介護保険公開公聴会 in大津  報告

2000年8月26日(土)

滋賀県大津市・びわ湖ホール小ホール


民主党あいさつ

○鳩山由紀夫(民主党代表) 

お集まりの皆さん、こんにちは。本当にお暑いなか、残暑というより厳しい夏のようなそんな暑い太陽のなかでお集まりくださいました皆様方に、まず心から感謝を申し上げたいと思います。ある意味で介護保険、皆様方が大変にご関心を持っておられるというそのあかしではないかと心からうれしく思っておりますし、ある意味ではそれはまだまだ介護保険制度が十分に機能していない部分があるぞ、そんなあかしでもないかと思っています。皆様方から積極的なご意見を伺いながら公聴会を進めることができればと念じています。

 実はきのう、大変気になる記事がございました。それは、痴呆症で寝たきりの88歳の母親に65歳の次男の方が暴行を加えて死なせてしまった。逮捕されたその次男の方は「母親のおしめをかえる際、便が飛んだので腹が立って、両腕を引っ張るようにして頭を4回くらい畳に打ちつけたら、ぐったりとしてしまった」という記事でございます。まさに家族で介護を行っていた、その1つの悲惨な結末ではないかと思います。私たちは家族で今日まで、この場合は男性でありましたが主として女性の皆様方に、大きな労苦を煩わせながら行ってきた介護というものを、社会的な行動のなかで解決をしていきたい、そんな方向から介護保険制度というものを、必ずしもすべて満点だという状況ではないにせよ、スタートすることが大事ではないかということを民主党としては主張し続けてまいったわけでございます。

 その介護保険制度、おかげさまで半年ほどたちました。いま一遍ここで皆様方と徹底的に議論をさせていただいて、どこがおかしいのか、どこを直すべきか。私たちは介護保険制度こそ地方分権のきわみだと、そんなふうに理解をしているなかで、国から意見を聞くよりも、まず私たちは皆様方のご意見を聞かせていただいて、それを介護保険制度のなかに反映させていければと、そんな思いできょうご当地に伺いまして大津市で公聴会を党として主催をすることになりました。

 先ほど山田・大津市長さんからお話がございましたが、全国をさまざま見させていただくなかで、大津市が介護保険に関して、特に福祉の問題に対してきわめて先進的な地域である、さまざまな活動を行っておられるということを伺って、なんとしてもこの先進的な地域で皆様方のご意見を伺いたい、そんな思いできょうこの会を開くことにいたしました。ぜひご参会の皆様方に私どもの思いをまず聞いていただくなかで、そして{介護保険をより良くするプロジェクトチーム」があるわけですから、そのプロジェクトチームで精いっぱい努力をお約束をいたしますので、ぜひとも皆様方の生の声を聞かせていただければ大変にうれしゅうございます。

 冒頭で長いお話をするつもりはございませんが、一言だけ申し上げれば、きょう4カ所、特別養護老人ホームから宅労所「夕照苑」まで伺わせていただきました。大きな施設には国の支援がある。ただ、必ずしもお年寄りの方々、特に痴呆症の方々は、大きな施設にお住まいになることに満足されていないようだ。でも小さな施設、特に宅老所「夕照苑」、本当に小さな施設でありましたが、その住まいはお年寄りにとっては大変に心豊かになる、そんなご生活のようでありましたが、国の支援が何もありません。「スモール・イズ・ビューティフル」、そんな思いを私たちは介護保険のなかに見出していきたいと思うなかで、なぜまだ国の施策は必ずしもそうなっていないのか、その辺を見つめて、できればきょうこの公聴会などでその原点をただしていければと考えているところでございます。

 さまざまなご意見を皆様方から聞かせていただきたい。そんな気持ちで民主党はこちらに参りました。2時間半、長いようでもあり、でも介護保険を議論するにはまだまだ足りない時間かもしれませんが、積極的にご参加をくださいますように心から祈念をさせていただきながら、あらためてお暑いなかお運びをくださいましたお一人おひとりに感謝の心を添えてお礼を申し上げたいと思います。本当にありがとうございました。よろしくお願いいたします。(拍手)


公聴会趣旨説明

〇山井和則(民主党「介護保険をより良くするPT」事務局長)

鳩山代表からいまも話がありましたが、今回の公聴会は民主党の宣伝の場では決してありませんで、私たち民主党が現場の方やお年寄りや自治体の現場の方から話を聞かせていただく、そしてその話を密室で聞かせていただくのはもったいないので、こうやって公開の場で皆さんから聞かせていただくことにさせていただいております。


公聴会

パネラーからの問題提起

〇山井

それでは早速、公聴会に入ります。トップバッターは猿山さんです。

○猿山由美子(呆け老人をかかえる家族の会・滋賀県世話人代表) 

私ども家族の会は先日20周年を迎えました。20年間に法人にもなり、会員もいま1600名を超えております。その意味するところは、背後にボケ老人を介護する家族がふえ続け、その苦労や苦しさが減ることがないことのあかしでもありました。

 私たち会員は、さまざまな立場の方が入会しているので宗教とか政治にはなるべくかかわらず、自由・公平な立場をモットーにしております。したがって1つの政党の集まりに参加することはいいのかなと迷いもありました。しかし、私どもの悩みや苦しみにいままで政治が耳を傾けてくれたという記憶はほとんどありません。本部代表が1回参議院の公聴会に出席して意見を述べさせていただいたぐらいで、いままでこのようなチャンスに恵まれなかったので、本日は政治に非常に関心の高い方々にも意見を聞いていただく数少ない機会と思い、出席させていただきました。

 私の立場から申し上げることは、まず介護家族の実態をよく知っていただきたいということです。「呆け」と会の名称につけておりますが、お医者さんの言い方では「痴呆」という言い方になるわけですが、痴呆は病気です。これについて詳しくお話しする時間はきょうはないので、アルツハイマー・デーに配る予定のチラシをお持ちしたので、ぜひそれを読んでいただきたい。

 痴呆という病気は、記憶や判断をする力を失うという病気です。このような病気になったときは、本人も辛いし、介護している人も大変な状態になります。このような状態になった老人を抱えている家族はどうして暮らしているかということですが、20年前の状況を申し上げると、まず専門医はいませんでした。「年をとったらこんなものだろう」と言われて、「あんじょう見てや」ということで診断も介護の方法もなんにも示されませんでした。

 2番目に、福祉の社会サービスはまったくゼロと言ってよく、老人ホームもボケがあったら平然と断ってくるような状態でしたし、短期入所、ショートもデイもないし、保健婦さんが巡回して見てくれることもなかったわけです。

 3番目に、家族にとって一番つらいことは、世間の無理解だったと思います。これは「3つのハードル」という言葉でいつも話しているのですが、まず第1に、ボケ老人を抱えた場合に、夫の親を見ているにもかかわらず夫の理解がない。世間体を気にして「ヘルパーなど使ってくれるな、1人の親を見ることもできないのか」という同情もやさしさもない夫、ということが言われております。

 次は、親戚です。小じゅうと、兄弟、姉妹、そういったところが「口は出すが、手もお金も出さない」というのが一般的に言われております。

 最後のハードルが、隣近所のうわさで苦しめられている。昼間の時間だけでもほっとしたい、デイに出したい場合も、車が拾いに来てくれると世間体が悪いと、近所のうわさになるからデイが使えない、そういうこともありました。

 20年たっていまはどうかというと、専門医は「全然いない」という感じが、専門医は「少ない」という感じです。いまだにホームドクターといわれるような内科医できっちり痴呆という病気を診断してくれる方はごく少数です。

 福祉のサービスは20年間で非常に前進しました。痴呆専用の老人ホームもできたし、ショートも自由に使え、デイも非常に日数がふえて、介護家族は大変楽になったわけですが、介護保険でちょっと頓挫しているようなところです。

 世間の無理解ということは、だいぶわかっていただいてきたとは思うんですが、いまだに山間部などは古いしがらみに縛られて大変苦しんでいる家族は多いと聞いております。

 この20年間に福祉のサービスの点ではほっと一息できる状態までなってきたが、介護保険でいま枠がかかっていたりショートステイが使いにくかったりしていますが、社会サービスを介護に使うというのが常識として世の中に定着すれば介護家族としては大変楽なわけですから、介護保険はどうしても充実したものにしていただきたいと願っています。

 私どもは世界一の長寿社会と言われていますが、これには光と陰とがあると思います。陰の部分がいま私たち介護家族に影を落としている。日本の歴史にいままでこういう高齢社会というものは経験がないわけです。長く生きる分、ご老人自身も老いて「お迎えが来ない」という、生きる苦しみを老人ホームなどではよく耳にしますし、老いてつれあいを見る老老介護という問題も出てきております。そして80歳を過ぎると、介護者なしには人間は生きるのは大変だと思います。私はことし還暦を迎えたところですが、私の年代の前後は「親を見る最後の世代であり、子どもに介護を頼まない最初の世代」という言い方をされております。私もアルツハイマーの母親を見送りましたが、やっぱりあの苦しみは大変なものだと思いますし、子どもに同じような苦しみを味あわせることは望みません。ですから私の老後は社会サービスで見てほしいと願っています。そこで介護保険には熱い期待が寄せられるわけです。老いても自立して生きられる、介護の備えのある社会をつくってほしいということで、「介護保険よりよい公聴会」となるように期待しております。

○山井 

家族の会のこと、そして痴呆症のお年寄りを介護するご家族のご苦労をお話しいただきました。夫の理解がないというのがトップであると。介護保険以前の問題。次は、金も手も出さないのに口だけ出す親戚、それと近所のうわさ、こういうご苦労とご家族は日夜戦っておられるわけです。

 次に、立場変わってサービスを提供される事業者の代表として内田幹也さんからよろしくお願いいたします。

○内田幹也(ライフケアサービス代表取締役) 私は事業者の目から見て、私どもがどうして介護サービス事業に取り組んでいるか、そしてこのなかにおられる全員がいつかは利用しなくてはならないこの制度について、どうやって事業所を決めるか、利用していただければいいかという点を、ご参考になればということでお話しさせていただきたいと思います。

 私どもは平成4年4月から訪問介護、訪問入浴介護、福祉用具の販売をやってまいりました。訪問入浴介護については各市町村の委託を受けて、大津市では平成8年よりサービスを提供してきました。現在大津市で訪問介護を含めて約150名の利用者がおられます。介護保険前は、どうなるかわからない、継続して利用していただけるかどうかとても不安があったのですが、おかげさまで利用者は少しずつふえております。

 ただ、訪問介護について新規参入された事業者とほぼ同じ状態でして、利用者の数がまったく読めなかったのは事実です。また高齢者が、この制度が始まったからといって、いままで利用されていたところからすぐに違うところを利用することにはならないと思います。この事業については私自身、本当にぽつりぽつりと利用者をふやしていく、いわば長い目で見ないと成り立たないと思っております。

 そういう思いを持ちまして、昨年11月に長等商店街という地味な商店街なんですが、そこに営業所を設けて、地域の方がいつでも立ち寄れるスペースづくりとか、介護とか身の周りのことで困った高齢者がおられたらちょっとでも手助けできるような思いを持って取り組んでおります。これからも本当に地味な活動を続けていきたいと考えています。

