支払うのが困難だったため」と回答した方は32人(2.5%)と少なくなっている。


2.介護保険実施による新たな利用者の増加状況

 各自治体が実施した調査によれば、介護保険の実施により、新たな利用者が3割から5割程度増加しているとの結果が出ており,サービス利用の裾野がかなり拡がっていることが伺われる。

(利用者の内訳)

  従来の利用者 新規利用者 利用者増加率
福島県石川町 60.2% 29.0% 48.2%
横浜市 70.5% 21.8% 30.9%
名古屋市 73.1% 21.6% 29.5%
鳥取県 67.0% 31.6% 47.1%
岡山県津山市 67.0% 33.0% 19.2%

また、介護保険実施後も要介護・要支援認定者数の伸びが見られる。

  4月の認定者数 7月の認定者数 増加率
滋賀県大津市 3,778人 4,117人 9.0%

3.サービス利用量の伸びの状況

 各自治体が実施したサービス利用量の調査によれば、介護保険の実施により、サービスの利用量は、かなり伸びていることが伺われる。

 また、制度実施後も、制度内容が利用者の間に浸透するに伴い、サービス利用量の増加が見られる.

a。兵庫県神戸市の調査
  平成12年3月から7月までの月ごとのサービス利用量の推移

  3月 4月 5月 6月 7月
訪問介護(利用時間) 65,155 84,114 99,711 126,436 132,866
訪問看護(利用回数) 10,976 11,486 12,143 15,094 14,285
通所介護(利用回数) 23,620 24,161 26,390 32,531 33,291
短期入所生活介護
(利用日数)
18,250 10,818 12,294 12,183 12,641

b.千葉県の調査

 介護保険の導入前後による利用回数の比較

  介護保険導入前 介護保険導入後
訪問介護(利用回数) 100 167.7
訪問看護(利用回数) 100 171.9
通所介護(利用回数) 100 150.9
通所リハビリ(利用回数) 100 155.8

(注)千葉県内市町村における要介護者948人抽出による週当たり利用回数調査。


c。山形県の調査

 前年同期比では、短期入所サービスを除いて利用が順調に増加しており、また、4月以降では、短期入所サービスも含めて利用が増加してきている。

(サービス増加率)

  平成12年4月から7月までと平成11年(同期)との比較 平成12年4月と7月との比較
訪問介護(利用回数) 140.5% 117.6%
訪問入浴(利用回数) 118.1% 109.1%
訪問看護(利用回数) 105.3% 102.2%
通所介護(利用延人数) 131.4% 111.7%
通所リハビリ(利用延人数) 111.6% 109.8%
短期入所生活介護(利用延人数) 73.2% 126.4%
短期入所療養介護(利用延人数) 48.8% 118.9%
福祉用具貸与(件数) 137.8%

(注)山形県内の238事業者を対象とした調査。


d。岩手県の調査(保険料段階)

 制度施行前と平成12年7月とサービス利用量の比較(月当たり利用回数)

  訪問介護(回数) 通所介護・リハ(回数)
  施行前 施行後 伸び率 施行前 施行後 伸び率
保険料第5段階 8.0 12.9 61% 5.4 6.9 27%
保険料第4段階 7.8 13.0 67% 5.4 7.2 35%
保険料第3段階 10.8 13.5 25% 5.9 6.7 14%
保険料第2段階 10.6 12.3 16% 5.3 6.3 20%
保険料第1段階 9.5 11.3 20% 4.5 5.1 13%

(注)岩手県内の訪問介護(545人)、通所介護・リハ(939人)に対する調査。

 サービス利用量の伸びを保険料の所得段階別にみた場合には、所得段階に関係なく全体的に伸びているが、従来措置制度の下でサービスをほとんど利用していなかった所得が相対的に高い層のサービスの伸びが大きくなっている。


2.在宅サービスの利用状況(支給限度額に対する利用割合)

  1.      定点市町村を対象とした支給限度額に対する利用状況調査

  人数 平均利用単位数(a) 支給限度額(b) 限度額に対する利用割合(a/b

要支援

1,378 3,334 6,150 54.2%
要介護1 1,764 6,213 16,580 37.5%
要介護2 1,487 8,297 19,480 42.6%
要介護3 1,307 11,681 26,750 43,7%
要介護4 1,232 13,418 30,600 43,9%
要介護5 1,155 15,963 35,830 44,6%
平均 8,323 43,2%

注1 106保険者(定点市町村)8,323人についての調査(ケアプラン無作為抽出方式。原則として平成127月サービス分)

注2 「平均利用単位数」は、訪問通所サービスと短期入所サービスの合計の平均

(考え方)

a        在宅サービスの支給限度額は、在宅重視を基本理念として、現在のサービス水準をかなり上回る水準で設定(ドイツの介護保険よりも高い水準のサービスレベルを保証)。

b        実際に利用割合は、本人の希望やサービスの供給量によって決まり、今後の制度の定着状況やサービス供給量の増加により、将来的に増加することが予想される。

c         平成12年度予算の在宅サービスの利用見込みは、サービスをまったく利用しない人を含め支給限度額に対する利用割合を約33%と設定。上記43.2%はサービスを利用する人の数値であり、それらを勘案すれば、在宅サービスの利用割合は当初の見込みどおり増加しているものと推定。

