精神科特例廃止について


衆議院厚生委員会質問 「医療法改正 精神科特例廃止について」 
質問原稿の要約                      
                                      山井和則

25日(水)午前10時〜11時 

答弁、ごく一部覚えている範囲で一言趣旨を書きました。
正確な議事録は1週間後に出ますので、ホームページで公開します。


はじめに 

 医療法改正について、「精神科特例などの精神医療」に絞って質問させて頂きます! 

 先週金曜日からこの月曜日にかけて、4ヶ所の精神病院を訪問し、一ヶ所では半日滞在し、現場の声を聞いてきました。

 精神障害者であり、過去8回入院経験を持ち、いま自宅で暮らしている横式多美子さんの声を昨日、ある集会で聞きました。彼女は言います。

 「現在の精神病院は治療の場ではなく、収容の場になっています。私たちは病人なのだから、ちゃんとした医療を行って下さい。普通の病気と同様に扱って下さい。精神科特例など早くなくして下さい。お願いします。

 「私たちのまわりには、月に一回しか回診がない病院もたくさんあります。月にー回の回診で退院を決めると、当然、入院日数も長くなります。私たちは精神病院の劣悪な環境の中で、一日も早く退院したいというのが、心の底からの願いです。私は一週間から十日位の休息入院を中心に3か月くらいで退院させるべきだと思います。

「すっかりよくなって、二度と再発しないように、しっかり治そうね」と言って、1O年も入院させるのには、ぞ一っとして、足が震えます」
 このように言っています。


問1、津島大臣に
 最初にお伺いします。精神病院に行かれたことがありますか。閉鎖病棟に入ったことはありますか? 行かれたことがあるならばどのようなご感想でしたか。

答弁 地元の精神病院を何ヶ所か行った。よい居住環境に引き上げ、早く退院できるようとよいと思った。


問2 津島大臣に
 「精神科特例」の資料をお手元にお配りしましたが、医師は一般病院の三分の
1、看護婦は3分の2です。一般病床の人員配置基準に精神科の基準が大幅に低い合理的な理由は何ですか。精神科特例は、精神障害者差別のシンボルだと思います。

 これらは、1991年の国連決議「精神障害者の保護および精神保健ケアの改善のための原則」その8「ケアの基準」に謳われている、「すべての患者は、自らの健康上の適した医療的・社会的ケアを受ける権利を持ち、また、他の疾病を持つ者と同一の基準に則してケアおよび治療を受ける権利を持つ」という原則に反していませんか? 


問3、津島大臣に
 基本的には公衆衛生審議会の意見書にもあるとおり、精神病床の設備構造及び人員配置の基準については、一般の病床とできるだけ格差の無いものとすることが求められると考えられます。今回の改正で、精神医療の特例すなわち低水準な基準が固定化することがあってはなりません。精神病床についても、将来的には一般病床と基準を同一レベルにする方向での改正ということと理解してよろしいですね。

答弁 はい


問4、津島大臣に
 しかし、現状は、一般病床と精神病院では、随分差があります。それがこの写真です。お配りしたグラフを見て頂きたいのですが、なぜ、日本の人口
1000人あたりの精神科病床数(2、9床)は、イギリス(1、5床)、ドイツ(1、6日)アメリカ(0、6床)に比べ2ー4倍も多いのですか? 

 日本には欧米よりも精神障害者が多いのですか?

欧米では精神病床が激減した60年、70年代に、日本はなぜ急増したのですか?

 このグラフで見る限り、日本は精神病院への「隔離収容型」、欧米では、「地域で暮らすノーマライゼーショ型」と言えませんか?

 なぜ、日本では病床数だけでなく、平均入院日数が欧米に比べて長いのですか?

 精神病院の平均入院日数は、日本は330日でほぼ1年、アメリカ9日、イギリス86日、ドイツ40日と、欧米に比べて4倍から30倍も長いです。217万の精神障害者のうち34万人が入院し、半数近くが5年以上の入院です。日本の精神障害者は地域に暮らせる権利はないのですか?   

答弁  
 アメリカではナーシングホームにも入っている精神障害者が多いので、精神病院のベッドが少ない。


問5、津島大臣に
  写真のように、私は精神病院を先日訪問し、殺風景な四人部屋にショックを受けました。いい病院でしたが、閉鎖病棟に半日いただけで、「この環境ではいるだけで健康な自分でも体調が悪くなるなあ」というのが正直な感想でした。

 構造設備基準については、精神科特例廃止の議論野中でも、居室の広さを現行の4.3平米から6.4uに広げることが議論されています。居室面積4,3平米というのはベッドを置けば、車いすも置けない環境です。

 狭いだけではなく、プライバシーの面でも問題があります。

 4人部屋ならかなりマシな部類で、現行の基準は6人部屋ですし、その基準以下の8人部屋、10人部屋、30人部屋もまだあります。しかも、先ほど申し上げたように、日本では在院日数が長いのです。

 プライバシーのない環境に長くいると、人間性が失われやすいと私は考えますが、大臣ご自身は、この様に狭くてプライバシーも守られない空間に20年も住めますか?

