やまのい和則の
     「軽老の国」から「敬老の国」へ

            第136号(2001/05/15)

 メールマガジンの読者の皆さん、こんにちは。ご無沙汰して申し
訳ありません。
今は5月14日晩9時。東京に向かう最終の新幹線。久しぶりに
メールマガジンを発行します。

先週、ハンセン病の判決が出たので、少し重いシリアスなメールマ
ガジンになっていることをお許し下さい。

 本当に先週は忙しかった。東京にいるときは、朝8時の勉強会に
始まり、夕方以降は、毎晩、4つくらいの会合に出席。

 これから1か月半、6月25日の会期末までは、今以上に忙しく
なりそうです。

   ☆           ☆         ☆

 今週18日(金)は、待ちに待った衆議院の厚生労働委員会での
一般質疑で、私が質問に立つ予定です。

介護保険1年の総括と問題点を中心に、坂口力厚生労働大臣に質問
する予定です。今週はその質問準備と、動き出す総務委員会、厚生
労働委員会で忙しくなります。

   ☆           ☆         ☆

 昨日、13日(日)は午前中から10の会合に参加して、最後は、
精華町の町会議員選挙の開票(11時半)。帰宅は夜中12時半。

久御山町(12人)や八幡市(15人)でのミニ集会をにも参加。

懐かしい仲間との語らい、新しい方との政治や福祉の語らい。とて
も有意義で嬉しかった。私が福祉の仕事に頑張っている国会報告を
すると、皆さんとっても喜んで下さった。松井孝治さんのPRをす
る。

   ☆           ☆         ☆

 14日(月)
 朝7時から8時過ぎまで小倉駅で玉置衆議院議員などとともに、
松井孝治さんのチラシまき。

6月2日と6月10日に、松井孝治さんや菅伸子さん(菅直人さん
のご夫人)を招いて京都南部でトークの会をします。
詳しくは、ホームページ
( http://member.nifty.ne.jp/yamanoi/news/01/010602.htm )
に載せています。ふるってご参加ください。

 9時半から11時過ぎまで、民主党京都府連で参議院選挙につい
ての会議。
 1時半からは3時半までは、厚生労働委員会に提出されている食
品衛生法の改正の請願について、関係者の方々から話を聞く。 

 夕方は、自治体議員さんと共に、京都南部の介護保険の進捗状況
や問題点を調べ、国(厚生労働省)への要望などを議論。

多くの自治体から、「グループホームは大変効果はあるが、介護報
酬が低く、採算が成り立たないので数が増えない」という声を聞き、
改めて、早急な介護報酬引き上げの必要性を感じた。

   ☆           ☆         ☆

 さて、小泉首相について少し書きます。
 先週は、月曜から水曜まで、衆議院本会議で、小泉首相の所信表
明演説とそれに対する各党の代表質問でした。

新聞やテレビでも既に報道されていますが、小泉首相が「改革」を
訴える演説には、私たち民主党の議員が拍手し、与党自民党の議員
席はシーンと静まり返るシーンが多かったです。

 マスコミの方もみんな驚いておられました。
「どっちが与党なんだ?」と。

小泉首相の自民党内での支持のなさ、それと、自民党の「改革」に
対する後ろ向き姿勢を痛感しました。

 自民党の多数の思いは、「参議院選挙に勝つには小泉さんを大事
にしないとダメだが、参議院選挙が終わったら、さっさと小泉さん
には辞めてもらおう」という感じです。

 小泉さんの演説の時、私は、ちらりちらりと後ろの席を振り返り
ました。小泉さんの演説を苦虫をかみつぶしたような顔で聞いてい
る自民党の幹部の方々の顔を見るにつけ、自民党の主流派争いは厳
しいものがあると感じました。
 私の直感では、自民党内の反発によって、小泉さんは改革はでき
ないのではないかと感じています。

