306 「新潟湯けむり殺人事件」 by ジュラ and TOMO


[5120] いつもの居酒屋から 投稿者:ジュラ 投稿日:2005/03/04(Fri) 13:34
 暗闇でガサと殺意が蠢いた。
暗き空の一点から渦を巻くように白い雪が降りてくる。
重い雪は古いかやぶきの屋根にのしかかるように降り積もる
働き手を失った あの家は・・・
そこまで思って寝返りを打った。

雪は音もなく降り続いている。
メキッメキッ バリッ・・・取り付いた悪魔のような雪の
木の枝をへし折る音が 白い暗闇の奥から響いてきた。
殺意は 雪があっという間に谷を覆いつくすように 心を
闇に塗りこめていった。

「新潟湯けむり殺人事件」

「らっしゃーい!」
マットの威勢の良い声が 客を迎えた。
外は厳しい寒さだが一歩店の中に入るととたんにめがねが曇って見えなくなるほど 暖かい。
「わっ 何も見えへんで」
「らっしゃい。エラリーはん、ハリーはん。めがね そこの
ティシュでふいとくれやす」
「ハリーはん いつからめがねを・・?」とマットに聞かれ
ハリーでなくエラリーが答えた。
「こいつな 目なんか少しも悪うないんやで。でもなヨン様とか はようてるやないか。それでわざわざ 稚内までいってめがねこうてきたんや。」
「はぁ チャーミーはんの店でんな」
「エラリー ちゃうで、わいみたいなインテリは読書のしすぎでよう 目悪くするんや。」
「なにが読書や。美イグアナのグラビアしか見ないくせして

「まあまあ はよすわり」と
いつもの席から声をかけてきたのは haitamanさんやった。
隣にバジちゃんが座って雑誌を広げていた。
「Haitamanのおっちゃん 何食ってるんや」
Haitamanさんは 一人用の鍋をつつきながら 備前焼の徳利で熱燗をちびちびやっている。
「味噌風味の鱈鍋です。」とワサビがかわって答えた。
「これうまいで。鱈と豆腐にこくのある汁がしみて 体のしんからぽかぽかしよる。それにこの酒や。鍋には熱燗がええな」
と 猪口についでグビッとのんだ
「秋田の 天の戸 醇辛ですねん。この酒は野趣があるっていうんですか、凝縮感のある味わいが豊かでそぼくでんな。
こういう酒は 燗にすると香りがふくらんでうまみがますんですわ」
マットが説明を加えた。
「秋田ゆうたら神谷のにいちゃんか」とエラリーがきいた。
「へぇ、昨日きやはって置いていきよりました。
今日ももう少しで 見えるんやないですか。Haitamanさんと
この酒を飲むの楽しみにしてたみたいでした。」

「やぁ、バジちゃん何みてるん?」
「フフフ・・ハリー。美イグアナのグラビアじゃないわよ」
「なんや エラリーのつまらんせりふ聞いてたんか。
あんなんウソやで。なんでワイがグラビア見る必要あるん?
目の前にグラビアモデルも真っ青になるくらいの 誰かさんがおるのに。」
「もう、ハリーはいつも調子いいんやから・・」
「冷たいなぁ、君の可愛い唇から出たその言葉は まるでダイヤモンドダストのようだよ。冷たくて美しい・・・バジちゃん今日の君は そう雪の女王だ」

「あーハリー せっかく暖まったんやから雪持ち込むな」
とエラリーが言ったので皆爆笑した。

「うちね ルルブ 見とんねん」
そのとき暖簾がゆれた。

[5128] またも雪。 投稿者:TOMO 投稿日:2005/03/05(Sat) 14:11

 のれんを分けて入ってきたのは雪のかかった赤のダッフルコートを着たTOMOとうりゅりゅ、さりゃりゃ、そして、今回はチャーミーの家で「イグアナ友の会」をやった後ということでチャーミーも一緒である。
「らっしゃい!チャーミーはん、しばらくでんな」
「いやー、マットはん、その節はどうも。ハリーのボンもこないだはうちでメガネ買うてくれておおきに。あれからかけ具合は変わりないか?」
「ちゃこちゃんとうさん、バッチリでっせ」
「そうか、それは良かった。もし何かあったらいつでも調整するけん、持ってきてや」
「はい、おおきに」
「それにしても、皆さんすごい雪でんなあ。今、あったかい鱈鍋用意しますから食べてあったまっとくれやす」
 マットが言うとおり、稚内連は雪だらけである。ここ数日、稚内は大雪に見舞われていたのだ。
「やあ、おかんもメガネ真っ白や」
 うりゅりゅがTOMOのメガネを指差して笑った。
「あーもう、うるさいなあ」
と言いながら、TOMOはバッグの中からメガネケースを出し、その中のメガネふきでレンズをふいた。 

[5131] スキーとアフタースキー 投稿者:ジュラ 投稿日:2005/03/06(Sun) 15:26

「TOMOはん 稚内はそないに大雪なんか?」
とHaitamanさんが聞いた。
「ええ、それに今日はふぶいて寒くて寒くて ここへの横丁曲がるまではうりゅりゅもさりゃりゃも 毛布にくるんで急いで
抜けてきたんですよ。それをもう イグの街にはいったとたん
大きな顔するんだから」
と一寸顔をしかめて見た。
「おかん・・・うちは いつも感謝しとるよ。」
とさりゃりゃが もじもじ言った。
それを聞いたTOMOさんは 
「冗談よ、私もだけどここに来る人たちは みんなあんたらの世話をすることが生きがいなの」
「そうや!」とhaitamanさんがうなずいたとき
冬彦と奈々子 あゆが息を切らして飛び込んできた。

「はぁ、はぁ・・もうTOMOさん はぁ・・は、速いんだから」
「そうや、TOMOさんの姿見つけたから、うちら大きい声でよんだんやで」とあゆが言った。
「えっ ごめんもう寒くて早くここにつきたかったから・・」
「ええって、あのな冬彦はんたらな 赤いコートみたらあれはTOMOはんやっていうんや。レッドドラゴンやて。風のように
イグ街を走り抜けていくんやもん。赤いRX-8 みたいやって
うちら感心して追いかけてきたんや」
と奈々子も面白そうに 言った。

「冬彦君 進路は決まったんかいな」
と小上がりに腰掛けて笑っている冬彦にHaitamanさんが聞くと
冬彦も 言いたかったとばかりに口を開いた。
「はい、M大に合格しました。将来神谷さんの研究室に入るつもりです」
「おお それはおめでとう。神谷はんもよろこんでるやろ」
「はい、それで今日は祝杯やといわれたんですけど、僕まだ未成年だからっていったら 残念がってました。でも もうすぐ見えるみたいですよ」
「まだ未成年か、そりゃ神谷はんでなくても残念や。まあ
もう少しやな。」
「ブルーベリー酒ぐらいなら良いんじゃない」
とTOMOが言うとマットが
「ほなら、乾杯だけでも ジュースで割ったブルーベリー酒だしまひょ」
とこれも 冬彦の合格がうれしくてたまらないようなニコニコ顔で言った。
「じゃあ 冬彦さん 今はもう暇なの?」
と一緒にニコニコしていたバジルが聞いた。

「うん、もう後は卒業式まで暇なんだ。スキーかスノボでも行きたいなって思ってるんだけど・・・」
「この前 ジュラさんにメールしたらね・・・」
とTOMOが おかしそうに言った。
「ジュラさんも 若いときはスキー大好きで北海道のニセコなんかにも行ったみたいなの。だけど今はアフタースキーのほうが好きなんだって。どこそこのスキー場のチーズケーキがおいしいとか あそこのスパゲッティボンゴレはいい味してるとか いってたわ」

「さあ 鱈鍋できましたで」
ワサビが五徳に小鍋を置き アルコール燃料に火をつけた。

[5133] みそのにおいに誘われて… 投稿者:TOMO 投稿日:2005/03/07(Mon) 23:26

 その時、
「うわ〜、いいにおい!」
と言いながら、ジュラさんがイグサと一緒に入ってきた。
「あっ、ジュラさん、イグサ、ちょうどええところへ。今、鱈鍋の用意してたとこですのや」
と、マットがジュラさんとイグサに席を勧めた。
「今日は冬彦くんの大学合格祝いなんですよ」
とTOMOが説明した。
「あら、おめでとう!で、どこに行くの?」
とジュラさんが尋ねると、冬彦が照れくさそうに
「M大なんです。神谷さんの研究室に行きたいんです」
と答えたので、今度はジュラさんが
「じゃあ、あの時言ってたとおりになったのね!」
と言い、座がわっと沸いた。あゆが
「ねえ、あの時って?あの時って?」
と尋ねると、TOMOも黄金のイグアナ事件の時の関空での神谷の名言を思い出して、
「ほら、あれ!黄金のイグアナの時、神谷さんが関空で怪盗ヒョウモントカゲ相手に名言を吐いたの!」
と興奮気味に答え、冬彦も
「あの時の神谷さん、すっごくかっこよかったんだよ!それで僕、神谷さんの後輩になりたくてM大に決めたんだ!」
と同じく興奮気味だった。
「神谷はんというと…睦美はんの彼さんでっか」
 チャーミーが感心して言うと、エラリーが、
「だから、なまこの兄ちゃんはおかんの彼ちゃうて…」
と言う間もなく、黄金のイグアナ事件をきっかけにつきあい始めた神谷と睦美が一緒に入ってきた。
「キャー、本日の主役その2の登場やわ!」
 奈々子が言うと、神谷が
「何さー、その2って。今日の主役は冬彦くんだろ?」
と笑った。  

[5136] GON 投稿者:ジュラ 投稿日:2005/03/08(Tue) 16:52

「よっ、いただいてまんね」とHaitamanさんが神谷に向かって杯をあげた。
「あぁ 昨日の酒ですか。郷里の友人のオヤジさんが送ってくれたものなんです。」
ワサビが神谷の前にお通しと猪口とお燗した酒を置いた。
そして
「睦美はんは どうします?」と聞いた。
「えーと、ちょっと神谷さんのお酒 味見させて」
と言うので 睦美の前にも猪口が置かれ 神谷が注ごうとしたらにゅーっと出てきた猪口があった。
「悪いな、おかん ワイがなまこの兄ちゃんの隣に座って
さしつさされつするよって」
それを見ていた奈々子とあゆみがくちぐちに 
「わぁ エラリーいけすかない」
「根性わるいわ、エラリー」
と言った。

しかし睦美は笑いながら
「いいよ、私はTOMOさんやジュラさんと飲むから」と言うのをきいてハリーが
「愛は信じあうことなんや。妨害が入っても心は結ばれている。さながら2人はチュンサンとユジンのようやんか」
とエラリーを挑発した。

そのとき
「なあに 冬ソナの話してんの?」
と由衣さんとカレンちゃん そして今は由衣さんの夫である
克也が入ってきた。
「そやで、カレンちゃん。ワイとカレンちゃんはユジンとチュンサンの初恋のようだって皆がゆうんや」
コロッと態度を変えたエラリーに 皆が笑いながら
「調子ええわエラリー」と口々にいわれエラリーはむきになり グビっと酒をあおった。とたんに
「げぇっ こりゃ通の酒やな。味が濃い。」