 私自身のこのサービスへの考え方ですが、この制度は国民が保険料を払ってサービスを利用する。つまり保険料を支払う義務とサービスを利用する権利を持ったことになります。社会福祉法人等の事業所も含めて、利用者には利用していただくということになる。そういった意味ではその辺のコンビニとか商店と何ら変わりないと考えています。ごく単純な話ですが、事業所が「お店」で、介護サービスなどのサービスが「商品」になっています。利用者、つまりお客さんはお店を選んでそれを買う。新しく設立された介護支援専門員という立場ですが、その立場の方はお店の情報を提供するというぐあいに考えています。利用者が選ぶということは非常に大切なことで、事業所は買ってもらわないと仕事にならない。買ってもらうためによい商品をつくらなければならない。つまり商品、サービスの質を上げる重要な要素ということになります。利用者は、サービスを、介護支援専門員が決めたからとか、どこでもいいということで決めてしまうと、後でいやな思いをすることも出てきますので。その辺は慎重になっていただきたい。

 サービスを選ぶときにどういうふうに選ぶかということですが、私なりの視点でお話をさせていただくと、まず介護サービス計画というのを立てます。どういったサービスを利用するかということです。介護支援専門員に来ていただいていろいろ相談するのですが、そのときに2〜3の事業所、サービスを提供しているところのパンフレット、カタログ等をもらって、その事業所がどういったサービスをしているのかとか料金を尋ねる。またうわさを聞くのも参考になるかと思います。自分で直接電話をしてみる姿勢も大切かと思います。そのときの電話の対応だけでも本当に細やかな配慮がされているかどうかがわかってくるかと思います。利用するに当たっては、事業所から説明とか契約に来られるかと思いますが、そのときの訪問の仕方からあいさつの仕方、その辺も基準になってくるかと思います。

 あと契約書を交わすことになって、「もう契約書ばっかりで大変や」という声も聞かれますが、その内容とか重要事項、説明書の内容をはっきり見るようにしてください。結構この辺は重要なポイントになってくるかと思います。自分で決めるのが原則ですので、邪魔くさいと思いますがしっかり目を通していただきたい。生命保険の契約書はすごく字が小さくて読みづらくて薄い。あれは会社側がお客さんにしっかり読んでほしくないためにわざとああしてあるようなことを聞いたことがあるが、それはほんまかどうかようわかりません。契約書や重要事項説明書は高齢者が読みやすい字でできているかどうか、その辺も本当にサービスへの気遣いができているかどうかという参考になるので、頭に入れておいていただきたいと思います。

 あと訪問に来ていただくヘルパーさん、現場に来ていただく方の行動についても細かい配慮がされているかどうか。その辺でその事業所が研修をしっかりしているかどうか、本当に利用者に喜んでもらえるサービスをしようとしているかどうかという参考になる。すごい細かい話にはなるのですが、いまお商売をしておられる方、大企業であれ中小企業であれ、そういったことは初歩的な話になっていると思うんです。マクドナルドに行かれたときにすべて同じ対応をされる。それが味があるかどうかは別にして、あそこまでしっかりとあいさつができてお礼が言えることは非常に大切なことだと思いますし、最低限お客さんにいやな思いをしてもらうことはない。この辺は最低のレベルではないかと考えております。

 こんな細かいことばっかり言っていたら小じゅうとみたいや思われますけれども、家では家内になんにも言うていませんので、その辺は誤解のないようにしていただきたいと思います。

 私たち事業所とこの制度のかなめとなる介護支援専門員さん、私たちを育てていただくために、使われる方は「選ぶ」という意識を高めていただきたいと思います。

○山井 

内田さんの話は介護保険でどう変わったかということを端的に象徴する話だったと思います。4月までは措置という形で行政から「ここを利用しなさい」と言われたら、そこを利用するということだったが、4月からは選べることになったわけです。ただ、そのためにはどういうチェックポイントで選んだらいいか。また選んだところが悪かったら、それは自己責任ですよと。そういう意味ではしっかりと目で選んでくださいというアドバイスがございました。

それでは福井さん、よろしくお願いいたします。

○福井久(大津市高齢福祉・介護課主幹) 

ちょっと緊張しております。それと自治体の職員としてはこういうところに上がれるなんていうことは再々あることやないと思います。介護保険は2年4カ月ほど担当させていただいているんですけど、配属していただくことに非常に感謝しております。

 大津市のほうで「はじめの一歩」、私どものコンセプトとしてこういうことを考えてきたというレジュメをつくらせていただきました。内容についてはお家にお帰りになってから見ていただきたいのですが、イントロとして、大津市でどういうような介護保険の状況になっているか。大津市の人口が約29万人、高齢者が約4万2000人、15%程度の高齢化率です。昨年の10月からことしの3月まで介護保険の準備の期間に約4000人が申請されて、そのなかで3700人程度の方が要介護、あるいは要支援の認定を受けられました。不服申し立てのこともわれわれ心配したのですが、幸いにもそういうことなしに、皆さん方認定させていただいております。

 保険料については、いわゆる基準額、1カ月に換算して真ん中辺の方の保険料が2719円です。これは滋賀県内でもおおむね真ん中辺の保険料ではないかと思っております。

 きょう私が最初に申し上げようと思っていたことは、自治体の職員がこういうことをいきなり発言すると、なんや、と思われるかもしれませんが、介護保険の「介護サービスは商品である」、これがひょっとしたら介護保険のキーワードではないかと思っております。そういうことを基本のコンセプトに置いていろいろと施策を展開していけば、介護保険がわれわれにとってはよりよく見えたのではないかと思っております。

 どういうことかというと、先ほど山井さんもおっしゃいましたが、介護保険が始まるまでは「措置」と言われていました。措置とはどういうことかというと、難しい言葉では「行政処分」と申します。ちょっと困っているお年寄りがおられたとすると、その方に対してどれぐらいの介護が必要か、またどういう介護サービスを行ったらいいかということをすべて行政の職員が決定をする。その決定をした内容でもって反射的利益として利用者の方が介護サービスを受けていただくという仕組みになっていました。これが福祉という言葉でくくられていました。だからサービスというのは「してあげている」というサービス。現場の方はそう思っていないかもしれないが、やはりどこかで「してあげている」というサービスだったと思うんです。

 それが介護保険でどう変わったかというと、行政は何をするかというと「あなたは要介護度が3です」「5です」ということでこれぐらいの介護の必要性があるという決定を行います。これを要介護認定と申します。支援がちょっと必要から要介護5まで6段階の認定をする。そこで利用者はその要護認定を受けた範囲内で介護サービスを利用するという立場になりました。つまり、先ほど内田さんがおっしゃいましたが、利用者が介護サービスを購入するということになります。だから皆さん方利用者というのは消費者になったということです。そこにはサービスの選択権が生まれてきます。

 もう1つ自分に合った介護サービスは自分で選んでいただくということになります。このようなことをいろいろトータルで考えてみると、要介護認定を受けた方は、介護を受けるという権利を有したことになります。いままでは措置というのは、行政が「こういうサービスを受けなさい」でやったのですが、今度は皆さん方が権利として介護サービスを受ける立場になったということです。ここが一番重要なことだと思います。

 そういうことを基本に考えますと、介護サービスという市場が大津市内で形成されることになります。介護サービスという市場が形成されれば、今度は、選んでいただくために多くの介護サービスを提供する事業者が大津市に入ってきていただくことが1つ重要な課題となります。

 そして利用者の皆さん方にはどういうサービスを選んでいただくかというサービスの商品に対する知識を持っていただくことが2つ目の課題となってきます。

 1つ目の課題に対してわれわれは、昨年の春ごろから市内の事業所あるいは近郊の都市の事業所を回って、ぜひ大津市に参入をしてくださいと。珍しいなと言われたんですが、行政の職員が宣伝に回りました。そのおかげでこの1年間で、たとえばホームヘルプの事業所だと大津市お抱えの社会福祉事業団が1つだったのが26にふえました。デイサービスも2けたに乗ったし、ショートステイも2けたに乗った。こういうふうに選んでいただけるという土壌を1つつくらせていただきました。

 もう1つは、利用者の皆様方に選んでいただくといっても、介護のサービスをどう選ぶのか、たぶん皆さん戸惑うと思われます。たとえば自動車ですとトヨタのイプサムがある、クラウンがある、カローラがあるとか大体皆さん方ご存じだし、日産があるなあ、三菱があるなあ、ホンダもあるなあと、指を折れます。でも「介護サービスの事業所? そんなん大津市にどこがあんね」「ライフケアサービス? それ何や」、それが皆さん方の一般的な状況だと思うんです。特別養護老人ホーム、老人保健施設、療養型病床群……、これなんえェ、それが普通やと思います。きょうも鳩山代表に行っていただいたんですけれど、たぶんそういう感じやったと思うんです。それが普通やと思います。そしたらわれわれ行政職員は何をするか。皆さん方に介護サービスの中身を知っていただきたい。もう1つは事業所を知っていただきたい。

 そういうことでまたわれわれが考えたのは、介護サービス事業所のガイドブックをつくらせてもらいました。選ぶときのチェックポイントもつくらせていただきました。その後に事業者の一覧をつけました。こういうことによって介護サービスの市場を形成していこうと。それが1つのわれわれの考え方でした。

 そういうことでちょっと変わってきました。いままでは自治体とか役所が介護サービスを届ける、あるいは役所がホームヘルパーさんを届ける、役所が老人ホームを建てる、そういうのが1つの流れだった。そうではない役割も1つ出てきた。それは大津市という競技場のなかでさまざまな事業所さんがいろいろと活動していただく。そういうことを外部から誘致をしながら、また外部から見守っていく。ひょっとして違法ではないけれどよくない介護をする事業所がおられる。そういう場合には、サッカーではありませんがわれわれがイエローカードあるいはレッドカードを出す。そういうことがこれからの行政の1つの進み方かなと考えております。それに向かって大津市の介護のケア体制を考えていかなければならないというのがこれからの課題です。

 こういう形で市場形成をするということと、もう1つは、皆さん方に今度は介護保険でつくられた枠組みのなかをちょっと工夫して、よりよく使っていただきたい。それもわれわれの仕事の1つだと思います。1つ例を挙げますと、住宅を改造するときに20万円まで介護保険で使えます。でも、これは皆さん方が使うときにいったん工務店さんに20万円全額をお払いして、それから18万円を皆さん方に大津市からお払いするという、償還払いというのが介護保険の仕組みです。でも、高齢者でいったん20万円を立てかえるのは非常に厳しいという方がおられます。それならうちは5万円の改造でやめとこうかと。これではやはり高齢の方は困るんです。そうしたらどうせ18万円返ってくるんやったら、最初に2万円だけ工務店に払っていただいて、18万は大津市から直接工務店に払ったらいいじゃないか。これは現物給付というんですが、そういう仕組みをつくったらちょっとでも使いやすくなるのじゃないか。そんな制度の工夫もわれわれはしました。おかげさまで昨年は住宅改造が180軒ぐらいあったんですが、この4カ月ぐらいで150〜160件来ている。そんなこともこれからわれわれ市場経済をうまく育成していくという1つの大きな仕事です。それから皆さん方に介護保険制度のなかで少しでも利用していただく。それで自立支援をこれから支えていくというシステムづくり、その2本が行政の大きな仕事かなと思っております。