   ☆           ☆         ☆

 また、大きなニュースは、ハンセン病国家賠償訴訟の初の判決が
熊本地裁で11日金曜日にあったことです。

原告の勝訴です。

杉山裁判長は、
「遅くとも1960年以降は隔離の必要性は失われた。この時点で隔
離政策の抜本的な変更などをすべきであった」と、国の違法性を認
め、原告127人全員に総額18億2380万円を支払うように国に命じ
ました。

 夕方、弁護士会の方が、資料を持って、私の議員事務所に来てく
ださいました。判決内容を聞いて、涙が出そうになりました。
声を詰まらせながら、念を押して、「勝訴なんですね」と聞くと、
「そうです」との返事。

              ☆

 このハンセン病の問題はあまりにも悲惨である。人権無視。

原告の方々の失われた人生を思うと、私は心が張り裂けそうであり、
同時に、それを放置した役所や国会、国会議員の責任を感じる。

 そして、気になるのは、今の精神医療でも似た現状があることだ。
もちろん、多少次元は違うかもしれないが、共通点を私は感じる。

治療が一段落し、本当ならば地域で暮らせるにもかかわらず、精神
病院に10年、20年と長期入院を強いられている人々が日本には多
くいる。

日本には精神病院が34万人分あるが、欧米の平均の倍以上の数で
あり、日本という国がいかに安易に精神障害者を長期入院させてし
まっているかがわかる。

これは私は決して個々の精神病院を批判しているのではない。
実際、献身的に取り組んでおられる精神医療関係者には頭が下がる。

しかし、私は、「隔離収容主義」をとる、日本の国の精神障害者政
策、つまり、「国の政策」を批判しているのだ。

   ☆           ☆         ☆

 少しハンセン病の問題と精神障害者の問題をたぶらせて考えてみ
たい。 
 今回の判決は、治療法が進歩したあとも、ハンセン病の患者を終
生隔離した国の政策は、「明白な憲法違反だ」と認めた。

判決骨子は、次の通り。
(1)遅くとも1960年代以降においてハンセン病は隔離政策を用
   いなければならない特別な疾患でなくなり、すべての入所者
   及び患者について、隔離の必要性が失われた。
   厚生省はこの時点で、隔離政策の抜本的な変換をする必要が
   あったが、らい予防法(新法)廃止までこれを怠っており、
   厚生大臣の職務行為に国家賠償上の違法性、および過失があ
   ると認めるのが相当である。

(2)隔離規定は1960年代には合理性の根拠を全く欠いており、
   違法性が明白になった。65年以降に新法の隔離規定を改廃
   しなかった国会議員の立法上の不作為につき、国家賠償法上
   の違法性及び過失を認めるのが相当である。

              ☆

 でも、これはハンセン病に限ったことではない。

精神障害者で治療が一段落しても、「地域に受け皿がない」などと
いう理由で、10年、20年退院させてもらえない人々はどうなるの
か。

また、痴呆性高齢者についてもあてはまる。
在宅サービスやグループホームが足りないからという理由で、本当
は必ずしも入院の必要がないにもかかわらず、死ぬまでずっと精神
病院などに何年も入院しつづけ、一歩も社会に出られない痴呆性高
齢者の人権はどうなるのか。

人手が少ないなどという理由で、ヒモでベッドに縛られている痴呆
性高齢者などの人権はどうなるのか。

私が昨年末調査したある精神病院も、入院患者の8割が痴呆性高齢
者であり、その多くが必ずしも入院を必要としない患者であった。

 この判決はあまりにも重い。そして、今も似た問題は放置されて
いる。

              ☆

 判決は、厚生大臣の違法性と過失を認めているが、厚生大臣が過
去13年で15人もコロコロ変わっている日本で、厚生行政がまっと
うに行われるはずがない。

所詮、今までの大臣は名誉職であったのではなかったか。

そして、1年足らずの在職期間だから、ハンセン病のような大きな
問題はみんな敬遠した、黙認、いや、放置したのだ。

 これも個々の大臣の責任というより、システムの問題だが、コロ
コロ大臣を無責任に変えるシステムを放置してきたもの、国会議員
である。

 さらに、国会議員の過失も問われている。
隔離を推進した議員が拍手を浴び、隔離を批判し、ハンセン病患者
が地域で暮らせるようにしようとした議員は、「危険な議員」とし
て逆に住民から批判されるような風潮はなかったのか。

