おはよう 21 より転載  第3回


3回 国会に福祉の風を!

介護保険の審議ができないなんて!

『おはよう21』の読者の皆さん、こんにちは。

「おはよう21」の連載を書くために毎月パソコンに向かうたびに、

「この一か月、国会議員としてしりかり仕事ができたかな?」と自分自身、反省させられます。

この連載を通じて、国会の生の空気や、国会議員の悩みや願いを知っていただければ嬉しいです。


秋の臨時国会は、9月21日に開会しました。

しかし、参議院の選挙制度改革でもめて、10月23日までか月、国会は空転しました。そして、10月24日に国会の審議がスタートしたと思ったら、

「疑惑の3点セット」、つまり、中川官房長官(当時)の愛人疑惑や、北朝鮮の拉致疑惑についての森首相の失言、KSD(中小企業経営者福祉事業団)の疑惑に、国会審議は集中。

まっとうな政策論議よりも、疑惑の解明に多くの時間が費やされているのです。


空転していた国会が正常化に向けて動き出したのは10月19日。

その晩、民主党の厚生委員会の先輩議員から、

「山井さん、来週水曜日に医療法の改正について厚生委員会で質問をしてください」と指示を受けました。

「介護保険については質問できないのですか?」と尋ねると、

「そうなんです。厚生委員会には一般の質疑と法案に関する質疑の2種類があって、一般質疑なら介護保険でも何でも厚生行政に関することを質問できます。

しかし、法案の質疑の場合は、この国会に法案が提出されている医療法と健康保険法の改正についてしか質問できません」とのこと。

そこで私は、医療の中でも最も遅れている精神医療をテーマに選び、10月25日一水一の午前10時〜11時まで質問することになりました。

8月4日に介護保険について質問して以来、2回目の厚生大臣への質問でした。


精神病院の実態

質問することが決まってすぐに私は、4か所の精神病院を訪問し、そのうち一か所では半日、閉鎖病棟に滞在しました。

精神病院の居室は、良くて4人部屋。大きいところは10人部屋、20人部屋です。老人ホームよりも狭いのです。

ある4人部屋を訪問すると、看護婦さんが、歩いている患者さんを指差して、小声で、

「この方はかなり病状は安定しているのですが、もう20年入院しておられます。40年入院している万もおられすよ」と教えてくださった。

「なぜ退院できないのですか」と驚くと、

「もうご両親が高齢になられて引き取れないのです。一生この病院で暮らし続けるか、老人ホームに移るか。どちらにしても一生、病院か施設暮らしです」とのことです。

こんな訪問を4か所おこなった上で、私は衆議院の厚生委員会で津島雄二大臣に質問しました。

以下は、1時間の質疑応答の中で、冒頭の大まかなやりとりです。
(詳しくは、私のホームページ「
http://www.yamanoi.net/」に載っている議事録をご覧ください。ご一報いただければ質問のビデオもお送りします)。

山井
「大臣は、精神病院に行かれたことはありますでしょうか
?」

大臣
「地元では精神障害者の家族の方とも親しく会話をさせていただいております。そして、いくっかの地元の精神病院を訪ねており、いろいろな施設の状況についてもつぶさに知っておるつもりです」

山井
「率直なところ、精神病院を訪問されてどのような感想を持たれましたか
?」

大臣
「できるだけ患者さんを良い状態で治療して、早く社会復帰をさせてあげたいと思いました。構造的に医療体制に問題があるということも感じました。ほかの先進国に比べると病床が極めて多く、しかも長く入院をされるのか、これは制度の問題もあると感じております」

山井
(精神病院の居室や食堂、保護室の写真を配布資料で見せながら質問)「このような、
4人部屋でプライバシーのないところにいて、それで元気になると感じますか?」

大臣
「自分がその立場になったら大変なことだ、精神的にも打撃を受けるだろうと思います」

山井
「心の病で苦しんでいる方に入院してもらう。
ところが、そこに行ったら精神的な打撃を受けてしまうという、わけのわからない状況ですね。
入院して、心の負担、ストレスから解消されたら治るわけですが、そこで余計に精神的打撃を受ける、悪化して入院が長期化する。
長期化すると帰る家もなくなる、歩くことも不十分になって、社交性もなくなるから、地域に帰ってもらうということが余計に難しくなってしまう。
悪循環です……」


このやりとりは、翌朝の朝日新聞の社説「貧しい精神医療に決別を」でも紹介されました。

厚生大臣が、このように率直に、日本の精神医療の遅れを国会答弁で認めたのは、初めてのようです。

私のこの質問に対して、全国各地の精神病院関係者や患者さんのご家族から、「よくぞ言ってくれた!」というメールをいただきました。

 

現場の声を国会に!しかし……

この原稿を書いている今日、10月30日(月)。久しぶりにある特別養護老人ホームを訪問しました。ここには、私の仲良しのハルさん(83歳)がいるのです。

6月25日に当選して4か月が経ちましたが、ハルさんに当選の報告に前々から行きたかったのです。4年前の選挙で私は落選しましたが、その選挙のときに、私の政見放送に一緒に出演してくださったのがハルさんなのです。もともとは、この老人ホームで実習させてもらったときに仲良しになったのでした。

