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   やまのい和則の
     「軽老の国」から「敬老の国」へ

     - Yamanoi Kazunori Mail Magazine -

    第77号(2000/11/22 不信任案採決ドラマNo.1)

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 メールマガジンの読者の皆さん、こんにちは。
現在時刻は、11月22日午前1時。
昨夜の内閣不信任案の採決から、ほぼ一日が経とうとしています。

 私はあまり政局のドロドロした話は好きではありませんが、やは
り、今回のことは、非常に考えさせられたので、改めて昨夜のこと
をドキュメントで振り返ります。
新聞ではない、山井和則が感じた1日のドラマです。
「政治とは何か?」を読者の皆さんとともに、考えたいと思います。
長くなりますが、お許しください。

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 20日(月)は、朝から民主党京都の参議院選挙についての会議。
新幹線で東京に移動。午後3時に国会事務所到着。
厚生省の担当者と1時間、協議。

先週金曜日(17日)の、厚生委員会の質問で、私の
「痴呆性高齢者向けグループホームには、夜勤が必要」に対して、
「必要ない」と、政務次官が答弁した。
「それはおかしい。夜間徘徊をする痴呆性高齢者を預かるグループ
ホームに夜勤がいないのは問題だ」と今、厚生省と議論中。

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 そのあと、緊迫する予算委員会を傍聴。
原口議員の森首相への追求も熱が入る。
午後4時半から民主党の代議士会。
本会議前に開かれ、民主党衆議院議員の意思統一がはかられる場だ。
さすがに、不信任決議案の採決、衆議院が解散し選挙かもしれない、
緊迫した雰囲気。
衆議院議員127人と秘書さん、マスコミの取材陣で部屋は超満員。
「今日、日本の政治を変えようではありませんか!」と鳩山代表が
演説。
大いに盛り上がる。

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 衆議院本会議は午後9時からなので、午後5時半にいったん国会
事務所の部屋に戻る。
いま執筆している高齢者福祉の本について、編集者と打ち合わせ。
そして、先週訪問した老人ホームの原稿をテープに吹き込む。
出前の夕食を食べる。
私は、こういう重要な会議の前には、テレビなど見ていると、それ
であっという間に、時間の無駄使いしてしまう。このような待ち時
間も、あえて福祉の本の執筆などに励むことにしている。

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 午後8時から再び代議士会。
一時休憩して、本会議直前に、
「結局は、腰砕けか。いい加減にしろよな」という同僚議員の声。
「どうしたんですか?」と聞くと、
「加藤派と山崎派は全員欠席だって」とのこと。
「やっぱり! まあ、そんなことでしょう」と私は平静を装った。
が、私はショックというより
“国民の期待を裏切った”
“政治家が国民に、また嘘をついた”と腹がたった。
「また、茶番か。やってくれたな。この10日間のテレビや新聞で
の騒動はいったいなんだったんだ」と。

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 本会議場に入る。
左側の自民党席を見ると、確かに、空席が目立つ。
加藤派と山崎派が欠席なのだ。
無性に腹が立つ。ここまでみんなを期待させておいて、土壇場にな
って、「欠席」という中途半端な姿勢はないでしょう。

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 後ろを振り返ると、自民党長老の幹部の方々が笑顔で、握手をし
たりしている。
何だこれは? さきほどまでの緊迫した雰囲気はなんだったんだ。
加藤さんの席は、確かに、空席。
 
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 午後9時過ぎから、不信任案の討論がスタート。
鳩山代表の演説。
しかし、自民党席が落ち着かず、歩き回る議員が多く、議長から注
意される。

笑顔で握手している議員や、真剣に話し込んでいる議員たち。
よく見てみると、加藤派も半分くらいは出席している。

加藤派幹部が、無所属の席に行く。
そして、無所属の議員に何やら必死に説得し、議場の外に連れ出す。
おそらく、「賛成」と投じずに、「欠席せよ」という説得だろう。

 そんな光景が随所に見られる。

与党席はこんな雰囲気で、鳩山代表の演説を聞いていない人も多い。

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 そんな中で、新聞社の速報メモが、私たちの席にまわってくる。
「加藤氏と山崎氏だけは出席して賛成する予定」との速報。
いったい、どうなってるんだ。もめてるんだなあ、と感じる。

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 そして、10時20分。
事件が起こった。
野党議員の野次に、演説中の与党議員が演壇からコップの水を、
野党席に向け、かけたのだ。

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 場内は騒然。
私もさすがに立ち上がった。
「おい、何やってるんだ!」と叫んでしまう。
私は普段は野次などはしない性格だが、さすがに居ても立ってもい
られなかった。

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この10日間ほど、不信任案可決だとか、衆議院解散だとか、
テレビや新聞を巻き込んで、与党は、大騒動。

