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   やまのい和則の

     「軽老の国」から「敬老の国」へ

   - Yamanoi Kazunori Mail Magazine -

            第42号(2000/10/01)

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 メールマガジンの読者の皆様、ご無沙汰しています。

国会は、参議院の選挙制度改革で、もめて空転しそうです。

これからが臨時国会の本番。

 さて、予算委員会の模様を通じて、民主党での、介護保険見直

し案の政策が決まる過程についてレポートを送ります。

少し長いですが、ご参考になれば幸いです。

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 「わが党は、このたび『介護保険に対する7つの提言』をまと

めました。ケアマネージャーのケアプラン作成の介護報酬の引き

上げ、今後新設する特別養護老人ホームや老人保健施設は、原則

として個室とすること、グループホームの介護報酬を夜勤が組め

るよう引き上げること・・・・」 

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 9月28日(木)午後2時。

ここは、衆議院の第一委員会室。

衆議院の予算委員会で、民主党の菅直人さんが、森喜朗首相や津

島雄二厚生大臣に質問しています。

この光景は、NHKの国会中継で全国に生でテレビ放映されてい

ます。委員会室の後方で、この光景を見ながら、私は胸が熱くな

りました。

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国会の仕組みについて、少し説明します。

国会においては、質疑は大きく分けて3種類あります。

 一番大きなのが本会議での代表質問。

これは、通常国会や臨時国会が始まった時に、首相が所信表明演

説を行い、それに対して、与野党の代表が質問するものです。

次に大きなのが代表質問に続いて行われる予算委員会での質問。

与野党はエースの議員を質問に立たせ、厳しい質問を首相や大臣

にします。以上2つの質問は、テレビで生放送されます。

 その次の段階は、福祉の場合は、厚生委員会での質疑になり、

これは、与野党の厚生委員会に所属する30人の議員だけが出席

するもので、実質的なかなり細かい議論がされるが、テレビ中継

はされない(衆議院ホームページでは中継)。

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 冒頭に紹介した菅さんの質問は、予算委員会で行われたもの。

厚生委員会でさえ、介護保険のことは導入後、十分に議論されて

いないのに、花形委員会である予算委員会で、ケアマネージャー

や施設の個室化、グループホームの問題などが取り上げられたの

は、日本の歴史上初めてのことです。

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 私が、国会議員になって3ヶ月が経ちました。

つくづく感じるのは、国会で議論される多くの問題の中で、介護

問題は、非常にちっぽけな問題として認識され、そもそも介護問

題に関心を持っている国会議員が、非常に少ないということです。

 わかりやすく言えば、「介護なんか、家族がやったらいいんだ。

嫁の仕事だろう」という考えを持った議員が多い。

「介護保険なんか導入するな。嫁を怠けさせるだけだ」と、私も

ある議員から言われたことがある。

介護現場とは大きな大きなギャップがあります。

 もう少し介護に関心が高い議員になると、「家族だけで支ええ

るのは難しいので、介護保険も必要」という意見になるが、この

ような議員でも、「とにかく、介護保険料はできるだけ安いほう

がいい。高くなると国民の反発を招き選挙に不利だ」という意見

の人が多い。

つまり、介護サービスの中身には、ほとんど理解も関心もない。

 480人いる衆議院議員の中で女性議員は20人。介護経験のあ

る議員は、ごくわずか。ですから、社会では大きな問題である介

護問題も、国会では問題として認識されていない。

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 そんな国会の予算委員会で、菅さんが冒頭のような質問をしま

した。

菅さんの他の質問は、「沖縄基地問題についての森首相とクリン

トン大統領の会談」「あっせん利得罪法案」「参議院選挙制度改

革」などです。

皆さんもテレビ中継でご覧になったことがあるかと思いますが、

やじや怒号が飛び交う予算委員会で、いきなり「ケアマネージャ

ー」や「老人ホームの個室化」の話が出たとき、どうなると思わ

れますか。

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 「日米首脳会談で、森首相はクリントン大統領に新たな基地の

15年の使用期限についてきっちり要望をしたのですか?」とい

う厳しい質疑のあとで、冒頭のように

「ところで、介護保険についてですが・・・・」と、菅さんが言

ったものですから、予算委員会は一瞬、冷ややかな空気が流れま

した。

 「ケアマネージャー」「老人ホームの個室化「介護報酬」

「グループホーム」。

おそらく、今までやじや怒号を発していた国会議員の方々の多く

は、それぞれの言葉の意味さえわからなかったのだと思います。

ピタッとやじがなくなり、急に予算委員会室は静かになってしま

いました。

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 菅さんの質問に対しては、森首相と津島厚生大臣が答弁しまし

たが、津島大臣は、冒頭のような菅さんの質問に対して、

「菅議員の質問は、かなり現場の声を吸い上げた内容であり、私

も共感する部分があります。関係部局や委員会と協議して進めた

い」と答えました。

厚生大臣の答弁というのは、このように抽象的で、「わかりまし

た。その通りにします!」などとは、決して答えません。

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しかし、このように花形の予算委員会で、ケアマネージャーや老

人ホームの個室化やグループホームのことを取り上げること自体

が大きな意味、いや画期的な意味を持ちます。

 さきほども書いたように、「介護なんてちっぽけな問題。家庭

内で解決しろ」という意見が主流を占める国会の中で、しっかり

と「そうじゃない。介護は社会全体で取り組む問題なんだ。重要

な政治課題なんだ」とアピールすることが大事なのです。

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さらに、菅さんは、質問の中で「ダムなど大型の建設公共事業よ

