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宅老所「よりあい」

 福岡市の住宅地にある宅老所「よりあい」を訪問しました。博多駅からタクシーで20分。12時前に「よりあい」に着きました。
 外見はごく普通の民家。中に入ると16畳の広さの居間にお年寄りが十数人、輪になって座っていました。女性ばかりのその輪の中に「黒一点」で私も加えてもらいました。

 「よりあい」は、「宅老所」と呼ばれ、毎日14、5人のお年寄りのたまり場となっています。宿泊も可能で、住んでおられるお年寄りが2人。多い日で6人の住人になることもあります。民家を利用したデイサービス付きミニミニ老人ホームといった感じです。
 利用に対する制限(年令、性別、障害の有無、程度など)はないですが、実際にはほぼ9割が痴呆症状のあるお年寄りでした。
 開いているのは月曜から金曜。相談に応じて土日祭日も利用できます。日中だけの利用料金は1日3000円、泊まりはプラス2000円。既存のデイサービスにどうしてもなじめず「よりあい」を利用しておられる方、行政のデイサービスセンターを週2回、「よりあい」を週1回利用しているケースなどがあり、自由に利用できます。
 「よりあい」は民間経営で公的な補助金がない上に、利用料金を安く抑えているため、経営は苦しいです。そのため、Tシャツを売ったり、バザーや講演会をして募金集めにスタッフは走り回っています。それでもスタッフの給料は月8〜10万円。ボーナスも社会保険もありません。1995年4月から福祉法人資格をとり、福岡市から補助金を受けられるので、経営的には少し楽になったといいます。
 十数人のおばあさんを見回して、無口な人、ニコニコしてる人、いろんな人がいるように思いましたが、みんなおだやかな表情をしていました。
 「よりあい」代表の下村恵美子さんはこの日、「山ちゃん(筆者のこと)を頼む」とほかのスタッフに言い残して、北海道に出張に出かけたとのこと。
〜決まったスケジュールはなし〜
 12時が過ぎ昼食の時間。昼食の買い出しと調理は毎日交代で2人のボランティアさんがしています。今日のメニューは団子汁と巻き寿司。お年寄りの1人が箸をみんなに配り、あるおばあさんは私にお茶をいれてくれました。ここではごく自然に利用者も何らかの役割を持っています。みんな美味しいと言いながらパクパクと食べ、とてもなごやかな雰囲気でした。
girl  「よりあい」では1日のスケジュールが決まってはいません。利用者は朝9時ごろに来て夕方5時ごろに帰りますが、その間、食事をしたり、入浴をしたり、自宅にいるようにのんびりと過ごしていきます。
 この日は天気が良かったので、2時半から植物園に菊を見に行きました。8人乗りの車をスタッフの中島真由美さんが運転、5人乗りの乗用車をスタッフの永末里美さんが運転して、いざ出発。
 永末さんは私を助手席に乗せながら、「『よりあい』は町の中にあるので、いろんなところに車で行くのに便利です。桜が咲いたと言えば桜の花を見に行き、夏になると海に遊びに行けます」と笑顔で話してくれました。
 菊をひと通り見て、菊の前のベンチに座ってみんなでアイスクリームを食べました。とっても暖かい1日で楽しかったです。
 植物園を出たのが3時50分。お年寄りを家まで送っていきました。「よりあい」では、基本的には職員が送迎をしますが、どうしても遠方などでむずかしい場合は、家族に送迎してもらっている場合もあります。
 利用日をあらかじめ決めている利用者がほとんどですが、「これから連れていきます」「夜7時までお願いします」「これから連れて行くわ」「もう1泊させてください」などの急な電話にも、できるかぎり柔軟に対応しています。
〜夕食はモツ鍋だ!〜
 夕方以降の顔ぶれはこの日宿泊のお年寄り3人と、スタッフの永末さんと中島さんと久野寿枝さん、そして私の合計7人。久野さんは、このときの3年前まで名古屋の老人ホームで働いていて、ある日「よりあい」に見学に来てファンになり、勤めだしたという、29歳の女性です。
 夕食のメニューは、モツ鍋(博多名物!)と刺身とかぼちゃ。「では乾杯の音頭を大場さん」という永末さんの声かけに続き、「よりあい」に住んでいる大場さん(95歳)が、「なにもお構いできませんが、ゆっくりしていってください」と乾杯の音頭をとってくださいました。ビールで乾杯。お年寄りはほんの一口しか口をつけませんが、飲む量は関係なく、とにかく雰囲気が最高でした。
 モツ鍋にはニンニクをぎっしり入れてスタミナ満点。「明日みんなが来たら、ニンニクくさくて大変でしょうね」などといいながら大騒ぎ。一方、大場さんはマイペースで食べています。かぼちゃと白身の刺身は大場さんの大好物だそうで。みんなでビールを飲みながら、ワイワイガヤガヤ。まさにここは「第2の家庭」でした。