国民に「政治が変わるかもしれない」という期待だけを持たせてお
いて、直前になって、密室談合の手打ち。

こんな国民(私も含めて)を馬鹿にした話はない。

これだけでも腹立たしいのに、おまけに、国民全体が注目し、全国
にTV中継されている緊迫した本会議。

神聖な国会の、この本会議場でこともあろうに、演壇からコップの
水を、野党席に向かってかけるとは、いったいどういうことだ。
国会史上もっとも下品な不祥事。

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私はもう怒りが収まらなかった。

 別に私に向かって水が飛んできたわけではなかった。
しかし、私は「国会と国民をバカにするな! もう我慢できない」
という思いで、演壇に同僚議員とともに駆けよった。

「演説を止めろ!」と叫んだ。当たり前のことだ。

演説しながら、コップの水を野党議員に向かってまいて、そのまま
何事もなかったように、演説を続けることができるなら、国会の権
威、政治家のモラルはいったいどうなるのか。

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 しかし、議長は与党寄りのため「続行!続行!」と言って、知ら
んふりして、演説を止めさせようとしない。

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野党議員が大挙して演壇の下に駆け寄り、大騒動になった。
怒号が飛び交う中、私も叫んだ。

「恥を知れ! 子供たちもテレビでコップで水をかける光景を見て
るんだぞ。恥かしくないのか!」

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 ご存知のように私はそもそも寝たきりや痴呆症のお年寄りの福祉
や障害者の福祉をよくしたいという一心で、国会議員になった。
人と争うのは大嫌いで、ケンカもほとんど出来ない性格。
野次も苦手。
しかし、国会議員が、自分の意見を、平気でひるがえす。
国会の演壇からコップで水をかける。

今回ばかりは怒りが爆発した。

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 このコップの水かけ問題で、国会は4時間20分中断。
その議員は、懲罰委員会にかけられることになる。

10時20分にストップした本会議が、再開したのは午前2時40分。
共産党の賛成演説。
それを聞いているときに、また、新聞の速報の記事が回ってきた。

「与党幹部が、コップの水事件に関して、野党の若手議員は餓鬼
より下、と発言した」との速報。

 確かに、野党席からは与党議員の演説に野次が飛んだ。
たとえば、「政治の一刻の空白も許されないので不信任案に反対!」
と与党議員が演説すると、
「森首相なら、まだ政治空白のほうがマシだ!」というような野次
が野党席から飛んだ。
「世論を気にしていちいち首相を変えられない!」と演説があれば、
「世論をバカにするな!」という野次が飛んだ。
逆に、与党席から野党議員の演説への野次も多かった。

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 まあ、「野次がうるさい」などという表現は思いつくが、
「野党の若手議員は、餓鬼より下」と言われると、本当に情けない。
もうちょっとマシな表現はないのだろうか。
こんな発言をして、政治家は国民から信頼されるのだろうか。

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 そして、不信任案の採決。私は賛成票を、当然投じた。

森首相が笑顔で投票すると、一斉にカメラのフラッシュがたかれた。
不信任案否決。
与党席から「ウォー」という歓声と拍手がまきおこる。
22日午前3時50分に本会議終了。

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 議場を出ると、菅さん、土井さん、田中真紀子さんなどがテレビ
カメラに取り囲まれている。

私は、一刻も早く、国会から離れたかった。
すぐに、表に出て、タクシーに飛び乗り、高輪宿舎に向かった。
もうこんな茶番劇は、いい加減にしてくれ。 

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 私は、老人福祉を専門としていて、苦しんでいる寝たきりや、
痴呆症のお年寄りのことが、いつも頭から離れない。

先週実習した特別養護老人ホームの、若い寮母さんたちが、夜中に
必死になっておむつ交換をしてまわっている姿が、目に浮かぶ。

私の地元・宇治市の日産の京都工場は大幅に縮小され、600人もの
人が職を探している。

精神病院に入院している方々、ホームレスの方々。
今の社会でいろんな事で苦しんでいる方々、懸命に生きておられる
方々の姿が目に浮かぶ。

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それに比べて、この国会はいったい何なんだ。本当に国民のことを
考えているのか。

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 コップの水騒動で4時間も空転するんなら、その4時間、真剣に
景気回復や、福祉充実のための議論をするべきだ。

そのほうがもっと社会はよくなる。

国会がしっかり機能すれば、日本の国はもっと暮らしやすくなる
はずなのに・・・・。

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 不機嫌でタクシーに乗って、
「宿舎に帰って手短にメールマガジンを打って寝るか」と思ってい
ると、ラジオから加藤さんの談話のニュースが聞こえてきた。

「国民になんとお詫びをしていいかわからない。筋の通らないこと
で・・・・・」

 長いむなしい一日が終わった。
                        やまのい和則 拝
 不信任採決ドラマ N0.2につづく。

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