やまのい和則の
     「軽老の国」から「敬老の国」へ


            第114号(2001/03/23)


 メールマガジンの読者の皆さん、こんにちは。
いま、私は、「介護保険シンポジウム」(長寿社会開発センター主
催、厚生労働省後援)の会場である新高輪プリンスホテルに来てい
る。1500人の会場は超満員。その一番端の席でまわりの迷惑にな
らぬよう、そろりそろりとパソコンを打っている。


 壇上には、NHK解説委員の村田幸子さん、鳥取県西伯町の坂本
昭文町長、みつぎ病院の山口昇先生、樋口恵子先生、ミシガン大学
のジョン・キャンベル教授、堤修三厚生労働省老健局長がおられる。
「介護保険の1年を振り返り今後を展望する」というテーマのパネ
ルディスカッション。


 なお、来週金曜日30日に衆議院の厚生労働委員会が開かれます
が、私も質問することになりそうです。

雇用対策法の法案審議ですが、それに加えて私のライフワークであ
るグループホームについての質問をしたいと思います。


 ここ3日間の報告を書きたい。
 実は、私はこの会場に複雑な気分でいます。
というのは、今日は朝、8時から民主党の医療保険改革のワーキン
グチームの会合を行い、国民健康保険連合会の理事長さんはじめ幹
部の方々の話を聞きました。

そのあと、衆議院の厚生労働委員会に出席し、労働時間の短縮を促
進する措置法の法案審議に参加し、非常に重要な法案なのだが、抜
け出して、タクシーを飛ばして、この会場に来ているからだ。


 昨日8時から9時半まで、民主党の厚生労働部会があった。
民主党の厚生労働関係の国会議員10名を含む30人くらいの会で、
民主党としての厚生労働分野の国会での取り組みを議論する場だ。

歯科医療の改革案や水道法の改正について厚生労働省から話を聞い
た後、担当者が退席したあと、私は発言した。

 「この通常国会で、せめて1日でも介護保険の審議をすべきだと
思います。介護保険がスタートして1年。

さまざまな問題点も指摘されています。にもかかわらず、法案の審
議ばかりして、介護保険を厚生労働委員会でほとんど議論しないと
すれば、国会はいったい何をしているのかということになります。

明日も大きな介護保険のシンポが1000人規模であります。

一般の方々が様々なシンポを開き、介護保険の1年を総括している
のに、国会が介護保険を全く議論しないのはおかしい!」。


 今までこのメールマガジンで触れているように、
国会では、法案を審議する「法案質疑」と、
厚生労働省に関する全般を議論する「一般質疑」の二種類がある。

しかし、この通常国会では法案が多いため、一般質疑がほとんどな
いのだ。

つまり、介護保険についての法案が出ていない以上、この通常国会
では介護保険はほとんど議論されないのだ。


 私の「介護保険を議論するため、一般質疑を衆議院厚生労働委員
会ですべきだ」という意見に対して、
先輩議員は、「自民党は法案の成立を最優先にしているので、一般
質疑には応じないでしょう。残念ながら、山井さん、無理です!」
と答えました。

つまり、与党は、一般質疑はなしで、この国会で提出されている
20本くらいの法案を一日も早く成立させたいのです。


 国会の運営は与党が決めるので、民主党の力ではどうしようもあ
りません。しかし、私は、介護保険が導入されて一年経ち、様々な
問題点もあるのに、ほとんどそれが議論できない国会っていったい
何だろう? と思うのです。

 与党にとっては、法案の成立が優先で、より良い介護保険にした
いなどという次元の発想は全くありません。国会とはそういうとこ
ろなのでしょうか?


 介護保険はグループホームと並んで私のライフワークです。
1993年から私は拙著に介護保険の必要性を書き、訴えてきました。
いろんな批判も受けました。もちろん、問題点もあります。

しかし、私は、推進論を訴えた人間の一人として、生涯を通して、
介護保険で生じる問題点については、少しでも小さくなるように努
力する責任があると自分自身思っています。


 まさに、そのために私は国会に来たのです。
しかし、その国会で衆議院の厚生労働委員会が2月から6月まで
5ヶ月開かれるというのに、介護保険の関連法案がないという理由
で、介護保険が議論できないというのはおかしいと思います。