〜なぜ、宅老所をはじめたか?〜
 「よりあい」は、下村さんと永末さんと中島さんが始めました。3人は福岡県内の同じ特別養護老人ホームに働いていましたが、限界を感じて「よりあい」を始めました。
 下村さんは「老人ホームは大きな土地を必要とし、住み慣れた町から遠く離れた、家族も友人も通いづらい交通の便の悪いところに建てられているところが多い。赤の他人と24時間、大集団で生活する苦痛。さらに生活を支える職員数のあまりの少なさ。あげくのはてに、『問題行動』『問題老人』と言われ、閉じこめられたり、縛られたり。ぼけや障害のある方たちが見知らぬ大集団のなかに突然放り込まれ、環境のあまりの違いにパニックにならないほうがおかしい」と話していました。
 そんな中で「ぼけても、障害が重くても、住み慣れた町で顔なじみの人たちや風景・思い出の品に囲まれて暮らし続けたい」という下村さんたちの願いを形にしたのが「よりあい」です。
 お寺の境内を借りて1991年に「よりあい」をスタートさせましたが、3ヶ月後には20人のお年寄りが集まるようになりました。そして1993年にお寺が持っていた民家を借りて今の形になりました。
 永末さんは、次のように話します。「『よりあい』のお年寄りには笑顔が多いんです。なんて言ったって、この笑顔が私は見たかったんです。大規模な施設ではお年寄りはみんな我慢しながら生きているように思う。先日もある老人ホームを訪問しましたが、そこの介護職員の顔を見ていると運送屋さんかなにかみたいな顔をしてテキパキと仕事をして、走り回ってました。しかし、本当はみんなそんなテキパキと仕事はしたくないんだと思う。私たちも老人ホームを辞めたきっかけは、ゆっくりお年寄りと話をする時間もないということだった。『よりあい』ではゆっくりお年寄りと話をすることができます。1人1人に応じた個別ケアが必要だと言われますが、老人ホームではそれが難しい。ここではお年寄りに普通の生活をしてもらえるのが嬉しい」
〜小規模ならではの居心地のよさ〜
 「よりあい」の居間には、あるお年寄りの花嫁道具であった古風なタンスが置かれています。白壁の古い民家を改築した「よりあい」は、木造で障子、たたみ、桧(ひのき)の風呂と昔なつかしい雰囲気で、お年寄りもスタッフもボランティアさんも落ちついて過ごすことができます。
 下村さんは、「民家で普通に生活すること自体が、いわば最高のリハビリなんではないでしょうか。病院では縛られ無表情だった痴呆症のお年寄りが普通の生活をすることで、少しずつ歩けるようになり、おしゃべりをしたり、すてきな笑顔をとりもどされたというケースもあります」と言います。
 実際、利用者の中には「よりあい」を、「親戚の家に泊まりに来ている」「友だちの家に遊びに来ている」と思っている方もおられます。「よりあい」をオープンする際には、800万円くらいをかけて、民家の段差をすべてなくし、トイレを2カ所に増やしました。
 「よりあい」のスタッフには感動を覚えます。お年寄りを優しく抱き寄せ、手を握り、お年寄りを笑わせ、幸せな気分にさせています。
 お年寄りに抹茶をたててもらい、それをスタッフが飲んでお礼を言ったり、刺身の盛りつけやお皿洗いもお年寄りに手伝ってもらっています。スタッフと利用者が「私、お世話する人」「あなた、お世話される人」という関係でなく、「持ちつ持たれつの家族」のような感じです。最高の介護とは、お年寄りの生きがいを引き出すことだと感じました。
 日中14、5人の利用者に対して、スタッフは3人。昼食づくりはボランティアさんが担当。泊まりもスタッフ1人。みんななじみの顔ぶれです。このスタッフで送迎、家事などすべてを運営しているので、決して多い人数ではありません。「普通の暮らしと、居心地のいい人間関係がカギだと思っています」と下村さんは言います。
〜住み慣れた町中に宅老所を〜
 厚生省が昨年発表した新ゴールドプランのなかでも、痴呆性老人対策の1つとしてグループホーム(痴呆症のお年寄りの小規模な生活の場)の整備がうたわれています。実際、厚生省のモデル事業として数カ所が1994年度からスタートしていますが、「よりあい」は日本におけるグループホームの1つのモデルになると思います。
 老人ホームを飛び出した3人娘(?)がロマンと情熱を結集して始めた「よりあい」。この試みには、「住み慣れた生活の臭いがする町中に、通うことも泊まることも気軽にできる小規模で家庭的な宅老所がたくさんできてほしい!」という夢と願いが込められているのです。

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