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家族を介護する人の人権は誰が守ってくれる?

突然ですが、質問です。
 「今の世の中で”最も過酷な労働”とは何だと思いますか?」

 何を思いつきましたか。あなたが考えたのは、立ちっぱなしの肉体労働か、それとも反対にずっと座ったままの頭脳労働か、はたまた他のことでしょうか?

 しかしやまのいは、お年寄りの介護が、最も”過酷”だと思っています。

photo  食事介助、買い物、炊事、衣服の着替え。それに加えて、入浴の手伝い、床ずれをつくらないための体位交換、昼夜関係なく続くトイレ誘導、時にはオムツ交換。さらに、痴呆(ちほう)症のお年寄りが居る場合には、「1日中付き添っていなければならず、目が離せない」なんていう家族も現実にたくさん存在するわけです。

 このような介護を、他人の親に対して行えば、それは法的に”労働”ということになり、給料がもらえるうえに福利厚生も保証されます。したがって、老人ホ−ムや病院の介護職員、自宅に訪問して家事や介護を手伝うホ−ムヘルパ−さんたちは有償の労働者であり、きちんと労働基準法で保護されることになります。
 しかし、さすがに同じ老人といっても、自分の家族の一員の介護に対して「給料」を支払うことには、おそらく賛否両論が出てくるでしょう。家族介護の無償性についての是非は実際の所、難しい問題です。

 では、介護を1つの労働として見た場合に、家庭内で老人介護をしている方々の労働条件はどうなっているのでしょうか。1つ、実例を挙げてみましょう。
 これは、ある人(仮称・A子さん)との会話のなかのことです。
 「普通の労働だったら1日8時間、週休2日で1年の間には長期休暇もあるのに、どうして介護だけ24時間労働で年中無休なの?」こう、A子さんに問われました。
 このA子さんは、昼夜24時間あてもなく歩き回る痴呆症の姑を、4年間介護し続け、その結果ノイロ−ゼ状態になってしまいました。

 この話をどう思いますか。こうした現状は、マスコミ等で表立って取り上げられることが少ないので、全然知らなかったという方も多いのではないでしょうか。

 では、ここでもう一つ質問です。
「この状況は、どう改善しなければいけないでしょう?」

 どうせ自分は関係ないから他人にまかせる、なんて言わずにちょっと考えて下さい。「取り合えず大変そうだから休暇をあげる」という考えも一つの解決かも知れません。でもその間、誰が姑さんを介護するかということが問題です。結局、他人まかせでしか解決できないのでしょうか。
 実のところ、完璧な解答はまだありません。でも、1つのヒントがドイツのシステムの中にあります。

 ドイツでは現在、「公的介護保険制度」が導入されています。この制度があることで、在宅で家族を介護する介護者が身体を壊した際にも、”労災”が適用されるようになります。介護期間が”労働”と見なされ、”年金”に自動的に加入でき、当然、後々”年金”を受け取ることができます。さらに、1年あたり4週間の”長期休暇”が権利として保証され、その間は代理のホ−ムヘルパ−が介護を代行してくれることになっています。
 どんなメリットがあるのでしょう?
 そう、ドイツでは介護をする人は1人の”労働者”として認められているのです。

 つまり、自宅が「職場」とみなされ、家族介護者が「労働者」とみなされるのです。
 24時間労働、年中無休(給)という過酷な労働は、「普通の職場」でだったら、絶対あり得ませんし、誰も寄りつかないでしょう。しかし日本の場合、その労働が自宅で家族に対して行われているため、「普通の職場」でないということで、野放しなっているわけです。

 ですから、「家族介護者に”労働者”としての最低限の権利と労働条件を保証すること」が日本でも急務だと、思うわけです。

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