介護保険の切り札「グループホーム」ー痴呆症をやわらげる住環境とは?ーやまのい高齢社会研究所 所長 山井和則 |
痴呆ケアは住環境で決まる! −私とグループホームの出会いー 介護保険の中で「痴呆ケアの切り札」と言われるのがグループホームです。 私が、初めてグループホームを訪問したのは、今から11年前。 痴呆症の入居者が私服で暮らしていたことが、私にとってはまず感動でした。病院や施設では、病衣や寝間着が多いですから。 入居者のシグバードじいさん(92歳)は、元散髪屋さん。 家族によると、シグバードじいさんは、昔から料理が得意だったそうです。 痴呆であるためシグバードじいさんは、難しい調理はできませんが、ジャガイモの皮をむくということぐらいはできます(スウェーデンでは主食がジャガイモ)。 スタッフが、「このジャガイモおいしいわ。シグバードじいさん、ありがとう」と声をかけると、シグバードじいさんも笑顔になります。 生きる意欲を失っている痴呆性高齢者に、生きがいを取り戻してもらうこのような取り組みは「心のリハビリ」と呼ばれます。 グループホームが3200ヶ所に10倍増! 日本でもグループホームの効果が実証され、グループホームは介護保険の正式メニューとなりました。 では、「痴呆性高齢者にとっての理想的な住環境」と言われるグループホームは、どのようなものでしょうか。以下に8つのポイントを述べます。 1、小規模な設計 痴呆症のお年寄りは、大きく広い大人数の環境では、ますます混乱します。小規模であれば、居心地がよく、落ち着きます。 2、家庭的で親しみやすい設計 グループホームを「自分の家」と感じ、くつろいでもらうことが大切です。 私が今日まで訪問したグループホームでも、民家改造型のほうがバリアフリーではないが、落ち着きがよいと感じました。 ここが矛盾するところ。 イギリスでは、カーペットの床が、家庭的な環境をつくるために不可欠です。その結果、カーペットの掃除が大きな作業です。日本では畳。 高すぎる天井や大きすぎるスペースや部屋なども、「家らしさ」を奪ってしまいます。 3、地域に溶け込んだ設計 外観からはグループホームとわからないくらい、まわりの住宅と違和感のない建築が理想です。あくまでも「普通の家」であることが、居心地の良さのポイントです。 4、分かりやすい設計 居住者が自分がどこにいて、どこに行こうとしているかが見え、感じ取れるための「視覚的なアクセス(見通しのよさ)」が大切です。 年齢とともに眼球が黄色味を帯び、視覚が弱ります。 5、落ち着ける設計 無関係な刺激は減らさねばなりません。 「痴呆性高齢者にとっての騒音は、車椅子にとっての階段のようなものだ」といわれています。 ですから、静かな個室と、賑やかな共用のリビングの両方が、必要です。 6、自尊心・自立心・個性を高める設計 食事の用意をし、そうじをしたり、洗濯物を片付けたり、犬を散歩に連れて行ったり、うさぎを飼ったり、庭いじりをしたり、といった家事や日常の活動に参加しやすい設計が必要です。 個性を高めるためには、個室で、思い出の品々を持ち込めるスペースが必要です。 7、家族や訪問者を歓迎する設計 ある時、私がグループホームも訪問し、一人のお年寄りと話していると、「うるさい!」と他のお年寄りに叱られてしまいました。 グループホームには家族や訪問者を歓迎し、訪問しやすい設計が必要です。他の居住者を邪魔することなく、お年寄りと家族や訪問者が一緒にいるための寝室以外の場所も必要です。 8、安全な設計 グループホームでは、活動的な生活を奨励するがゆえに、転倒による骨折事故が多いのです。 こう考えてみると、従来の痴呆病棟の大部屋という環境は、痴呆症のお年寄りにとって、もっとも適さない住環境であることがわかります。 健康な人々に対する以上に、痴呆の人々には住環境に大きな影響を及ぼします。 将来的には、グループホームは「痴呆性高齢者」のみならず、 グループホームが |