おはよう 21 より転載  第2回


2回  国会に福祉の風を!

介護保険に対する「7つの提言」をまとめる
−−予算委員会での質問ーー

「わが党は、このたび『介護保険に対する7つの提言』をまとめました。ケアマネジャーがケアプランを作成したときの介護報酬の引き上げ、今後新設する特別養護老人ホームや老人保健施設は、原則として個室とすること、グループホームの介護報酬を夜勤が組めるよう引き上げること……」

9月28日(木)午後2時。ここは、衆議院の第一委員会室。

衆議院の予算委員会で、民主党の菅直人さんが、森喜朗首相や津島雄二厚生大臣に質問しています。

この光景は、NHKの国会中継で全国に生でテレビ放映されています。委員会室の後方でこの光景を見ながら、私は胸が熱くなりました。

代表質問で「介護」が取り上げられた意味

『おはよう21』の読者の方々をはじめ、一般の方々には、国会の仕組みについて、わからないことも多いと思うので、少し説明します。

国会においては、質疑は大きく分けて3種類あります。

一番大きなのが、本会議での代表質問。これは、通常国会や臨時国会が始まったときに、首相が所信表明演説をおこない、それに対して、与野党の代表が質問するものです。

次に大きなのが、代表質問に続いておこなわれる予算委員会での質問、、与野党はエースの議員を質問に立たせ、厳しい質問を百柑や大臣にします。以上2つの質問は、テレビで生放送されます,

その次の段階は、福祉の場合、厚生委員会での質疑になります。

これは、与野党の厚生委員会に所属する30人の議員だけか出席するもので、実質的なかなり細かい議論がされますが、テレビ中継はされません。


冒頭に紹介した菅さんの質問は、予算委員会でおこなわれたもの。

厚生委員会でさえ、介護保険のことは導入後十分に議倫されているとは決して.いえない状況なのに、花形委員会である予算委員会で、ケアマネジャーや施設の個室化、グループホームの問題などが取り上げられたのは、日本の歴史上初めてのことです。

私が、国会議員になって3か月が経ちました。

つくづく感じるのは、国会で議論される多くの問題の中で、介護問題は非常にちっぽけな問題としてしか認識されておらず、そもそも介護問題に関心を持っている国会議員が非常に少ないということです。

わかりやすく言えば、
「介護なんか、家族がやったら良いんだ。嫁の仕事だろう」という考えを持つ議員が多いのです。

実際、面と向かって「介護保険なんか導入するな。嫁を怠けさせるだけだ」と、ある議員から言われたことがあります。

介護現場とは、大きな大きなギャップがあるのです。

もう少し関心が高い議員になると、
「家族だけで支えるのは難しいので、介護保険も必要」という意見になりますが、このような議員でも、

「とにかく、介渡保険料はできるだけ安いほうが良い。高くなると市民の反発を招き、選挙に不利だ」という意見の人が多いようです。つまり、介護サービスの中身にはほとんど理解も関心もないのです。

実際、479人いる衆議院議員の中で女性議員は35人。介護経験のある議員は、ごくわずか。ですから、社会では大きな問題である介護問題も、国会では問題として認識されていないのです。


そんな国会の予算委員会で、菅さんが冒頭のような質問をしました。

菅さんのほかの質問は、
「沖縄基地問題についての森首相とクリントン大統領の会談」
「あっせん利得罪法案」
「参議院選挙制度改革」などですから、皆さんもテレビ中継をご覧になったことがあるかと思いますが

、やじや怒号が飛び交う予算委員会で、いきなり
「ケアマネジャー」や
「老人ホームの個室化」の話が出たとき、一体どうなると思われますか
?

「日米首脳会談で、森首相はクリントン大統領に新たな基地の15年の使用期限についてきっちり要望をしたのですか?」などといったような厳しい質疑の後で、冒頭のように

「ところで、介護保険についてですが……」と、菅さんが言ったものですから、予算委員会には一瞬、冷ややかな空気が流れました。


「ケアマネジャー」
「老人ホームの個室化」
「グループホーム」
「介護報酬」。

おそらく、今までやじや怒号を発していた国会議員の方々の多くは、それぞれの言葉の意味さえわからなかったのだと思います。

ピタッとやじがなくなり、急に予算委員会室は静かになってしまいました。

テレビ中継がおこなわれ、与野党が対決する予算委員会で、このような介護の問題を取り上げることがいかに珍しいかを痛感させられました。

菅さんの質問に対しては、森首相と津島厚生大臣が答弁しましたが、津島大臣は、冒頭のような菅さんの質問に対して、

「菅議員の質問は、かなり現場の声を吸い上げた内容であり、私も共感する部分があります。関係部局や委員会と協議して進めたい」と答えました。

厚生大臣の答弁というのは、このように抽象的で、「わかりました、その通りにします!」

などとは、決して答えません。しかし、このように花形の予算委員会で、ケアマネジャーや老人ホームの個室化やグループホームのことを取り上げること自体が大きな意味、いや画期的な意味を持つと、私は思うのです。