Haitamanさんが
「まぁ、とりあえず乾杯したいとこだけど NOBUさんとことまさよしはんはどないしたかの」
イグサが
「GONは明日までの宿題してるんやないんか」
「なに?宿題あるの?あんたはさっきないっていってなかった」
「しもうた!」イグサは小さい舌をぺロっとだした。
「おとんは 今日は久しぶりやから仕事をきれいに片してくるゆうてましたから もうそろそろ来るころやと思います」
とワサビが言った。

「ところで 神谷はんのお友達というのは・・・」
「ええ、おやじさんは秋田の駐在所の警察官だったんですけど定年後 地域のミニコミ誌の編集をやり始めて時々情報を送ってくれるんですよ。その酒も通の酒ということで取り上げたらしくて。その息子っていうのが 私の高校の同級生で
新潟の娘さんと知り合って やっぱオヤジさん譲りなのかな新潟県警の警察官になってがんばってるみたいなんです。」

そんな時 「ちわーっ」という元気な声が響いた。
「わーGONちゃん いらっしゃい」さりゃりゃが目をみはった。それもそのはず。
イグサといっしょにいたずらなガキだと思ってたのもつかの間 ボーイッシュな中にも少女らしい華やかさをもったGON
がNOBUさんといっしょに入ってきた。
「よっイグサ、おまえ宿題おわったか」

[5138] イグサ、ピンチ 投稿者:TOMO 投稿日:2005/03/08(Tue) 21:56

 GONに言われて、イグサは
「ぶっ」
と口に入れていた鱈を吹き出しそうになった。実はイグサ、宿題をやっていなかったのである。
「イグサ、あんたやっぱり宿題あったんでしょ!いつも遊ぶ前に宿題をやってしまいなさい、って言ってるでしょ!?」
 ジュラさんが言うと、GONが
「何、おまえ宿題やってなかったの!?明日学校で見せて、って言ってもうち知らんで!」
とだめ押しした。
「あう〜」
と頭を抱え込んでしまったイグサは、
「まあ、宿題やらんで来てしまったなら帰ってやるしかないわな」
とHaitamanさんに言われて、たちまち元気になり、
「そうや!今から宿題取りに帰るわけにいかんし、帰ったらちゃんとやるけん、いいやろ?僕一人じゃ帰れないもん」
とジュラさんにすがりついた。
「そうねえ、今日はしょうがないけど、今度から遊ぶ前に宿題やるのよ!GONちゃんにも見せてもらっちゃだめよ」
「はあい」
 その時のれんが揺れ、まさよしさんとチビが入ってきた。

[5139] 青梗菜 投稿者:ジュラ 投稿日:2005/03/09(Wed) 17:34

「あれ、まさよしさん お久しぶりです!」
克也の言葉に皆がふりかえった。
まさよしさんは 少し照れながら
「どーも ご無沙汰しておりまして、皆様お元気で。
じつは秋から仕事が忙しかったり、パソコンが壊れたりしてしまいまして、なかなか顔を出せないでおりました。師匠様
十二指腸の方は直りましたでしょうか?
もう お酒をのんではるんですねぇ」
と丁寧な挨拶をした。
「まさよしさんは久しぶりでも わいらいつもワサビはんのうまい料理食べながらうわさしてましたよ」
とうりゅりりゅが お通しの「青梗菜とかまぼこのさっと煮」を口に入れた。
今日のお通しはワサビがこしらえたものである。

「そう このお通しなんて冷蔵庫のあり合わせの材料でできるみたいだけど 私がつくるのとやっぱなんか違うのよね」と ジュラ。
「おかんは作らへんやろ。ワイのごはんは青梗菜の葉っぱをちぎっただけやないか」
とイグサが言うと
「いいじゃない、おかんは茎食べてんのよ」とジュラも言い返した。
「そうでんな、このごろワサビは料理がわかってきましたな。なにも高級な食材を使えばなんでもおいしいってわけじゃないということでんがな」
と マットがほめたので ワサビはもちろんまさよしさんも
チビちゃんも うれしそうな顔で笑った。
「さあ、皆そろったところで 乾杯や。冬彦君大学合格や」
「えー、おめでとう冬彦くん」とまさよしさん。
「ありがとうございます」
マットとワサビが皆の好みの酒やジュースをついで回った。
「かんぱーい」「おめでとう、かんぱーい」

「あれ、バジちゃんどっかいくん?」とるるぶを見つけた
チビが聞いた。
「ううん まだ決めてへんのやけどおとんが休暇もらえることになったんよ。それでどこかいこか言われて」
「えーいいな 特別休暇ですか」とTOMOが聞いた。
「なに、Haitamanのおっちゃん リストラか窓際か暇なんか?左遷か」
ともうお銚子を1本開けたエラリーが 突っ込んだ。
「なにいってるのエラリー、失礼やない。ごめんなさい」と睦美があわててあやまった。
あゆもカレンちゃんもうなづいて
「そや、まったくよくそんだけ ぽんぽん不景気なこといえるわ」といった。
バジが むっとした顔で、でもちょと誇らしげに言った。
「違うで その反対や。おとんは長年の功績を認められて
特別休暇もらったんやで。そんでなはじめは タイのプーケットとかスリランカに行こう思ったんやけど 大津波がきたやろ。もう復興しとるゆうけど、おとんはお腹が弱いさかい
もし水がまだ悪かったら心配やし、去年入院もしたやろ。
だから 今回は国内にしよゆうことになったんや」

「ヒャホー、ねえHaitamanさん スキー場に行きましょうよー。」と冬彦が飛び跳ねて言った。
「そうねぇ、私もスキー大好き」
「違うやろ、アフタースキーやろ。おかんは山小屋でコーヒーとケーキでおしゃべりばかりしとるっておとんがいっとったで。」
「イグサ 今日はよく突っ込みいれますね。このごろ反抗期?」とジュラがあきれ顔で言った。

「それなら僕たちも 大学は試験休みだし」と神谷がいうと
睦美が
「TOMOさんは どう?土日いれて2〜3日休める?」と聞いた。

[5140] ちょっと遅めの冬休み 投稿者:TOMO 投稿日:2005/03/10(Thu) 09:50

「うん、私、まだ冬休み1日残してて…。土日込みなら大丈夫」
と、TOMOが答えた。
「それにしてもスキーなんて久々だわー。私はスノボは乗れないからカービングスキーでもやろうかな」
「僕たちも行きたいな。なあ、由衣」
と克也も話に乗っかってきた。
「そうね。今年は忙しくてまだ1回しか行ってないもの」
「スキー場ですか。私はまだ今シーズンは1度も行っておりません。仕事も一段落つきましたし、ぜひ行きたいです」
 由衣もまさよしさんも口々に言ったので、バジルが、
「じゃあ、みんなで行きまひょ」
と誘い、みんなで早速計画を練ることにした。

[5141] 奈々子のおかん 投稿者:ジュラ 投稿日:2005/03/11(Fri) 13:49

「ねぇねぇ そんで由衣さんたちはどこにスキーにいったの!」
とジュラが弾んだ声できいた。それに対する答えは
「正月休みに カナダへ」
「あっそ」
「なんやジュラのおばちゃんいきなり引いたな」とエラリーに言われ ジュラは頭をかいた。

「うちな、新潟行ってみたいんや」とカレンちゃんが言った。
「えっなぜ?」
「ほら 『国境の長いトンネルを抜けるとそこは雪国だった・・・』っていう小説あるやない。なんかロマンチックやなーって前から思うてたんよ」
「川端康成の雪国やね」とNOBUさん。
「よしっ じゃあ新潟で決まりや!」とエラリーは一人で勝手に決めた。
「ちょっと待ってよエラリー、長野の白馬なんかもええんやない。可愛いペンションに泊まって・・」とあゆみ。
「北海道のキロロなんかもかっこいいホテルあるんよ。おかんの読んでた雑誌に出てたわ。」とサリャリャ。
「山形の蔵王も豪快だって この前お客さんの置いてった週刊誌で見ました。」とワサビも加わった。

「ちょっ ちょーっと待って!」
とチビが制した。
「ええか、うちらイグアナやで。おとんやおかんがうちらを車かなんかで連れていくことはできるやろけど、こない大勢のイグアナ泊めてくれるとこなんて ないで。たとえ泊めてくれるとこあったとしても、寒くて外になんか出れないで。」
その言葉に風船のように膨らんではしゃいでいた気分がいっぺんにつぶれた。

「まあ、そやな。貸し別荘かなんかじゃないと無理やな」
とHaitamanさんも言った。
「温泉旅館でゆっくり雪見酒とはいきませんかねぇ」
とNOBUさんも首をひねった。
「以前の神谷はんみたいに 爬虫類が苦手な人もおりますやろから、ワイらも部屋の外にでられませんな」
とマットとチャーミーは腕組みした。
皆の気分が すっかり落ち込んでしまったとき
奈々子が言った。

「あのな 今おかんにメールしてたんや。返事も来た。」
「なーなーこー!、だからこんな時になんなんや」
とエラリーが不機嫌な声で言った。
「あのな うちのおかん いるやろ・・・」
「あーあの がめついおばはん・・水晶とガラスを見分けてやったのに野菜しかくれんかった・・」
以前エラリーは 奈々子のおかんに頼まれて水晶の玉とガラスの玉を見分けたことがあった。

「そーや、がめつくて ずーずーしいおばはんやけどな おかんは顔が広いねん」
奈々子はエラリーをにらみながら言った。奈々子のおかんは東京 青山でブティックを経営しており顧客には有名人も多くおしゃべりで陽気な性格で多方面に首を突っ込んでいるので 顔も広い。
「それで・・・」とhaitamanさんが促した。
「うちのおかんの店にな、よく来るお客さんで渋谷のバーの結構派手なマダムが通ってる東京でも有名なエアロビクス教室でいっしょに汗を流して体重減らす努力している友達の若いときはちょっと田村亮に似てたっていうご主人の郷里のいとこの嫁ぎ先が・・・」
「ちょっと待て奈々子・・」エラリーがまた口を挟んだ。
「おまえなー 頭は単純なやつやけど話はえろうややこしいな」
「エラリーにいちゃん うちはわかったで」とGONが言った。
「奈々子ねえちゃんのおかんの ごひいきさんが通ってる教室のお友達のご主人のいとこさんやろ・・」
「そや、GONちゃん誰かさんとちごうて 頭すっきりしてはるなぁ」
皆爆笑した。
「その人がどうしたの?」あゆみが笑いながら聞いた。
「その嫁ぎ先ゆうのが 新潟で旅館やってるんや」
「えーっ!!」今度は皆いっせいに 驚愕した。