○山井 

私もこの資料を見てびっくりしたんですが、たしか半年ぐらい前に新聞に載っていましたね。全国で初めて、行政がどういうサービス事業者がいいかというチェックリストを大津市がつくった。そういう意味では現場の福井久さんなどの取り組みによって、大津市の方は本当に恵まれているなと思います。

それでは“ミスター介護保険”、神田さん、お願いします。

○神田裕二(厚生省老人保健福祉局企画官) 

過分のご紹介をいただきました(笑)。介護保険のねらいと背景、あるいは入れた後どんなふうになっているのかということについて私のほうからお話をさせていただきたいと思います。お手元の「なるほど安心 介護保険」というパンフレットを見ていただきますと、介護を必要とする高齢者の方はどんどんふえてくるなかで、女性も働きに出ていく時代になっているし、子どもさんと同居する高齢者の割合はもう5割を切ろうという時代になっているので、家族だけで支えていくというのはなかなか難しいだろう。したがって、みんなで保険料を出し合って、いざという時に安心して介護が受けられるような備えをしようというのが簡単にいうと介護保険のねらいなわけです。

 介護保険という、どうして保険でやったのかということですが、税金だとどうしても使い道との関係がわかりにくいということがあります。介護の必要な方がこれだけふえてきて、家族だけではなくてみんなで支えようということは要は外からサービスを入れるということです。サービスがふえていかなければ家族の負担も軽くならないので、介護サービスをどんどんふやしていくということからすると、何がどういうふうに使われるのかわかりにくい税金でいただくよりも、絶対に介護サービス以外には使われないという保険制度を使うことによって、ガラス張りのなかで「これだけのサービスが必要ですから、これだけのご負担になります」ということを説明しながらご負担いただくのがいいのではないかというのが介護保険の1つの大きなねらいであります。

 もう1つの大きなねらいは、利用者にとって利用しやすい仕組みをつくっていきたいということです。従来の介護サービスは福祉と医療が縦割りでした。ホームヘルパーさんは市町村の窓口に申し込みをしますが、看護婦さんに家に来てもらおうと思うと、訪問看護ステーションという事業所に直接申し込みをしたり、あるいは病院に申し込みをしたりということで、窓口が別々で、自分で申し込みをしなければいけなかった。あるいは利用者負担もバラバラで、ホームヘルパーさんに来てもらうと所得の少ない人はただだが、多い人は1時間来てもらうと950円も払う。片方、医療保険は保険という仕組みなので250円で従来訪問看護ステーションから来てもらえたということで利用者負担もバラバラだし、窓口もバラバラということで、自分で調整するのはなかなか難しかったわけです。

 今度介護保険になると、介護支援専門員に相談をすると、その人が福祉も医療も全部、介護の必要な方に対するサービスを調整をしてくれる。そういう使いやすい仕組みをつくっていきたいということが1つです。

 それから先ほどからお話に出ているいろんなサービスを自分で選べるようにしていきたいということです。パンフレットの下に棒グラフがありますが、これは1年前と比べてどれだけ事業所がふえたかを86の市町村からピックアップして調べたものです。これで見ますと、使えるホームヘルパーの事業所は2.3倍、1年前を100とすると230にふえています。車いすとかベッドなどの福祉用具の貸し付けをするところは2.4倍、訪問看護のステーションは1.6倍。たしかにふえ方が多い少ないという議論はあると思いますが、これまでと同じような税金の仕組みで一気にこれだけサービスがふやせただろうかということを考えると、やはり保険にすることでいろんな事業者の方が入れる仕組みをつくることによって、わずかな期間にずいぶんふえて、少しずつ選べるようになってきているのではないかと思います。

 先ほどからお話に出ていました、自分の言いたいことも言える仕組みにするということも1つのねらいなわけです。「介護保険の実施状況と当面の今後の課題」という資料の2ページに、介護保険が始まってケアプランをつくってサービスを利用するということですが、そのとき自分の希望を反映してもらったかということで「ケアプランへの希望の反映度」と書いてあります。幾つかの自治体、老人クラブでやっていただいたアンケートを見ますと、大体7〜9割ぐらいの方が「希望は一応聞いてもらった」という答えが出ております。

 3ページを見ていただくと、みんながみんなよくなった、いいことばっかりということではもちろんありませんが、老人クラブ連合会の調査を見ていただくと、「前と変わらない」という人も5割ぐらい

いますが、「サービスの質がよくなった」「苦情が言いやすくなった」という方も27%とか30%出ております。したがって、少しずつものも言いやすくなって、注文もしやすくなってきているのではないかと思います。介護保険はできるだけ利用者に使いやすい、利用者本位の仕組みというふうに言っておりまして、1カ所に相談するといろんなサービスが調整してもらえて、サービスも自分たちで選べるし、言いたいことも言える仕組みにしていく、そういうのが介護保険の大きなねらいで、それもこのような具体的なデータからいっても少しずつ改善されてきているのではないかと考えております。

○山井 

 神田さんの話を聞くと、やっぱり介護保険を入れてよかったのかなという気もしてまいりますが、また次の段で介護保険の問題点や課題もお聞かせ願えると思います。

 それでは民主党から参議院議員の朝日俊弘さん、社会保障担当のネクスト副大臣ですが、よろしくお願いいたします。

○朝日俊弘(民主党ネクキャビネット社会保障担当副大臣) 

 きょうは介護保険について公開公聴会ということでお集まりをいただきました。ですから、きょうはもっぱら皆さんのお話をお聞きしようというつもりで参りました。ただ、そうは言っても、民主党としては一体基本的にどういう考え方、どういう姿勢で介護保険制度に臨んでいるのだということを少しお話ししておいたほうが後の議論につながりやすいかと思って、3点ほど民主党は介護保険制度についてこんなふうに考えてやってきました、という点をまずお話ししたいと思います。

 本題に入ります前に、私、ご紹介をいただきましたが、民主党のなかで社会保障制度についての担当をさせていただいております。もともとは兵庫県の豊岡病院で精神科医をしておりました。そういうこれまでの経験もあって介護保険制度には人一倍の関心を持っているつもりでございます。

 今後の課題などについては、また後で触れる機会があると思うのですが、まず最初に私たちの気持ちとしていえば、きょうの公聴会を主催をしたプロジェクトチームの名前に私たちの気持ちが込められています。「介護保険をより良くするプロジェクトチーム」、名前をつけるときにいろいろ議論をいたしました。いろんな考え方があって、「介護保険はどうもけしからんのじゃないの」という反対論もあるし、「介護はいいが、保険はどうもおかしい。税でやるべきだ」という議論もあるし、党内にも論議がまだ残っています。しかし、この4月1日からとにもかくにもスタートをしたその介護保険制度を、まずは十分に皆さんに知っていただいて、使っていただいて、よりよくしていこうじゃないのと。この基本的な考え方に基づいてプロジェクトチームをつくりました。山井さんがそのプロジェクトチームの事務局です。きょう午前中幾つかの施設を一緒に回りました。石毛^子さんがこのプロジェクトチームの座長をしていただいております。民主党内に希望を募りましたら、われもわれもということで87名の皆さんがプロジェクトチームに入っていただいたものですから、87名の会議をするのはなかなかしんどいなと。実務的には山井さんがだいぶ苦労しております。

 そんなことでまず私たち民主党は、冒頭に鳩山代表からもございましたように、介護をめぐる状況は非常に厳しい状況があり、どっかの政党のある男が言うように「家族の美風を損なう」などということではない。もちろん家族も一生懸命介護にはかかわるけれども、それではかかわりきれない、支えきれないその状況を何とかみんなで支えようじゃないかというところから介護保険制度がスタートしたのだ。だからぜひこの介護保険制度をみんなで勉強して、みんなで一生懸命よく使って、その上でもっといいものにしていこうと。こういうスタンスで臨んでいきたい、こんな気持ちでおります。

 そういう意味では昨年末に介護保険制度そのものを見直そうとか、保険料の徴収を延期しようとか半分にしようとか、家族介護をした人に現金支給をしようとか、制度そのものを見直すような動きが実はありましたが、そのようなことに紆余曲折しないで、いろいろ問題点はあるだろうけれども、まずはそれなりに制度設計をして新しい制度として仕組んだ4月1日から始まっている介護保険制度を、きっちりやりましょう、このことをまず最初に申し上げたいと思います。

 ただ、そうは言っても10月1日というのを私はちょっと心配しています。4月から介護保険制度はスタートしているが、実はこの半年間は保険料を徴収していません。その分を国が肩がわりしています。本来ならいただくべき保険料の半額を、この10月1日からいただくことになります。特に1号被保険者という65歳以上の方からいただくことになります。あらためて「エッ、これ何なの?」という議論が起こり得ると思います。そういう意味で4月からスタートしているけれども、10月1日からもう一遍スタートし直すような状況になると思いますので、ぜひ「介護保険に関する民主党の基本的な考え方はこうです」ということをまず押さえておいていただきたいというのが1つです。

 2つ目は、この介護保険制度は、先ほど大津市の方からもお話がありましたが、自治体の知恵と工夫を示すための非常にいい課題・材料だと思っています。ある人は「地方分権の試金石だ」と言っておられます。基本的な制度設計は国で法律で決めております。しかし、たとえばサービスの量を何をどれぐらい必要だというふうに考えるか、そのために必要な費用はどれぐらいになるのか、そうするとそれを割り出すための保険料はいくらになるのか、これはそれぞれの市町村で考えていいことになっている。もちろん一定の幅があります。先ほどの大津市のお話ですと中くらいのところにおさまったというお話でしたが、実は保険料が違うんです。安いところは1500円ぐらいから、高いところは4000円ぐらいまで基準額が違う。「高い保険料を出してもいいから、多くのサービスを」という考え方もあり得る。また「非常に少ない保険料しか出せない。そのかわりサービスも少なくて辛抱する」ということもあり得る。ある意味ではうまくできているというか、非常ににくい制度ということで、それぞれの自治体がどういう知恵と工夫を出すのか、どういう考え方で介護に臨むのかということが試される課題だということで大変重要であります。

 実は介護保険制度で家のなかをバリアフリーにするのに援助する仕組みがあります。しかし、あれは厳密にいうと家のなかだけしかできない。佐世保の皆さんは、家のなかができても玄関まで行く坂道が大変だ、だから坂道補助をやろう、ということでやっておられる。そんな自治体もあるわけです。介護保険制度の実施は自治体の知恵と力を試されるということを2つ目の課題として挙げておきたいと思います。