先ほども書いたように、「介護なんてちっぽけな問題。家庭内で解決しろ」という意見が主流を占める国会の中で、しっかりと

「そうじやない。介護は社会全体で取り組む問題なんだ。重要な政治課題なんだ」とアピールすることが大事だと思います。

さらに、菅さんは、質問の中で「ダムなど大型の建設公共事業よりも、介護サービス充実に投資するほうが、雇用を増やす効果も高い」と指摘しました。

質問の後、後ろの席に戻って一息ついておられる菅さんのところに歩み寄り、

「菅さん、ありがとうございました」と、私は手を合わせてお礼を言いました。「良いメモ、ありがとう」と、菅さんも笑顔でした。

予算委員会の質問のために、私と政策秘書の海野仁志君が2日がかりで作り上げた介護保険に関する質問メモを、菅さんに渡していたのです。

党の介護政策が決まるまで

話は少しさかのぼります。6月25日に当選し、早速私が、民主党の「介護保険をより良くするプロジェクトチーム」(座長 石毛えい子衆議院議員、衆・参87人の国会議員が参加一の事務局長として、介護保険の見直し案づくりに取り組んでいることは前回のレポートでもご報告しました。

このプロジェクトチームとして、ホームヘルパー、ケアマネジャー、サービス事業者、グループホーム、宅老所などの団体や関係者からヒヤリングを重ねました。

また、大津市と仙台市で、合計800名の市民の方に参加していただき、介護保険の公開公聴会もおこないました。

大津市では、公聴会の前に、鳩山由紀夫民主党代表とともに、特別養護老人ホームや宅老所を訪問し、昼食もケアマネジャーさん8人とともに現場の声を聞きながらいただきました。

また、仙台市の公聴会には、浅野史郎宮城県知事や菅直人さんにも参加してもらいました。

このように、党のリーダー格の方々に介護現場まで足を運んでもらい、ケァマネジャーさんをはじめとする現場の方々の声を聞いてもらうことが私の今一番重要な仕事のひとつです。

私一人が「介護問題が重要だ!」などと叫んでもダメです。

党のリーダーの方々をはじめ、介護保険プロジェクトチームとして、先輩議員や同僚議員と一緒に介護現場の声を聞き、一緒に政策を練り上げることが大切なのです。

実際、鳩山由紀夫さんは、9月9日の民主党大会で

「宅老所に介護保険からもっと給付を出すべきだ。大型建設公共事業よりも、介護サービスの充実にこそ日本は投資すべきだ。老後の安心と雇用の拡大につながる」と演説されました
(私のホームページに鳩山さんの演説全文が載っています)。

これは、大津で鳩山さんが宅老所を訪問し、感動されたからです。

このように、プロジェクトチームとして現場の声を聞いた上で、
「介護保険に対する民主党の『
7つの提言』を、私が取りまとめ役になって作りました。

これも何度も会議を開いて、できるだけ多くの議員の声を盛り込む必要があります。そして、ネクスト・キャビネットという党の最高決定機関で承認されれば、初めて「党の政策」として対外的に発表できるのです。

「山井はこう考えている」ではなく、「民主党は介護保険に対してこう考えている」という形でないと影響力がありません。

9月26日(火)にネクスト・キャビネットで承認をもらいました。

鳩山さんから、「これは良い提言だから、山井君、一緒に記者会見で発表しよう」と言っていただき、9月27日には、鳩山さん、石毛さん、私の3人で、「7つの提言」を記者発表しました。

また、菅さんからも「ぜひ、予算委員会でも介護保険の質問をしたい」と言われ、この「7つの提言」に基づいた質問が冒頭のようになされたのです。

私はまだ駆け出しの新人議員ですが、介護保険プロジェクトチームの事務局長として、勉強会や公聴会をセットし、先輩議員とともに、介護現場の生の声を聞き、党内での介護保険に関する政策をスピーディーに取りまとめ、国会やマスコミの場で発表することが自分の仕事だと思っています。

私たちの発表した「7つの提言」の表題は、57頁の表の通りです(私のホームページに詳しい解説を載せていますし、連絡いただければ全文をお送りします)。同じ日に、与党の介護保険プロジェクトチームも「介護保険改善案」を発表しました。

与党案は、厚生省が改善すると考えてい内容とほとんど変わりません。特徴は、「犬の散歩」「自家用車の洗車」「正月に特別な料理を作ること」などは、家事援助に認められないという指針が盛り込まれたことです。しかし、そこまで中央から決めるべきではないと思います。

もっと現場を信じ、現場の裁量権を大きくすべきです。

こんな案では、「介護保険改善案」とは言えません。

もちろん、私たちの「7つの提言」も私たちなりに現場の声を聞いて作成したつもりですが、まだ不十分だとおも一ます。しかし、少なくとも、介護現場の切迫した危機感を受げてまとめたものです。

是非皆さんの声を!

この「7つの提言」は、今後も現場の皆さんの声を聞き、もっと良いものに作り変えたいと思っています。

どうか、「7っの提言」に対して、「これはおかしい」「これは現場の声ではない」「これも提言に入れるべきだ」などといったご意見をお寄せいただければ幸いです。

介護現場の多くの方は、「国会なんて関心ない」と思っておられると思います。

「国会は勝手なことを決めて、現場に下ろし、現場を混乱させるだけ」と思っておられるかもしれません。

そんな国会に、私は介護現場の皆さんの声を届けたいと切に思っています。そして、国会で介護保険の議論がおこなわれたおかげで、現場が良くなった、と言ってもらえるように頑張りたいのです。

これからも、国会で首相や津島厚生大臣に皆さんの声を、そして、お年寄りや家族の声なき声を届けるために頑張ります。

なお、私はホームページを開設し、国会での福祉の議論の最新情報を公開しています。

また、メールマガジン「国会に福祉の風を!」も発行しています。

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