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   やまのい和則の
     「軽老の国」から「敬老の国」へ

     - Yamanoi Kazunori Mail Magazine -

            第28号(2000/08/04)

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 メールマガジンの読者の皆さん、今日(4日)は、厚生委員会
での初質問の報告をさせて頂きます。

 昨日のメールマガジンで、予告しましたように、
今日は午後2時10分から50分までの40分間、生まれて初めて
の国会での質問をしました。

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 昨夜(3日)は4時間の睡眠。
3日の昼間は、資料集めや、厚生省との打ち合わせ。
そのあと夜中の12時まで、現場の方々に電話をあちこちにかけ、
質問内容についての意見をもらった。
老人ホームの看護婦さん、新聞記者さん、大学教授さん、介護家
族の方など。また、このメールマガジンの読者の方々からも、メ
ールでのアドバイスや現場の声が多く寄せられた。
 質問内容に肉付けして原稿にしたのが夜中の3時。

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 質問に向けての、最大の難関は、スライド利用の件。
 身体拘束やグループホームについてはスライドで見ていただか
ないと、いくら口で説明しても無理。
 スライドを利用したい、と申し出た。

 なんと、衆議院では35年前に一度、参考人のお医者さんが、
スライドを使ったことがあるだけ。
 委員つまり議員がスライドを使ったことは前例がないという。


 今日の厚生委員会が朝10時から行われる。
 その直前の、厚生委員会の理事懇談会で、スライド使用を認め
るかどうかの、結論が出ることになった。 

 「みんなでスライドを見て、共に考えるところに意味がありま
す。身体拘束の写真と、グループホームの写真を、論より証拠で、
目で見てほしい」と、私はお願いをした。

 金田誠一民主党厚生部会長が、自民党の遠藤厚生委員長などに
頼み込んで、「前例とはしない。テストケースとしてスライド使
用を許可する」(遠藤委員長)となった。

 これで、日本の衆議院歴史上初のスライドを使っての委員会質
疑となった。

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 さて、2時10分。
「委員長、初めて当選しました山井和則です。今日は初質問で介
護問題について主に4つのテーマについてお伺いしたいしたいと
思います」と、私の生まれて初めての質問がスタートしました。

 最初は、「私は学生時代のボランティア活動以来、ずっと福祉
に打ち込み、福祉をよくしたいとう一心で国会に来た」などとい
う自己紹介。

 その間に、手早く、秘書の宮地君と関根さんがスライドのスク
リーンをセットしてくれた。

 「過去15年間、介護問題に取り組んできてもっともショック
であったのが、身体拘束です。これは諸外国には少く、日本に多
く見られる、人権無視の悲惨な処遇です」と、スライド一枚目の
“ベッドにヒモで縛られたおじいさん”の写真を映し出した。

 与野党の議員、厚生省の役人さんの目はスライドに集中する。

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 そこで、最初の質問。
「津島厚生大臣、このような身体拘束の実態を、今までにごらん
になったことがおありですか?」。

大臣は、「10年前に厚生大臣をしていたので、そのときに実態を
見たことがある」と答弁した。

  以下、細かくは説明できませんが、おおまかな40分の質疑を
報告します。一字一句正確ではありません。

身体拘束の写真を、さらに4枚写し、説明する。

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質問:
 身体拘束廃止に向けて、厚生省では具体的にどのような取り組
みを行っているのか。
 欧米では厳しく禁止されている身体拘束が、なぜ、日本では今
日まで、放置されてきたのか。

答弁
 マニュアルをつくったり、「身体拘束ゼロ作戦」の検討会議を
つくっている。
 実態調査は、「ぼけ老人をかかえる家族の会」がやって70%が
何らかの拘束を経験したと答えている。
 日本は寝たきり文化なので、ベッドの上での拘束も多い。欧米
とは文化の違いもあるのでは。

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質問:
デンマークでは身体拘束は、市町村への届出とチェックが必要。
ドイツでも医師の鑑定書が必要。身体拘束は高齢者の人権をふみ
にじり、死期を早める。