 2.家族構成と支給限度額に対する利用割合の関係(山形県調査)

家族構成で見ると、一人暮らし、老人夫婦世帯、子ども同居等の順に利用率が高くなっている。

世帯構成 限度額に対する利用割合
一人暮らし 50,1%
老人夫婦世帯 44,1%
子ども同居等 36,9%
平均 39,5%

(注)山形県内の742名を対象とした調査(本年6月サービス利用分)

3.要介護度分布と支給限度額に対する利用割合の関係

a.   滋賀県大津市調査

  要支援 要介護1 要介護2 要介護3 要介護4 要介護5
80%〜 7人 3 6 2 2 1
60〜80% 1 7 7 5 4 2
40〜60% 10 10 6 11 7 4
20〜40% 11 20 22 19 14 10
0〜20% 4 15 17 17 11 3
合計 33 55 58 54 38 20

b.   岩手県調査(平成129)

限度額に対する利用割合 利用者の割合
0%から25%まで 50%
25%から50%まで 33%
50%から75%まで 10%
75%以上 7%

c.     鳥取県調査(平成128)
(a)
利用限度額に対するサービス利用の割合

限度額に対する利用割合 構成比
7割以上 19.4%
5割以上7割未満 9.9%
5割未満 34.8%
わからない 25.2%
無回答 10.7%

(b)利用限度額に対する利用額の割合が7割未満の場合の理由

理由 構成比
必要ない 60.3%
利用料が高い 11.6%
利用したいサービスがない 6.0%
その他 11.7%
無回答 10.4%

 4.介護保険導入による在宅サービス利用者・家族の状況変化

a.要介護者本人の効果
(a)
「要介護者に意欲が出てきた」と回答している人の割合

札幌市 群馬県 相模原市 伊丹市 熊本市
16.0% 17.2% 11.9% 18.1% 27.0%

(b)「引き続き在宅生活を送れるようになった」と回答している人の割合

群馬県 相模原市 伊丹市
24.9% 15.6% 22.9%

b.家族への効果

「介護者が楽になった(介護負担が減った)」と回答している人の割合

札幌市 群馬県 相模原市 伊丹市 熊本市
42.6% 49.0% 37.2% 42.2% 41.0%

5.利用者と事業者の関係

a.利用者が事業者を選ぶ基準
現時点では、「制度前からサービスを受けていたところに頼んだ」とする者が多い。
(a)
熊本県の調査(複数回答あり)

制度前からサービスを受けていたところに頼んだ 71.8%
ケアマネジャーの意見を参考にした 19.6%
かかりつけ医の意見を参考にした 15.0%
知人の評判を参考にした 6.0%
いくつかの事業者から話を聞いてみた 1.7%
新聞やテレビの広告を参考にした 0.6%
その他 12.0%

 (b)滋賀県草津市の調査(複数回問いあり)

サービスの内容 15.9%
事業者の知名度 6.1%
事業者の信用 11.8%
利用者の評判 6.4%
サービス事業所の場所 15.8%
職員の技術や訓練の程度 6.3%
職員の態度 13.3%
利用者負担額 4.6%
今まで利用していた事業所 18.1%
その他  1.5%

 b.サービスの苦情・要望の言い易さなど 

熊本県の調査によれば、不満や要望を介護サービス事業者に直接言えるかどうかについては、「言えると思う」、「少しは言えると思う」と回答した者が全体の約3/4を占めている。

言えると思う 55.7%
少しは言えると思う 18.4%
どちらとも言えない 4.7%
あまり言えないと思う 12.2%
言えないと思う 7.3%
その他 1.6%

【介護サービス事業者の参入状況】

在宅サービス事業者の参入は4月以降も進んでおり、全国的に見たサービス事業所の総数は増加している。

一部の民間事業者にサービス拠点を削減する動きがあるが、従来から地域に密着して利用者との信頼関係を築いてきた事業者は、着実に事業を実施している。

  124 127 1211
訪問介護 9,185 12,960 13,349
通所介護 5,621 7,832 8,221
福祉用具貸与 2,585 3,894 4,604
居宅介護支援 19,466 21,852 22,015

()WAMNET掲載ベースの41日、71日および14日の比較

 【介護給付費の支払状況(暫定集計値)】

サービス提供月 4月分 5月分 6月分 7月分 8月分 9月分 10月分
在宅サービス 600 820 960 1000 1020 1020 1060
施設サービス 1540 1900 1980 1970 2030 1990 2040
合計 2140 2720 2940 2970 3050 3010 3100

(注1)各国保連の支払実績として1割の利用者負担を除く介護給付費(9割分)を集計したもの。

(2)福祉用具購入費、住宅改修費などの市町村が直接支払う費用を除く。

請求・支払状況が安定してきた6月から10月分の給付実績を平成12年度予算上の1月当りの単純平均と比較すると、9割弱の水準となっている(在宅サービス8割強、施設サービス9割強)

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