医療制度「財政」改革!

            第211号(2001/11/30)

 メールマガジンの読者の皆さん、こんにちは。
今は、11月30日(木)0:30。

今日の最大のニュースは、やはり、医療制度改革です。
このことを中心に過去2日間を振り返ります。

 ◆最初に私の感想は、今回与党が合意した医療制度改革は、正確に言えば、医療制度「財政」の改革であって、決して、「医療制度改革」ではありません。

 なぜなら、医療の中身をどうするかということは、ほとんど議
論せず、医療財政がどうすれば破綻しないか、というだけの 
改革であるからです。

 国民の願いは、どうすればより良い医療を、より効率的な医療を受けられるかです。

  さらに、無駄な薬、無駄な検査、社会的入院などの医療費のムダを減らしてほしいということです。

  にもかかわらず、「抜本改革」と言いながら、具体的な医療の内容や質については、ほとんど議論されていません。

  小泉首相の言う「三方一両損」はあくまでも「財政負担」の話であり、21世紀の医療の中身を、どのようにしていくかの問
  題には、ほとんど手がついていません。

  その中身の議論を抜きにして、負担のアップだけを決めるのはおかしいと思います。

   読者の皆さん、いかが思われますか?

■11月28日(水)
 ・朝8時から民主党の厚生労働部会。
  医療制度改革などについて議論。
 ・10時から雑誌の取材。
 ・11時30分から
  学者の方から医療制度改革について話を聞く。

 ・12時から男女共同参画調査会の会合。
  水島広子議員が座長、私が事務局長。今後の進め方などを議論し、各人の担当を決める。出席議員は、小宮山洋子議員、石毛えい子議員、加藤公一議員、中村哲治議員、山花郁夫議員など。

 ・午後2時から民主党の規制改革チームの会議。
  医療の規制改革について議論。議論の争点は、営利企業への病院経営の解禁。

  ◆私は「今の出来高払い制の状況では、営利企業が参入すると過当競争で医療費が増える」
   「今の医療法人が、営利を目的にしていないとは決していえないが、しかし、医療法人ということで、金儲け主義に対し
て一定の歯止めとなっている」などと主張して、反対の論陣
を張った。

 先輩議員と激しい議論になる。
 私は営利企業が悪いなどとは全く思わないが、ただでさえ既
にサービスが過剰で、これからどうやって医療サービスの量
を減らそうかという議論をしているときに、営利企業の参入
を認めるのは良くない、必要性が乏しいと私は考えます。

 ・午後4時から5時まで近畿の国会議員会議。
 ・夕方から晩まで、医療制度改革についての打ち合わせと、書類や本読み。
 ・夕食は政策秘書の海野君と、男一人暮らし同志でヘルシーな食事を軽く食べる。
  ちなみに、おそば屋の隣の席にはタレントの藤井隆さん(吉本興業)がいた。

■11月29日(木)
 ・朝8時から民主党の医療制度改革チームの会合。
  今井澄参議院議員が座長、私が事務局長。桜井充参議院議員、若林秀樹参議院議員など7人の国会議員が参加。
  あっという間に1時間。議論が白熱する。

 ・9時40分から、岡田克也政調会長と、医療制度改革について打ち合わせ。
  医療制度改革チームの現時点での考えを簡単に言えば、
  *3割への患者の自己負担アップは反対。
  *老人医療費の伸び率管理(抑制)は、理屈としては理解できるが、実際の方法が難しく、実現困難。
  *診療報酬は、賃金や物価が下がっている今日、下げるのはやむを得ない。

   このような案に対して、岡田政調会長から「甘すぎる」と言
   われる。

  ◆私は、一律に自己負担アップさせたり、伸び率を抑制するのではなく、無駄な部分、非効率な部分を減らすような改革が必要と考えている。

   たとえば、
   *医療の標準化、
   *包括払いへの移行、
   *社会的入院の削減(十分に介護施設や在宅サービスなどの受け皿は当然必要)、
   *病床数の削減(日本の人口当たりの病床数は欧米の2倍、
*無駄な薬や検査を減らすようにする、
   *情報公開や広告規制の緩和により、悪い病院が淘汰されるようにする

    などの改革により、医療費の伸びを抑えるべきだと考えている。

    このような抜本的な改革について、今回、政府は多少の方向性は示しているものの、実現の可能性は低く、改革のスピードは遅い。

 ・10時30分からケアハウスに関する来客。
 ・11時半から岡田政調会長を囲み、1年生議員15人で昼食会。
  カレーライスを食べる。
 
 ・その後、菅直人幹事長にも会って、医療制度改革について議論する。例によって、菅さんは強硬な意見。元厚生大臣なので、しっかりした主張を持っておられる。

 ・午後1時から衆議院本会議。
 ・午後1時半から再び今井澄議員、民主党の政策調査会スタッフで厚生労働担当の田鹿さん、政策秘書の海野君と医療制度改革について議論。
 ・午後2時から「科学技術・産業政策研究会」の設立準備会に参加。私は大学では工学部でバイオテクノロジーを専攻し、酵母菌の研究をしていたので参加。
 ・午後3時から民主党の政策決定機関「ネクストキャビネット」
  に出席。医療制度改革が議題にのぼるからだ。
  鳩山代表、菅幹事長、岡田政調会長、枝野幸男政調会長代理などが参加。