[5143] 奈々子のおかんの(中略)嫁ぎ先 投稿者:TOMO 投稿日:2005/03/12(Sat) 23:43

「そいで、やな」
 奈々子が続けた。
「今度の週末、旅館をうちらに貸し切りにしてくれるっちゅうねん」
「うちらって、イグアナもよろしいんでっか?」
 マットが聞くと、
「そこ、うちらが行く前から人間以外もOKらしいのよー」
と、奈々子が答える。
「でも、珍しいわねえ、動物可の旅館なんて…。ペンションだったらよく聞くけど」
「そうですよね。それも、犬とか猫ばっか!」
 ジュラさんが言うのに対して、TOMOがつまらなさそうに言った。
「でも、別にええやないか、そこはイグアナええんやろ。なら、そこに決定や」
 エラリーが特に何も気にしていないような口調で一人で決め、また酒を傾けた。 

[5145] おばはんイグアナ 投稿者:ジュラ 投稿日:2005/03/14(Mon) 15:41

「でも 奈々子はんのおかんさんずいぶん早く連絡くれましたね。その ずいぶん関係がややこしいから」
とNOBUさんが聞いた。
「そやから、うちのおかんと その旅館のおかみはもう友達なんや。そのおかみはんがイグアナ飼ってるんよ。それでおかんとも話があったわけ」
「なんや それならそうと ただのおかんの友達でええんやないか」とうりゅりゅが 一生懸命関係を考えて損したというような感じで言った。
「でもな やっぱり礼儀やと思って。実際そのルートで知り合ったんやし・・・」

「えぇ! イグアナいるの?」と睦美が聞いた。
「そや、でもおばはんのイグアナさん。太っててお喋り。」
とどういうわけか ジュラを一瞥した。でもすぐに続けた。
「うちとおかん、一度その旅館に行ったことあるんよ。そしたらおかんとそのおかみはん 商売そっちのけでうちらの話に没頭して。そのときおかん haitamanのおっちゃんの掲示板すすめてたから、きっと見とったんやわ。おかんにさっきメールしたら、話がえろうスムースにすすんだんやで。」

「まあそんなこともあるのね。でもイグアナ好きの方の旅館でよかったじゃない。それどこにあるの?」と睦美が聞いた。
「うち詳しいことわからんけど、なんか新潟県小千谷市とか
魚沼市の辺りらしいわ。向こうもな地震の影響でお客が減って困ってるところやったんやて。」
「ななこちゃん君はなんて聡明で美しいイグアナなんだ。
ギリシア神話のトロイ戦争の発端となったりんごをもらうのは きっと君だよ」
とハリーが言った。
「ねえ なんでりんごもらうの。僕メロンのほうがええな」
「うちは ブルーベリーとかイチジクとかすっきやねん」
「ねえ、ハリーにいちゃん バナナはないの?」
とイグサとGONが口々に言う。
「君たち、ギリシア神話は八百屋ちゃうで。そんな果物並べてられるかい」
「じゃあ ハリーにいちゃんウソ八百お世辞三百ならべてたんか・・・ケケケ・・・」
「イグサ!」
「まあまあハリー、それじゃルートを検討するとするか」
とHaitamanさんが言った

[5151] ルート検討 投稿者:TOMO 投稿日:2005/03/15(Tue) 23:11

「ほなら、新潟まで横丁通っていけばええやないか」
 エラリーがなんてこともないように言った。
「でも、それじゃあつまんないやないの」
 あゆみが言うと、
「そうや、うち、トンネル抜けて雪国見たいわ」
と、カレンも言った。
 するとエラリーはとたんに意見を変えた。
「そうやな、カレンちゃんが言うならそうするか。でも、みんなで行くなら大きい車が必要やな」
「でも、どなたか大きい車をお持ちの方がおりますでしょうか」
とまさよしさん。
「いないんじゃないかな。やっぱりここはお金出し合ってレンタカー借りましょう。大型免許持ってる人がいたらマイクロバスとか借りれるんだけどね」
 NOBUさんが言った。
「それなら、ステーションワゴンとかっていうのを借りたらいかがでっか」
 チャーミーが言ったので、皆、チャーミーの方を向いた。
「ちゃこちゃん、ステーションワゴン知ってるの?」
 TOMOがびっくりして聞くと、
「ええ、うちにありますさかい」
と軽く答えた。
「でも、それ借りるわけにいかないしな」
「確かにわいの一存では…」
「でも、車さえ借りてしまえば、運転手は何人もいるから…」
と、TOMOが運転要員を数え始めた。
「まず私でしょー、」
 すると、冬彦が、
「TOMOさんって、スポーツカーしか運転できないんじゃなかったの?」
と尋ねた。
「いや、ジムニーから2トントラックまでだいたい乗れるよ。あと、まさよしさんとNOBUさんも大丈夫ですよね?」
「あ、はい」
「うん、大丈夫だよ」
 すると、克也と神谷も
「僕も」
「僕も」
と手を挙げた。
「それじゃあ、運転要員はそれで決まりやな。で、集合場所もここでええやろ。あとは、ここからどこの横丁に抜けるかやな」
 エラリーはそう言うと、今度は出発地の検討にかかった。

[5152] 二都物語 投稿者:ジュラ 投稿日:2005/03/16(Wed) 10:29

「やっぱ 東京でしょう。お江戸日本橋七つ立ちというぐらいですから。関越自動車道を通れば4〜5時間で新潟につけますよ。」とジュラが言った。
「いやー 京都発がいいんじゃないでしょうか。米原から北陸自動車道を長岡まで。冬の日本海を見ながら旅情にひたるのにはぴったりですよ。」とNOBUさんも言った。
「東京から群馬の月夜野インターを過ぎると雪が見え始めてめて トンネルをぬけると越後湯沢につくでしょ。そこが雪国の舞台なんだから・・・」と睦美も珍しく主張した。
「東京からやと 首都高ぬけるのに難儀するんやないですか
北陸道は 車の量少ないですし、何しろ富山あたりにくると
雪の立山連峰が美しい。師匠様も京都発がよいのでは」
よまさよしさんも言った。
みなそれぞれの立場で あちっだこっちだ 言ってたが
最後にHaitamanさんが発言した。

「よっしゃ、皆の意見はよおわかった。まあ いちど奈々子のおかんに会わなくちゃ 場所とかわからんさかい 東京出発はせなあかん。が仕事の都合で京都がええのも確かやから
ここは2手に分かれよう。むこうで落ち合うのも旅の一興や。多分東京組みが向こうに早く着くやろから 携帯で正確な場所を伝えてくれや。」
「そうやな、Haitamanのおっちゃんも年の功や。たまには
ええこといいよる。」
「なんやエラリー たまにははよけいや。」
「それじゃ 皆どっちがつごうがええか 決めよ!」
とカレンが言って それぞれ都合が良い出発地を決めた。

東京組
神谷、睦美、TOMO、ジュラ、冬彦
エラリー、ハリー、うりゅりゅ、さりゃりゃ、イグサ
カレン、奈々子、

京都組
まさよし、NOMU、由衣、克彦、Haitaman、
マット、チビ、ワサビ、バジル、あゆみ、GON、チャーミー

「由衣さんたち 京都組なんですか」と神谷がたずねた。
「ええ、私たちせっかくの休みだから 出発前に京都をちょっと観光したいと思って。それよりもカレンお願いします。」
「チャーミーは 京都でいいの」とTOMOさん。
「はい、わいマットはんといろいろ話もしたいので」

「ねえおとん、うちイグサといっしょでもええ?」
「うーん、おとんはさびしいで・・・でもええよ。GONの好きにして」
「おとん、おおきに。そやかてすぐ向こうでいっしょになれるやからな」
というわけで GONちゃんは東京組みになった。

[5153] 二都物語・東京編 投稿者:TOMO 投稿日:2005/03/17(Thu) 14:29

 金曜日の朝、居酒屋マトリックスの前にいつものメンバーが揃った。
 そして、東京組と京都組に分かれて新潟に向かうことになる。

「GON、それじゃまた後でな」
「うん、おとん。それじゃあうちら先行っとるね」
「それじゃ、パパ、ママ、京都観光楽しんできてね」
「ありがとう。カレンも雪国の舞台を楽しんできてね」
 NOBUさんとGON、由衣と克也、カレン、と人とイグで別々の組に入る面々はしばしの別れを惜しんだ。

 そして、東京への横丁を抜けると、そこは日本橋だった。
 

[5154] 二都物語・東京編2 投稿者:TOMO 投稿日:2005/03/17(Thu) 22:54

 日本橋でレンタカーを借りた東京組は、ひとまず青山の奈々子のおかんのところに旅館への行き方を聞きに行った。ちなみに借りたのはミニバンのMPVである。ちゃこちゃんはステーションワゴンを借りたらどうか、と言っていたが、どうやら彼はミニバンと間違えていたようである。
 手に手に、を通り越して、肩やら頭やらにイグアナを乗せた面々の登場に、ブティックの客や従業員は最初面食らっていたが、普段こういう店ではあまり服を買わないジュラさんが、ちょっと緊張気味に
「あのー、奈々子ちゃんのおかん…いや、お母様、いや、店長いらしゃいますか?」
と言うと、従業員の一人が、
「あ、はい。ちょっとお待ちください」
と、奈々子のおかんを呼んできてくれた。
「あらぁー、皆さん、いつもうちの奈々ちゃんがお世話になっています。これから出発するのね」
と愛想良く現れた奈々子のおかんに、
「いいえ、とんでもないです。こちらこそ奈々子さんにはいつもお世話になりまして…。ところで、今日は新潟の例の旅館への道をお聞きしたいのですが」
と神谷が返事をすると、
「そうですの。おかみさんと卯月ちゃんによろしくお伝えくださいね」
と、道を教えてくれたので、人もイグもみんなで真剣に聞いた。特にTOMOは長距離運転は全く苦にしないが、かなりの方向音痴なので、うりゅりゅにも、
『おかん、何でこんなのが走り屋やってるんや、ってぐらいの方向音痴やからな。しっかり聞いてや』
と釘を刺されて、冬彦に
「えーっ、TOMOさん方向音痴だったのー!?でもあの時問題なく走れてたじゃない」
と言われていたが、
「だってあの時はまさよしさんいたし、後追いだったし、GT−R見失ってからはヘリで誘導してもらってし…」
と苦笑いした。
 ちなみに卯月とは、旅館にいる奈々子が言うところのおばはんのイグアナさんである。

 説明を聞き終わり、奈々子のおかんの店を出ると、皆それぞれ車に乗り込み、TOMOは愛用のドライビンググローブをはめ、まずは首都高の入り口を目指した。

[5156] 虫の知らせメール大容量感知システム 投稿者:ジュラ 投稿日:2005/03/18(Fri) 19:00

「やだなあ、首都高はこれだから・・・」
TOMOさんが本当にいやそうに つぶやいた。
「私のつくばもそうだけど北海道は 距離÷時速=時間の法則が当てはまるでしょ 東京はこんなもんなんですよ」
とジュラもあきらめたような口調で言った。
代々木ジャンクションから首都高4号を三宅坂方面へ そこから5号池袋線を外環の美女木へ抜けるルートは首都高でも慢性的に渋滞している区間である。

