続「住民が選択した町の福祉」
問題は これから です
前作「住民が選択した町の福祉」(1997年1月)は、福祉を公約にかかげて当選した若い町長が、住民に参加を呼びかけてつくったワーキンググループの活動に支えられて、町の福祉が変貌していくさまを描いた。
町のホームヘルパーの数は全国のトップレベルにあり、24時間在宅ケアも行われている。だが、施設の整備は遅れていて、在宅複合型施設であるケアタウン構想が議会に出されるが、反町長派が多数で否決される。町議選を経て、この構想は、一票の差でようやく議会を通過する。映画はここで終わっている。
「安心して老いるために」でデンマーク、スウェーデンを取材したとき、痛感したのは「民主主義を土台にしなければ、本当の福祉は築けない」ということだった、北欧の進んだ福祉を生み出した基盤は政治・社会のあり方にあるのだ。しかし北欧の福祉のこの点に着目した政治家は、日本にはほとんどいなかった。ところが、秋田県鷹巣町の新人町長・岩川徹氏はここに着目したのだ。彼は本当に「住民参加」による福祉の町づくりを始めたのである。いまや「住民参加」はうたい文句として沢山つかわれている。しかし、本当の「住民参加」がどのくらい行われているだろうか。
私は前作の完成後も町の様子が気になっていた。やっと議会を通過したケアタウン構想は、住民の積極的な参加とともに、形になっていく。「住民が選択した町の福祉」を観た人たちからも、「その後、鷹巣町はどうなりましたか」と聞かれる。とうとう昨年(1998年)4月から再び撮影を始めた。
映画では、その後の町長の考え、議員や議会の対応、住民の活動、そして「ケアタウンたかのす」が機能するまでを追っている。今回はその間に、老人福祉にとって大きな問題となってきた介護保険に対する町の対応もとらえた。
福祉はいまや地方自治体の決定する大きなファクターである。いま鷹巣町は首長の強い意志によって、そのことに真っ向から取り組んできた自治体の一つである。だが、町は将来ともにこの福祉を、日本の風土、国情のなかで、維持、発展させることができるだろうか。
「住民が選択した町の福祉」のラストで、ワーキンググループの一人が、やっとハードをつくる条件が出来たが、「問題は これから です」と言っている。同じ言葉が、今の状況にもあてはまると、私は思っている。
羽田澄子
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