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   やまのい和則の
     「軽老の国」から「敬老の国」へ

     - Yamanoi Kazunori Mail Magazine -

            第84号(2000/12/15)

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 メールマガジンの読者の皆さん、こんにちは。
もう20世紀も残すところあと2週間。皆さんも慌しい日々をお過
ごしのことと思います。

今回は政治と福祉とグループホームのメールマガジンがほぼ同じ
内容であることをお許しください。

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 私は、国会が終わり、そのあと1週間、宇治市長選挙の応援をし、
また、今週は東京と京都を行ったり来たりの毎日です。
水曜日(13日)と木曜日(14日)は東京日帰り。
年末の「やまのいニュース」の執筆・編集に、スタッフとともに取
り組みました。A4で12ページという分厚い通信になりました。

この「やまのいニュース」の内容は、だいたいホームページに掲載
予定ですが、メールマガジンとはまだ違ったおもしろみがあります
ので、送付をご希望の方はご一報ください。

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 さて、今日はとっても嬉しいことがあり、メールマガジンを発行
します。

というのは、12月6日付けの読売新聞の切抜きに、
「痴ほうと向き合う暮らし」という健康フォーラムの報告記事がで
ていました。

 そこでの基調講演で、厚生省の山崎史郎老人福祉計画課長が、
次のように語っているのです。

☆         ☆          ☆

「厚生省が、積極的に整備を進めているのが、痴ほうのお年寄りが
7,8人で生活する『グループホーム』です。

痴ほうの方は非常に傷つきやすい心を持っている面があり、50人、
100人といった集団生活では、状態が悪くなります。

グループホームでは、調理、洗濯などの生活を本人に任せ、自分ら
しい穏やかな生活ができる特徴があります。

現在、全国に700ヵ所ありますが、いずれは小学校区に1ヶ所ぐ
らいは欲しいと考えています」

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 これは、画期的な発言です。

今まで「中学校区に1つ」という目標は、おぼろげながら出ていた
のですが、中学校区に1つだと全国で約10、000か所。小学校区
に1つだと約25,000ヶ所です。

 グループホームを小学校区に1つ、整備するとすれば、それが日
本全国の介護ネットワークの基礎になります。

グループホームは町に1つぽつんとあっても仕方なく、やはり、
小学校区に1つあって、のぞめば、住み慣れた地域で、痴呆症にな
っても暮らし続けられる、ということが魅力です。

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 私の人生最大の目標の1つが、グループホームを小学校区に1つ
つくり、助け合いの「共生」社会をつくることです。

その夢の実現が一歩近づいたように思えて私は感動しています。

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 次に、私がグループホームをライフワークとしている思いを書か
せて頂きます。

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 いじめが増え、青少年の残酷な犯罪が連日のように報道され、社
会がすさんできたように思います。

人間と人間は、時には競争し、お互いが切磋琢磨することも必要で
す。
勤勉に働かねば、国際競争力を維持することはできません。

しかし、あまりにも競争社会が行き過ぎると、「人間の敵は人間だ」
というギスギスしたすさんだ社会になってしまいます。

今こそ、「人間と人間は本来は、お互い助け合うものだ」というこ
とを再認識する必要があります。
競争社会が行き過ぎると、「他人の不幸は自分の幸せ。他人の幸せ
は自分の不幸」というような風潮になりかねません。

しかし、「他人の悲しみは自分の悲しみ。他人の喜びは自分の喜び」
と言える社会にせねばなりません。

 そのような「競争」と「共生」がうまくバランスできた社会をつ
くるために、私は「グループホームを小学校区に1つ(全国25000
ヶ所)」運動を提案したいと思うのです。

 20世紀の福祉の問題点の一つは、町はずれにお年寄りや障害者
の大きな施設をつくり、心身に障害のある方を、地域社会から遠ざ
けてきたことだと思います。

私は世界を3年間、福祉の調査でまわったことがありますが、その
国の「敬老度合い」は、その国で老人ホームがどこに建設されてい
るかによって決まります。

残念ながら、先進国の中で、老人ホームが最も町はずれにあるのが
日本です。
年をとって痴呆症になったり、身体が弱ったら暮らせない地域社会
って、本当はおかしいですよね。
最も地域の助け合いが必要となり、引越しが症状を悪化させる高齢
の時に、お年寄りが見ず知らずの地域に引っ越さざるを得ないのは
おかしいですよね。

