代表指名受諾演説(2000年9月9日)


演説抜粋(民主党サイトより)

民主党代表 鳩山由紀夫

【福祉は自立を支える】


 滋賀県大津市で、私はある宅老所を訪ねる機会がありました。

介護士の資格をもつ二人の女性が、献身的な活動をしていることで注目された施設でした。

宅老所のお年寄りはもとより、近所の方からもとても評判のよいサービスが行われていました。


 しかし、法的に位置づけられていないため、補助金もなく、介護士の過重な仕事量によって支えられていました。

「大きな施設では画一的なサービスしか受けられないのに、小規模故に一人ひとりに見合った介護サービスが行き届くようになった」との話を関係者から伺うことができました。

ところが、施設の関係者が補助金の申し入れをしようとすると木造施設には出せない、労働基準法違反の長時間労働を行っているから補助金は付けられない、そもそも個室が狭すぎると言われたというのです。


福祉施設は単にお年寄りや障害をもった人を「預ける」ところではないのです。施設も福祉サービスも、一人ひとりが自立するための支援基盤に他ならないのに、そんなことには関係なく、大規模施設が優先される画一的な補助金システムが出来上がっています。


 全国には、こうした宅老所やグループホームがおよそ800カ所あると言われています。それらの多くは、自立生活を支援する小規模施設で、小さいことを生かして家庭的な雰囲気ときめ細やかな福祉サービスを提供することを可能にしています。ところが、その多くは善意の努力によって支えられており、とりわけ、500カ所とも言われる宅老所の場合、国のグループホーム基準にも達しない規模であることから、個室の整備も十分ではなく、さらに介護士らに過重な負担を強いているというのが実態なのです。


 これからの福祉は、「人間の自立」を基準とした新しい支援制度に切り換えていくことから始めなくてはいけません。


 私は、全盲にもかかわらず資格を取得して専門職業に就いている青年や車椅子の生活でも自立生活に挑戦する若者たちと対話をしたことがあります。

彼らは、恩恵としての福祉を望んでいるのではありません。

そうではなく、あたかも一人のベンチャーが新しい試みにチャレンジするように、自らの能力を最大限に生かして自立の道をつき進もうとしているのであり、政府にはそのための基盤整備を望んでいるのです。


 福祉について大胆な発想の転換をしていくときだと考えています。

これまでの福祉は欠損、欠けているものを補うというものでした。

それは、いわばマイナスを無くすという発想で、自立に向けてプラスを支援するという発想はあまりなかったのです。


 これに対して、ニュー・リベラルの思想は、福祉についての考えを大きく転換するものです。

福祉は、人間としての尊厳を守る徹底したセイフティ・ネットの上に、社会的ハンディキャップを持ちながらも、自ら自立しようとする人たちを積極的に支援するものだと考えています。


 私は、民主党が全国各地で試みられている数々のボランタリーな福祉運動と連携し、共に新しい福祉社会を創り上げていく、そんな政党であってほしいと考えています。


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