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ぬくもりの里
〜老人保健施設〜

 お年寄りを介護している人々の話を聞いていると、長い場合、3か月から半年くらい預かってもらいたいという話を聞くときがあります。こういうときは、老人保健施設という施設で預かってもらえます。「老健(ろうけん)」と略して呼ばれたりします。1994年現在で全国に76000人分(約900施設)ありますが、いま建設ラッシュで、厚生省は2000年までには28万人分に増やすことを目標としています。
 老人保健施設は、1988年にスタートした施設なので、知名度が低いです。老人会などで老人保健施設の話をしても、老人保健施設を知っているお年寄りはほとんどいません。しかし、ショートステイと同様に、家族にとっては非常に助かる施設です。何よりも入所までの待ち期間が短くて、すぐに預かってもらえます。病院と同じように直接契約で入れる医療施設なので、保険証さえ持っていれば、手続きも簡単で済みます。利用料は、月6万円くらいです。

 老人保健施設は、「中間施設」とも言われます。在宅と病院の「中間」という意味で、病院から退院してすぐに自宅に戻れない場合などに、3ヶ月から半年をめどに、リハビリや自宅復帰のための機能回復訓練のために滞在します。
 さらには、老人ホームがどこも満員の今日では、老人保健施設は家族にとっては貴重な”かけ込み寺”となっています。利用対象は、入院治療は必要としないけれど、リハビリ、看護、介護を必要とする寝たきり老人や痴呆性老人、それに準ずる老人です。
 簡単に役割分担を説明すれば、病院は「治療の場」、老人ホームは「生活の場」、老人保健施設は「家庭復帰のための通過施設」または「在宅支援の拠点」と言えるでしょう。
 設備面では、老人保健施設は老人ホームとほぼ同じであり、体制面では病院に近いです。また、病院に比べると生活感があります。一般病院ほどではありませんが、お年寄りの医療ニーズにもある程度対応できます。厚生省の調査によると、利用者の43%が家庭から入所し、52%が病院などの医療機関から入所しています(1992年)。

〜ぬくもりの里〜
 ここでは、一例として「ぬくもりの里」(京都市下京区)をご紹介しましょう。

 「ぬくもりの里」は、京都駅から車で10分。老人施設では珍しく街のど真ん中にあります。「ぬくもりの里」がある京都市下京区は高齢化率が19%を越え、老人夫婦世帯は過去10年で倍増してるところです。地域の住民が長年、署名活動を続け、ようやく1990年に「ぬくもりの里」が完成しました。平均在所日数は50日。90%の利用者は3カ月以内に家に戻っています。再び在宅生活が困難になったら、また利用しに来ます。このような「往復型」と呼ばれる利用が多いようです。

 私が訪問した斉藤和枝さん(86歳)は、3カ月「ぬくもりの里」に入所していましたが、なんと11回目の利用。この6年前に脳梗塞で倒れてからずっと寝たきりです。88歳の夫・次郎さんが在宅で1人で介護されています。2人の息子は、すでに事故と病気で亡くなってしまわれました。
 斉藤さん夫妻は、「ぬくもりの里」から、車で10分のところに住んでいる。入所するときには、夫婦が一緒に入所する。そして、3カ月たつと1日早く次郎さんが退所して家に帰り、妻を迎える準備をする。次郎さんも身体が弱っており、介護は十分できないが、それでも45年住み慣れた家に2人で住み続けたいと思っている。
aunt  斉藤さん夫婦が在宅で生活しているときにも、「ぬくもりの里」に隣接した訪問看護ステーションから、週3回、看護婦さんが派遣されて、介護を手伝ってくれます。訪問看護ステーションから派遣された訪問看護婦は、かかりつけの医師の指示にもとづいて、病気をみたり、髪を洗ったり、床づれの処理、リハビリテーション、食事・排泄・入浴の介助、家族の介護指導などまで行います。基本利用料は、1回につき250円と安いです(1994年)。全国に323カ所の訪問看護ステーションがあり(1993年)、2000年には5000カ所に増える予定となっています。ホームヘルプとともに、訪問看護は家族の力強い味方です。

 「ぬくもりの里」の訪問看護婦である境春子さんは、「家族が「起きてください」と言っても、「もう寝かしといてくれ」と言って、お年寄りは起きあがりません。でも、私たちが行くとお年寄りが起きてくれます。やはり、他人が家に入るということが大切です」と話します。
 さらに、「ぬくもりの里」は、日中だけお年寄りを預かるデイケアや、お年寄りの自宅への給食の配達も行っています。このようにして、退所したお年寄りの在宅生活も支援してくれます。副施設長の細井恵美子さんは、「「ぬくもりの里」を利用したいときは利用してもらったらいいし、在宅で看たいときは、訪問看護などでお手伝いします。斉藤さんのご主人にはとにかく「無理をしないでください」と言ってあります。施設の支援があることによって、家族も安心して在宅介護ができます」と話します。
 実際、次郎さんも「ぬくもりの里を利用するのは、親戚の家に泊まりに行くようなものです」と話します。

〜老人保健施設の長所と短所〜
 このようにデイサービス(デイケア)、ショートステイ、老人保健施設、訪問看護、さらにはホームヘルプなど、さまざまなサービスをうまく利用することにより、より長く在宅で介護することができるようになります。
 また、家では笑わなかった痴呆のおとしよりも、「ぬくもりの里」に入所して、笑うようになったり、挨拶をするようになったり、他人の世話をするようになったりするケースもあります。施設での人との交流がお年寄りの生きる意欲を引き出してくれるのです。

 ただし、老人保健施設にも問題はあります。それは、家に帰れず、老人保健施設に長居するお年寄りが増えてきた現状にあります。つまり、「老人保健施設の老人ホーム化」ということです。痴呆性老人の場合は、老人保健施設入所によって何らかの効果があるものの、リハビリを受けても、病状は大きくは回復しません。おまけに、十分な在宅福祉サービスが整備されていなかったら、家族としては引き取り難いという事情があります。老人保健施設の平均入所期間は、147日。つまり、約5か月(1992年)で、年々この期間が長くなっています。
 また、病院から退院させられたお年寄りや、老人ホーム入所待ちのお年寄りなど、居場所のないお年寄りのたまり場に老人保健施設がなっているケースも増えています。「最後までここに居れたらどんなに幸せか。もう施設や病院を転々とするのは嫌だ」というお年寄りの声も聞いたことがあります。そもそも日本には「終のすみか」と「在宅福祉サービス」が足りなさ過ぎるのです。なお、老人保健施設の現状については、「長生きしてはいけませんか? ー子に頼らない老いを求めて」(沖藤典子著、講談社)に詳しく書かれています。
 残念ながら、斉藤和枝さんが先日亡くなられました。「最後まで女房を在宅で面倒みることができたのは、「ぬくもりの里」のおかげです」と次郎さんは言っていました。

 老人保健施設は、人生の最後まで居続けることはできないところです。しかし、斉藤さんのケースにようにうまく使えば、在宅生活を長続きさせるための貴重な手助けとなってくれるところでもあります。

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yamanoi@wao.or.jpまでお願いいたします。

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