2000年2月11日

グループホーム入居者の喜びの声

講演中の 山井和則


 今日は、松下の関係会社の方々に講演をしました。
 参加者70人の会で、介護保険やグループホームの話と、松下政経塾での松下幸之助塾長との出会いの話をしました。

 講演後の昼食で嬉しい話を聞きました。

 私が講演の中で
「痴呆症のお年寄りにとって、グループホームの良さと病院の悪さ」を話しました。一人の方・Aさんが話し掛けてこられました。

 「私の義理の母も実は痴呆症ですが、山井さんがお話されていたような
グループホームに先月から入居して、本当にうまくいっています。山井さんのおっしゃているとおりです」とのこと。

 Aさんの義理のお母さんは、4年前から痴呆症を患い、自宅で奥さんが介護していたのですが、

《繰り返し同じことを言い、夜中にも起こされ、「物を盗まれた」と騒ぐお母さんの介護で、奥さんは寝込んでしまわれました。
 そのため二年前から病院にお母さんを入院させました。病院を転々とする中で、ますます症状は悪化するばかり。病院の中では、お母さんは、一日中廊下を徘徊したり、ぼーとテレビを見るだけです。それでも、家には毎日電話を何度もします。
 とうとう奥さんが、「お母さんから一日に何度も電話がかかってくる。その声を聞いただけでも頭痛がする」と倒れてしまい、ご主人の携帯電話の番号を、お母さんに教えることになりました。その携帯電話には、病院のお母さんから一日五回は、電話がありました。》

 しかし、看護婦長さんから二ヶ月前に、「このままお母さんを病院に預けていたら、ますます痴呆が悪化するばかりですよ。グループホームというものが近所にできたので、そこに申し込んでみたらどうですか」と、アドバイスがありました。

 早速、その日にグループホームに下見に行き、後日、入居することができました。

 グループホームに入られたお母さんは、「とにかく、表情が全然変わりました。病院にいたときは、ぼーとした苦しそうな顔をしていましたが、グループホームでは、穏やかな表情になりました」とAさんは言います。

 お母さんは足腰が元気なため、グループホームでは、「他のお年寄りの車椅子を押して散歩に行く」という役割ができて、はりきっておられます。そして、入院中は一日五回もかかっていた電話も、グループホームに入居してからは、ぴったりなくなりました。

 さらに、お母さんはグループホームに移ってからは、Aさんが訪問すると、「嫁と姑はうまくやっているか?」といつも尋ねられます。実際、嫁と姑のことでAさんは悩んでおられ、「お母さんは、私の家のことをここまで心配してくれているとは知らなかった」と、Aさんは涙が出そうになったそうです。

 Aさんは言います。

 「今まで私たちは、痴呆症のお年寄りの人生を考えてこなかった。
 自分たちが手に負えないから、どこかに置いておこう、という置き場所探しで、病院に入れていた。
 自分たち家族の人生のためには、痴呆症の親は邪魔だからどこかに置き場所を見つけないとダメだというだけの理由で病院に入れていた。
 でも、そこには痴呆症のお年寄り本人の人生を考えるという視点は全くなかった。
 でも、本当は痴呆症のお年寄りの人生も考えないとダメなのですよね。物を捨てるんじゃないんですから。
痴呆症のお年寄りが残りの人生をどうやって価値ある日々を送るか、という視点で考えれば、答えはおのずから病院ではなく、グループホームになります

 「グループホームに、はいれるなんて、あなたのお母さんは幸せですよ」と、私が言うと、Aさんも大きくうなずいておられました。

 このような声がもっと多くの方から当たり前に聞くことができるように、グループホームがもっともっと増えてほしいと思います。  

このような嬉しいお話を是非メールでお便り下さい。山井和則


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