 3つ目は、これがなかなか難しい話でして、実は介護保険制度の実施に伴って、この4月1日から医療保険制度も大きく改正されるはずだった。ところがいろいろあって、法律案を提出したにもかかわらず、さきの通常国会では全然審議がなされないままに終わり、法律は廃案になってしまいました。したがって、4月1日から介護保険制度がスタートするにもかかわらず、従来の医療保険制度は残ってしまいました。したがって老人医療制度は前のとおり。そこへ新しい介護の保険制度がスタートするというちぐはぐな状況が起こっています。簡単にいうと、私は介護保険制度の改革実行は、もう一方でいまの大変大きな問題になっている健康保険制度、医療保険制度の改革と不可分に結びついている課題だ。このことを今後の大きな課題として取り組んでいきたいと思っています。

○山井 

 これで一巡したわけですが、鳩山由紀夫さん、いかがでしょうか。

○鳩山由紀夫(民主党代表) 

 それぞれの立場からの専門家のお話を非常に感銘深く伺っておりました。私は「政治は愛だ」と思っております。政治が愛だと思いながら、残念ながらいまの政治は皆様方から愛のあふれたものだというふうに理解をされていない。その基本はどこにあるのだろうか、いろいろ考えて、かたい言葉になってしまうんですが、「地方分権こそ愛のある政治をつくる原点ではないか」というふうに私たちは気がついたんです。

 きょうは厚生省のミスター介護保険の神田さんがいらっしゃいますから、当然敬意を表しながら申し上げるわけでありますが、特に国の政治がいいかげんであったがために、何でもかんでも国がコントロールをし、国に依存する国民の体質というものをつくり上げてきてしまった。それが高度経済成長のときにはまだよかったんですが、いま厳しい国際化の流れのなかであえいでいる。国が何でもかんでもコントロールするという中央集権的なやり方が国民に全然合わないということに気がついてきた。だからこそいま国が、特に国の政治家が持っているような既得権というものを、まず一度全部見直して、もうそれはいらないと。できる限り地方の皆さん方の意思に任せる日本の社会をつくり上げていこうではないかという発想になったのでございます。

 それを「連邦分権国家」などと難しく言うものですから、選挙のときにはまったくご理解をいただけなかったように思いますが、私の基本はそこにあります。それを具体的にどのようにしてお示しをするべきか。先ほど朝日さんがお話しされたように、まさにその試金石が介護保険制度だと思っていますす。

 介護保険はだからこそ地方分権のきわみでなければならないと思っていたところ、亀井政調会長などが国でドーンと一発ぶちかましたりするものだから、地方で、自治で、それぞれの自立した考え方のなかでようやくスタートしようかと思っていたところに、またチャチャを入れられて、かなりおかしな状況になってしまったことも皆様方ご承知のとおりだと思う。私たちはできる限り国のそのような介入を許さない形で介護保険制度というものを、先ほど猿山さんがお話しされたように、老いても自立する、そういうお年寄りの方々の自立心をあおるような、そんな介護保険制度をどのようにして地域の創意工夫のなかでつくり上げていくかということに腐心をしたいと思いますし、そのようななかでお手伝いができればと、そんなふうに考えております。

 きょう実は特別養護老人ホーム「福寿荘」の加藤理事長さん方に大変お世話になって、さまざまな四つの施設、特別養護老人ホームと老人保健施設、さらに療養型病床群、それと一般の病院、その4つのタイプを見せていただいたわけですが、その後私が理事長に「介護保険制度が適用されるようになって、入っておられるお年寄りの方々は満足感がどのように変わられたでしょうかね」と伺ったら、さあ……と首を傾げられて、「ほとんど関心ないようですね」と話をされた。既に入っておられる方々から見れば、先ほど福井さんからお話があったように、措置制度から保険制度に変わる、すなわち権利というものが一人ひとりのお年寄りにあるという事態に大きく変わったわけでありますが、しかし、なかに入っている方の意識というものはそれほど変わってもいないのかなという実態を伺ったのでございます。必ずしもそうではないというデータを先ほどお話をいただいたようでありますが、私どもが先ほど視察をさせていただいたなかでは、関心の度合いというものはいまひとつ入所者のなかには乏しいという実態がありました。

 一方で、負担をされる側からすると、3つ、4つの違う施設、お住まいになっておられる方々の意識がどこまで大きく違うかということは別として、負担も異なるし、また国の支援も異なる。そこに不平等感というものがまだ存在しているのではないか、あるいはこれからもっと大きく不平等感でいろんないさかいが起きてくるのではないかという気も一方ではしたわけであります。それは家族を含めてこの介護保険制度が、ケアマネージャーの方々のご労苦というお話はありますが、それを伴ったとしても、さまざまな難しい状況というものを必ずしも脱し切れていないんじゃないかと私なりに感じたわけであります。

 そういうときに、先ほどから申し上げているように、「老いても自立」ということをめざす立場からどのような解決があるか、という視点で論じていくことが肝要ではないかと思った次第です。詳しい方々にその辺のところを伺えればと思います。

 いま1点申し上げたいのは、私たちは地方分権を通じてでも財政の健全化を図っていかなければならないと思っています。国の財政はいま破綻をしています。このままいったら、もうめちゃくちゃになることは間違いありません。というか、もうめちゃくちゃの状態です。これを何とかしなければなりません。公共事業を見直す作業をどうやら自民党のなかでも活発に行うようになりました。その方向は民主党が総選挙などで主張していた1つのことですから、その方向を間違っていると申し上げるつもりはありません。しかし、彼らは必ずしも財政というもの自体をいま立ち直らせるところまで至っていないようでございます。

 私たちは、公共事業よりも福祉の、たとえば介護というものを考えてまいりますと、雇用の誘発効果はかなり違う。公共事業を1とすると、われわれの計算では1.8倍ぐらいの効果がある。ほぼ2倍ぐらいの違いがあると考えれば、公共事業を2兆円削減しても、その2兆円減らした1兆円を福祉に充てれば、ほぼ同じ雇用が見込めるということであって、結果としておつりが、すなわち財政を1兆円削減をさせることができる。1兆円財政を削減させても雇用はほぼ同じだという現実が計算的に事実として知られています。

 ならば、必ずしも有益だと思われていないようなむだな公共事業に対しては大胆にメスを入れて、その分の、たとえば半分強くらいを福祉に充てるという試算を行えば、十分に雇用効果がある。

 しかし、先ほどケアマネージャーさん等の議論のなかで1つ浮かび上がったことは、特に若年労働者の皆さん、すなわち大学を卒業してすぐにそういった専門員になれるかというと、5年間の実務経験が必要だということで、なかなかすぐにそういう仕事に若い方がつくことができない。この矛盾を何とか解決できないだろうかという切々たるご意見をいただいたところでして、こういうところをうまくクリアすれば、若い人たちがすぐに福祉の仕事に携わることができて、日本の経済もむしろ古い公共事業依存体質から、高齢者の方々に配慮された福祉重視の日本の社会に大きく転換をさせることができるような気がしたわけでございます。

 一端を申し上げた次第ですが、多少大所高所からの話で具体性に欠けているかもしれませんが、私がいま皆さん方からお話を伺いながら感じた点を添えてお話を申し上げたところでございます。

○山井 

 いま公共事業の見直しが叫ばれていますが、やはり福祉に力を入れることによって安心できる老後と雇用の確保も図っていけるというお話でした。


介護保険の課題と今後の展望

○山井 

 では、2巡目になりますが、いままでのことを踏まえて、介護保険の課題と今後の展望ということをまた順番に猿山さんからお話しいただければと思います。

○猿山 

 私どもは2年ぐらい前から介護保険というのはどういう制度だということを会員間で非常に勉強しながら、それに対処するようにしてまいりました。調査・認定というのが介護度をまず決めるということです。それには最初、73項目という調査の項目があり、それを見ると、痴呆の病気を持っている場合はこれで正しく認定できるだろうかという不安があって、早速厚生省に痴呆の判定はこれでは出ないのじゃないかということでいろいろお願いに行きまして、85項目などに多少変わったと思っております。まず調査・認定ということに私たちは非常に目を奪われまして、痴呆の病人を抱えている場合は認定が軽く出ることがわかってきたので、大変恐怖を持ちました。どのように正しく理解していただけるかということで3月ぐらいまでは認定はどうだったかということを非常に心配したわけです。特記事項などにしっかり書いていただくように、私たちなりに介護日誌などを渡したり、はっきり説明するようにして、会のなかでは実情をかなり正しく把握した調査の結果が出たように思っております。

 しかし、認定が終わって、まず介護度が3とか5とか通知が来ます。その認定をいただいたら、たいていの方がいままでのサービスがベルトコンベアに乗ってやってくるというふうに考えているのではないかということがわかってきました。これでは大変ということで、まずケアプランをケアマネージャーに立ててもらって、契約を交わさなければ、サービスはやってこないと。ケアプランの作成の依頼書を出さないと、支払いがまた償還払いになるとか、いろいろなハードルがあらわれてきて、私たちは右往左往したわけです。

 私は幸せな大津市民ですが、大津は事業者の一覧表を出してくれたりいろいろ考えてくださっていますが、県下一円を見渡してみると必ずしもレベルが一様ではないし、なんにも情報を持っていない方もいるし、ケアマネージャーを一体だれにしていいのか皆目わからないとか、非常に行き暮れている会員さんも見受けられました。これはケアマネージャーが介護保険の次なるかなめなんだなということが、3月末ぐらいになってやっとわかってきて、本当に愕然としたわけです。ケアプランづくりに、皆さんを励まし励まし、どうしていますかといろいろ状況を伺いながら臨んでいったわけです。

 ケアマネージャーさんも新しい制度でいろいろ混乱していて、ケアプランをつくるのに1回も在宅を見に来てくれなかったとか、判こをついた覚えがないとか、いろんなことが起こってきまして、“夢の大津市”ですが、調査・認定はすべて事業者に委託するという形になっていたので、ケアマネージャーにケアプランをつくってもらうのも委託した事業者にそれぞれ言ってくださいというようなことで、いままでサービスを使っていたから、その流れで親しいところにお願いに行って大体はできてきたわけです。

 そのときに介護度が4とか5とかかなり高い介護度をもらっている者はたくさんのサービスが使えるということで、こういうのとああいうのとこういうのと言った場合に、「自分の事業所ではこれだけ全部そろえられない。あとこれとこれをどうしても希望するなら自分で探してきてください」なんて言われたというケースもあります。へえ、ケアマネージャーってこういうものか、と最初わからないときはびっくりいたしました。

 しかし、ケアマネージャーは自分が引き受けた家族に対しては徹底的に望みを聞いてプランを立てていってくれなければいけないものだということがわかりましたし、これは今後の課題だなと。あまりにも忙しい様子を見受けるので一遍にあまり期待してはいけないとは思うんですが、そのどさくさは大変なものでした。

 ケアマネージャーがかなめということがわかってきたわけですけれども、じゃあそれをどういうふうに介護保険に生き生きと生かしていくことができるか、というふうに私たちはいろいろ考えるわけです。いまのケアマネージャーは本当に忙し過ぎます。そのなかで隅々まで心が行き届いたケアプランナーであれというのは、大変なことだと思います。ですからゆったりと仕事のできる環境を整えることも大事なことだと思いまして、これからケアマネージャーはどうあるべきかということで、滋賀県でケアマネ協議会というのも立ち上がりましたし、ともに研修し、よい介護保険が動き出すためのかなめということで、ケアマネージャーに育っていってほしいなと思っております。