 委員会に出てくる法案に受け身で対応するというような国会では
意味がありません。

 そんな介護保険への思い入れもあり、私は、こっそり短時間、
国会を抜け出し、この会場に来たのです。


 この会場に来て、私は万感胸に迫りました。

なぜなら、私も呼びかけ人の一人として、
「いま、なぜ介護保険なのか」という1000人規模のシンポを
1993年に朝日カルチャーセンター主催で行ったのが、日本初の
本格的な介護保険のシンポでした。あれから8年。


 超満員の会場を歩くと、懐かしい仲間にも会います。
かれこれ8年もともに運動してきた仲間ですから、同窓会ののよう
なものです。みんな、介護保険の問題点は認めながらも、介護保険
の推進で動いた仲間です。


 でも、私は、複雑な気分なのです。
この1500人の熱気に満ちたシンポ。
ここにこそ、本当は厚生労働委員会所属の国会議員が全員来て、
介護保険の1年間の総括を学び、国会で議論すべきでなのではない
でしょうか。


 実際、パネラーの方々が介護保険の問題点を話し、厚生労働省の
堤局長がメモをとって聞いておられます。

しかし、国会でもこのような議論が必要なのではないでしょうか。

 いま、厚生労働省の桝屋副大臣が来賓として入場。
まあ、副大臣も委員会を離れて、こちらに来ているのだから、俺も
こちらにいていいか。ちなみに、坂口大臣は参議院の予算委員会で
国会に釘付け。


 さて、私はこのあと国会の厚生労働委員会に戻ります。感想をひ
とこと。

 パネラーの厚生労働省の堤局長は、
「介護保険サービスの量の拡大は、当然だが質の向上も重要。たと
えば、グループホームや特別養護老人ホームのユニットケア、個室
化など、大規模処遇から小規模ケアへの転換も急がねばならない」
という趣旨の発言。うれしい。


 午後は、衆議院本会議。
そのあとは、千葉の知事選挙の応援を晩の8時まで。正直言って、
このシンポは晩の懇親会まであるので、私も出席したい。しかし、
私も政治家である以上、重要な千葉の知事選挙の応援を優先せざる
を得ない。


 さて、報告。3月21日は午後2時半から若手民主党議員の勉強
会。講師は小沢一郎さん。テレビや新聞がたくさんきて、熱気はむ
んむん。議員も30人くらいが参加。小沢さんは、さすがに貫禄は
ある。

 「参議院選挙で10人以上の差をつけて与党に勝って、衆議院の
解散に年内に持ち込んで政権交代を!」 というのが主張。
詳しくは書かないが、印象としては、「俺についてこい!」タイプ。

菅さんは、「政治を官僚の手から市民の手に取り戻したい」タイプ。
元気のいい、ケンカっぱやい兄貴という感じ。
鳩山さんは、ロマンチストで純粋でやさしくて面倒見のよいお兄さ
んという感じ。

二人とも、今までの自民党政治とは全く感じが違う。
しかし、小沢さんは、自民党に近い「玄人の政治家」という感じ。
「自民党をぶち壊したい!」という気迫を感じた。


 21日、夕方は、衆議院総務委員会の懇親会。
ホテルで、総務大臣をはじめ、総務省の役人さん、総務委員会の
与野党議員が、立食パーティー。100人規模。

 「野党の皆さんのご協力で総務委員会では法案も順調に成立し・
・・・」と、壇上でマイクで自民党議員が挨拶。

 「なんだこれは? こういのを馴れ合い政治と言うのじゃないか」
と思った。来てわかったが、「与野党仲良くして、法案をはやく穏
便に成立させましょう」というのが、この懇親会の趣旨のようだ。

 「なぜ、与党の議員や役人の方々と酒を飲んで、今の時期に仲良
くせねばならないのか。総務委員会でけんけんがくがく議論してい
るさなかに」と感じた。

 しかし、そこは貧乏根性。この日はろくな食事をとっておらず栄
養が足りないので、しゃぶしゃぶやお寿司やサラダなどを立食で急
いで食べる。さすがにお酒は飲む気にならない。