そんなTOMOさんの苦労はそっちのけで チビイグのイグサとGONは窓の外の東京の風景に歓声を上げている
「でっけービルやなー。なんやおかん」
「ホテルニューオータニだね。」
「あっ 池や。すげー 古い建物なに?」とGON。
「皇居のお堀、千鳥が淵と赤レンガの明治風の建物は近衛師団司令部、今は何かに改装されてんのかな。おかんが小さいころ お化け屋敷って言って 忍び込んで遊んだけど。」
「えー ジュラさんちょっと恐くなかった?」と睦美が聞いた。
「近衛兵の亡霊がでるってうわさもあったけど、学校の教室みたいな部屋が並んでたよ。」
「みてみて あっちにも高いビルだー」
「あれは池袋のサンシャイン60だね。あのビルの最上階は
水族館になっているんだよ。」
と神谷も子イグたちの尽きない興味に付き合ってくれる。

「神谷はんもえろう変わったな。」とカレンがニコニコしながら言った。
「おかん、腹へってきた。青梗菜かなんかないか」
とうりゅりゅが運転中のTOMOさんの肩に上りそうになって言った。
「おにいちゃんたら」とさりゃりゃがうりゅりゅの尻尾を蹴飛ばした。
「うりゅりゅ、こっち来い。小松菜でいいかい」
「なんでもええがな」
「ありがとう 冬彦くん」
「睦ちゃん、チョコ食べる?」とジュラはバッグから抹茶ポッキーを出した。
「これ好きなんだ」抹茶味のチョコレートはジュラの好物である。
「おかんはもう食べるんか。出発したばっかりやん」
「それじゃ 1本いただきます。」
「ジュラさん僕にも」
「はい、冬彦くん」

「ねえ、カレンちゃん。今ふと不思議に思ったんだけど 人間とイグアナの会話が こんなにスムースなのはさっき カレンちゃんがくれた このシールみたいのと関係あるの」
と神谷が聞いた。
「そうだね。うりゅりゅが おなかすいたなんて普通に思ってたけど、ここイグ街じゃないしなんでわかるんだろう」
とTOMOさんも首をひねった。

カレンは「ねー」と奈々子と笑みを交わし話始めた。
「みんなに耳の後ろにシールではってもらったのあるでしょ」
東京に出る前にマトリックスでカレンがちょうど ピップエレキバンのような黒い小さな玉がついたシールのようなものをわたし、それぞれの耳の後ろに貼りつけるように言ったのだ。
「それね 虫の知らせメールの大容量感知システムなんよ。
普通の人間社会じゃ私たちの会話って 虫の知らせメールを使ったって 遠くでぼんやり聞こえるような感じでしょ。でもこれをつけるとはっきり聞き取れて イグ街と同じように会話できるんよ。」
「そうや」と奈々子も言った。
「うちらは人間の言葉わかるけど、うちらの言葉はわからんでしょ。でもそれつけると聞こえるようになるんよ」

「へーー便利なんだ。」と冬彦が心底感心したように言った。
「だけどね・・・」とカレンが続けた。
「人間もね、100万年前ぐらいまでは自然の誰とも話しができたんやて。」
「ああ、まだ猿人とか言ってたころだね」と神谷が相槌を打った。
「そや、でも人間が進化するうちに虫の知らせメールもつかえなくなってきたんやて。そのうちに人間は人間以外と話せなくなってきたんや」
「ワイもその話きいたことあるで」とエラリーが身を乗り出した。
「人間もその遺伝子まだ伝えてるんやけど、それをON,にする遺伝子がつかえんようになってまったって」
「時々、ごくたまに その遺伝子がさびついとらん人間も生まれるようやって グランマの寝物語に聞いたことがあったで」と
ハリーも言った。
「面白いなー。でもショック。自然の動植物と話す能力を人間はさび付かせてしまったのね」

「でね、みんなはマトリックスでうちらと話すうちに遺伝子が働きはじめたんやけど、まだまだ足りんから増幅装置つけて話が通じるようにしたの」
「じゃあ、ずっとこれつけてたらイグサと会話できるんですか」
「ううん 残念ながらこれ レンタルなんよ。」とカレンはすまなそうに言った。
「3日間だけ借りたの。すごく高いんよ。」
「ええぇ、いくらぐらい?」冬彦が聞いた。
「今後3ヶ月以内に 環境にやさしいことしてかえすんよ。
それぞれに請求書が来るから払ってくれはる?」
「例えばどんなの?」と睦美。
「一番きついので 富士山のごみ拾い登山とか、海の重油の回収のボランティアに行けとかあったんやて」

[5158] 旅の始まり 投稿者:ジュラ 投稿日:2005/03/22(Tue) 17:15

「そのくらいでエラリーと話ができるんだったら 富士山でもエベレストでも登るわ」と睦美が言ったが、皆同じ思いらしくうなづいたり 相槌打ったりした。
そのとき 神谷の携帯がなった。

「おう そっちはどんな具合になってるかの?」
「あっHaitamanさんから」
携帯の向こうから にぎやかな声がもれ聞こえてくる。
「こっちは首都高の渋滞の中でまだ 関越に乗ってません」
「そうかい。こっちはもう米原から北陸道のったで。さっき
賤ヶ岳SA過ぎたとこや。まあでもこっちは長岡まで400kmはあるよって 休憩いれてまだ6時間はかかるな。みな張りきっとるで。今運転は まさよしはんや。ああ、着実な運転やな。本人はTOMOさんみたいにはいきませんとかいっとるが けっこうとばしとるで。」
「GON元気か」携帯がNOBUさんに渡った。

「GONちゃんおとんから電話、ちょっと待っててNOBUさん」
と神谷が携帯をGONちゃんに渡そうとして 
「あっとNOBUさん 携帯はGONちゃんには大きすぎますよ。
シールつけてますよね。それじゃGONちゃんここでしゃべって」と神谷がGONを抱き GONの口を携帯に近づけた。

「おとん、東京はでかいビルが いっぱいあるで。城もあるよ。うん姫路城みたいな石垣があった。でも姫路城のほうが
立派や。今度イグサを姫路城見せてやる約束したけどええか。そかおおきに。うん、じゃあカレンねえちゃんにかわるから・・・はい」と今度はカレンと由衣さんが話し始めた。

そのうち車は やっと首都高を抜け大泉JCTから関越に入り
車の流れもスムースになった。
ジュラはイグサとGONを胸に抱きコートを掛け 口を半分開いてもう居眠りしている。
「GON、おかんの胸ふかふかで気持ちええやろ」
「うん、うんあったかくて布団みたいで寝心地ええなー」
「これが皮下脂肪ゆうもんやで。」
「へー皮下脂肪ってええモンやなー」
「ムニャ、ムニャ 皮下脂肪、皮下脂肪ってだれ・・・・」
とジュラが寝ぼけて言ってまた眠ってしまい それを聞いてた周りは 声を殺して笑い転げた。

「TOMOさん少し休憩とって交代しよう。首都高でつかれたでしょ。」
と神谷が言った。
関越道に入り30kmぐらいの高坂SAに車は入った。

[5164] イグアナ教布教 投稿者:ジュラ 投稿日:2005/03/24(Thu) 21:15

「神谷さん 私別に疲れてないけど」とTOMOさんは快活に言ったが 神谷は
「いや、TOMOさんにはちょっと休んでもらって雪道の運転お願いしたいんだよ。僕も秋田だからできるけど TOMOさんのほうがみんな安心できる感じがするから・・・」と笑った。
高坂SAは高台にありレストランからの眺めがいい。
もちろん長居はできないから皆トイレなどの用を済ませて車に戻った。

「ねえ、みんなびっくりしてたね」
冬彦が皆に笑いかけた。皆休憩の間 外に出たいというイグアナを肩に乗せて 体を伸ばしていた。
すると周りの人はびっくりして 恐がってそばによらない人もいたが、おっかなびっくり近寄ってきて
「噛み付きませんか?」
「なに食べてるんですか?」と聞いてきたりする。

睦美もTOMOさんもジュラも喜んで説明しているのだが、
「ええ、噛み付きませんよ。おとなしいんです。」というと
ハリーがイグアナ語で
『お嬢さん、僕が君のほっぺにハート型の噛み傷つけてあげようか』とか
「草食性ですから、小松菜とかモロヘイヤなんか食べてるんですよ」といっても エラリーが
『ここんとこマットの居酒屋で鍋物やでー』などと茶化すので 
「何言ってんの、エラリー・・・」とあわてて言ってる睦美のほうを人が不思議そうに見ていた。
「そっかー 私らしか聞こえないんだ」とTOMOさんもおかしそうに笑った。

車は運転手が神谷に変わって順調に滑り出した。
「出口は小出でいいのかな」
「いいみたい」と地図をみている睦美が言った。
「神谷さんの運転で助手席が睦美ちゃんか。はまってますねー」などと後ろの席からジュラがからかった。
しかしエラリーは
「おかん、地図が読めない女ゆう本があったやろ。ワイが手つどうてやる」と助手席にわりこもうとしてひと悶着を起こしたりしていた。

上信越自動車道に通じる藤岡JCTを過ぎ 渋川伊香保あたりから土手に雪がうっすらと見えるようになってきた。

[5170] 不通 投稿者:ジュラ 投稿日:2005/03/28(Mon) 18:22

一方 北陸道を行く面々はかなりのスピードで 新潟へ向かっていた。
今は保阪克也がハンドルを握っている。
そしてさっきから興奮のしっぱなしである。
なぜなら関東育ちの彼にとって関西の地名は歴史読本などで
見かけるおなじみの名前が、次々現れるからうれしくてしかたがない。
「長浜、あっ秀吉の居城があったところだ。おー賤ヶ岳だ。
ここは柴田勝家が秀吉と戦った古戦場だ。ほら七本やりで有名な。もう越前にはいったんだなー。朝倉氏は信長に滅ぼされたけど結構地元、一乗谷では名君だったんだってさ。」

北海道から来ているチャーミーも窓の外を見ていった。
「この辺に鯖江市ゆうのあらしまへんか?」
「さっき過ぎたみたい。なぜ?」
と由衣がきくと
「そこは 日本のめがねフレームの大部分を作ってるらしいですわ。うちの店もそこのメーカーから仕入れするんですわ。」と言うとあゆみが
「へーこんなとこで 作ってんだ。」と感心していた。

「安宅だ。ねえ、由衣、勧進帳って知ってるだろ。弁慶と義経が奥州に逃げるとき・・・。もうすぐ金沢だね。加賀百万石の城下町・・」
ととどまるところを知らない。
「克也さんは 戦国時代が好きなんやね」とNOBUさんが言った。
「そうですね。あと幕末も。なんとなく知恵と力と策略で世の中を切り開いていく感じが好きなんですよ。」
「そういうのって会社経営に役に立つのでしょうか」とまさよしさんがたずねると 克也のトーンが下がった。
「いやー 難しいです」