嬉しいことにハルさんはお元気でした。以前よりも足取りは弱っていましたが、何とか杖もっかず歩いていました。

「ハルさんのおかげで当選できました。ご無沙汰して本当にすみません」と私が言うと、「良かった、良かった、涙出るわ」とハルさんも喜んでくださり、二人で抱き合いました。

その後、その老人ホームの職員さんから話を聞きました。

「介護保険で良かった点、悪かった点、いかがですか?」と尋ねると、「悪かった点ばかり。もう大変です」とのこと。

「入居者が入院すれば、その間、介護報酬が出ない。この部分の赤字が大きい」とのこと。

さらに、「デイサービスの介護報酬が低過ぎる。

介護保険の前、山井さんが実習に来られた頃は、日に15人くらいしか利用者がいなかったが、今では25人くらいの利用者でないと採算が取れない。

しかし、職員数は増えないので、一人ひとりのケアが十分にできなくなった。おまけに、利用者の自己負担がアップし、利用回数を減らさざるを得ない人もいる。

さらに、私もケアマネジャーだが、忙,しくて倒れそう。デスクワークが多過ぎるし、訪問も十分にできない。

厚生省はケアプランを立てる前に、きっちりアセスメントをすべきだと言うが、とてもじゃないが、そこまで手が回らない。

最初は、夢をもってみんなケアマネジャーになったけど、身体はもたないと言っている人も多い」

と、その職員さんは一気に不満をまくしたてました。


「厚生省は、『介護報酬などの見直しは、3年先。しばらく様子を見る』と言ってますよ」と言うと、

「その3年後までケアマネジャーはもたないと思う。つぶれてしまう人、辞めてしまう人が続出すると思う」と職員さん。

私は、介護保険は必要な制度であると思います。実際、一部の特別養護老人ホーム入居者の費用負担が減ったり、デイサービスの回数が増えた人もいるなど、良くなった点も多いです。しかし、同時にさまざまな問題点があることも事実であり、それを早急に改善せねばなりません。

特別養護老人ホームを訪問してから、新幹線で東京へ向かい、夕方、国会事務所に着きました。

早速、先ほどご紹介した老人ホームの職員さんの苦情を厚生省の介護保険担当者に話しました。

「介護保険によって今までより苦しくなることがないように、介護報酬は高めに設定してあるはずなんですけどねえ」と、その方は首を傾げられました。

現場の切実な声がなかなか厚生省まで届いていないと、あらためて痛感しました。

今週は、10月31日(火)、U月1日一水)と、2臼連続で6〜7時間、衆議院厚生委員会で健康保険法と医療法の改正の法案審議があります。

そこで、先輩議員に、「介護保険のことを質問したいのですが、一般質疑はいつあるのですか?」と尋ねました。

すると、「11月1日に与党が健康保険法と医療法の改正の法案を強行採決するみたいだよ。そうなると、もうこの国会では一般質疑はないかもしれない」とのこと。

「え一、そんな殺生な。介護保険の質疑はないのですか?」と私、、

「ウーン、一般質疑で介護保険が審議できるように、与党と交渉してみるけど、どうなるかわからない」とのこと。

さらに、私は尋ねました。

「もしかして、11月1日にに強行採決ということは、厚生委員会でも委員長席に私たちが詰め寄って、マイクの奪い合いの乱闘をするのですか?

「そうですよ。山井さんにも先頭に立って戦ってもらいますよ」

「マジですか……」

介護保険を導入する前には、あれだけ国会で議論をしたのに、導入したら後は国会議員は知らん顔。

半年経って、いろんな問題点も明らかになり、現場から悲鳴がLがっているのに、国会では、ほとんど介護保険については議論されていないのです。

本来は、この秋の臨時国会で、しっかり介護保険の進捗状況や問題点について議論するのが当然でしょう。

しかし、厚生省も「おおむね順調。しばらく様子を見よう」という感じです。

国会で仕事をするようになって、まだ4か月ですので、偉そうなことは言えませんが、

「なぜ、日本で福祉が進まないのか」がよくわかってきたように思います。

一言で言えば、国会できっちり福祉を議論していない!現場の声が国会に届いていない!

もちろん、国会ではさまざ求な問題を取り扱いますので、介礎保険だけを最優先で議論しろとは.言いません。

でも、介護現場がこれだけ困っているというのに、国会で議論しないというのはあんまりではないでしょうか。


今回の連載は愚痴みたいになりましたが、とにかく、残された臨時国会の会期中のあと一か月間で次の3つのことをしたいと思います。

1つ目は、衆議院厚生委員会で一般質疑を実現して、介護保険について厚生大臣に現場の声を伝えたい。

2つ目は、前回、この連載に書いた民主党の介護保険に対する「7つの提言」(詳しくは、ホームページで見てください)への現場からのご意見をいま、募集中です。11月末をめどに、この「7っの提言」をもっと練り上げ、介護保険をより良くする提言を再び発表します。是非、皆さんも「介護保険、ここが問題。こう変えてほしい」という点を、私にご一報く、ださい。

3つ目は、私が事務局長を務める民主党の「介護保険をより良くするプロジェクトチーム」で毎週、勉強会をしており、「介護サービス充実の雇用・経済公開」について政策研究を進めています。

この3つの計画の結果がどうなったかは、次号で報告します。

なお、、私の日々の国会活動や、福祉の最新情報は、私のホームページに載っています。さらに、メールマガジンという形で、無料でメールのニュースも発行しています。ご関心のある方は是非ホームページを見てください。


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