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小規模多機能型老人ホーム
「ことぶき園」訪問記

〜グループホームの登場〜
 実は今、世界の福祉施設は「大規模から小規模へ」という変革を遂げています。そして、この変革の大きなうねりが、日本にも確実に上陸しつつあります。その中の一例として”グループホーム”を挙げることができるでしょう。
 厚生省が発表した「新ゴールドプラン」でも痴呆性老人対策の1つとして、「グループホームなどの充実を図る」とはっきり明記されています。ここでの”グループホーム”は「痴呆性高齢者のための小規模な共同生活の場」と定義されています。

 さらに、厚生省から全社協に委託される形で、「痴呆性老人のグループホームのあり方についての調査研究委員会」が発足しています。
 この委員会では、次の8カ所がモデル事業と指定されています。
 前置きが長くなりましたが、今回はこの中の「ことぶき園」をご紹介しながら、21世紀の日本の高齢者福祉を考えてみたいとおもいます。
〜キーワードは”小規模多機能”〜
aunt  「ことぶき園」はやまのいが前々から訪れたかった老人ホームでした。
 園長の槻谷和夫さんは、以前は100人規模の老人ホームに勤めていたそうです。しかし、「お年寄り1人1人の名前も覚えられない大きな施設では、人間らしいお世話はできない」と感じ、50人規模の老人ホームに移ったとのことです。しかし、50人でも大きすぎると感じて、出雲市の中心部に「ことぶき園」を開設しました。
 入所者は、わずかに8人で、ショートステイ(以下、ショート)利用者が1日1,2人。デイサービス(以下、デイ)利用者が約9人。平均すると日中は16〜17人、宿泊は毎日10人弱です。
 グループホームのあり方について槻谷さんは、「入所だけだとグループホームの良さは半減する。制度化する際には、入所のみに限らないで、”ショート”や”デイ”も含めた多機能なものも選択肢の1つとして認めてほしい」といいます。
 利用料金は、”デイ”は補助金を得ていますので、日額500円、”ショート”は1泊3000円、入所は1日5000円(月15万円)。
 たとえば、あるおばあさんはおじいさんを介護していましたが、毎日”デイ”を利用しています。しかし、月に1回か2回、2泊ずつくらいおじいさんを”ショート”で預けます。その間に職場の慰安旅行に行ったり、温泉につかりに行ったりして介護の疲れを癒すことができます。「こういう自由な利用ができるのは多機能だからです」と槻谷さんは言います。
〜ショートステイの問題点〜
 「ことぶき園」では、近隣の福祉サービス(「ことぶき園」は除く)の満足度調査をおこないました。

 ”デイ”、ホームヘルプは利用者の満足度は高かったです。しかし、”ショート”は家族の満足度は高いものの、お年寄りの満足度が飛び抜けて低かったのです。「見ず知らずの所に、なじみのスタッフがいない所にポーンとお年寄りを入れたら、落ちつかず、居心地が悪いに決まっている」と槻谷さんは話します。
 しかし、「ことぶき園」の”ショート”の場合は、毎日”デイ”で来ている所に晩も泊まって、なじみのスタッフが介護してくれます。だから、お年寄りの混乱も少ないわけです。

 ある老人ホームの職員さんはこういいます。「うちの老人ホームでも”デイ”と”ショート”を併設している。しかし、”ショート”と”デイ”の職員が違う。”デイ”の利用者が”ショート”を利用するときには引継ぎをする。でも限界がある。”デイ”のときと”ショート”のときではお年寄りの表情が違う。なじみのスタッフでないからだと思う」
 また、槻谷さんは「入所のお年寄りが地域から隔離されないためにも、昼間”デイ”のお年寄りがいることはいいことだ」と言います。
 最初は「入所者と”デイ”のお年寄りが日中混ざると、家に帰れない入所のお年寄りが”デイ”利用者からいじめられるのではないか」という心配もあったそうです。でも実際には”デイ”利用者が、家庭の愚痴や嫁の悪口を入所者に言ったりして、入所しているお年寄りが「そんなんだったら今晩うち泊まっていったらどうや!?」と声をかけたりするのだそうで…。 