 言うまでもなくこれは国の責任。しかし、それは、国会の責任で
ある。

              ☆

 もし今、多くの精神障害者や痴呆性高齢者が立ち上がり、ハンセ
ン病と同じように「隔離政策」を「違法」として訴えた場合、どの
ような判決がでるだろうか。

しかし、実際には、精神障害者は、痴呆性高齢者は、ほとんど裁判
に訴えることすらできない。

              ☆

 今回の判決は、「国会議員の責任とは?」という重い宿題を、私
にも投げかけられた。

今回の判決が画期的なのは、悪いことをしたから「違法」だという
のではないことだ。

人権無視の隔離政策について、
「厚生大臣であるのに何もしなかった」
「国会議員なのに、その状態を放置した」
「改革できる立場と地位にありながら、ほったらかしにした」こと


「違法」なのだ。

 赤信号みんなで渡ればこわくない。という言葉がある。
「違法状態、みんなで放置すればこわくない」ということであって
は決してならない。

              ☆

 今から5年後、10年後になって、
「20世紀の初頭まで、地域に適切なサービスがあれば、入院する
必要がなかった精神障害者や痴呆性高齢者を安易に入院させていた
のは、違法であった」という判決が将来出ても遅いのである。

その方々の人生は取り戻せない。 

              ☆

 この判決について、国は控訴するかどうかを検討中だという。

昨日、坂口大臣に面会した原告団は、謝罪する大臣に対して、「国
が控訴しないと決定するまで、謝罪は受け入れられない」と言った。

 原告団の平均年齢は74歳。ここで、控訴したら、原告の方々は
生きて国の謝罪を受けられない場合も増えるだろう。

国は絶対に控訴すべきではない! 

   ☆           ☆         ☆

話は変わる。
 明日(15日)は、私が座長を務める民主党の介護保険ワーキン
グチームで、介護保険の問題点や改善策について議論する。昨年か
ら10数回議論をしてきたが、5月末までにまとめる予定だ。

また、私が事務局長を務めるホームレス対策の議員立法の打ち合わ
せもある。衆議院法制局(法律をつくる部局)にも出席してもらい、
議員立法の原案についてホームレス問題ワーキングチームの代表で
ある鍵田節哉衆議院議員をはじめとする議員と議論する。

私にとっては生まれて初めて参加する議員立法だ。
これは、全国3万人と推定されるホームレスの方々が、仕事に就き、
住居に住むことができることを支援する法律である。

   ☆           ☆         ☆

 ハンセン病問題で明らかになったのは、日本という国の安易な
「隔離収容」の医療や福祉である。それを改革するためにこれから
も頑張りたい。

 以上で、今日のメールマガジンは終わります。

   ☆           ☆         ☆

追伸
京都府が素晴らしい「グループホームの運営の手引き」という冊子
を発行されました。

「痴呆性高齢者グループホーム開設/運営の手引き
      〜グループホームケアの普及・充実をめざして〜」
                      京都府 保健福祉部 高齢化対策課 発行

グループホームの基礎知識から、開設・運営、指定申請手続きなど
を、開設事例を挙げ具体的に説明されています。

詳しくは、ホームページ
( http://www.yamanoi.net/grouphome/siryou/s_01/010412kyoto.htm )
に、冊子についての報道を載せています。

知人の民主党の府会議員さんが、府議会でグループホームをとりあ
げて下さったことも、冊子作成の1つの原因だそうだ。うれしい。

しかし、素晴らしい冊子はできたが、採算が成り立ちにくいので、
グループホームはなかなか増えない。これは、国の問題だと痛感。
           やまのい和則 拝
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☆やまのい和則の「軽老の国」から「敬老の国」へ☆
    (2001/05/15現在 読者数 1386)

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