山井和則の講演日記
99年12月11日の報告
今日は大阪で高齢社会をよくする女性の会の講演に招かれました。
私は介護保険のあらましを話しました。
私のあと、私の尊敬すべき外山先生の講演がありました。
外山先生は、日本の痴呆ケアと老人の住環境の第一人者です。
以下、その講演要旨です。
外山義先生講演
日本では介護サービス以前に、高齢者の住環境が悪い
- 家の前に車がつけられない
- 入浴サービスができない
- 車椅子が利用できない
- トイレに介助者が入れない
- 狭い
- ホームヘルパーの労働条件も悪い
- ヘルパーが介護しやすい家
しかし、介護保険の認定ではこのような住環境の違いは全く考慮されていない
畳の上で死ねない!
- 8割以上が病院で亡くなっている
- 老人ホームなどを含めると9割以上
- 畳の上、つまり、自宅で死ねる人は1割弱
施設に移る3つの苦しみ
1、居住継続を拒んだ原因に苦しむ
例/骨折、
2、自宅から離れることになる
海老がむき身で裸にされるようなもの
3、地域から離れる
一人の空間
- 老人ホームは個室7%
- 人の視線から自由になれる空間が大事
- 施設に入ったその日から絶えず人の目にさらされる
- 一人になれる空間がない
- 四人部屋よりも
- みずみずしい感性を持っていたら生きていけないので、隣のベッドの人を無視するようになる
- 同室者に挨拶しない
- 4人部屋がいい、というのは間違っている
- 物をとられた妄想でけんかになる
- 老人ホーム
は禁止、「あれしたらだめ」「これしたら駄目」と言われる。
- 垂直型のケア 施設では、職員が上で、老人が下
- 役割の喪失 自宅と老人ホームの違い
- 家ではいるだけで人の役に立つ、孫にごはんの時間を言うなど
以上の理由によって、施設に入ると元気がなくなる
- 個室とー人部屋は違う
- 自分の家具や生活がなければ独房
やらせプログラム
きらめきの高齢者 地域で役割を持っている老人は、きらめいている。地域できらめいている老人も紙一重で、弱った老人に。骨折、脳卒中などで、元気老人が弱ってしまう。
- 生命力がしぼまないようにするには、住環境が大切
- 住環境の変化による老人のショックに日本人はまだ気付いていない
- ショートステイも家族のニーズ 老人の希望でない
- 老人にとっては往復ビンタ ショートステイに行って弱り、帰ってきて弱る
- お年寄りを移動させるのはよくない
- サービスが自宅に行くべき
- 介護付き住宅、という考えかたが大切
会場からの質問
グループホーム
- 生活する単位としては、5ー9人がふさわしい
- 今までは介護しやすい大人数だった
- 施設が変わるには、職員がかわること
- 耳元で入居者が本音を言ってくれる存在に
- クレームが多く出る施設が良い施設
- 入居者は人質状態にあるから本音を言いたくても言えない
やまのいの感想
久し振りに外山先生の講演を聞いた。グループホーム入門の本の中でも外山先生と鳩山さんの対談が載っているので、是非お目通しください。外山先生は、日本に欠けていた「住環境」とをいう視点を老人福祉に植え付けられた偉大な先生です。
外山先生に刺激を受け、私もグループホームの普及に人生を賭けるようになった。
なお、外山先生の主な著書は、「クリッパンの老人たちースウェーデンの高齢者ケア」(ドメス出版)です。
「四人部屋のほうが寂しくなくてよい」という意見は大間違いということを外山先生から学んだ。
介護保険についてひとこと
介護保険は、選べるといっても、量がなければ選べない。
情報がなければ選べない。
その前提には、自治体のサービスの基盤整備と情報公開が必要。
山井 和則(やまのい・かずのり)
99/12/11
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