やまのい和則の
     「軽老の国」から「敬老の国」へ

            第139号(2001/05/18)

 メールマガジンの読者の皆さん、こんにちは。手短に今日18日
の坂口力厚生労働大臣への私の質問の報告をします。

       ☆      ☆      ☆       

 17日木曜日
 朝一番は朝食会に出席。
 10時から衆議院の総務委員会。片山虎之助大臣への一般質疑。

 午後2時半から、翌日の厚生労働委員会の私の質問の「質問とり」
に、厚生労働省の担当者8人が私の部屋に来て下さる。こちらは、
政策秘書の海野君と私は。早速、大声で言い合いになる。

「精神障害者の多くが、必要なサービスがあれば、精神病院でなく、
地域で暮らせるはずである」という点について、見解の相違で大議
論。ここから事実上、委員会での質問は始まっているようなものだ。

 1時間の「質問とり」の後、当日委員会で配布する資料の準備や
情報収集などで晩遅くまで海野君と仕事。

       ☆      ☆      ☆       

 本日18日金曜日
 朝刊で、ハンセン病の判決に対して、「国が控訴した上で和解を
検討」と見て、ショック。これは大変なことになった。
 早速、ハンセン病問題の議員連盟の江田五月参議院の事務所に連
絡し、資料を取寄せる。昨日の打ち合わせにはなかったが、急きょ、
この問題も質問で取り上げることにした。

 10時から厚生労働委員会がスタート。
最初の質問者は、民主党の金田誠一議員。ハンセン病の判決につい
て、「控訴を断念すべき」と坂口大臣に迫る。

大臣は、「私を信頼してほしい」とだけ答弁するも、歯切れが悪い。
「お役人さんの言い分だけを聞くなら、政治家なんかいらないじゃ
ないですか!」と金田議員。

 ハンセン病の患者さんの原告の平均年齢は74歳。これだけの悲
惨な仕打ちをして、患者さんの人生を台無しにし、人権侵害をした
にもかかわらず、判決に控訴するのは許せない。

 金田議員は言った。
「熊本地裁で判決が出る前の晩、患者さんや原告など数百人で公園
で集会を行いました。そこで、23700人もの隔離されて療養所の中
で亡くなった患者さんのためにろうそくをともしました。そのろう
そくを見つめながら、集会に参加した私たちは「ふるさと」の歌を
合唱しました。この方々は亡くなって骨になっても、自分たちのふ
るさとに戻ることさえ許されていないんです」と訴える金田議員は
涙声になっていた。私も思わず目頭が熱くなった。

☆             ☆             ☆ 

 次に、11時20分から11時55分までが私の質問。
冒頭、私は言った。「小泉内閣は構造改革の断行を訴えておられる。
この厚生労働の分野の改革として、私は3点をあげたい。

まず、日本版ADA法(障害者差別禁止法)の制定。障害のある方
々が自分の望むところで、暮らし、社会参加できる社会にすべきで
ある。公明党の神崎代表が代表質問で、日本版ADA法の推進を表
明されたことに感激しました。わが民主党の鳩山由紀夫代表も、日
本版ADA法の推進を表明しておられます。

次に、精神障害者の問題。34万人も精神病院に入院しているのは、
ハンセン病の問題と同様に、世界の流れに逆行している。隔離収容
主義は辞め、住み慣れた地域で暮らせるような施策に大転換すべき
である。

              ☆              

そして、3つ目は、ハンセン病の問題。この問題で控訴しないこと
が、国の強制隔離政策の反省であり、その反省からしか21世紀の
福祉は始まらない」

 そして、私は大臣に、「この問題について、坂口大臣は、小泉首
相や森山法務大臣と協議されるとのことですが、みんなが坂口大臣
の判断に注目しているのです。謝罪の気持ちは言葉ではなく、態度
で示すべきです。控訴断念なくして謝罪なし。控訴して謝罪するな
んてことはありえません」と迫った。

 坂口大臣からは、「誠心誠意対応したい」という趣旨の答弁。
大臣もこの問題では板ばさみで非常に苦しい立場なのだろうが、
「控訴しない」という最終的な政治決断を何としてもしてほしい。

              ☆              

 2番目の質問。「精神障害者が34万人も精神病院に入院している
のは、国際的な常識から見ても異常な多さ。多くの論文などから精
神病院は20万床くらいが日本では適正な数と言われている。

早急に障害者プランを見直し、グループホームやケアハウス、支援
センター、デイケアなどを整備し、地域で暮らせる体制をつくるべ
きだ。

同時に、入院患者さんが退院できるためにも、現場で頑張っておら
れる病院の方々を支援するためにも、精神病院の医師や看護婦など
の数を多くしたり、設備を向上させるための手立てを講じるべきだ」
と訴えた。

 大臣は、「欧米に比べて、かなり多くの精神障害者が入院してい
るということは私も認識している」と答弁された。

☆             ☆             ☆ 

 次に、特別養護老人ホームの問題。
「今後は、個室の特別養護老人ホームを整備すべきだ。その際には、
低所得者も利用できるような配慮が必要だ」と質問。

昨年末に津島雄二厚生大臣に質問したときには、前向きな答弁でな
かったが、今日の坂口大臣は、あっさり「個室化の方向で進めてま
いりたい」と前向きな答弁。

この個室化については、今までから新聞報道などで厚生労働省が表
明していたことなのでビッグニュースではないが、国会答弁では初
めてのことだ。特別養護老人ホームの個室化問題は、1989年頃か
ら10年以上取り上げられていたが、とうとう動き出したという感
じだ。