 よい仕事をするためには、まずよい待遇が用意されていないとよい人も集まってこないと思いますので、全体バランスよく考えて運営されていってほしい。行く行くは1つの独立した職種としてみんなからうらやまれる職業になっていくようにという夢もあります。なかなか一足飛びにはいかないと思いますけれども、そういうケアマネージャーに育っていってほしいと思っております。

 最後に、ケアマネージャーに対する夢ですが、いままで措置制度のなかでは保健婦さんの巡回というのがあって、まず初期の痴呆は保健婦さんが見つけてくれたり、介護の方法をいろいろアドバイスしてくださったり、介護家族は保健婦さんに助けられたという記憶がすごくあるんですが、今回の介護保険制度には私たちの意識としては「保健婦さんが逃げてしまった」という感覚があります。「いままでのように母子の問題とか、初期の、認定にかからない程度の痴呆の人を私たちは見ますから、介護保険にかかわりません」と言われてしまって、愕然としているんです。やはり介護している家族には1カ月に1回ぐらいはのぞいてくれて、どうしているかと見てほしい気持ちがあります。保健婦さんがだめならケアマネージャーにその役割を負ってほしい。緊急の場合もどこにどう頼んでいいのか判然としていないわけです。ケアマネージャーさんが唯一の窓口ですが、まだ親しくもないし、休暇でいない場合は一切頼みどころがない。緊急の場合はどうしたらいいかとか、まだまだはっきりしていかなければならない問題が山積しています。

 将来に夢をかけて、ぜひすばらしいかなめのケアマネージャーの育成ということに関係者一同頑張っていただきたいなと思います。

○山井 

 たしかにケアマネージャー、介護支援専門員というのは介護保険で初めてできた職種ですから、どれほど重要かというのがわかっていなかったんですけれど、生かすも殺すもケアマネージャー次第みたいなところがある。その割には待遇も十分ではないし、本当に髪の毛を振り乱して遅くまで残業されているというイメージがあるのではないかと思います。

 では、内田さんよろしくお願いします。

○内田 

 介護支援専門員の仕事量の多さのところでお話をさせていただきたいんですが。私はこの部分については、かなり言いたい思いがある。というのは、私も実際にケアプランに入っていますので、なんでこんなしんどい仕事をしなければあかんのかなというあたり、自分で自分を何とか助けながらやっていっているわけです。きょうは介護支援専門員さんたちと民主党の方々とお食事をされたということで、仕事の大変さというのもお聞きになられたかと思います。日々の事業所と利用者の連絡調整、何回も何回も連絡をとらなくてはいけない。実績の報告書の書式や時期がまちまちだとか、それによって余分な時間がとられるとか本当に細かいことが多い。それが人数分ありますので、正直、これではいけないと思うんですが、プランの中身、その人がどれだけのサービスを必要として、どういったサービスを提供してあげれば自立支援につながるかまで考えられるのだろうかという疑問は持っております。

 この間厚生省から「事務負担を軽減するための工夫事例」というのが出ました。ほとんど救われていない状態かなと思ったりもします。実際こんな話がありました。看護資格を持った介護支援専門員さんが15件ほどのケアプランを受け持って、訪問看護の仕事もしながらケアプランの作成、調整、請求をされていたわけです。帰るのが毎晩9時、10時だ。2カ月たってもその状況が変わらないので施設長に仕事をどちらかにしたいと申し出ても、介護支援専門員が足りない、それと介護支援専門員だけでその人のお給料が出ない、だから両方やってもらわないと困る、という話をされた。仕方なくご主人の協力を得ながら同じ状態で仕事をしていたが、2カヶ月ほどたって、その人のまだ小学生に満たない2人のお子さんが、お母さんが遅いせいか、ちょっとのことで泣くようになったり、笑わなくなってきたり、感情に不安定を来した。それでやむなく退職したということがあった。こうなると介護保険制度は家庭の崩壊に結びつくような制度かなと。たいそうかもしれませんが、実際そういうことがあるということはそうも言えるのじゃないかと思ったりもします。

 またある事業所では若い介護支援専門員さんが、最近の若い方ははっきりされていますから、「こんな事務ばかりやっていられへん」ということで、すぐ退職した方が2名ほどおられます。周りでこんな話ばかりです。これでは本当に十分な介護支援専門員を確保できるのかな、よりよいケアプランづくりができるのかな、そう思うのは当然かなと思ったりします。介護支援専門員1人につきケアプランを立てる受け持ち数が50名までと言われています。実際はその半分に満たない状態です。それで精いっぱい。

 支援専門員さんのお給料は、事業所側から言わせてもらうと、そのお給料が出てこない。ある調査で「介護保険サービス事業者緊急アンケート」というのがあって、「制度スタート直後の事業実態と課題」というサブタイトルがついている。そのなかで1回当たりの平均サービス費用の調査が出ています。居宅介護支援については1回のサービスで6955円という結果が出ています。ですから1回サービスをして大体7000円ほどです。1カ月当たり20〜30名のプランを立てて専属にその人が仕事をしたとしても、14万〜21万にしかならない。当然その人たちのお給料は出てこない。残業代なんてほとんど出てこないという状態です。

 先ほど鳩山さんが「公共事業を減らして1兆円をこちらのほうへ」というお話をされていましたが、本当にそういう形でしていただいて、介護支援専門員さんがよりよいプランを立てられる状態になることを、介護支援専門員の立場と事業所側の立場から言わせていただきたいと思います。何とかよろしくお願いしたいと思います。

 この制度は3年後に見直しということですが、介護支援専門員は本当に初めての制度ですので、3年も待っていられないなという思いもあります。その部分だけでも何らかの形で調整していただけるなり、根本的に何らかの手だてを打っていただければ大変ありがたい。

 介護支援専門員さんにかかわるお話ですが、一つは質という部分でお聞きいただきたいと思います。ある事業所のスタッフからお聞きしましたが、利用者から「私はこんなにたくさんのサービスを受けたくない。だけど介護支援専門員さんに、そうしとき、と言われた。昔から診てもらっている先生のところの看護婦さんだし、いらんこと言うて先生に体を診てもらえんようになったら悲しい」というようなお話があったということです。介護支援専門員さん、このなかにも何名かおられると思いますが、その人のために立てたプランが本当に納得して利用されていない。それが直接介護支援専門員さんの耳に入らない。結局最後には介護支援専門員が悪者になってしまうようなところが出てきます。介護支援専門員が一生懸命やってその結果悪者になってしまう。それでほかの仕事を兼務させられて、十分な仕事ができない。いまこの状態、混沌としていると思いますので、何とか早く改善していただけたらと思っております。

○山井 

 介護保険がスタートして5カ月、最も深刻な問題の1つがケアマネージャーさんの労働条件ではないかと思います。箱ものにはお金をかけても、あまり人にはお金をかけなかったという気がいたします。

○福井 

 介護支援専門員ということも中心ですが、課題とか展望ということで思っていることを3つぐらいお話しさせていただきます。

 まず介護支援専門員のことです。制度ができてどうしても促成栽培という感を免れません。この前まで臨床の看護婦をされていた方が、在宅に行って利用者のプランを立てるということもあると思うんです。大津市でもこの4カ月間ぐらいにケアマネージャーさんでちょっとしたトラブルが起こっています。難しいトラブルではないんです。口のきき方がちょっと悪かった、あるいは話を聞いてくれなかった、たらい回しにされた、そういう介護支援専門員の基本的な、ケアプランを立てるという手前の部分でのトラブルがちょっとあった。

 そうしたらどうしたらいいか、介護支援専門員に研修を受けていただいて、全体的なレベルアップを図っていただこうというのが行政として全体を引き上げるための方策かなと。介護支援専門員は要介護者のよき相談者であるし、またコミュニケーションを図ってもらう人であるし、当然そうしたら要介護者に対する人権意識を高めていただかなくてはならない。これは、やらんでも介護保険、やっても介護保険だと思うんですが、それならやろうじゃないかということで、きょうは顔なじみの介護支援専門員さんがずらっと並んでいて言いにくいんですけれども、また仕事をふやすんですが、保険者としての行政は何をするか、それならレベルアップを図ってもらおうというのが1つかなと。研修体系のまだ案ですけれど、こういうことでちょっとでもレベルアップを図っていただきたいというのが1つございます。

 いろいろと労働条件の問題とかありましたが、某大学の先生がおっしゃっていたんですが、「ほんまもんの介護支援専門員は100人のうち数えるほどや。大方は見習いと心得や」。見習いと心得であれば、介護保険は始まったばかりです、終わりではないんです。これから皆さん行政と一緒に自治体と一緒に勉強していっていただく。もっと悪いのは、「もどき」をつくらない。それが僕らの考え方かなと思います。やはり介護支援専門員の研修体系などをつくること。

 また、大津市では非常に早い時期にできたんですけれど、職能団体として介護支援専門員が自分のところの事業所からちょっと中立した立場でものを言えるように、協議会をつくる、それが1つかなと思います。大津市では昨年9月に協議会を介護支援専門員さんたちの努力でつくっていただき、非常に多くの活動をしていただいております。ことしも自分らで研修をする、あるいは研究事業をやっていくということで、いろいろいま考えておられます。介護支援専門員というのが介護保険の大きなキーパーソンかなと思うことが1つです。

 話が変わるんですが、介護保険で次に何が出てくるのかなというのが2つぐらいございます。1つは、これからお元気だが痴呆で困られる方がどんどん出てくるだろう。いまはまだ寝たきりという部分が多いが、痴呆で問題行動ーこういう言い方はあまり好きではないんです。なんで問題や、本人は問題だと思っていないんです。もっといい言葉を考えてほしいが、問題行動を起こされる方のためにどういう施策をこれからつくっていったらいいかが大きな問題だと思います。そういう方に対してホームヘルパーさんがちょっと行っただけというのでは対応できません。やはりトータルでどうしていこうかというのがいると思います。まだまだ痴呆の高齢者に対する世間の理解が、冒頭猿山さんがおっしゃいましたように薄いように思います。世間の理解を深めていただくための展開を僕らも一発したい。それからお困りの方に対する展開を何かしたい。そういうことも1つこれからの課題として取り上げたいと思います。

 3つ目ですが、介護保険は非常にガラス張りの仕組みです。保険料は自治体で行われる介護サービスに応じて決まります。私どもが決めるものではない。サービスが決まれば保険料が決まるという自動的な仕組みになっています。これから高齢者がどんどんふえるとおのずと保険料も上がっていくであろうというのが一般的な見方です。

 そこでどうしたらよいか。保険料を限りなく落とす方法があります。要介護者がたくさんおられるのに介護サービスがない状態。それも1つの選択の方法です。それから要介護者を少なくするというのがもう1つの選択の方法です。どっちが高齢者にとって幸せか。たぶん後者だと思います。大津市のなかで少しでも要介護者を減らすという方向、そうすれば保険料は下がるのではないか。それには何をしたらいいか。いま要介護の方には介護サービスを受けていただくのが1つです。それから要介護の手前の方たちに対して、介護保険ほど手厚いサービスをしなくてもちょっとしたサービスを行うことによって、要介護になっていただかない、そういう施策をこれから僕らが立案していくことが大事かなと思います。