そんな時携帯がなった。
「そちらどうですか。」
「おう 冬彦か。そっちは順調か?」
とHaitamanさんが答えた。
「えーと長岡JCTから関越に入って 小出ICで降りてください。そこから湯之谷温泉までいって 少し山に入ったところの一軒宿だそうです。湯之谷温泉から案内が出てます。
名前は 湯湧谷温泉 笹雪荘です。きっとこっちのほうが早いと思います。今神谷さんの運転です。」
「ほうTOMOさんは」
「TOMOさんは雪道運転のスペシャリストだから、今休んでもらってます。あっトンネルだ ガーーガーーー」
「ちょっと受信状態悪いかな。」
「あーーーー」
「どうした!」
「雪ダーーー」
「すごーい。雪国!きれー、感激やわ」
「よう感激できるわ。寒いで雪は。北海道は外は冷凍庫やで」
とカレンや奈々子、うりゅりゅの声も聞こえてくる。
「もしもし、水上からトンネルが多くて でもそれ抜けたら
本当に雪国なんですよ!」
冬彦の声も興奮している。
「塩沢石内SAで休憩取るみたい。あと小出まで40kmだそうです。それじゃまた連絡します」

そのSAで とんでもない情報が待ち受けていた。

・・・トラックとトレーラーのスリップ事故のためトレーラーが横転し 塩沢石打ICと六日町ICの間が現在不通となっております・・・

[5173] 最悪?コンビ発進 投稿者:ジュラ 投稿日:2005/03/29(Tue) 18:14

「あーん、あともうちょっとで 着くのに」とTOMOさんが悔しそうに言った。
塩沢石打SAで下り線通行止めの掲示を見て多くの人が 困惑した顔で予定を話し合っていた。
そんな中でジュラが事故の様子をどこからか仕入れてきた。
「トラックにブタが積まれていたんですって。それにトレーラーが接触してガードレールにぶつかって横転して タンクの中の食用油が路上にぶちまかれたらしい。火事の危険はあるしブタは逃げるし油で滑って大変らしいよ。パン粉があればそこでとんかつだね。ふふふ・・・運転手は無事らしいけど」
「ジュラさん 笑ってないで ・・・復旧はいつごろとか言ってませんでしたか」と言ってる睦美も笑いをこらえている。
「油だから当分だめなんじゃない。」
「こうなったら塩沢石打ICで降りて下を行くしかないか」
と神谷が言うとTOMOさんが地図を見て
「簡単じゃん。国道走ればいいんじゃない。みんな石打で降りるから国道混んでれば わき道もあるみたいだし」
それを聞いてたさりゃりゃが
「おかん、混んでても国道いったほうがええんとちゃう?」
と心配そうに言った。
「まあ、今から心配しててもしょうがない。TOMOさん運転お願いします。」
「それじゃあ 私がナビやるわ」とジュラが申し出た。
「よかった。僕今日 朝早かったから眠くなってきたんですよ。後ろで少し休ませてもらいます。」と神谷が言い、
早速席の交換がなされた。
しかしこの決定が とんでもない結果をもたらすことになろうとは だれも想像していなかった。

「よう、神谷のにいちゃん、きょうはゲロゲロのなまこにはならへんのか」
「あれは船だからだよ。運転はTOMOさんだから安心さ。エラリー、ハリーは退屈してないか?」
「退屈してへんで。早く旅館について 一風呂あびたいで」
とハリーが おじさんぽい感想を述べた。

車は国道291に降りたが 石打で下ろされた車で渋滞していた。
「このまま まっすぐ行くと小出ICに行くけど 結局ここらあたりから山道いけば 目的地まで近道になるみたい」
とジュラが地図を見ながら言った。
「ほんとだ。あの道曲がればいいんじゃないかな。」
とTOMOさんが 標識を指差した。
そこには 湯之谷温泉と書いてあった。
「もう渋滞はこりごり」
TOMOさんは 首都高の渋滞でうんざりなのだ。
「そうだよね。やっぱり車は順調に動かなくちゃ ドライブの意味ないよ」とジュラも言った。
最悪?のコンビである。
この2人は 渋滞という言葉に縁遠い地域に暮らしているため 渋滞に免疫がないのであった。また山越えなどなんとも思わない地域にくらしているのもいっしょであった。

[5174] 村、午後3時 投稿者:ジュラ 投稿日:2005/03/29(Tue) 19:03

雪が舞い始めた。
ある山奥のひっそりかたまった集落の屋根に雪が降り積もる。
しかし 今日は村全体がにぎやかだった。
小正月の行事である。ここ雪の越後は正月より小正月のほうが重要で さまざまな行事が行われる。
その村では 雪像とかまくらが作られライトアップの準備ができていた。観光客が来るわけではないが 近隣の村から親戚が集まり小正月を祝う。

その村に長い塀と大きな門構えの一軒の家があった。
小さな村には不釣合いなほど立派な古い日本家屋であった。

「今夜から雪像のライトアップするの」
美しい横顔の女が 軒先で竹を縛っている男に聞いた。
「はい若奥様、今年は去年の地震で皆の心が沈んでるから
盛大にやるんだと青年団がいっとりました」
「その竹はドンド焼きの竹ね」
「そうです。明日 村の広場で去年の穢れやら飾りやらを焼いて竹で火をたたき 今年の豊作を祈るんでさぁ。あぁ ちらちら雪さ降ってきただが、すぐやむだで。今夜はしばれます。」と男は 首をちぢめた。
「星がきれいな夜になりそうね。今夜は親戚の方たちも
とまるし、にぎやかになりそう。」
と その女が空を眺めたとき
「若奥さーん」と呼ぶ声がして 手伝いの女子衆が顔を出した。
「旦那様がお呼びでがんす。」
「はい わかりました」女は奥へ去っていった。
男はその後姿を まぶしそうな目で追った。

[5181] いざ、山越え 投稿者:TOMO 投稿日:2005/04/02(Sat) 22:42

 山越えなどなんとも思わないジュラさんとTOMOのコンビによって、MPVは鼻先を山に向けた。
 「夜間の除雪はしていません」という電光掲示板を尻目に、ぐいぐい山道を登っていく。
「ジュラさん、湯之谷温泉に行くわき道はこっちでいいんですよね?」
 TOMOが尋ねると、地図を広げたジュラさんも、
「うん、こっちで大丈夫みたい」
と答え、二人はぴったりと息を合わせて走っている。
 が、しばらく走っていると睦美が
「この道大丈夫?だんだん幅が狭くなってるみたいだけど?」
と言い出した。

[5184] 迷走 投稿者:ジュラ 投稿日:2005/04/04(Mon) 18:52

睦美の指摘どうり両側に雪がせまり道幅は かなり狭くなってきていた。
「本当だ、でもへんだなー。地図ではこの道なんだけど・・」とジュラが首をかしげるとTOMOさんが
「ジュラさん この先通行止めかな、あっ、あそこになんか 看板みたいのがある」と指差した。
雪をけたてて車を止め ジュラとTOMOさんが降りてみると 半分雪に埋まった看板を見つけた。その看板には
[この道は新潟中越地震で道路の一部が損壊し 不通になっていますので 迂回してください ] と書いてあり迂回路が出ていた。
「迂回だって・・ふんふん 引き返してこの道か・・・
あっ、きっと地図のこの道だよ」
と2人で話し合いなんとなく納得したように車に引き返した。
「分かりました?」と睦美が心配そうに聞く。
「なんなら神谷さんと冬彦君 起こしましょうか」
神谷と冬彦は 疲れてたのか二人でもたれかかるように眠っている。
「大丈夫、大丈夫、分かったから」
とジュラが気楽に言った。
TOMOさんは雪道だというのに 豪快に車をバックさせ路肩の広いところに出ると ターンをして戻り始めた。
そのうち睦美を交え3人で 北海道のアザラシの話とかジュラのワイドさんの話とかで夢中になっている。
「おかん、地図みてんのか?」イグサも心配そうである
「あら?」
外を見て、いたカレンちゃんが不思議そうに言った。
「なんか さっき湯の谷温泉っていう行き先があったような気がするんやけど・・・」

「ジュラさん ここ曲がるんじゃない」
「そうだね、ここ ここ、この道言って次のT字を左折・・」
しかし 行けどもいけどもT字路はこない。
「変じゃない」またも睦美は心配げに言った。
「じゃあ、入る道間違えたかな。またもどらなくちゃ」
とTOMOさんがこともなげにいうとジュラが
「あん、全部戻らなくても 途中に何とか村とか言う標識でてたじゃない、きっとそこに行けば 広い道に出ると思うよ
だって村というくらいだから 温泉に抜けるルートあるよ。」
「そうだね。やっぱ山道は少しくらい迷走したほうが面白いよね」
「うん 感で行けば 大丈夫」

「ジュラのおばちゃん恐いこと言わんといてや」
「なんや まよってんのんか?」
「おかん 道わかんないんとちゃうか?」
「大丈夫 ちょっと大幅に迂回してるだけ。」
「それって迷ってるっていうんやない」
「そや、おかんの感で 北海道でもずいぶん迷走して悩まされたで」

カレンに起こされたエラリー、ハリー、うりゅりゅが 後ろのシートから身を乗り出して言った。
ちょっとした騒ぎに 神谷と冬彦も起きてきた。
「あれ、まだ着かないの?」
「ここどこ?」

「さあ?」
「さあっって ジュラさん わかんないんですかぁ・・」
神谷はいっぺんで目が覚めたようだ。
「まあ そんなに間違ってないと思うよ。あとしばらくすると集落があるから。ほら 下り坂になった。このまま行けば
きっと長岡に出るね。まあ道路走ってるんだから どこかに着くよ。きっと」とジュラが自信たっぷりにいう。
けれどイグサがジュラの肩越しに後ろに向かっていった。

「おかんは 超お気楽人間やで、茨城で道にまよっても
日本は海に囲まれてるから 道路走ってたら外国に行くことない、ここは日本のどこかやって言ってる人間やで」
しかし冬彦はもお気楽人間なのかTOMOに向かって
「ねえ、TOMOさん 雪道運転恐くない?この車タイヤはなにはいてんだろ。チェーンつけてないでしょ」と
道が分からないことよりTOMOさんが 結構細い雪の山道を爆走していくのに興味をもったように身を乗り出した。
神谷が こんな集団といっしょだったとはと天を仰いだ。

時刻は午後4時、暗くなりかけてはいたが ありがたいことに 昼過ぎまで振っていた雪はやみ冬型高気圧の中に入ったようで空は晴れて見通しはよい。

さて北陸道を行くHaitamanさんたちは 長岡から関越道に入りそろそろ小出ICに着くころだった。
東京組が途中事故の通行止めで 高速を降りたまでは携帯で連絡受けたがそれ以後 圏外になってしまい連絡が取れなくなっていた。
しかし 道迷って迷走しているなど夢にも思ってない面々は
「もう 温泉につかってるから連絡とれないんとちゃうか」
「本当ですね。それに山の中の温泉らしいから電波がつながりにくいのかもしれません」
「本当は神谷氏、睦美ちゃんと二人きりできたかったんやないでしょうか・・・」
「うふふふ、そういうことやね」
などと気楽に笑っていた。

