4月11日の日記(春真っ盛り)


 今日は、京大教授の外山義先生にお目にかかった。

 外山先生は、老人の住環境、老人ホームの個室化、グループホーム設計の第一人者。
 私がもっとも尊敬し、影響を受けている先生の一人である。

 外山先生のお話を2時間もゆっくり聞けるのは、数年に1回しかないことである。
 興奮しながら、わくわくしながら、お話を聞いた。

 以下は、ほんのその要約です。
 詳しくは「グループホーム読本」(外山義編著、ミネルヴァ書房)に外山先生の思想が紹介されています。


 外山先生いわく、
「日本の老人ホームの失敗は、ホスピタルモデル(病院モデル)だったことだ。入居者が主役でなく、管理する側の論理だった。“住宅として、日本の老人ホームを”最初から考えるべきだった」

 また、いまの老人ホームの個室化については、
「個室だけではなく、中間領域が必要。つまり、個室と共用の部屋に行く前に、2-3人が集まれる中間領域が必要」とのことだった。

「生命力をしぼませない“住環境”が大切」

 外山先生は、宮城県の名取市に「こもれびの家」というグループホームをつくったが、それは、「老人の住環境」、「老人ホームの個室化」を重視した「グループホーム」。
その後の入居者の調査では、入居者の多くの「痴呆症状は改善した」という。

 
なぜ、グループホームで症状がやわらぐのか。

この点について先生は、
「グループホームがよい、という以前の問題として、グループホームに入る前の環境が
ストレスフルだった。“前の環境が悪すぎた”というケースもある」という。
「グループホームという、くつろげる環境に移ることで、“ころもがはがれるように症状が緩和される”という。のんびりレた雰囲気が、お年寄りの生命力の回復につながる」と。

 外山先生の話で感動したのは、
「自分で声を発することができない、お年寄りの願いを、設計に反映させるのが私の務め」とおっしゃたこと。


 老人ホームの個室化をすることに、いまだに賛否両論がある。

しかし、個室化が必要な理由は、

「ゴムはゆるむ時間がないと、いざという時に、ゴムがのびられない。それと同じように、人問はひとりでいる時間があって、はじめて人に会いたくなる。人と長時間、いっしょに居すぎると.人嫌いになる。老人ホームにも、ー人一人が、逃げ込める空間が必要。人と交流する意欲がでるように、個室化が必要」という。

 つまり、逆説だが、
「人を好きになるために、人と交流したくなるように、人がわずらわしくならないために」個室が必要で、雑居部屋だと逆に、人が嫌いになるとのこと。


 さらに、理想の老人ホームとしては、
「老人ホームは、大人の世界であるべき。本人にやる気を無くさせて、丸抱えでお世話するのは大変ですよ、重たいですよ。 相手の味方をしていく介護が必要。自立心を引き出すのは、よい住環境が必要。これからは、老人ホームは、全室個室、ユニット型が主流」とのこと。

「ただし、ハードだけが個室になっても、住まい型老人ホームだけではだめ。そこで、集団型ケアでは意味がない。ソフト、つまり、ケアも個別ケアで、残存能力を引き出すものでなければならない」とのこと。

 つまり、個室でユニット型ということは、そこで個別ケアが必要だということだ。


 また、その他のアドバイスは、
「個室には手洗いが必要。それは、お年寄りが自分で、はしを洗ったり、ハンカチを洗ったりするようになるから」ということ。


 また、「木製の個別浴がのぞましい。木製にこだわるのは、においがいいから。このにおいが大事」とのこと。


 食事については、
「大食堂に連れ出すのでなく、小さなグループで食事をする。朝食はユニットの中の食堂で食事。きざみ食、ミキサー食は、やめるべき。そうすれば、表情もおのずと変わる」とのこと。


 「人間は大空間だと緊張する。お年よりもいっしょ。これからはグループホーム的な、すまい型老人ホームの時代です」と外山先生。

 感動の2時間。勉強になった。
              
山井和則 拝


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