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寝たきりオムツ体験日記 前編

 以前、やまのいは、実際に寝たきりのお年寄りの苦痛を身をもって体験しようと、オムツをつけて2泊3日過ごしてみたことがあります。場所は、ある特別養護老人ホームの2人部屋。寮母さんなど現場の方にご迷惑をかけるということが、一番心苦しかったのですが、2泊3日だけ許していただきました。
 きき腕の右腕を三角きんで固定。右足も包帯でグルグル巻にして、右半身マヒを想定してベッドの上に横たわりました。

 夕方5時20分、「寝たきりオムツ体験」スタート。2人部屋。寝たきりのおじいさんと同室。挨拶をしましたが、返事が聞き取りにくかったです。言葉が若干不自由な様子。
 寝巻を着て、さらに寝巻の上からオムツをつけてもらいます。「何かあったら、ナースコールを押してくださいね」と言って、看護婦さんが立ち去っていきました。しばらく横になっていましたが、廊下で看護婦さんや寮母さんが走り回っておられる足音が聞こえます。この忙しそうな音を聞いただけでも、ナースコールを押すのを躊躇してしまいます。
 しばらくして、自分でパンツを脱いで地肌にオムツをつけました。自分でする理由は、パンツを脱いで直接オムツをしてもらうのが、寮母さんに申し訳なかったから。
オムツ着たやまのい
 この姿で2泊3日。

 夕方6時からは左手で夕食を食べてみました。夕食を食べ終わると、辺りは暗くなってました。
 まず、何よりも気になったのが2人部屋ということです。隣のおじいさんのイビキがうるさい。まだ7時なのにもうイビキをかいて寝ているのです。テレビも自室にはなくて退屈。やることが全然ありません。
 隣のおじいさんとはカ−テン1枚で仕切られていました。午後7時。ベッドに寝たまま、「シビン」を取り出し、その中に小便をしている音が聞こえてきました。ジョロジョロジョロ、という音はまだいいのですが、その後に「アッハ−」というため息が…。ジョロジョロ、アッハ−という音が真っ暗の2人部屋に響きわたります。確かに、アッハ−というため息が出る気持ちもわかります。寝たままでは、重力に反してオシッコをするわけですから、きばらないとオシッコが出ないんです。

 オムツをつけて痛感するのは、とにかく、オムツは人間の自立性を奪うということ。オムツをされると文字とおり、赤ちゃんに帰ったような気分になり、他人にお世話されて当たり前という気持ちがしてきました。
 使用したオムツは、1番外側に水色のビニールのオムツカバ−。その下に布オムツを十文字に2枚しき、さらに、前の部分を包み込むように紙オムツをつけたものでした。

 「オムツをつけるとオシッコも便も出なくなる」という話を事前には聞いていました。でも、やまのいは「それでは体験にならない」と考えて、わざと昼間からコ−ヒ−やお茶をガブガブ飲んでいたのです。その甲斐あってか、だんだんオシッコがしたくなってきました。しかし、オムツの中なのでなかなか出ません。寝たままだとお腹に力が入らないんです。こんな葛藤を30分くらい繰り返して、やっと7時半にオシッコが出ました。
 しかし一度にすると、オムツからあふれてシ−ツを汚してしまうのが心配でした。ということで、少しずつ分けてしました。寝たままだとお腹に力が入らないので、少しずつしかオシッコが出ません。昼間にお茶やコ−ヒ−をたくさん飲んだのが悪かった。いくらやっても出終わらないんです。さらに、一気にやってシーツまで濡らしたら、大変恥ずかしいので、少しずつ漏れていないことを確かめながらしました。こんな寝たきりは非人間的。おまけに、オムツの中がむれてくるし。40回くらい、少しずつオシッコが出て、最後の一滴が出終わったのが9時ごろでした。