答弁 「厳しい環境だ」


問6、津島大臣に
 (写真を見せて)この方は精神分裂病のためそのような雑居部屋に20年も入院していますが、非人間的だと思われませんか。欧米は治療目的しか入院していないのに、日本は治療が一段落しても退院できない。日本の恥ではありませんか。逆に、病院に長くいすぎたから、生活能力も落ちたり、帰る家もなくなってしまったという悪循環ではないですか。 ナイチンゲールもその著書「看護覚え書き」の中で、「
2か月以上長期入院すると多くの病気は悪化する」と述べているが、その最たるものが今の日本の精神医療ではないか。

 お手元にお配りした資料の中に、いくつかの社会的入院についての統計がありますが、そもそも、地域で支えるシステムがあれば退院して、在宅や施設で生活できる社会的入院患者は、精神病院の患者34万人のうち何%で何人と厚生省は考えておられますか。

 そして、その根拠は何ですか。

答弁 2-3万人


問7、福島次官に
何人が社会的入院かも調査していなかったら、今後の計画も立てられないじゃないですか。「調査なくして計画なし」。調査をして頂きたいと思います。次は人員配置についてお伺いします。現在の精神病院の医師の基準である「患者48人に医師1人」を満たしてない精神病院は何%、何床ですか?

また、精神病院の看護婦の基準である「患者6対看護婦1」を満たしていない精神病院は何%、何床ですか?


問8、福島次官に
 
1054の民間精神病院のうち18病院は6:1を下回っている。5年後の見通しを聞いたところ、4病院が満たせないと答えている。基準を満たしてないところは保険指定を取り消すべきではないか。

 今回の医療法改正の中でも、著しく不十分であり、適正な医療の提供に著しい支障が生ずる場合は、人員の増員命令や業務停止を命ずることができる規定が設けられていますが、処分に至る前に、指導で改善が見られない病院名やその病院に対する指導情報を、まずは利用者の為に公開する必要性があるのではないですか。もし、劣悪な病院であることを知らずに入院して10年間退院させてもらえないかもしれない。つまり、患者さんにとっては劣悪な病院の情報を知ることは死活問題であり、当然の権利です。もしその基準に達しない病院で虐待でも起こったら厚生省の責任は免れません。よって、厚生省は都道府県に指導して基準に達していない病院名を公開する義務があると考えますが、いかがですか。

答弁 都道府県に指導する。


問9、津島大臣に
 努力ではなく、情報公開は都道府県の義務とすべきだと思います。

 このように当事者の人権を守るためには、当事者の政策決定過程への参加が不可欠です。公衆衛生審議会「精神病床の設備構造等の基準の専門委員会」13人の委員には、当事者、つまり、精神障害者本人が入っていません。今後、省庁再編のあとも、同様の委員会や分科会がつくられると思いますが、その際には、今までのような参考人としてではなく、委員として当事者を入れるべきだと思うがいかがでしょうか。

答弁 むずかしい。しかし、研究する、


問10、福島次官に
 精神病床についても、精神科以外の病床と同様の基準に近づけてゆく方針ということを、冒頭でも御答弁いただきました。そして、今回の医療法改正で、昭和33年に定められた「精神科特例」が廃止されます。またこの改正の中で、精神、結核、感染症以外の病床は、「一般病床」と「療養型病床」の二区分に機能分化され、一般病床の看護基準は現行の4:1から3:1に引き上げられます。

 精神科病床も「一般病床」と「療養型病床」に機能分化するべきではないでしょうか?。そして、精神科の一般病床については、一般病院並みに医師は患者16人に1人、看護婦は患者3人に1人に引き上げるべきではないのですか? 欧米の医師の3分の1で看護婦も少ないから早期退院ができず、入院が長期化しているのではないですか。


問11、福島次官に
 また、精神障害者への差別についてお聞きしします。精神障害者は危険な存在だというメッセージを与えかねないような規定や身体合併症を持っている患者さんが一般病床に入院できないかのような誤解を与える、差別的な規定がまだ残っていること、保護室を一般の病床、居室として取り扱ってよいという、精神障害者を人間として取り扱っていないような行政の文書があるなら、この際見直したほうがよいのではないでしょうか。

 障害者の欠陥条項の見直しも内閣をあげて取り組んでおられるのですから、そのことについて見直しをするべきではないでしょうか。以上のような点について、引き続き公衆衛生審議会でもご検討いただけますね。


問12、福島次官に
 厚生白書で述べているノーマライゼーションの定義の中で、「社会的自立」「地域で共に生活するために」などがありますが、掛け声倒れではありませんか。所管の厚生大臣として世界一入院が多い現状を恥ずかしくないですか? 社会的入院が多いのは、地域の障害者福祉サービスや住居が整備されていないからではないですか。

 退院後の地域で支えるサービスについてお聞きしたい。平成7年度「障害者プラン −ノーマライゼーション7ヵ年戦略」で、精神障害者217万のうち、34万人が入院しており、そのうち3万人(約1割)を2002年までに退院させる予定にしている。

 この進捗状況はいかがですか。さらに、3万人の社会復帰では、そもそも目標が低すぎる。2002年以降についてはどう考えておられますか。

 東京帝大教授の呉秀三は大正7年の報告書の中で次のように書いています。「わが国何十万の精神病者は実にこの病を受けたるの不幸のほかに、この国に生まれたるの不幸を重ぬるものと言うべし」。「この国に生まれたる不幸」。これこそが地域に暮らせない、病院に多くが入院せねばならない現実です。「この国に生まれたる不幸」はこのグラフでは現時点でも解決されていません。21世紀にどうするのか。障害者プランのあと、つまり、2002年以降の計画やビジョンをお聞かせください。

答弁  新たな障害者プランを2002年から進める。


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