 幸いこの秋から、そういうお年寄りに対して1日のリズムをきっちりとしていただこうということで配食サービスも始めます。配食サービスというのは、お弁当をお配りするだけではなしに、食事をお配りすることで安否確認を行います。また回収をその日に行うことで、そのときにも安否確認をさせていただきます。もしものことがあれば緊急の連絡も配食の事業者が行います。お昼に食事をお配りすることでお年寄りの1日の生活のリズムをつくっていただこう。単なるお弁当を配るのではない食事のサービス。それから、これも始めていますが、炊事や洗濯、掃除などでちょっとお困りのお年寄りに対して、1週間に1〜2回程度ヘルパーさんが行っています。これは介護保険制度以外です。こういうちょっとした生活を支援するサービスを起こすことで、介護に陥らないお年寄りにしていくという仕組みが重要かなと思っています。

 そういうことで、厚生省もおっしゃっていますけれども、介護保険は2000年がスタートの年ですし、もう1つ、「介護予防元年」がこれからの市町村の政策を考えていく大きな役割ではないか。政策を考えていけるのですから、これが地方自治の試金石だろう。僕らが市民の皆さん方と一緒に知恵を出し合って、どういう形でやっていくかというのを描いていくのが大津市のやり方かなと思います。


会場からの質疑

○山井 

 ここで会場から質問を取らせていただいて、一番質問が集中するのが神田さんではないかと思いますが、お答えいただくときに今後の課題と展望についてもお話しいただきたいと思います。鳩山さん、朝日さんもおられますので、会場からご質問、ご意見いかがでしょうか。

○問い 

 現在3人の老人介護をしております。1人はやや痴呆ですが、幸運なことにたまたま痴呆専門の先生がホームドクターですので、過労による痴呆だからいわゆるボケではないと言われています。それは独居老人です。もう2人は夫婦です。片方が心臓と腎臓が悪くて、特殊な食事が必要です。病院と家を行ったり来たりするけれども、そのときに日本独特の介護保険制度ですから問題が起きているのだと思うんですが、在宅に帰すときに、介護の体制がちゃんと整っていなくても、病院から一方的に帰されてしまう。そういうところで外国の介護保険制度と日本の介護保険制度が大きく違うところが出ているのかなと思うんです。医療と介護の狭間にはまってしまった老人がどうしようもなくなっている。そういう視点が現在ないように思う。そういうことを考えていただきたいと思います。

 特殊食事のことで困ったものですから、パソコンで探したら、個人でそういうホームページを立ち上げている方がおられて、表計算などもつくっておられたので、そういうのを見たりしていたんですが、ケアマネージャーさんは「それは特殊だからできない」と、一方的に断られてしまったんです。どこかでそういう食事などをサービスしてもらえるところをつくっていただきたい。

 もう1つは、自立ということです。もう少し社会全般で老人を見る。老人とか障害者も含めて、市民全員がサポートする体制、そういう教育制度にしないといけないのではないか。そういうことを考えていただきたい。

○問い 

 私は滋賀県の介護支援専門員の連絡協議会の世話人代表をしている者で、病院の勤務医でもあります。先ほど鳩山代表が公共事業費を1兆円でも福祉のほうに入れるとおっしゃいました。ただ現在、病院経営は非常に苦しい状況に置かれている。やはり社会的入院の方もおられますから、介護保険が充実すれば患者さんは病院から介護保険に流れるということは、病院の経営が行き詰まってくる。社会資本が崩れてしまうことになる。田舎ですと、1つの病院が閉鎖になってしまうと、患者さんはかなり遠方まで病院を探さなければならないといったことが今後起こってくる。ですから、介護保険と同時に医療保険、病院経営ということも視点に入れてもらって、医療改革そのものと介護保険を並行で進めていってもらいたいと思います。あくまでも車の両輪でありまして、介護保険、医療保険ともすばらしい輪であってこそ前進していけるものだと思います。どっちかに偏ることになってくると、これは大きな問題を起こすのではないか。今後医療改革も起こってくると思いますので、そこらも視点に入れてもらって検討していただきたいと思います。

○問い 

 県立施設の職員をしながら自治労の役員もさせていただいています。3点ほど言わせていただきます。

 1つは、長くホームヘルパーをされていた皆さんに聞きますと、全国的なお話ですが、介護を社会化するために介護保険をつくろうという運動に一生懸命取り組んできたけれども、少なくとも4月からこっち、いいことは1つもない、というようなお話が聞こえてきます。家庭奉仕員という形でずいぶん長い間ボランティアみたいな仕事をされて、ようやく最近になって厚生省にお話をして年収300万ぐらいまで行く状態になったにもかかわらず、いままで女性が無料で義務的にしていた仕事ということもあるのか、あるいは現在の不景気が影響しているのか、新しい財源ができたらたくさんの事業者の方が参入して量も質もよくなるはずだったが、出てくる競争というのは賃下げ競争、具体的なお話もないなかで24時間介護をやらないと生き残れないとか、早出・遅出は当然だとか、もっとケース数をふやさなければだめだとか、記録なんかやっているヒマはないというようなことで、全体としてヘルパーさんたちは大変忙しい形になった。ほとんどが女性ですから、またぞろ男女の賃金格差が広がったり、こんなことだったら家でほかの仕事をしたほうがいいという形になっていく。

 介護を支える現場の皆さんの将来にわたる人材確保の面で、1つは神田さんに申し上げたいが、家事援助を中心とする介護報酬の単価の設定が、業者が生き残ることも困難ですし、ほとんど全部人件費に回したとしても仕事として確立できる状態にないのじゃないか。1割負担ということでどうしても利用者は家事援助に集中していく傾向があるようです。1時間1500円ぐらいということで、はたしてプロとして人材がこの世界で育っていくのか、大変不安だと思います。

 1つのワークルールをぜひ民主党でつくっていただいて、自治体職員であれ、新しく参入された会社に雇われるヘルパーさんであれ、ライフケアサービスみたいに非常に優秀な会社の社員であれ、同じ仕事をしていれば、最低賃金とか労働基準法という話が出てこないような、夢のある職場づくりにぜひご尽力いただきたい。

 2点目は、民間参入を急ぐあまりに、滋賀県でもそうですが、従来市町村が直接やっていた仕事とか、社会福祉協議会にお願いしてやっていた仕事を撤退するところがふえています。私は市民が選ばれて、そして民間の方がいいということならば、その段階で撤退することは必要だと思いますが、従来なれたヘルパーさんたちが社会福祉協議会から来られていたにもかかわらず、「うちの市町村は小さいから、民間に入ってもらおうと思ったら、まず役場や社協は撤退しなければならん」ということをおっしゃる首長さんが全国的には結構多いみたいだ。従来からなれていたヘルパーさんが社協や町から来ることはできなくなる。どうしてもその仕事をしたかったら民間にかわりなさいというような状況もあるみたいです。

 大津市はちゃんと参入されているみたいですが、一供給主体として自治体や社会福祉協議会が引き続き当分の間は民間の方と一緒にこのお仕事をされて、そのなかで市民の方に選んでいただくという経過措置がいるのじゃないかと思います。

 あわせて、民間の、特に小さい規模のところは、運転資金がないと撤退を余儀なくされると思います。介護報酬の支払いは少し月おくれで来るので、4月に請求しても6月という形になっています。あわせてこの支払いに大変混乱を生じていますから、なかなかきちっと来ないという制度上の問題もあります。まだ皆さん介護保険を利用するという方は少ないです。せっかく参入されたのに、1つの会社でヘルパーさんを雇っても、10ケースぐらいしかないというところが全国あまたあります。赤字です。運転資金を低利でしばらく供給しないと、役場や社協はもう撤退している、せっかく参入された民間の頑張っている皆さんも事業が続かないということになれば、サービスの空白区が出てきます。そういった意味で、民間の皆さんにしばらくつなぎ資金を公的に融資することは大変大事な政策だと思うので、民主党の皆さんや厚生省にも考えていただきたいと思っております。

 3番目、介護保険を中心にして従来の福祉を見直そうという動きが強くなっています。たしかに利用者が選択するとか、措置制度が非常に使いにくかったという側面はあるが、介護保険はやはりサービスを買うという側面があるので、お金がいります。さまざまなことでいえば従来の福祉と違う部分があるわけです。やはり福祉は原因を問わないとか、お金のない方も堂々と使っていただくという意味では大事な公的な仕事だと思います。介護保険をつくることを急ぐあまりに、障害者の施策、児童の施策、高齢者の施策のなかでも介護保険になじまない施策にまで、介護保険と同じような考え方で市場原理だとか民間参入という形で、自治体や国の責任が見えなくなるような制度は、私は時期尚早だと思います。従来の措置制度なり、もっと使いやすい形の、公的責任を明らかにする制度とあわせて、民間の皆さんが工夫していただくような介護保険のような制度がしばらく混在することが日本にとっては必要だと思うので、そういったことについてもぜひご議論いただきたい。

○問い 

 大津市で少人数で主婦の勉強会グループを持っている者です。個人的には満90歳になる一人暮らしのしゅうとめと、満87歳になるこれまた一人暮らしの実家の母を時々長めに手伝いに行っております。それらのなかから感じていることですが、介護保険をよりよくするというよりは、介護保険を破綻させないでちゃんと運営していくために、なるべくなら介護保険のお世話にならない、利用しなくて済むような仕組みを十分に考えていっていただきたい。先ほど福井さんのお話を聞いていて、まあ大津市もちょっとは光が見えてきたかなあ(笑)。先ほどから猿山代表の「輝ける大津市」とか「幸せな大津市民」とかのご発言に対して、会場から反応が全然ないというのを愕然とした思いで聞いていました。私は「幸せな大津市民」とは思っていない大津市民の1人なんです。でも、私たちのグループは100歳までも自立して地域で生きようということを考えつつ、一生懸命勉強会をしているんです。そういったなかで考えるのが、何とか介護保険以前の、あるいは要支援程度の対策を十分にしてほしい。しゅうとめや実家の母の状況を見ていると、健康にも恵まれているし自立意識も非常に高い人たちですが、それでもだんだんできないこと、できにくいことがふえてまいります。そのできないこと、できにくいことは、1人ずつ千差万別です。そこら辺の選択肢をたくさん持った対策を何とか考えていっていただきたい。

 2つ目は、介護保険は選ぶ制度だ、選択する制度だということを認識しているつもりです。選ぶときに、幾つかの業者というか介護保険に携わっている会社等々との契約約款は、契約をする前にちゃんと詳しいのを見せていただけるものなのかどうか、そこをお尋ねしたい。

 ちなみに生命保険等では、契約を締結してからでないと約款は見せてもらえないというのが一般的です。見せてくれと言っても、ほとんど見せてもらうことができません。そういった状態では選択はできないと思うので、事前にちゃんと自分で取捨選択できるように約款を見せてもらえるかどうか。これが2つ目の質問です。

