介護保険見直し案 与党3党案

介護保険制度の定着へ向けた改善方策について

平成12年 9月27日
自由民主党
公 明 党
保 守 党


自由民主党・公明党・保守党の与党3党は、施行後半年を迎えた介護保険制度が国民の間に定着し、より信頼されるものとなるよう下記のとおり、改善方策を取りまとめ合意した。

 1.訪問介護のあり方について

(1)現在の利用状況

 介護保険による訪問介護の給付は身体介護(1時間単価4020円)、家事援助(1時間単価1530円)及び両者の複合型(1時間単価2780円)の3類型で行われている。

 訪問介護の平成12年7月の実際の利用状況をみると、3類型のうち、身体介護約46%、家事援助約34%、複合型約20%となっている。家事援助のうち、高齢者以外の同居者がいる世帯の利用は約25%であり、訪問介護全体における比率は、8.5%である。

(2)保険給付として適切な範囲を逸脱した家事援助の是正

 しかしながら、保険給付としては適切な範囲を超える家事援助の提供例(別紙参照)もある。保険の受給権が濫用されれば、被保険者の制度への信頼を損なうことにつながるおそれがあるので、基本的には制度実施者である市町村の裁量に委ねるべきではあるが、国も、次のような措置を実施する必要がある。

[1]保険給付として適切な範囲の周知徹底

 国において、保険給付としての家事援助の範囲を明らかにした訪問介護の適正な利用に関するリーフレット等を作成し、広く利用者、ケアマネジャー等に配布する。

[2]ケアプランに家事援助の必要な理由の記載

 ケアプランに家事援助を必要とする理由を記載するように改め、保険者(市町村)が保険給付としての適否を確認しやすくする。

[3]ケアマネジャーへの研修

 ケアマネジャーの研修プログラムに、家事援助の適切な提供に関する内容を盛り込む。 

(3)「身体介護」の利用の促進

 様々な理由により、訪問介護の中核となるべき身体介護の利用を受給権者がためらっている状況もうかがえるので、次のような方策を講じ、身体介護の利用を促進し、その比率を高めるべきである。

[1]利用者が身体介護を受けやすくなるような情報の提供を充実する。

[2]訪問介護事業に対する規制緩和を行い、身体介護の事業に特化できるような途を開く。

 (4)他の社会資源の活用

 介護保険の適用を受けないサービスについては、例えば、シルバー人材センター、市町村の一般行政施策、NPOなど、他の社会資源の活用を進める。また、こうした活用が進むように、ケアマネジャーに対する研修を充実させる。

 2.ショートステイについて

(1)支給限度額の一本化の早急な実現

 支給限度額の一本化の早急な実現を図る。また、それまでの措置として、訪問通所サービスのショートステイへの「振り替え利用」枠を2週間から30日に拡大するなど、一本化後と同等の水準で利用できるようにする。

(2)ショートステイ床の弾力活用

  ショートステイ床については、概ね5割まで特別養護老人ホーム床に転換できるようにするとともに、一時的に特別養護老人ホーム床として活用できるようにする。

 3.低所得者対策について

 低所得者の利用料負担については、既に、負担月額上限の特例や訪問介護利用者の経過的軽減措置などが実施されている。

 さらに、個々の利用者の状況に応じ社会福祉法人が利用者負担を原則として1/2に軽減する措置が講じられているが、全国的に十分には浸透していない状況にあることから、この措置について次の取り組みを行う。

(1)全国的な実施の推進

 この措置が全国的に実施されるようにする。また、市町村における利用相談窓口の設置など利用しやすい体制の整備を促進する。

(2)対象となる低所得者の範囲の拡大

  市町村が、地域の実情を踏まえ、第1号被保険者の1割程度までこの措置の対象とすることができるようにする。

(3)社会福祉法人に対する協力要請

 社会福祉法人に対し、その社会的役割にかんがみ、軽減措置に積極的に取り組むよう要請する。

 4.介護基盤の整備について

(1)介護施設の整備

 特別養護老人ホームなどに長期間待つことなく入所できるよう、介護施設の整備を急ぐ。また、単独型の痴呆性高齢者グループホームや民家や民間宿泊施設等を改造したデイサービスセンターといった小規模な施設の整備を推進する。

(2)介護予防拠点の整備

  生きがい対応型デイサービスや介護予防教室などの介護予防事業の活動拠点について、今年度補正予算により整備を推進する。

(3)「老いの住まい」づくり

 高齢者が要介護状態になっても、できる限り自宅や住み慣れた地域で老後生活が継続できるよう、居住環境の整備や地域の生活支援体制づくりを推進する。

 5.ケアマネジャーの資質の向上等について

(1)事務負担軽減・資質向上

 ケアマネジャーの事務負担の軽減を進めるとともに、現任研修等の実施によって資質の向上を図る。

(2)ショートステイ振り替え業務等の支援

 訪問通所サービスのショートステイへの振り替え措置に関する業務等について、現在介護報酬の支払いの対象となっていないので、必要な支援策を講ずる。

(3)市町村等による業務支援

 市町村や都道府県において、ケアマネジャー支援相談窓口の設置や情報交換の場づくりなどといったケアマネジャーの支援体制を整備するよう、周知徹底を図る。

 6.その他

 上記の各事項のほか、次の事項についても適切に対応していく。

(1)国保連の審査支払事務の支援

 国保連のコンピュータの機能強化など審査支払事務の向上を図るための支援措置を講じる。

(2)個人の尊厳に対する配慮と介護サービスの質の向上

  介護保険事業従事者の守秘義務の徹底など利用者の個人としての尊厳に十分に配慮するとともに、介護サービスの質の向上を図るための施策を充実する。

(3)制度の積極的PRの推進

 高齢者の保険料負担がなぜ必要であるか、介護保険制度のメリットは何であるかなどがわかるよう、制度の積極的なPRを推進する。

(4)介護保険施設の保険外負担の取扱い

 介護保険施設の保険外負担については、施設に対して、利用者から負担を求めることができる費用の範囲を周知徹底するとともに、各施設において保険外負担の実際の取扱いに関する情報の提供を推進する。

 7.今後における検討

 与党介護保険制度に関するプロジェクトチームは、今後の制度の実施状況を見ながら、本制度の適切かつ円滑な実施が図られるよう引き続き検討を行うものとする。


   (別紙)

一般的には介護保険の家事援助の範囲に含まれないと考えられる事例

.「直接本人の援助」に該当しない行為

主として家族の利便に供する行為又は家族が行うことが適当であると判断される行為

a利用者以外のものに係る洗濯、調理、買い物、布団干し

b主として利用者が使用する居室等以外の掃除

c来客の応接(お茶、食事の手配等)

d自家用車の洗車・清掃                   等

  B「日常生活の援助」に該当しない行為

訪問介護員が行わなくても日常生活を営むのに支障が生じないと判断される行為

a草むしり

b花木の水やり

c犬の散歩等ペットの世話                 等

  日常的に行われる家事の範囲を超える行為

a家具・電気器具等の移動、修繕、模様替え

b大掃除、窓のガラス磨き、床のワックスがけ

c室内外家屋の修理、ペンキ塗り

d植木の剪定等の園芸

e正月、節句等のために特別な手間をかけて行う調理     等


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