 先輩の武正議員も、「こういう会は問題だよ」と言う。
そそくさと、「栄養補給」だけして武正議員と会場を後にしたが、
受付で「おみやげ」までもらった。

 俺もお寿司やしゃぶしゃぶを食ったが、いったいこの懇親会は誰
がお金を出しているのか。少なくとも議員は会費無料。 


 あとで先輩議員に文句を言った。
「この会は、お金はどっから出てるんですか」
「おそらく、衆議院総務委員会のお金だろう」
「でも、委員会のお金ということは、国民の税金でしょう。なぜ、
国民の税金で、与野党の議員や官僚が一緒にご馳走を食べてお酒を
飲む必要があるのですか。今後やるなら、議員のみで自己負担でや
るべきです」
「まあ、これが国会の慣例なので、この委員会だけ方法を変えるわ
けにもいかないので・・・」


 こんなことをしているから、政治家は一般の人々から信用されな
いのだ。

 私も元来ケンカ好きではないが、国会の委員会とは、与野党がわ
かれ、官僚の方々とも真剣に厳しい議論をし、ケンカをする場だ。
国民の利益のために。しかし、それが馴れ合いになっては国民の税
金で政治家が雇って頂いている意味がない。


3月22日木曜日 
 朝8時から民主党の厚生労働部会。
9時半から総務部会で郵政事業について総務省からヒヤリング。
10時から一橋大学の高山教授から年金改革の講義を受ける。
11時半から、熊谷弘議員を囲む1年生議員の会で、参議院選挙へ
の取り組みを議論。

 午後1時からは衆議院本会議。
そのあと、民主党の総務部会。
私は中村哲治議員と共にITバリアフリー法案の担当になった。
障害者がITを利用しやすようにする法案だ。

 晩は、支援団体の方々の勉強会。そのあとは、学生インターンさ
んのお別れ会。
 

 さて、介護保険とグループホームについて情報提供。

厚生省がまとめた介護保険の実施状況(都道府県や市町村が介護保
険の進捗状況をまとめたもの)の資料を、私のホームページに載せ
ました。なかなか参考になります。お目通しください。
( http://www.yamanoi.net/   から 高齢者福祉を考える(福祉)へ)

 また、3月上旬に厚生労働省が発表した痴呆性高齢者向けグループ
ホームの文書も( http://www.yamanoi.net/ から グループホーム
のホームページへ)お目通しください。

☆「痴呆性高齢者グループホームの適正な普及について」
平成13年3月12日
各都道府県介護保険担当部(局)宛
厚生労働省老健局計画課長より

☆「指定痴呆対応型共同生活介護(痴呆性高齢者グループホーム)
の適正な普及について」
平成13年3月12日
各都道府県知事 宛
厚生労働省老健局長より

☆「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に
関する基準について」の一部改正について」
各都道府県介護保険主管部(局)宛
平成13年3月12日
厚生労働省老健局計画課長より


 主な趣旨は、グループホームについて、これからは市町村がもっ
と関与せねばならないという具体的な内容、さらに、グループホー
ムの質の向上、管理者への研修、第三者評価の導入などについての
指導内容です。

 今日のシンポ。私も壇上にあがって、介護保険の問題をいっぱい
言いたい気分だったが、それは国会でやりたい。介護現場では、み
んな深刻に苦しんでいるケースも多い。最初にも触れたように、来
週金曜日30日に質問できそうだ。その時はメインは雇用対策法だ
が、グループホームの問題も取り上げたい。

 告知 3月31日(土)滋賀での宅老所シンポの詳細が決まりま
した。詳しくは、私のグループホームのホームページに掲載します。
外洋を柿の載せました。とてもいいシンポです。
(ただし、残念ながら私は出席できません)
           やまのい和則 拝


 街かどケア滋賀ネット 設立記念フォーラム
1. 趣旨
 わたしたちは、地域に密着した小規模・多機能・双方向のスタイ
ルで、居心地のよい空間と安心・納得・充実の時間を、さりげない
支えで創っていこうという想いで「街かどケア滋賀ネット」を設立
しました。
 そこで、「街かどケア滋賀ネット」の設立を記念して、街かどで、
馴染みのところで、馴染みの人たちと、笑顔のある、その人らしい
暮らしをみんなで支え、創っていくためにこのフォーラムを開催し
ます。
★ 「街かどケア」のスタイル
宅老所、グループホーム、ユニットケア、地域サロンなど
2 主催
街かどケア滋賀ネット
3 期日
平成13年3月31日(土) 13:00〜16:30
4 会場
県立長寿社会福祉センター(草津市笠山7−8−138)

  (2001/03/23現在 読者数 1203)


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