 さらに、槻谷さんは、「グループホームの対象を痴呆のみに限ってほしくない」ともいいます。痴呆の方とそうでないお年寄りの間で、トラブルは起きないのでしょうか?。
 槻谷さんは、この点について次のように答えてくれました。「確かに大規模な施設では痴呆症の方と痴呆でない方が互いにいじめあったりするかもしれない。でも『ことぶき園』の経験では、痴呆症のお年寄りのお世話をすることによって、痴呆でないお年寄りが優しくなれるという場面をたくさん見てきた。大規模ホームでは分けたほうがいいかもしれないが、小規模なら混合のほうがよい」とのこと。
〜小規模は高くつくか?〜
 今は一部の”デイ”にしか行政の補助金は出ません。そのため、月15万円の費用を入所の方は負担しなければなりません。それを何とか出雲市の施設・病院の平均(月5万円くらい)にしたいと槻谷さんは願っているのだそうです。
 ただしこれは自己負担で、運営費そのものは「小規模ホームは必ずしも高くつかない。お年寄りが互いに助け合って、職員のかわりをしてくれる。お年寄りも落ちつくので少ない人手でいける。晩ぐっすり眠ってくれるので、夜勤もラクです」と槻谷さん。

 お年寄りにも簡単な手仕事を手伝ってもらっているため、近所の人からは「お宅は老人を働かせておられますね」と驚かれるとのこと。しかし、槻谷さんは「老人ホームではお年寄りは世話される一方の存在という考え方は間違っている。お年寄りも生活の主体者として、積極的に生活に参加してもらう。小規模だとお年寄りのやさしさや役割がきちんと出てくる」といいます。

 さらに、小規模のほうが職員1人1人の権限も大きく、やりがいも大きい。
 スタッフは槻谷さんを含めて常勤8人。1人当たりの平均人件費は年間350万円くらい。介護そのものではないけど、食事づくりなどに多くのボランティアが参加してくれています。
 運営費は入所者1人当たり月25万円くらい。しかし、もし”デイ”がなくて入所の8人だけをケアするなら、月35万円くらいと増えてしまいます。”デイ”と併設することで、効率的に運営することが可能となるといいます。
 「大規模ホームでは月25万円の措置費がもらえるのだから、よい介護が行われているときには小規模にも支給してほしい」と槻谷さんは願っているのだそうです。

 ただし、小規模ホームにも弱点があります。小規模なゆえに、職員の質やケア哲学が問われることとなります。虐待などの問題も表に出にくくなるでしょう。もしかしたら山奥に山小屋を借りて、お年寄りを集めて、金儲けをたくらむ人が出てくるかもしれません。だから、行政のチェックは当然必要となってくると思います。
〜介護保険で小規模化が加速?〜
 厚生省は現在、公的介護保険の導入を検討しています。これは簡単に言えば「医療保険の介護版」で、介護料を国民が広く薄く納めることによって、いざという時に介護を受けられるシステムをつくりあげます。公的介護保険が導入されれば、グループホームもケアの場の一つとして認められ、お金が出ることになると思われます。公的介護保険が引き金になって、21世紀には日本のいたるところにグループホームが増えることも夢ではなくなるかもしれません。
 ただし、グループホームの定義が日本ではまだ定まっていません。やまのいの独断に基づいて分類すれば次のようになります(順不同)。
A型 病院併設 
例:「もみの木の家」(秋田市)
B型 老人ホーム併設
例:「至誠ホーム」(立川市)
C型:1戸建て・小規模多機能
例:「ことぶき園」(出雲市)、「よりあい」(福岡市)
D型:老人ホームのグループ分け
例:「エスティームライフ学園前」(奈良市)、「神港園しあわせの家」(神戸市)
 理想的な形が1つあるというわけではなく、それぞれの形に長所と短所があります。多機能がいいか、入所のみがいいか。痴呆のみがいいか、混合がいいか。まだまだわからない点が多いので、モデル事業の取り組みに期待したいところです。

 槻谷さんは、「利用する家族やお年寄りにとっては、痴呆以外はダメ、入所以外はダメと言われるよりも、入所でも、泊まりでも、”デイ”でも、痴呆以外でもOKという方が利用しやすい」と話してくれました。実際、福岡市の「よりあい」や「ことぶき園」のような小規模多機能な取り組みが全国でいま、雨後の竹の子のように芽を出しています。
 槻谷さんは「まず、”デイ”からスタートさせ、軌道に乗り出したら、”ショート”や入所もできるようにしたらいいのではないか」とアドバイスしています。

 槻谷さんには夢があります。
 「ことぶき園」は、24時間巡回型ホームヘルプをスタートさせます。「将来的には小規模多機能なグループホームが全国の小学校区に1つできて、そこに”デイ”も”ショート”もあり、入所もでき、かつ24時間対応のホームヘルプの拠点になってほしい。ここに行けばすべての福祉サービスが受けられる。こんな”小地域完結型総合ケアシステム”があれば、みんな安心して老いられます」と、槻谷さんは抱負を語ってくれました。

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