 そもそも1988年に出版された「ルポ老人病棟」(大熊一夫著、
朝日新聞社出版)で、すでに身体拘束が厳しく批判された。
 1987年当時の斎藤十郎厚生大臣が、「都道府県に改善をさせる。
厚生大臣がかわってもこの問題にはしっかり取り組む」と答えて
いるではないですか。

 そのあと1990年に津島厚生大臣になられ、1987年から今日ま
でに15人もの厚生大臣が変わっている。
なぜ身体拘束は放置されてきたのですか。
多くの方が身体拘束で死期を早められたのです。
私の知人にも縛られて無念のうちに亡くなったお年寄りがいる。
家族も泣いている。
また、縛る職員さんも「安全のため」と泣きながら縛っている。
このような現状を15年間、厚生省は放置してきたのですか。

回答:
 さすがに、準備していなかった質問のせいか、津島厚生大臣が、
厚生省の局長さんに目配せをし、局長が答弁。3分くらい話を聞
いたが、とにかく、いろいろやったけど実効はあがらず、残念だ
という趣旨の答弁。

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お願い
(時間もすでに15分間を経過したので、質問ではなく、お願い
に変えた)。
 身体拘束の実態を厚生省はどのように把握しているのか。
 実態調査をまずやってほしい。
 きっちりした実態調査なくしては、対策も立たない。

 身体拘束廃止に向けた、ノウハウの提供といったソフトな取り
組みだけでなく、施設・病院に対する指導監査を厳しく行い、基
準違反の場合には保険指定の取り消しを行うなどの、厳しい姿勢
がないと、身体拘束はなくならない。

 実際に病院で縛られて、苦しんでいる多くの高齢者のことを考
えると、身体的拘束の廃止は一刻を争う問題である。

 介護保険施設すべての廊下に、
「身体拘束ゼロ作戦。命や安全のため、やむを得ない場合を除い
て、拘束は違法であり、保険取り消し」というポスターを貼って、
現場にもご家族にも意識改革をしてもらう必要がある。
 などと述べた。

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引き続いて、グループホームにうつる。

スライドでグループホームの写真を4枚見せて説明。
「小規模で家庭的なグループホームだと身体拘束の必要性もない。
役割や出番をつくり、家事を手伝ってもらう生活リハビリで、痴
呆症の進行や症状をやわらげる」などと話す。

自民党の議員さんたちもスライドを見ながら、しきりにうなずく。

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質問:
 痴呆性高齢者の介護対策には、グループホームが重要である。
全国各地に、身近に利用できるようにすべきであるが、とても少
ない。これについてどう考えているか。
 厚生省は、グループホームが必要量をどのように考えているの
か。ちなみに、スウェーデンでは、痴呆性高齢者四人に一人がグ
ループホームに入居できることを目指している。

福島豊厚生政務次官が回答。
 必要量はすぐには出せないとの回答。
(福島議員は今までもグループホームに熱心である。ちなみに、
民主党では役人さんには委員会で質問をするなという通達が出て
おり、私も基本的にはすべての質問を津島厚生大臣にした)。

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質問と意見 
民主党はグループホーム25000ヶ所。
小学校区に1つを総選挙の公約にした。
グループホームを増やして住み慣れた地域で老いられる社会をつ
くるべきではないか。
グループホームの数が増えない最大の原因は、介護報酬が低いこ
とである。早急に引き上げるべきと考えるが、どうか。

福島次官
今までモデル事業の時よりは、介護保険になってグループホーム
の報酬はあげたという趣旨の答弁。

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質問:
 宿直という形ではだめ。夜勤の形をとるべき、早急にあげない
とグループホームは増えない。
 グループホームの数が増えないもう1つの理由は、デイサービ
スなどへの併設の場合にしか、施設整備費の補助金が出ないこと
である。
 単独型グループホーム設置の場合にも整備費補助を受けられる
ようにすべきと考えるが、どうか。

福島次官 
単独型でも福祉法人の場合は、500万出しているし、併設型の方
が緊急の場合などバックアップが安心との答弁。

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質問と意見 
 500万では全く足りないし、緊急時のことを考えても何も隣同
士の併設である必要性はない。親施設がバックにあれば、サテラ
イト方式でグループホームは住み慣れた地域にあっていいではな
いか。併設だけにこばわっていたら、いつまでたっても住み慣れ
た地域で老いられる社会はつくれない。