 3つ目、介護保険はスタートしたが、国民一般の認識は十分に成長していないと思います。かなり知的レベルの高い人たちでも、「あんな保険、入ったってしょうがないわね」と、自由に加入する保険のような気分でいるし、「あんなお金払ってもしょうがないわね」という方もいらっしゃいます。そうじゃなくて、これは国民一般がお互いに支え合う組織なんだということをもっと皆さんに認識していただけるように、仕組み、基本理念といったものを認識していただくような方策を何とか政党としても、また大津市としても、厚生省としても、立てていただきたい。何とかそれをもう少し広げていっていただきたいという要望です。

 4つ目、介護ということを若い人たちに、言葉は悪いが昔の徴兵検査みたいな感じで、学校制度のなかで義務化されていくような方策はとれないものだろうか。介護をするという経験、そういうことができないものだろうか。そういうことがあれば弱い人たちや高齢者に対する認識も多少深まっていくと思います。いまの学校制度のなかで云々されている「17歳対策」とでもいうか、そういったものの役にも多少立つのではないかと思います。

 私は命のある限り、輝ける大津市で幸せな大津市民として生きていきたいと思いますので、そういういろんな方策をよろしくお願いしたい。

○問い 

 彦根市から参りました。先ほど鳩山さんの言われた新聞記事のように、私は65歳で、88歳の母を介護しております。急にこの会があったので、出てくるとき、冷房も扇風機も嫌いだからあけっぱなしだったのを、玄関のカギだけはかけてきた。玄関までトントンと、何か言いたそうだったけれど、電車の都合で後ろ髪引かれる思いで出てきた。

 その母は杉並区の住人です。この介護保険の前に彦根で公募の策定委員をやったので、彦根市でどうなっているか。実家が介護パニックに陥っている状態だったので、その母を3月から連れてきて、母とともに自分たちが計画したものがそのとおり動いているかどうかをチェックしております。5カ月間の評価は、非常に喜んでおります。お漏らしでおむつをかって、家族としてはあまりボケけているとは思わなかったが、認定は杉並区で介護4でした。

 その母がなんといまは、介護保険を利用して借りた手押し車で夕方に家の周りを散歩できるし、和服でノーパンツだった人がいまはTシャツ、トレパンで、おむつもいらなくなった。週1回だけのディケアに出られる。たまたま実家に主婦専業がいたというだけで、いままで措置の形の福祉系のものを何一つ受けるチャンスもないし、家族も受けられると思ったこともなかった。嫁・しゅうとめの関係で家族でできない。私が長女で、全部やってみようと思って、母も非常にいやがっていたけれど、最初から社会化ということの効果がめきめき出ております。自分が行ってみたら雲泥の相違で、本当に毎週楽しみにしている。でもそれは次に番を待っている。デイケアを2回にふやしたいなと思っても、「おふろは1回ですよ」と。おふろに入れるのが非常に大変なんです。おふろ1回だったら、私が家で見ても同じだわというので、いま週1です。

 もう1つは、ショートがいま非常にあいております。ショートは株式会社も利用して、老健、そして老人ホーム、全部種類の違うところを利用しました。ところがやはり個人的な対応がないので、4日が限界です。急に食べ物などが変わるので絶食状態に近く帰ってくると、その体力を回復するのに大変だというのを見たものですから、自分で好きなものを持ち込むようになってからは4日が大丈夫だ。

 その場合もヘルパーさんとか施設の方は、これ以上仕事がふえては困るというけれど、記録が戻ってきます。なんと、ウソ記録が多い。私の留守に友だちに面会に行ってもらってチェックをしていただいたら、おふろは4日も入らない、着がえも1度もしなくて戻ってきたこともある。食事を8割残していても、「全食お食べになりました」。そんなウソの記録だったらいらないよと言って。その辺もなんでだろうなと。結局は人件費を落とさなければいけないか、手が足りないか。ショートはあいているから入れてはくれるけれど、それを有効なショートとして利用できるのがあれだなと。

 私は長いこと消費生活センターにいたかげんがあって初めから契約書を見て契約した。母に見せても、こんなの読むのいやだわと。私もつれあいも65歳ですので、このまま2人でこの県でこの国で老いようかなと思ったら、あの契約書をもうちょっと標準薬価みたいな、この場合はこれで、あとこことここがうちは違うのよというあたりがパッと出るような形に持っていかないと、国の指導のその契約書は本当に3、4枚、しかも家を借りるぐらい判こを真ん中に押して、後ろに押して、ほんとにすごい契約書を端から端まで。たまたま介護している私がいたからよかったけれども。

 介護手帳が来ているので、いつつれあいが倒れてもいいなと。いまは年金を見合わせて生活設計が立てやすくなっている。万が一つれあいが倒れようが、私が倒れようが、介護保険でここまで行くなというのがあるので、あとは自分の選択ができるような形。ちょうど昭和2けたが入ってくるので、その人たちが老後を迎えるときの形も見合わせてこの保険を進めていただけたらと思います。

○問い 2点ほど質問をしたいと思います。

 せっかくの夢のある大津市にケチをつけて申しわけないのですが、先ほど大津市の福井さんが「介護保険のサービスは商品である」とおっしゃった。介護保険というのは私的保険ではないので、「商品」とおっしゃるのは、それはいままでの制度から変わるんだよという意識変革のための誇張かもしれないが、誤解を招くのではないかと思うんです。介護保険は社会保障、社会保険ですので、憲法25条の生存権に基づく社会連帯の、国が保障すべき社会保障制度ですので、商品ではないと思うんです。もし介護保険が商品だったら、医療とか看護も商品になります。そうすると管轄するのは厚生省ではなくて通産省ではないかと思うんです(笑)。言葉のアヤかもしれないが、誤解を生じるのではないかと思いました。

 もう1点は、ヘルパーさんについてです。先ほどのライフケアサービスさんの資料を見ても、ヘルパーさんのところに「有資格」と書いてあった。これ有資格がどういう意味かということまで書いてないのでわからないのですが、おそらく2級ヘルパーさんとかの級をお持ちだということではないかと思うんです。ヘルパーの資格というのも、2級とか1級とか3級がありますが、これは厳密な意味では資格ではない。教育研修課程で、国家資格があるわけでもないのに、このごろヘルパーの2級が資格としてひとり歩きしている。去年、介護福祉士の大学の養成課程が改正されて、介護福祉士は1650時間大学で教育を受けるんです。ところが2級ヘルパーはたったの130時間です。その差、10分の1以下しか研修を受けていない。そういう不十分な教育しか受けていないけれども、一般的にマスコミでも資格、資格というふうに言われています。経営者団体はもっとヘルパーの教育の規制緩和をしてほしいという要望も出されている。こういう教育不十分なままでいいのかどうか。このあたりのことを厚生省の神田さんにお尋ねしたいと思います。

○山井 

 それでは、時間の制約上、いまいただいた質問へのお答えと、最後に自分の思いを語るというのをお願いしたいと思います。

○神田 

 個別のご質問については後でもお答えさせていただくということで。

 ホームヘルパーについて幾つかお話がありました。早出とか遅出ができた、件数がふえたと。私は決してそれが悪いということではないのじゃないか。利用者のための保険ということで、利用者の利用希望時間が重複しているということで、ヘルパーさんの勤務体制を組むのはなかなか難しくなっているとお聞きしておりますが、利用者のニーズに合わせてできるだけマッチさせていくということからすると、そういう変革が起こってきているということは私どもも聞いております。

 家事援助の単価については、身体介護との組み合わせということで考えていて、それだけということは考えていないということであります。

 ヘルパーさんの教育についていいのかという話がありました。私どもとしては審議会などでも議論して最低130時間の2級ヘルパーの研修課程は受けていただこうとは考えておりますが、やたらハードルだけ高くすればいいというふうには考えておりません。それは現場でいろいろやっていかれるなかで経験を積んでいっていただくところもあると思いますので、千何百時間という非常に高いハードルだけ課すということではなくて、やはり現任研修のような取り組みも非常に大事ではないかと思っております。

 最後に、課題ということですが、広報というお話もありましたけれども、いよいよ10月から保険料を払っていただく。10月13日に払われる年金から実際に天引きをされますし、10月末あるいは11月末には金融期間で納めていただくことになるわけです。保険というのは負担があってサービスが受けられるということですので、そういう意味では本当に負担をしていただくことによって緊張関係も生まれてきますし、利用者の注文や声ももっと出てきて、本当の制度として育てられていくのではないかと思っております。

○福井 

 「商品」というのは、言葉のアヤということではなしに、こういうふうに理解すると介護保険サービスというのが見えてくるのじゃないかと、そういう部分でのキーワードとして使わしてもろてるということです。当然憲法25条がありまして、介護保険法第1条のなかで高齢者の自立支援とか、いろんなことが底辺にはあるんですが、そこで介護サービスをどういうふうに見ていこうか、こういうふうに商品として一度見てみたら苦情解決の問題とか利用者の権利の問題などが見えないか、というのを1つのポイントとして僕ら考えています。

 それから介護に陥る以前の対策ということでおっしゃいました。先ほども配食サービスとかいろいろ申し上げましたが、この前厚生省の課長さんにお話をお伺いする機会があったんです。そういう施策をどんどんつくっていって、要介護になる人をどう少なくするかがこれからの問題だ、ということでした。

 もう1つ大きなポイントだと僕が感じたのは、そのときに「それで介護保険料が下がるということをめざしてください」と。厚生省では「どういうプロセスでやっていくかは自治体で好きなように考えてくれたら結構です」とおっしゃったんです。その部分というのが結局先ほどからいろんなところで話題になっている地方分権とか介護保険が地方自治の試金石であるとか、そういう部分とつながってくるのではないかと思います。そしたらプロセス、どういう施策をつくっていくかというのが僕らの仕事かなという感じでこれからも仕事をさせていただきたいと思います。

○内田 

 事業所として今後取り組んでいかなければならないことは山ほどありますが、まず先ほど出た契約書の内容について。介護保険が始まる前、2月、3月、4月ぐらいに契約書をあわててつくり出したという状況はどこも一緒だと思います。今後その辺の整備、事業所がどれだけ利用者にわかりやすく特徴のある契約書をつくっていくかというところも1つの課題になってくるかと思います。

 先ほどのご質問の約款の話ですが、私ども特にこちらからお見せするということはありませんが、ご希望になられましたらお見せするのも特に問題ないかと思います。

 福井さんのお話にあったように、「商品」という言葉です。なにもモノということでとらえていただかなくても、1つの選ぶ形というふうに考えていただければよいかと思います。それらの「商品」を私たちはどれだけのものを整備して、どれだけ喜んでいただけるかというところをもっともっと研鑽していきたいと思います。

○猿山 

 3方面の方へお願いというか要望したいと思います。私いろいろなところに出させていただきますけれど、これほど多方面の知り合いの方が出席している会場に来たことは初めてです。20人以上の私の知り合いの方が座っていることを発見して、本当にびっくり、びくびくしております。