☆             ☆             ☆ 

 次に、グループホームとケアマネジャーの介護報酬アップを2年
後を待たずに実施すべきだと迫った。

実は、坂口大臣がある雑誌で、「介護報酬の見直しは2年後にこだ
わらない」と発言しておられるのだ。そのことに触れると、大臣は
苦笑しておられた。

 グループホームとケアマネージャーについてますます力を入れる
という答弁だった。

私はグループホームについては実態調査のデータを示し、
「入居者の30%が要介護3以上、グループホームの半数以上が夜
勤体制でやっている。

2月の国会質問での私の質問に対して大臣は、『グループホームは
軽度の痴呆性高齢者が入居するもので夜勤は必ずしも必要ない、中
度以上になれば特別養護老人ホームなどに移ってもらう』と答弁さ
れた。

実際には、特別養護老人ホームは2、3年待たないと入居できず、
事実上、グループホームでこれからターミナルも考えていかねばな
らない実態になっている」と訴える。

桝屋副大臣は、「グループホームの普及については、着実に進めて
いきたい。しかし、グループホームは中度の痴呆性高齢者が対象で、
ターミナルまではまだ想定していない」という趣旨の答弁。

しかし、あれ? 2月の私の質問への答弁では、「グループホーム
は軽度の痴呆性高齢者が対象」と言っていたのではなかったか?と
思った。

 要は、このあたり(グループホームの対象者について)が今はき
っちり答弁できないのだろう。

☆             ☆             ☆ 

 次に、介護労働者の労働条件や待遇の実態調査とその向上を質問。

看護協会出身の南野(のうの)副大臣が答弁。「すでに一部実態調
査をしている」との答弁。

しかし、私は、「ホームヘルパー、ケアマネ、施設職員さんも対象
に加えて、特に、介護保険の前後で労働条件や待遇がどう変わった
かを調べて欲しい。

全国老人施設協議会の調査では、『特別養護老人ホームは介護保険
によって収入は増えたが、人件費率は下がった』という結果が出て
いる。

せっかく、『厚生労働省』になったのだから、介護保険で介護労働
者の労働条件が悪くなったということがあってはならない」と訴え
た。

☆             ☆             ☆ 

 最後は、利用料の低所得者問題(1割負担)。私は切実な問題だ
と訴えた。

厚生労働省は、「自己負担が重いという理由でサービスの利用を介
護保険によって減らした人は全体の2.5%で少ない」という現状認
識。

私は、「サービス利用が減った人だけでなく、サービスを増やした
人でも、1割負担がネックで、思い通りに増やせなかった人や、サ
ービス量が介護保険によって変わらなかった人でも、本当はサービ
スをもっと利用したかったが、1割負担のために我慢した人もいる
はず。その数字を加えれば、利用抑制がかかっているのは2.5%ど
ころではないはず」と訴えた。

              ☆              

 いま、民主党の介護保険チームで低所得者問題を議論している。
利用者負担の1割は原則としては仕方ないが、でも、一部の低所得
者には何らかの形での減額が必要だと思う。

              ☆              

 私は質問の最後を次のように締めくくった。

「21世紀の新しい福祉に改革をすべきです。それは次の3点です。
第一に、隔離収容の福祉はもう止めましょう。望めば住み慣れた地
域で暮らせる福祉にしましょう。
第二に、自己決定が大事です。当事者が自分で住みたい場所を選べ
る社会にしましょう。
第三に、このような福祉は、決して「哀れみ」として「かわいそう
だから助けてあげよう」という考えでなく、住み慣れた地域で自分
の住みたい場所で暮らせるということは「権利」なのだという考え
に立脚することが大事です」

☆              ☆             ☆

 ちなみに、以上の考えは、石毛えい子議員の秘書の秋山愛子さん
の翻訳書「哀れみはいらない ー全米障害者運動の軌跡」(現代書
館、3300円)や、樋口恵子さん(前全国自立生活センター協議会
代表、ホームページ( http://www.ilpeer-net.com/ )の影響
を受けたものです。

☆              ☆             ☆

 私の30分の質問、いや演説のあとは、水島広子議員の質問。
日本の精神医療が、国際的な水準から立ち遅れている、という趣旨
の質問。淡々と論理的に理詰めで質問される水島議員と、大声で訴
える私の質問は対照的で、私は少し反省した。

☆              ☆             ☆

 なお、私の質問については、私のホームページ
( http://www.yamanoi.net/ の衆議院審議中継⇒ビデオライブラリー
⇒18日⇒厚生労働省1時間22分頃から30分間)で映像を見るこ
とができます。

また、議事録は2〜4週間後くらいに出来上がりますので、ホーム
ページで公開します。

 非常に大雑把な報告になりましたが、お許しください。
以上で、今日のメールマガジンは終わります。
           やまのい和則 拝
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
☆やまのい和則の「軽老の国」から「敬老の国」へ☆
    (2001/05/18現在 読者数 1399)

前へ 目次へ戻る 次へ