 さすがに寮母さんにオムツを替えてもらうわけにはいかないと思いまして、オムツを自分で取り替えました。しかし、運んでもらうだけでも女性にはやってもらいにくいでしょう?。運よく、当日は寮父さんが夜勤していました。寮父さんが隣のおじいさんのオムツを交換に来られたときに、汚れたオムツを持っていってもらいました。
〜うるさくて夜は寝られず〜
 いっそのこと、ついでに大きいほうもやろうかと思いましたが、それこそ寝たままでは、きばれず出そうにありません。しゃがんで、きばってもオナラが出るばかり。こんな風に、寝たままだと、便秘になるのは当たり前です。トイレ誘導の大切さを痛感します。

 夜中12時を過ぎて、ようやく眠くなってきました。ところが、隣りのおじいさんが起き出したんです。おじいさんがアメ玉を食べている音が耳障りでした。真っ暗でシーンとした中なので、クチャクチャと音だけが響いてきます。梅干し味かな、オレンジ味かな、と想像してしまいました。
 暑苦しいのでのどが乾いてきました。しかし、ここで飲むとまたオシッコになるので我慢。
 寝ようと思うと、不思議なものでオシッコがまたしたくなってきました。昼間、水分をとりすぎた。一気にしてしまいました。オムツが濡れたまま、朝まで寝るのも勉強になると思いそのまま寝ました。しかし、オムツは濡れてくると重いし、生温かいし、ゴワゴワします。寝苦しい!!

 「どうしましたか!」という大きなナースコールに、夜中起こされました。時計をみると2時。隣りのおじいさんがナースコールを押したんです。部屋の天井に大きなスピーカーがあり、ナースコールを押すと、そのスピーカーから寮母さんが尋ねるのでした。カミナリのような大きな声に、さすがに飛びおきました。寮母さんが言うには、耳の遠いお年寄りが多いので音量を大きくしないとダメなのだそうです。それはわかりますが、同室の者も起きてしまうではありませんか?。
 寮母さんが部屋に来ました。どうやら、隣りのおじいさんは気分が悪いようで「オエッ、ゲロゲロ」と、ビニール袋に戻していました。

 それが終わったら、こんどは「ジョロ、ジョロ、アッハ−」というオシッコの音。夜中3時にまたナースコールで起こされました。こちらも眠いので「いい加減にしてくれ」という気になってきてしまいます。4時半に再び、オムツ交換でケアワーカーさんが隣りのおじいさんを訪問。また、目が覚めてしまいました。それから少し寝たら「おはよう」と寮母さんが来て、部屋のカーテンを開けました。時計を見ると5時20分。
 「朝食は何時からですか」と尋ねると、「八時から」とのこと。それならもう少し寝かせてほしいんですけど…。集団生活の窮屈さを痛感します。さらに、ほとんど熟睡できなかったので、頭がもうろうとしてきました。

 朝起きて、まずオムツを自分で交換し、ほっと一息。やはり、乾いたオムツは気持ちいいです。この爽快さをなんと表現すればいいでしょうか。オムツを寮父さんに持っていってもらいました。
 慣れない手つきで車いすを動かして、廊下の洗面所に行って歯をみがき、顔を洗いました。何だか身体全体がオシッコ臭くて嫌な感じ。できれば、シャワーを浴びたい気分です。

 顔を洗って部屋に帰ってくると、隣りのベッドのおじいさんが震える声で途切れ途切れこう言いました。「さ・く・ば・ん・は、う・る・さ・く・し・て・す・い・ま・せ・ん・で・し・た」
 ハッと思いました。「オシッコしたり、イビキかいたり、うるさいおじいさんだなあ」と内心思っていました。しかし、実は、おじいさんも非常に気を使っていたのです。このとき、雑居部屋って残酷だなあと思いました。うるさくされたほうだけでなく、うるさくしたほうも「申し訳ない」と自責の念にかられるのですから。でも、オシッコしたり、イビキかくのは、おじいさんが悪いのではないのです。腹を立てていた自分と無知さを恥すかしく思いました。

●寝たきりオムツ体験日記−後編


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