 そういういろんなタイプの方がきょうはご参集ということで、まず行政に対して感想を申し上げます。20年の「呆け老人」の活動のなかから厚生省へは14回も要望書を持ってさんざん伺いました。この介護保険に至るまで厚生省の方々は本当によく考え、よく耳を傾け、よくやってくださっているというのが感想です。マスコミはとにかくたたけばいいということで、介護保険を袋だたきにした時期もあって、さすがの“ミスター介護保険"の神田さんもフラフラで、「そんなこと言ったって、いいところもあるでしょう。どうぞいいところを見つけてほめてやってください」なんて弱音をはいていたこともあります。それでもゴールドプランにしても私たちの意見をとてもよく聞いてくださいましたし、よくやっていると思います。大体マスコミは官僚たたきが大好きで、どんどんたたいておりますが、やっぱり優秀な方が多いという感想を私は持っております。引き続き優秀な方が官僚になっていろいろ考えてほしいと願っております。

 “夢の大津市"ですけれども、私はちょっと皮肉として申し上げた感じもあるんですが、非常に頑張っているのは介護保険担当官のメンバーだと思っております。ショートに枠がかかって、「これでは使うなということと同じだ」と神田さんにかみついたときに、それは非常に冷たいお返事だったんですが、そのうめきを聞いていた大津市の担当官たちが、すばやく受領委任制度ということで現金払いで済むように、日本でも一、二の早さで制度を立ち上げてくれました。非常によく頑張って情報交換も絶え間なくして、すばらしい方たちだと思っております。ほかの大津市の行政は存じませんので、全部が全部夢のようかというのはわかりません。

 初めて政党の集会に寄せていただいたわけですが、そこの方々にお願いをしたいと思います。日本の現状を本当によく調べて、将来の布石になるようにぜひ考えてほしいと思います。これは民主党ではないが、「家族介護は日本の美徳」などと、介護保険制度を根本からグチャグチャにするようなことを言った政治家もおりますが、あのときほど私は腹が立ってしょうがなかったことはありません。選挙目当ての場当たり発言などは絶対やめていただきたい。

 最後に、きょうはじっと見ておりますと、やっぱり男性が多いかなあ、珍しい集会だと思うんですが、男性へお願いしたいと思います。ボケ老人以外でも老人を介護している者は女性が7割です。嫁、娘、妻というのが大変な介護を担っているわけです。介護というのはいまは女の問題ですので、女性軍は大変関心があります。男性軍はちょっと楽をしているのじゃないか。これでよいのか、というふうにぜひ考えてほしいと思います。男の方にも親は同じようにあるわけですし、「自分の親は自分で見よ」ということをまず言いたいと思います。その上でお願いがあったら助けてあげますということで(笑)、私どもは介護に参加したいというふうに思います。

 人口の半分は女性なのですから、若い元気な女性が、半分とは言わない、3分の1でもいいからどんどん政治に参加できる体制にしてくださらないと、いままで長いこと男性が支配してきたこの世の中ですので、志があっても食い込んでいくことはなかなか難しいと思うので、女性も楽に発言できる世の中を用意していただけたらなというふうに男性にお願いをいたします。


ま と め

○山井 

 それでは、まとめとして民主党の社会保障担当のネクスト大臣、社会保障の責任者であります今井澄参議院議員からごあいさついただいて、最後に鳩山由紀夫さんに締めていただきたいと思います。

○今井澄(民主党ネクストキャビネット雇用・社会保障担当大臣) 

 皆さん、きょうは大勢お集まりいただきましてありがとうございました。また壇上の皆さん方も貴重なご意見ありがとうございました。

 私もずっとフロアで聞いておりまして、先ほどからの皆さん方のご意見を十分受けとめて、これからの民主党の政策に生かしていきたいと思っております。

 私ども長い間、新ゴールドプランをゴールドプランにグレードアップするところから始まって、この介護保険制度のことにもずっとかかわってきました。もちろん先ほど朝日先生が言われましたように、保険制度じゃなくて税でやったほうがいいのではないかという意見もないわけではないが、基本的にやはり医療保険と同じように保険料をいただき、利用時には一部負担をしていただき、低所得者に対してはそれなりの減免の措置をきちっとする。こういう保険というシステムでやっていくことについて、この基本は崩さずにやっていきたいと思っております。

 もちろんこのなかでいろいろな問題がございます。先ほどありましたように、要介護認定の正確さ、これを絶えず検証してやっていかなければなりません。そのほかいろいろな問題については個別に解決していきたいと思いますが、2点だけ、フロアからのご意見も伺いながら申し上げたいと思います。

 1つは、このプロジェクトの名前にあるように、1つ1つ現場の皆さんとも行政の皆さんともよく話し合いながら改善していくとともに、5年の見直しのなかで大きく変えなければならない点が1つあるのではないだろうか。それは65歳で切っているところのおかしさ。それから若年の保険料は40歳からいただいている。これもどうも大変中途半端な制度だろう。いま医療保険制度の見直しの問題もあるのですが、年齢で区切るというやり方はおかしいのではないだろうかということから、こういう65歳の区切りはなくしていきたいと思って取り組んでいるところです。

 もう1つ、先ほど医療と介護との間がどうも不明確だ、うまく連携がとれていないというお話がありました。現場では、介護にならないようにすることも、要介護になった場合の介護も、それから当然医療も、これは密接な連携をとってやっていかなければならないところですが、ただ制度の問題、どこからお金が出るかというおさいふの問題で、医療と介護がいまごっちゃになり過ぎているのではないだろうか。先ほどちょっとお話がありましたが、一方で介護をきっちりする。そうすると社会的入院はいらなくなるから、病院のそういうベッドはいらなくなるわけです。そこのところの区分もやはり考えていかなければならないと思います。

 最後に、きょうご意見を伺っていて、私自身も実は医者として医療現場でずっとやってきて、そしていま政治家をやっています。行政とのおつき合いもいろんな形でやってきて感じるのは、やはり政治や行政というのは現場で働く人たちに夢をなくさせるようなことをやっては絶対にいけないということは心して考えたいと思います。行政も、それから私たち政治家も、目先の財政の問題から、より効率という名前でお金を絞ることをとかく考えてしまう。公共事業もお金を絞るだけではなくて、社会保障もお金を削るかのようになってしまいがちですが、そこは先ほども鳩山代表から申し上げましたように、私たちはメリハリをつけて、むだな公共事業はやめる、必要な社会保障はきちっとやるという考え方でやっていきたいと思うんです。それでもとかく財政が前面に出るようなニュアンスがあります。しかし、実際は行政に携わっている者、政治に携わっている者は、決してお金のためだけにやっているわけではない。お金の帳尻合わせのためにやっているのではなくて、よかれと思う制度、自立とか選択とか、そういうことでやっているのでして、先ほど幾つかご意見がございましたけれども、それは単にお金のためだけにやっているのではないということもご理解いただきたいが、よりこちら側がそれをきちっと反省してやっていかなければならないと思っています。

 特に介護支援専門員の皆さん方が中心になるわけですから、その方たちが本当に生きがいを持ってやっていけるような環境づくりというのをきっちり考えていきたいと思います。

○鳩山 

 公開公聴会に皆様方ご参加をいただいたこと、民主党の代表として、そして男の1人として参加をいたしたことをうれしく思っております(笑)。ただ、たぶん皆さんも消化不良というか、言いたいことをまだ十分聞いてもらえなかったというご不満がお残りのまま2時間半が過ぎたと思います。皆様方には恐縮ですが、第2、第3とこういう会を各地で開かせていただこうと私どもは考えておりますので、きょう十分に皆様方のお気持ちが届かなかった分、今後の努力とさせていただければと思います。

 フロアからのお話やパネラーの皆様方からのわれわれに対する要望に対しては、できる限り真摯におこたえをしていきたい、心からそう願っています。

 幾つか簡単に申し上げれば、私は子どもたちが、特に家のなかでおじいちゃんおばあちゃんの面倒を見ることが少なくなってきてしまっている。だからこそ学校のなかでは義務的にボランティアの心を養うことが必要ではないかと思っておりまして、私たちもそのことをこれから非常に大事なことだと考えてまいりたいと思っております。お年寄りの面倒を見るという心を子どものなかにしっかりと植えつけていくことが、何より大事ではないかと思うからでございます。

 いろいろなお話を伺いながら、ホームヘルパーさんもそうでありますし、ケアマネージャーさんもそうでありますが、人材の育成が大切だというお話はありましたが、忙し過ぎて十分にお年寄りの面倒を見ることができない、だから時々口のきき方がおかしくなったりしてしまうとこともあろうかと思います。たしかに研修などもある意味では必要なところもあろうかと思いますが、それよりも、たとえばケアマネージャーさんが50人本当に面倒を見ることができるだろうか。50人は無理で、その半分ぐらいだとした場合に、それでもやはりケアマネージャーさんが十分に生きていくだけの給料をいただかなければおかしい話になるわけですから、それをどのようにして得る手だてになるのか。そうなれば単価の問題その他が出てくると思います。私どもは50人の数の見直しなどから始めて、また単価の見直しなども真剣に行う時が来ているのではないかということも、皆様方とともに考えてまいりたいと思っています。

 最後に、時間がなくなっておりますので1つだけ、このことは山井さんとも相談をして、ぜひ申し上げたいと思っております。それは宅老所に伺いました。つい先日、知事もいらっしゃったそうであります。きょうは厚生省の“ミスター介護保険"ものぞいていただいたわけでございます。大津市の山田市長さんも最後までお残りをいただいて熱心に私どもの討論を聞いていただいたわけでありますから、ぜひ近いうちにごらんになっていただきたい。介護保険、どうして適用できないのだろうか。その流れのなかで“ミスター介護保険"に伺いましたら、たとえば労働基準法に違反しているぐらい仕事が忙し過ぎて、2日間に一遍ほど25時間労働しなければならないではないかというお話がありました。それは何の援助もないものですから、本来ならばもう1人、2人、3人雇えるところを、雇うことができないから、2人で5人あるいはそれ以上の方の面倒を見なければならない。結果として基準法に違反するぐらいの過労になってしまっている。

 だからこそ、何らかの支援というものが市や県、国から必要ではないかと思っておりまして、介護保険の適用の範囲の問題など、われわれもう一度国に対しても強く申し上げていきたいというふうに決意を申し上げてまいりたいと思っております。

 お暑いなか熱心におつき合いをくださいました皆様方にあらためて感謝を申し上げ、特に猿山さんの女性パワーをきょうも拝見させていただいたわけでありますが、パネラーは男性のほうが多かったんですけれども、なぜか女性が目立ったのはどういうことかなと思いますが、皆様方のご協力をいただきましたことに重ねて感謝を申し上げ、この公聴会を閉じさせていただければと思います。

 ご参加ありがとうございました。(拍手)

○山井 

 以上をもちまして第1回の民主党の「介護保険公開公聴会」を終了させていただきます。第2回は9月23日に宮城県で福祉の浅野知事とともに行わせていただきます。この第1回をすばらしい大津市で大津市長さんとともに行えましたことを心から御礼申し上げます。

 本日は本当にありがとうございました。(拍手)

閉会


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