  まず、規制改革について、病院経営への営利企業の参入問題が議論に。

  推進派は野田佳彦議員、鈴木康友議員、原口一博議員。
  しかし、幹部から慎重な意見も多く、結論は持ち越し。

  前述のように私は慎重派。
  実は、野田さんも鈴木さんも松下政経塾の1期生、原口さんは3期生で、私は7期生なので、3人は尊敬する大先輩である。

  しかし、政策の異なる点についてはきっちり議論している。

 ・その後、医療制度改革について議論。
  年間の医療費の総枠を、たとえば30兆円などと、決めて抑えるべきという意見などが出る。
  ◆私は、下手に医療費の総枠を決めると、金儲け主義の医療機関が診療を拡大して損をまぬがれ、良心的な医療機関の収入が逆に減るという「悪貨が良貨を駆逐する」ことになりはしないかと心配している。

 ・医療制度改革の議論が終わり、走って、別の会議室へ。
  地方自治体の方々が、ホームレス問題について厚生労働省の担当者と話をするのに立ち会うためだ。私と石毛議員、鍵田議員が出席。

 ・午後4時半から5時半まで。
 「ホームレスの自立支援法案は、まだ成立しないのか」との質問を受ける。
  実は、あと一歩のところで与党内の調整が難航している。

  ◆この臨時国会で成立しなければ、また、多くのホームレスの人々(全国に3万人、大阪に約7000人、東京に6000人、京都に500人など)が寒い冬を路上で暮らすことになり、凍死する人も続出する可能性がある。何とか成立のためにあと一息頑張りたい。悲願である。

 ・午後5時半から6時半まで、連合が主催する医療制度改革についての会合に参加。民主党の議員30人が参加。
  「民主党の考えは?」という質問に対して、朝日俊弘参議院議員が、「医療制度改革チームの事務局長の山井がここに来ているので説明してもらいます」とのこと。

  私が簡単に説明。連合は、診療報酬の引き下げや医療費の伸びの抑制を強く求めている。

 ・午後6時半から9時間まで、民主党の1年生議員の勉強会
 (参加者12人)。
  ゲストは、連合本部の草野事務局長、鈴木事務局次長と雇用政策、男女共同参画社会づくり、ホームレス法案、21世紀の製造業のあり方、第二次補正案、国債発行の30兆円枠などについて幅広く議論。

 ◆宿舎に帰り、テレビを見る前に実家の母に電話。
  飼っている猫(ちゃちゃ)の様子を聞いた後、

 「医療制度改革の内容は決まったか?」と聞くと、
 「決まったみたいけど、なんか玉虫色でようわからへん」と母。

  次に母が言った言葉は、
 「和則、医療保険に入らなあかんわ」。
 「俺は国民健康保険に入ってるやん」
 「違う。それ以外に民間の医療保険に入りなさい。これから病気になったら、お金がかかるようになるから」とのこと。

  うちの母が思うくらいだから、多くの人々が同じように思って
  いるだろう。今回の改革が国民をますます不安にさせている。

  テレビを見ると、
  「患者の自己負担は必要な時に3割に引き上げ」とのこと。
  小泉首相は「三方一両損でうまくいった」と笑顔。
  かたや、自民党の厚生族議員は、
  「我々の要求どおりの結論。患者の自己負担の3割へのアップは、やるかやらないかわからない」と、こちらも自慢げ。

  どこかで見た光景。
  高速道路問題でも、1週間前に同じように、小泉さんも道路族議員も、両方が「自分たちの要求が通った」と胸を張っていた。
  政治は妥協と言うが、結局は先送りではないか。

  冒頭に書いたように、医療の中身の議論はほとんど先送り。
  今回の改革議論で、自分たちが受ける医療サービスが、少しでも良くなると、希望を持った人はいないだろう。

  それが医療の「抜本改革」のはずがない。
  医療「財政」の改革に過ぎない。

■なお、このような議論の影で、中医協(中央医療協議会)での議論において、長期入院(半年以上)の高齢患者の自己負担をアップさせる方向に決まりつつあります。

 これに該当するのが約15万人。

 事実上、多くの高齢患者が退院を余儀なくされます。

 その受け皿を介護施設や在宅サービス、訪問看護、在宅医療などでつくらねばなりません。介護基盤の整備を急ぐ必要があります。

  ◆医療制度改革については、さまざまなご意見があろうかと思います。

   率直なご意見お聞かせください。

  以上、今日は非常に長いメールマガジンになってしまいました。
  時計は深夜2時。
  最後まで読んで下さり、有難うございました。

■予定
 ちなみに、今から5時間寝て朝7時に起き、
 11月30日(金)は、
 ・朝8時から再び医療制度改革チームの会合。
 ・10時から女性政策会議(介護と女性について)。
 ・11時から衆議院厚生労働委員会。
 ・午後2時から衆議院本会議。新幹線で戻り、
 ・夜は京都で、玉置一弥衆議院議員主催の会合に福山哲郎、松井孝治両参議院議員と共に出席。

■12月1日(土)
 ・午前中は民主党の会議。
 ・午後は宇治での福祉祭り。
 ・夕方からは忘年会が2つ。

■12月2日(日)
 私の主催の会合が4つ。
 ・12時半から京田辺市で会合。
 ・午後1時から2時半まで「山井和則と語る会」
 (国会の近況報告、医療制度改革、雇用対策などがテーマ)、
 ・午後3時から4時半まで福祉学習会(介護保険について)。
 ・午後7時から8時半まで山城町で福祉学習会。
  詳しくはホームページをご覧ください。
   http://www.yamanoi.net/kai/01/011202.htm
  ◆質疑応答の時間もあります。ご関心のある方はどうぞ、
   お気軽にご参加ください(予約不要、入場無料)。
           やまのい和則 拝

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