[5188] 峰雪村 投稿者:TOMO 投稿日:2005/04/10(Sun) 21:24

 再び東京組。
 ジュラさんの提案にのっとって標識を目指して爆走していると、右折の矢印と、「峰雪村 3Km」という看板が見えた。
 TOMOは迷わず右にウインカーを下げ、車の鼻先を右に向けた。
 その3Kmがやけに長く感じられ、神谷が
「本当にこの道でいいのかな」
と不安げに言い出した頃、道の両脇にぽつぽつと民家が見えだした。
 でも、対向車や村人には全然遭遇しないので、遠慮なく(?)
TOMOが爆走を続けていると、ハリーがメガネをちょっとずらし、
「ん、あれは何や」
と遠くを見ながら言った。
「どうした、ハリー?」
 TOMOが尋ねると、
「あっちの方で何か光っとるで」
というので、
「ん?何だろう?」
と言いつつ軽くポン、ポンとブレーキを踏み、スピードをゆるめた。この車にはABSがついているが、TOMOはABSのついてる車にはあまり慣れていなくて、自分の足による人間ABSの方がよっぽど使い勝手がいいのだった。

 スピードを落とし気味に走っていると広場に出て、そこにはライトアップされた何体もの雪像が並んでいた。

[5192] 雪の広場 投稿者:ジュラ 投稿日:2005/04/11(Mon) 18:46

「なんかの祭りやないか」とにぎやか好きのうりゅりゅが言った。
「ちょっと降りてみない。道も確かめてみたいし・・・」
睦美がチラッとジュラを見ていった。
「そやな、降りよ!」と皆のあとについて当然のようにおりようとしたうりゅりゅをTOMOさんが止めた。
「あんた、雪の上だってこと忘れないでね。」
「イグたちは ちょと待ってたほうがいいな」
と神谷も言った。
「あれ、イグサとGONは?」と冬彦が車の中を探すと
「ここやでー」と外から声がした。
2匹はジュラのダウンコートの中にもぐりこんでいる。
「まったくチビはええな」と奈々子が言うのでカレンはクスクス笑った。
「すぐ戻ってくるから、あれエラリーもいないじゃん」
と冬彦が気がついた。
「エラリーが 離れないの・・・」睦美の声に見ると コートの中に窮屈そうにしてるエラリーがいた。
「あの マザコン!」とハリーが舌打ちする。またカレンちゃんがクスクス笑った。

大勢の村人が雪像の前に集まっていた。
高さが3mほどの 人物像が9体ほどで その周りにかまくらができていて 中で子供たちが歌を歌ったり 何かを食べたりしていた。
村人たちは 車を降りてきた見慣れぬ一団に驚いた様子だったがすぐに 笑顔で会釈を返してきた。

「今日は祭りなのですか」と神谷が聞いた。
「そだ。小正月の祭りだ」
とぼくとつな感じの初老の男が答えた。
「ここら辺はね、小正月の祝いのほうが正月より盛大なんですよ」
頭からすっぽりショールを巻きつけた中年の女性がニコニコしながら教えてくれた。

「しらなかったなぁ、こんな山の中にこんな祭りがあったなんて。雪像は昔から作ってるんですか。なんか武者みたいに見えるんですが」神谷は民俗学的興味をかきたてられたのか
像の周りを歩きながら感心したように言った。
「最近まであまり おおっぴらな祭りじゃなかったんだ」
「というと・・・」
「戊辰戦争の中の北越戦争って 知ってるかの」と先ほどの
初老の男が言った。
「ええ、幕末の戦争で会津藩とか 東北列藩同盟軍とかの戦いだということぐらいは」
と今度はジュラが答えた。
「そうかい 知っててくださったんだ。わしは峰雪分校の校長をしてるものだがな、若い人の中には 幕末に内戦があったということも知らんやつが おるからな。」
と校長と名乗った男はうれしそうに顔をなぜながら続けた。
「それなら 北越戦争の大激戦地がここ長岡藩だったということもご存知かな?」
「家老、河合継之助率いる東北列藩同盟の諸藩が 長州、薩摩の連合軍を相手に戦ったんじゃ・・・」

「せんせ、先生、話が長くなっては皆さんにご迷惑じゃろ」
と近くに居た かわいい娘さんが笑いながら言った。
「そうじゃな、みなさんはどこに行かれるんじゃ、」
「あ、そうでした。湯之谷温泉というかその近くの湯湧谷温泉 笹雪荘に行きたいんですけど。」
と神谷が言うと、さっきからこちらの話を聞いていた青年が
答えた。
「ああ、それなら この村の道をまっすぐ行けば、温泉へ曲がる道があるから すぐだべ」
「ええー本当ですか、ラッキー!」
と睦美が叫べば
「さすが ジュラ&TOMOコンビ、わかんなくてもどうにか着く」と冬彦も変なほめ方をした。
そのとき

予兆もなく大地が揺れた。
広場に悲鳴が響いた。
「地震!!」「余震だー!」「大丈夫だ、落ち着け!」
「キャーー」皆が振り返った。
9体ある雪像の1体が崩れ首が転がり落ちた・・・・
広場の誰もが声を失った。
しばらくして 誰かが叫んだ。
「皆 無事かー。怪我したヤツいんねかー」
「やー、しばらくないと思っただで、結構でかかったな」

余震はすぐに収まったが皆興奮したように お互いの無事を確かめあった。
「わすれちゃいけないね。去年ここら辺で大地震があったんだね。」とジュラがポツリと言ったが、
一行にとってこの地震が悲劇の舞台の開幕ベルとなったことは だれも想像もできないことだった。

[5196] 虫の知らせ 投稿者:ジュラ 投稿日:2005/04/12(Tue) 18:22

しばらくして 皆が落ち着きを取り戻したころ校長が言った。
「わしは 笹雪荘のおかみ 千恵子さんて言うんじゃが知り合いでちょくちょくよるんじゃ。祭りがひと段落したら ちょっくら寄らしてもらって さっきの話の続きしてやるかの」というと村の青年が
「校長先生話好きだからのー。だけんど先生、いらんおせっかいといわれんか」と笑った。
「なーにいっとる。まったくお前は小学生のころから口がへらんやつだった」
神谷はあわてて
「あの、来ていただけるなんて恐縮です。先生はこの地方の歴史や風土にお詳しいようで。ぜひお願いします。」
と礼を言った。
「だけんど・・・」と先ほどの娘が言った。
「先生、祭りの後 郷原さんとこの宴会に行くんじゃなかった」
「ああ、あれはええ。こ話は郷原の家も関係する話じゃからな・・・」

ジュラはあたりを歩き回っていた。懐のイグサがささやいた
「おかん、おかん、僕ね虫の知らせメールがさっきから届いてるんやけど」
「なんて?」
「GONも届いてないか?」
「届いてる。でもなんか変。誰宛っていうんじゃない。本当に虫の知らせっていう感じ。メールの送信先もわからんな」
「だから、なんていってるの・・・」
2匹は同時に答えた。
「離れろ、この村から離れろ、って・・・」
「なにそれ・・・」
「だからわからん。エラリー兄ちゃんも届いてるかな」

ジュラは 急いで雪像やかまくらを見てまわってる睦美のところに走った。
「おかん、転ぶで・・」
「ねえ、睦ちゃん、じゃなくてエラリー・・」
「どっちや」
「ジュラさんどうしたの?」
「ねえ、エラリー。変なメールきてない?」
「時々来るなー、可愛いいねえちゃんいますよって・・・」
「そういうんじゃなくてーー」とジュラがずっこけた。
「虫の知らせみたいな。イグサたちが感じたみたいなの」
「来とる。」とエラリーはこともなげに言った。
「何かあるんやな。この村に。おかん今日はここにとまろう」
「勝手に何いってんの。あと少しで温泉よ。みんな待ってるじゃない。ジュラさん、さっきの地震の影響で電波が狂ったのよ」と睦美は快活に言った。

神谷が合図して 皆、車にもどった。
TOMOさんと冬彦が浮かない顔をしてもどってきた。
「なんか みんなひそひそ話してるんだ。さっき雪像の首が取れたでしょ。みんな恐がってるみたい。なんかあるのかな」
「まあ、今は早く温泉に行こう。Haitamanさんたち待ってるだろうから。さっきの校長先生が後で来てくださるっていうからそのとき話を聞こうや・・・」
といったところに まさに温泉のほうから1台の車がやってきた。

男が2〜3人降りてきて叫んだ。
「おおい、この先さっきの地震でなだれが起きて通行できないぞ。」

車に乗り込もうとしていた一同 顔を見合わせた。

[5202] 行き止まり 投稿者:TOMO 投稿日:2005/04/14(Thu) 16:49

「それじゃ、戻るしかないってことか」
 神谷が嘆かわしげに言うと、TOMOが申し訳なさそうに、
「実は私、先に進むのとおしゃべりに夢中になりすぎてどう行ったら戻れるか覚えてないんだわ」
と答え、うりゅりゅも
「だから言ったやないか、おかんの勘で北海道でもかなり悩まされたって」
とダメ押しした。
「じゃあジュラさんは?」
 助けを求めるように、今度はジュラさんに振ると、
「ごめん、私も道覚えてないんだ」
と申し訳なさそうに答えた。
 ちなみに睦美はただ乗っていただけだったし、神谷と冬彦も雪道で迷ってる時は爆睡していたのだ。
「…ってことは、温泉に行けないってことか。ここは携帯も圏外みたいだからHaitamanさんがたと連絡とるにも方法がないか」
 この中で一番冷静だと思われる神谷が頭を抱えたその時、ヨン様を意識したメガネをかけたハリーがそのメガネをちょっとずらし、チッチッ、と指を振った。
「何やそれ、キザっぽくて腹たつな」
とエラリーが言うのはおかまいなしで、
「みんな、大事なことを忘れてへんか」
と言う。
「わいらはイグアナやで、虫の知らせメールがあるやないか」
 それを聞いて、みんなパッと顔を輝かせた。 

[5203] 郷原家 投稿者:ジュラ 投稿日:2005/04/14(Thu) 18:26

男たちの周りを村人が取り囲んだ。
冬彦が走り出すと、皆一斉に村人の輪に加わった。
「湯之谷温泉に行く道だか?」
「そんだ。完全にふさがっとる」
「復旧はするんだべ」
「途中、駐在で降りて役場に電話掛けてきたんだ。もう暗いから今日はブルだせねえって」
「じゃあ、明日の朝から除雪だな。なんてこった。」
「あぁ、だども電話はつながってるんだな」

「あのー、すいません」とジュラが話しに割って入った。
ずうずうしいのは おばさんの特権である。
「私ら 湯之谷温泉に行きたいんですけど、その道を行けばいいってさっき教えていただいたんですが、ほかに道はないんですか?」
村人が一斉に 首を横に振ったように見えた。
「いや、そりゃ反対側を大回りしていけなくもないけんど、
もう真っ暗で 今の地震でどこで寸断されてるかわからねえど。」
「いや、下手に雪に乗り上げると谷に転落する恐れがおおきいな。あんたらそっちから来なすったか。よくあの峠を越えただな」
「そりゃTOMOさんの運転だもん」と冬彦が胸を張った。
「まあ、それなりに面白いコースだったけど、確かに今からそっちを回るとなると危険かも」
「皆さん 東京から来たんでしょ。なぜわざわざこげさところへ・・」
一人の村人が感心したように言った。
「まぁ、高速が通行止めとかいろいろありまして・・・」
とジュラが頭をかいた。自分のナビに若干の申し訳なさを感じているのである。