 介護報酬の引き上げ等によって、多くの事業者がグループホー
ムに参入して利用できる量を増やす一方で、質を確保するために
現場に近い市町村が監視の目を光らせることが必要である。
 しかし、市町村の中には、グループホームの指定権限が都道府
県にあることから、無関心であるところも多い。これについて、
どう考えるか。

福島次官
市町村に監督を強化させたい。

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質問:
 痴呆性高齢者の要介護度がきちんと評価される1次判定プログ
ラムは、いつから導入されるのか。2年後、3年後では遅すぎる。
1次判定プログラムが改善されるまでの間は、痴呆性高齢者の要
介護認定の適正性をどうやって確保するのか。

津島大臣
 プログラムの組み合えには時間がかかる。訪問調査や二次判定
の精度を痴呆症のお年寄りに対してあげられるように努力した
い。

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質問と要望 
 ショートステイの限度枠の一本化のスケジュールはどうなって
いるのか。経過措置として、受領委任方式による現物給付化を厚
生省は市町村に指導しているが、十分に徹底されていない。これ
では困る。早急に徹底すべきである。明日からでも日本中でショ
ートステイが受領委任方式で利用しやすくしてほしい。

 しかし、このこと以上に、根本的に、ショートステイに利用上
限を設けることの問題に厚生省が気がつくのが遅すぎる。
 関係の医療保険福祉審議会では、もっと早い段階で指摘はなか
ったのか。

 審議会のメンバーを見てみると、20人の中には利用者の代表
つまり、家族もお年寄りも入っていないではないか。
 サービスの提供側だけの声を聞いて、良い介護保険ができるは
ずがない。

 介護保険の主人公は利用者である。
 利用者の声を聞かないで審議会をするなら、同じような現場を
泣かせる問題が再発する。
 痴呆介護を行う家族の代表や、介護保険のサービスを利用して
いる高齢者の代表も入れるべきではないか。
 さらに、在宅サービスの要であるホームヘルパーの代表も入っ
ていない。
 介護保険で一番苦労しているケアマネージャーの代表もはいっ
ていない。入れるべきだ。
 さらに、介護者の85%が女性であるのに、20名の委員のうち
女性が2名というのはおかしい。半数は女性にすべきではないか。

津島厚生大臣 
 山井委員の意見には、私も共感するところがあります。意見を
参考に審議会のメンバーについて検討したい(本日唯一の前向き
な答弁!)

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 最後に、「今日はいろいろ失礼なことも言いましたが、私の個
人的な意見ではなく、私は全国250万人の、寝たきりや痴呆症の
お年寄りの代弁者としてここに立たせてもらっている。
 最も苦しんでいる方、介護保険の影響を受ける人は、声を出せ
ないのですから。

 それから、私たちにとっては2,3年といえば、短い期間かもし
れませんが、その2,3年の間に、多くのお年寄りはバタバタと亡
くなっていくのです。

 介護行政にはスピードが必要です。お年寄りが亡くなったあと
になって、天国にいるお年寄りに向かって「良いサービスができ
ましたよ」と言っても無意味なのですから」などと言って、締め
くくった。

 多くの方が、「スライドがあってわかりやすく、説得力があっ
た」などと言って下さった。私としてはもっと厳しく言いたかっ
た部分もあったが、今日がスタートなので、控えめにスタートし
た。

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 なお、以上のやりとりの文責はすべて私にあります。
特に、答弁はのらりくらりとしていて、趣旨を理解するのに苦し
むものも多かった。詳しくは後日できる議事録をご参照ください。
また、当日のビデオもあります。

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 なお、議員会館に帰ると、読売、京都、東京、各新聞から老人
福祉というよりも「史上初のスライド使用」を記事にしたいとい
う電話取材があった。

 変なところで歴史に名を残すことになった、と苦笑。

世間では当たり前のスライドが衆議院史上初とは。

 もっともっといろいろ書きたいことはありますが、例によって
長くなりすぎたので、ここで終わります。
 今日の答弁については、当然、来週にでも厚生省に、再び問い
合わせたいと思う。 
                  やまのい和則 拝

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