りも、介護サービス充実に投資するほうが、雇用を増やす効果も

高い」と指摘しました。

 質問のあと、後ろの席に戻ってホッとされている菅さんのとこ

ろに歩み寄り、「菅さん、有難うございました」と、私は手を合

わせてお礼を言いました。「いいメモありがとう」と菅さんも笑

顔でした。予算委員会の質問のために、私と政策秘書の海野仁志

君が二日がかりで介護保険に関する質問メモを菅さんに渡してい

たのです。

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党の介護政策が決まるまで

 話は少しさかのぼります。政党の介護政策6月25日に当選し、

私が、民主党の「介護保険をより良くするプロジェクトチーム」

(座長:石毛えい子衆議院議員、衆参87人の国会議員が参加)

の事務局長として、介護保険の見直し案づくりに取り組んでいる

ことは、前回のレポートでもご報告しました。

 このプロジェクトチームとして、ホームヘルパー、ケアマネー

ジャー、サービス事業者、グループホーム、宅老所などの団体や

関係者からヒヤリングを重ねました。

また、大津市と仙台市で、400名の市民の方に参加して頂き、介

護保険の公開公聴会も行いました。

大津市では、公聴会の前に、鳩山由紀夫民主党代表とともに、特

別養護老人ホームや宅老所を訪問し、昼食はケアマネージャーさ

8人と共に、現場の声を聞きながらとりました。

また、仙台市の公聴会には、浅野史郎宮城県知事や、菅直人さん

も参加されました。

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 このように、党のリーダーの方々に、介護現場をみていただき、

ケアマネージャーさんを初めとする、現場の方々の声を聞いても

らうことが、私の重要な仕事です。

私一人が「介護問題が重要だ!」と叫んでもダメです。

党のリーダーの方々を初め、介護保険プロジェクトチームとして、

先輩議員や同僚議員と一緒に介護現場の声を聞き、一緒に政策を

練り上げることが大切です。

 鳩山由紀夫さんは、9月9日の民主党大会で

「宅老所に、介護保険からもっと給付を出すべきだ。大型建設公

共事業よりも、介護サービスの充実にこそ日本は投資すべきだ。

老後の安心と雇用の拡大につながる」と演説されました(私のホ

ームページに鳩山さんの演説全文が載っています)。

これは、大津で鳩山さんが宅老所を訪問し、感動されたからです。

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 このようにプロジェクトチームとして、現場の声を聞いた上で、

「介護保険に対する民主党の『7つの提言』」を私がとりまとめ

役になってつくりました。これも何度も会議を開いて、できるだ

け多くの議員の声を盛り込む必要があります。

そして、ネクスト・キャビネットという党の最高決定機関で承認

されれば、初めて「党の政策」として対外的に発表できるのです。

 「山井はこう考えている」ではなく、「民主党は介護保険に対

してこう考えている」という形でないと影響力がありません。

 9月26日(火)にネクスト・キャビネットで承認。鳩山さん

から、「これはいい提言だから、山井君いっしょに記者会見で発

表しよう」と言って頂き、9月27日、鳩山さん、石毛さん、私

3人で、「7つの提言」を記者発表しました。

また、菅さんからも「是非、予算委員会でも介護保険の質問をし

たい」と言われ、この「7つの提言」に基づいた質問が冒頭のよ

うになされました。

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 私はまだ駆け出しの新人議員ですが、介護保険プロジェクトチ

ームの事務局長として、勉強会や公聴会をセットし、先輩議員と

ともに、介護現場の生の声を聞き、党内での介護保険に関する政

策をスピーディーに取りまとめ、国会やマスコミの場で発表する

ことが私の仕事だと思っています。

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 私たちの発表した「7つの提言」は、私のホームページに詳し

い解説を載せています。同じ日に、与党の介護保険プロジェクト

チームも「介護保険改善案」を発表しました。これもホームペー

ジに載っています。

 与党案は、厚生省が改善ずると考えていた内容と、ほとんど変

わりません。特徴は、「犬の散歩」「自家用車の洗車」「正月に特

別な料理をつくること」などは、家事援助に認められないという

指針が盛り込まれたことです。

しかし、そこまで中央から決めるべきではないと思います。もっ

と現場を信じ、現場の裁量権を大きくすべきです。

 こんな案では、「介護保険改善案」とは言えません。

 もちろん、私たちの「7つの提言」も私たちなりに現場の声を

聞いて作成したつもりですが、まだまだ不十分だと思います。

しかし、少なくとも、介護現場の切迫した危機感を受けて「7つ

の提言」をまとめました。

 この「7つの提言」は、今後も現場の皆さんの声を聞き、もっ

とよいものに作り変えたいと思っています。

どうか、「7つの提言」に対して、「これはおかしい」「これは現

場の声ではない」「これも提言に入れるべきだ」というご意見を

お寄せ頂ければ嬉しいです。

 介護現場の多くの方は、「国会なんて関心ない」と思っておら

れると思います。

「国会は勝手なことを決めて、現場に下ろし、現場を混乱させる

だけ」と思っておられるかもしれません。

そんな国会に、私は介護現場の皆さんの声を届けたいと切に思っ

ています。

そして、国会で介護保険の議論が行われたおかげで、現場が良く

なった、と言ってもらえるよう、これからも、国会で首相や津島

厚生大臣に皆さんの声を、そして、お年寄りや家族の声なき声を

届けるために頑張ります。

 見直し案について、詳しくは、私のホームページをお目通しく

ださい。            山井和則 拝


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