「でも、どうしたらいいの」と睦美が不安そうな顔をした。
「ここに宿泊施設ありますか?」と神谷が睦美を慰めるように聞いた。
「民宿に毛の生えたみたいな宿は1軒だけあるけど・・」と一人の男が言うと
「毛の生えたったぁ なんだい」と太ったおばさんが言った。
「ひゃぁ、おばちゃん そんなとこにいたの」
「さっきからいたさ。私がその宿のおかみなんだけどな、かわいそうだけど今日は満杯なんだわ。ご覧のように祭りで
まあ、ひなびたまつりなんだが村の親戚やら知人やらで部屋は全部ふさがってるんでな」
「まあ、もともと観光客はこげな村さ泊まんねえで、下の温泉宿に宿泊するべ。」

「じゃあ、野宿かぁ」
「車の中で休む他ないですかね」ジュラとTOMOさんが また無責任なことを言い始めた。
「えー、でもこんな雪の中で。凍死しちゃうよ」と冬彦が情けなさそうに言うと
「私たちはともかく イグアナたちはどうしよう。」
とまたも睦美が困った様子で言った。

その声にさっき 校長先生と話していた女の子が目を輝かせた。
「えー、イグアナって イグアナ連れて旅行してんの。あっ私 悦子って言います。ああ、そういえば笹雪荘の千恵子さんも 飼ってたべ。そうか、それじゃたいへんだなー」

「あっそうだ、ねえ校長先生、雑貨やのおっちゃん・・」
悦子は皆を集めるとなにやら頭を合わせてひそひそ相談し始めた。
時々
「でもよー、突然言ってもよー」とかいう声が聞こえるが
悦子が
「だって、あそこしかないじゃん。あそこは今日はお客も着てるし いっしょに・・・」
などという声がしたが相談がまとまったらしく 校長先生が
口を開いた。
「やぁ、まだ聞いてみたわけではないんじゃが、ちょっくら掛け合って見るから ちょっと待っててくれんかの」
と言い置いて 悦子といっしょに道を駆けていった。

その間神谷は 村の雑貨屋の主人に案内してもらって電話を掛けに行った。
20分ほどして 校長先生が帰ってきた。
悦子ともども苦い顔をしている。
「だめだったんですか?」
睦美が心配そうに聞いた。

「うんにゃ、泊まっていいと。まったく郷原のオヤジぐずぐず言いおって・・」
「校長先生が 頭下げて掛け合ってくれたんだよ」
悦子がそばに居る 青年に声を掛けた。
「まあ、郷原も校長先生の頼みじゃな・・」と村人が言った。
それを聞いた皆
「どうもありがとうございます」と頭を下げると
「いや、なんの。まだ祭りは続いちょるが、どれ案内するか。あぁ車だな。それじゃ、この道をまっすぐ行くと突き当たりのでかい門のうちだ。間違わないから来てください」
「それじゃ、あたしもそろそろ 行かなくちゃ。へへ、今日はその郷原のうちでバイトなの、宴会の、後でイグアナ見せてね。それじゃまたね」
悦子も手を振ると校長先生の後を追った。

もどってきた神谷に京都組の様子を聞くと神谷は頭を振って
「もう、さんざん言われたよ。後でゆっくり話す」と苦笑いした。
車は言われたとおりの道を行くとすぐに 寺の山門を思わせるような門とはるかに続く漆喰の塀が圧倒するような豪壮な屋敷の前に着いた。
「ひえぇぇ〜〜」ジュラが 思わずのけぞった。
そのときGONとイグサが ジュラにしがみついた。
「どうしたの!」とジュラが聞くと
「またメールや。」とイグサの声が震えている。
「門前より立ち去れ、さもなくば死神を見るって・・」

[5206] 無題 投稿者:ジュラ 投稿日:2005/04/15(Fri) 17:51

「イグサ、GON なにびびってんのや。君ら少年探偵団やなかったのかな?」
ハリーがめがねにちょいと手を添えていった。
その声に イグサとGONの表情が元のいたずら坊主の顔に戻った。
「そや、死神なんて動物園に行っても見られないで、イグサ!おまえ恐くて 夜いっしょにトイレ行ってくれゆうても
つきあわへんで」とGONがイグサに言うとイグサも負けじと
「しにがみも ちりがみも似たようなもんやから、ブシュブシュ鼻水つけてやるわ」と強がってる。

「そや、ハリー向こうのマットのおっちゃんとはつながったか?」と聞いた。
「さっきつながったけど、あゆとバジがケラケラ笑いよる。
マットのおっちゃんは心配しとったけど、こっちもこれからどうなるかわからんやったから、またあとでメールするゆうといた。GON、NOBUさんがみんなの言うこと聞いてわがまま言うんじゃないと伝えてくれやて。」
その言葉を聴いたGONは さっきの元気もどこへやら、クスンと鼻をすすった。
「カレンちゃんは ワイが守るよって大船に乗ったつもりになってくれ」とエラリーが胸をはると
神谷に抱かれているカレンが
「エラリーの大船って 時々死神乗ってることあるんやない」と珍しく冗談で返したので、ハリーと奈々子が大笑いした。

神谷が
「まあ、こうなったからにはさっきのメールが迷惑メールの一種だったと忘れよう。明日の朝には除雪するようだし、申し訳ないけど今日はこのすごい屋敷に 泊めてもらおう。」
と言ったところに、歩きで追いついた校長先生と悦子が来た。
「じゃあ、皆さん車はその門から入ったら どこでも広い

[5207] 郷原邸 投稿者:ジュラ 投稿日:2005/04/15(Fri) 18:39


神谷が
「まあ、こうなったからにはさっきのメールが迷惑メールの一種だったと忘れよう。明日の朝には除雪するようだし、申し訳ないけど今日はこのすごい屋敷に 泊めてもらおう。」
と言ったところに、歩きで追いついた校長先生と悦子が来た。
車は門内の脇の駐車スペースにとめた。
ベンツ、マジェスタ、フーガなどの高級車が5〜6台駐車している。
TOMOさんが
「これここのお宅の車?」と聞くと悦子が
「ううん、郷原株式会社の役員の人たちのだと思う。
 役員たって親戚みたいな人たち」
と答えた。

皆は雪がきれいに払われた 石畳の上を玄関に向かった。
「すべらんようにな。今夜は星が出とる、今夜は特別冷えるな・・・、もう氷がはっとるな」
と校長先生が指差した玄関脇のつくばいの水はもう 表面が凍っていた。
「確かに 底冷えがしますね。でもなんてきれいな庭なんだ。」
ジュラが見渡すと悦子が 
「凝った庭だろ。築山作って庭の中に小川も流れているんだよ。皆さんも部屋に通されたら見たらいいよ」と言った。
間近に屋敷が迫ってきた。玄関も幅が3mぐらいあり ヒノキの桟の引き戸がはまっている。
玄関前で悦子が 私は勝手口から入るからと去っていった。
校長先生が 引き戸を開け中に声をかえた。
「おーい、沖山だが」
その声に 中年の女性が出てきて挨拶した。
「はい、沖山先生どうぞ。こちらが さっきの・・・」
とじろじろ見て しょうがないというように
「さあ、上がってくださいな」と言った。
「女中頭の・・という言い方は古いのかの。まあ、家事をまかされとる 吉野さん」
紹介されて 神谷が代表して挨拶しようとしたら
「そのトカゲは暴れないでしょうね。汚さないでくださいね」といわれた。

「あっ、はい。それはもう。ちゃんとシートも用意してありますし・・・」と睦美があわてて言うと
「えっそれじゃ檻みたいのないの、大丈夫ちょっと・・・」
と今にも追い返されそうな感じで言われた。
「この子たち 聞き分けいいですから、僕たちがけしてごめいわく掛けないように しますから。」
と冬彦も 必死に言った。
「そやで、おばはん、ワイら紳士淑女やで・・・」
「まあ、子供もおるけどな。けど子供は歯磨いてすぐねかせますから」
とエラリーとハリーも言ってみたけど、もちろんわかんない。
そこへ やはり和服姿の女性が現れた。
「吉野さん どうしたの。あら 沖山先生、さっどうぞ上がってください。皆さんも、寒いでしょ、こんなとこで離れの部屋に用意してあるんでしょ?」
と吉野に聞いた。
「はい、若奥様、」吉野はちょっと不服そうにいうと
こっちでがんすとばかりに先にたって案内した。

[5209] 隠れ本陣 投稿者:ジュラ 投稿日:2005/04/19(Tue) 19:43

「さっきの方は?」とジュラが聞いた。
吉野が答える前に沖山校長言った。
「ここの、当主 郷原武治郎さんの長男の嫁さんで沙和さん
というてな、以前 分校の教師をしとったんじゃ・・・」
校長はなにか言いたげであったが、吉野の方を見るとそのまま口をつぐんだ。

長い廊下を歩いていくと どこからか調子ぱずれの歌が聞こえてきた。宴会が始まったらしい。
吉野がいっしょについてきた沖山校長に行った。
「あちらで もう始まってますよ。先生」
「そうだな、ま 顔だしてみるか。皆さんも来なさるか?」
と聞いた。皆が顔を見合わせると吉野が
「皆さんの食事も 広間に用意してますから、荷物置いたら
来てください。2〜30分ぐらいしたら迎えにきますから」
といった。
「そうか、じゃあわしは先にいっとるから」と廊下の角で別れた。廊下はさらに続き だんだん薄暗くなってくる。
「ずいぶん広いお屋敷なんですね」と睦美が遠慮がちに聞いた。
「そうですね。始めてだと迷うかもしれないから、あまり歩き回らないでくださいね。」また曲がり角に来た。
こっちは、暗い廊下を指指し
「道場へいくんですよ」
「道場って 剣道とか?」びっくりしたTOMOが聞いた。
「まあ、この屋敷は江戸時代から 隠れ本陣といわれてきた
屋敷で 剣術とかなぎなたの稽古ができる道場があるんです」
「へー隠れ本陣・・・」冬彦がびっくりしたように行った。
「すると 殿様なんかが・・・」
「まあ、私は詳しいこと知りませんけど、あとで校長先生にきけばいいんじゃないですか。あの人ここら辺の郷土史に詳しいから。」
といってるうちに 廊下で続いた離れに着いた。
「ここですよ。ストーブとコタツ入れときましたから、寒かったら言ってください。布団なんかは 入り口の小さい部屋にあります。それじゃ私は急ぐので」と言うと吉野は去っていった。
10畳と8畳の2間続きの部屋で、入り口の小部屋に布団が置かれている。
「へー、ちょっと古めかしいけど、趣ある部屋ね。」
とジュラがあたりを見回しながら言った。
部屋の2方が庭に面しており、雨戸、ガラス戸の内側に縁側
そしてまた障子がはまって部屋になっている。
「へー、上りやすそうな柱があるで、おかん」とうりゅりゅが床の間の柱をみて言った。
「お兄ちゃん、登っちゃだめよ。」とさりゃりゃが言った。
「おい、GON あそこも面白いぞ。」とイグサがやはり床の間の違い棚をみていった。
「イグサ、GON ,今日は腕白だめよ」と2匹はカレンちゃんに釘を刺されて、チロッとしたを出して顔をみあわせた。
「でもな、なんか天井のしみ見とると 顔がいっぱい見える
、なんか恐いな」と奈々子が顔をしかめた。
「我々は三つの点があると、それを顔と認識するようにできているんだよ。気にしないほうがいいよ」と神谷が言った。
「わー、こっちはすごい竹林だ。どこまで続いてるんだろ」
冬彦が外を見てつぶやいた。
離れは裏庭に面しているらしく、軒のすぐそばから竹林が背後にずっと広がっていた。