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 このような問題点を解決するために、私はグループホームを増や
す運動を、過去10年間しています。

グループホームとは、6−9人規模の痴呆症のお年寄りなどが
介護スタッフと共同生活をする場です。

民家を改造してつくることもできます。

100坪あればできます。

痴呆症のお年寄りにとっても、グループホームのような家庭的な
雰囲気の中で、スタッフと共に簡単な家事や趣味を楽しみ、残って
いる能力を生かし、少しでも生きがいや役割を持つことが痴呆症状
をやわらげることがわかっています。

痴呆症になっても昔からの慣れ親しんだ家事や趣味の能力は残っ
ている場合が多く、何もしないよりは、その能力を発揮したほうが、
痴呆症状が悪化しにくいのです。

 また、住み慣れた地域にあるので、顔なじみの近所のお茶飲み友
だちもグループホームを訪問しやすいし、お年寄り本人もたとえ自
宅に住み続けられなくても、環境の変化が少なくて疎外感が少なく
てすみます。

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 このようなグループホームを、小学校区に1つつくる。そうして
地域で老いを支えるようにする。

実際、私の知っている京都のグループホームでは、最初は
「迷惑施設」ということで、グループホームに反対運動があったけ
れど、グループホームができてからは、近所の子供が遊びに来たり、
ボランティアさんが集ったりしています。

 グループホームが地域の助け合いの拠点になったり、痴呆症のお
年寄りへの偏見を改める教育の場になっているのです。

「グループホームができると、そこから愛が生まれる」という言葉
もあります。小学校区に1つグループホームをつくることにより、
助け合いの「共生」の社会をつくるのが私の夢です。

 また、グループホームは必ずしもお年寄りだけでなく、障害のあ
る方々も望めば地域のグループホームで暮らすことのできる社会
を目指しています。

 私は、グループホームが地域に増えれば、いじめは減ると思いま
す。今のいじめの原因は、弱い者いじめの社会そのものにあります。
三世代同居が減り、お年寄りと接する機会も減り、障害のある方々
が地域社会から遠ざけられるから、助け合いの心を子供たちが育む
チャンスも減る。

 しかし、グループホームが増え、地域で障害のあるお年寄りなど
が暮らせるようになり、大人がボランティアとして、弱った方々を
支えている後ろ姿を、子供たちに見せることができれば、地域が変
わります。

その姿から、子供たちは、「弱った人を大事にするのが人の道なの
だ」と学ぶでしょう。

 温かな助け合いの「共生」社会をつくる起爆剤として、私は、
グループホーム運動を進めたいと思っています。

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 私は、26歳の時、イギリスのエジンバラにある老人ホームで、
1ヶ月住み込みでボランティアをさせてもらいました。

そこはキリスト教の老人ホームでした。私はそこで教わったことは、
福祉だけでなく私の人生に大きな影響を与えました。

 敬虔なクリスキャンであったその老人ホームの施設長さんの教
えは、”write a love letter”ということでした。

「愛あふれる手紙を書け」ということでしょう。

それも、「1日に1通はラブレターを書きなさい」と言われました。
それ以外にも、「口論は避けなさい」、「愛の言葉を語りなさい、
などと教わりました。

 すさんだ社会とは、言い換えれば、愛がとぼしい社会です。

私は、人間を人間たらしめているのは人間愛だと思います。

しかし、今の慌しい毎日の中で、愛を感じ、愛を実践することは簡
単なことではありません。

また、「愛は与えられるものではなく、与えるものだ」とも言われ
ます。

 私がパソコンに向かってメールマガジンを書く1つの思いは、
この"write a love letter"という言葉です。

人の批判や愚痴ではなく、愛あふれるメールマガジンを1通でも書
きたい。こんなことを感じています。
                            やまのい和則 拝

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