[5214] 深雪 投稿者:ジュラ 投稿日:2005/04/26(Tue) 18:14

竹林の竹は先ほどの地震で枝が揺らされ 雪はほとんど下に落ちていたため 根元から2mぐらい雪に埋もれている。
それでも 太い竹、細い竹織り交ぜてはるか続いていた。
「そういえば この辺竹林おおかったよな」と冬彦の背後で
神谷が行った。
冬彦が振り返ったとき ちょうど離れの戸が開いて悦子がチョコンと顔を出した。
「みなさん おなかすいたでしょ。もうそろそろ準備ができたころだからよびに来ました」といいつつ
「わー、イグアナだ。」と近くに居た奈々子とさりゃりゃに
駆け寄った。奈々子もさりゃりゃもちょっとびっくりして
近くのTOMOさんに駆け寄った。
「悦子ちゃんは イグアナ好きなの?」さりゃりゃと奈々子をひざに抱き上げTOMOさんが聞いた。
「うん、あの皆さんが行くことになっていた笹雪荘のおかみさんの千恵子さんが飼ってるイグアナを いつも見せてもらってんの。うちのじいちゃんが作った野菜を千恵子さんのとこにとどけるときね。これメスですか?」
「そう、こっちのちょっと恥ずかしがりやが さりゃりゃっていって こっちの子が奈々子って言うのよ。」
「へー かわいい名前、千恵子さんのは深雪、みゆきっていうの」
「なんと・・深雪やて、おいエラリーどんな子やろ。きっと
清楚な横顔、黒い瞳、それでいて雪国の情の濃いメスイグ!
雪女のような美女やないか・・くっそー ワサビー 手だすんやないぞ」とハリーが地団太をふんだ。
「アホッ! ワサビにはチビちゃんがおるわ」と奈々子がいうと
「ワサビでなくても マットのおっちゃんがおるな。稚内の
おっちゃんかてオスはオスや。」
「ハリーったら、マットやチャーミーさんは イグ格ができてんやから ハリーとはちがうんやない」とカレンちゃんにまで言われた。
「なんか、もめてるような・・ははは 私って馬鹿みたい。
イグアナが話せるわけないのにね・・・」という悦子に
「ハハハ 馬鹿みたい イグアナは話せるんやで」
とイグサが行ったので ジュラがあわてて
「こら、黙ってなさい」と言ってあわてて悦子に向かって
「いやっ あの・・そうそう 腹の虫がグーグーうるさくて」と 頭をかいた。
「ははは、すみません。おなかすきますよね。どうぞご案内します」と先にたった。
「ジュラさんナイス!」と冬彦が近寄ってきて
「しかし腹の虫に 黙れとは ジュラさんらしい」と笑った。

道場への暗い曲がり角に来たとき 睦美が聞いた。
「ねえ、悦子さん。隠れ本陣って何ですか?」
「私も校長先生から聞いたから うろ覚えなんだけど昔っていっても江戸時代何か事が起こったとき 軍を隠しておくための本陣なんだって。ここって 皆さん東京から来たわけでしょ。江戸からの街道とか、湯之谷温泉の前の国道は只見から会津に抜ける街道もこの里の山の裏側にあって目立たないところなのよ。だけど敵がその街道を進軍してきたとき すぐ味方の軍勢を動かせる 絶好の隠れ場所だったみたい。」

「へー それはすごい。じゃあ幕末の北越戦争の時なんか
使われたのかな?」
「ううん、よくわかんない。校長先生にきいたらいいわ。でも・・ここの祭りっていうかさっき見たでしょ。それもこの本陣にかかわりがあるのよ。」
と悦子は言葉を切った。
「でもかかわりがあるって言っても、あんまりいいもんじゃ
ないんだわ」
神谷が続けてきこうとしたとき 広間の前に着いた。
「ここです。」と悦子がふすまを開け60畳ほどの部屋に案内された。

悦子は入りくちのふすまの前にキチンとすわると両手をついて正面の 男に向かってお辞儀をすると言った。
「だんな様 お客様をお連れしました。」
広間に座っている十数人の 目がいっせいに神谷たち一行に注がれた。

[5225] うちら陽気なかしまし娘・・・ 投稿者:ジュラ 投稿日:2005/05/06(Fri) 17:50

「だんな様 お客様をお連れしました。」
広間に座っている十数人の 目がいっせいに神谷たち一行に注がれた。

中央にまるで殿様のように酒やけしたような顔の男が座ってその隣に あだっぽい女が座って酒をついでいた。
そこを上座にして 男女十数人が座っている。
「まあ 客人座ってください」と末座の男が食膳の席を勧めたので 皆席につくと 中央の主人が口を開いた。

「とんだことだったの。余震が続いとるんじゃわ。明日になればブルが道をつけるから 通れるようになるわな」
「こちらのご主人ですか。災難とはいえ 突然お邪魔してしまい申し訳ありません。」と神谷一同礼をした。
中の一人の男が それに答えた。
「そちらが当家の主人で郷原武治郎さん その隣が奥さんの美千代さん、武次郎さんは郷原産業の会長でな、ここにあつまっとんのはファミリー企業の代表なんです。奥から長男で郷原建築土木の専務の正武さん、こちら側が 次男で郷原交通の社長の武充さん、その隣が長女のだんなで 郷原不動産の社長の田辺栄造さん・・・」
「まあ、そのくらいでええわな。さめてしまうがな。」
と長男の脇に座っていた 取り澄ました女が言った。
「皆さん どうぞ」
先ほど 長男の嫁と紹介された沙和さんが銚子を持って 酒を勧めた。
「まあ、食べてくんさい。田舎料理だから都会の人の口にあうか分からんがなぁ・・・」と中の一人が言った。
「いえ、こんなにご馳走していただいて恐縮です。遠慮なくいただきます」とジュラがぺこぺこ頭を下げた。
「今の方が義父の弟の武芳さんです。私の主人の会社の社長
です」
郷原家の宴は また酒が追加されて続けられた。
沙和のほか 何人かの女たちが出入りしているうちに 神谷は郷原家の構図が分かるようになってきた。
それは睦美もいっしょらしく小声で神谷に言った。
「沙和さんて 長男のお嫁さんにしては若くない?」
「それもそうだけど、武治郎さんの隣の奥さんも年が離れているな・・」
けどジュラと冬彦はそんなこと無頓着で
「ねえ、ねえ、この蕗のおひたし おいしい! この酒
わー越の寒梅じゃん、幻の銘酒!こんなんのめるなんてしゃーわせ・・この肴岩魚かな、こくがある、・・」
「ジュラさんこの鳥肉の煮物柔らかくてうまい!やっぱ米がうまいっすよ。何バイでもお代わりできそうでやばいな」
などと夢中である。
TOMOさんは給仕に来た悦子に
「ここの屋敷すごい 竹林があるのね」などと聞いている。
「そうなの。そのおかげで 地震のときも被害が少無かったみたい。ここの村の産業が木材と竹細工なの。昔はこの竹で弓とか作ったり、木で槍やなぎなたの柄を作ったりしてたみたい。でも今は竹製品が有名よ」

さてそのころ 残されたイグたちは
「ねえ、奈々子、東京でるとき奈々子のおかん 千恵子さんのイグアナ 卯月ちゃんって言ってなかった」
とさりゃりゃが聞いた。
「卯月はんもおるで。あのうちはメスイグ3姉妹なんや。
深雪はん、卯月はん、夏生はん」
「何やて、3姉妹、奈々子 はよ言わんか。おい エラリー
うりゅりゅ、こっち来い」
ハリーは オスイグを片隅に集めた。
「おい、3姉妹やて。くっそー あっちはワサビ、マット、チャーミーやんか。きっとそれぞれ個性が違う美イグ姉妹やで。清楚で深遠な魅力の深雪、はんなり おっとりしたやさしい卯月、明るくてキュートな末娘夏生、なんや奈々子がもっと早くゆうてくれたら わいは京都組みでいったのにな・・」
「こんなことにならなかったら 東京のほうが早く着くはずだったから、しょうがないやんか」とうりゅりゅが言った。
「ひゃっひゃっ もう今頃 3姉妹相手に盛りあがっとるで、なんてったってマットはええ板前や、旅館商売の3姉妹の婿に望まれてってことが あるぞー」
とエラリーはハリーをからかった。
「えええぃ、わいが マットのおっちゃんに遅れをとるとは
」とハリーは歯軋りをした。

こちらはメスイグたち
「あっほー!、なにあわててんのや、」と奈々子が言った。
「なに?ななちゃん」とカレンがきく。
「まあ、ええわそのうち分かるわ。」
「おにいちゃんたちにはナイショにしておくから 教えて」
とさりゃりゃがせがんだ。
「笹雪荘の3姉妹って かしまし娘 いわれてるんやで」

5231] 探検子イグ 鬼がでた 投稿者:ジュラ 投稿日:2005/05/10(Tue) 18:34

「まあ、ええわそのうち分かるわ。」
「おにいちゃんたちにはナイショにしておくから 教えて」
とさりゃりゃがせがんだ。
「笹雪荘の3姉妹って かしまし娘 いわれてるんやで」

2グループに分かれたイグアナたちに離れて イグサとGONは
コタツに中に居た。
「なあ、イグサ ハリーにいちゃんは なんやさっきから
ボビボビしまくってるし、さりゅりゃねえちゃんたちはひそひそ話してるし 仲間は入れんな。」
「そやな、なあGON探検せえへんか。」
「どこ?」
「この家や。さっきからコタツでよう体あったまったし、廊下ちょっと寒いけど、少しぐらいなら大丈夫やで。ぼく退屈でうずうずしてるんや」
「そやな、にわとりに兄ちゃんたちぜんぜんかえって来へんもんな」
悪い相談はすぐまとまる2子イグは 他のイグたちがそれぞれの話題に熱中してる隙にそっと廊下にでた。
廊下はところどころの壁に薄ぼんやりした明かりがあるが イグアナが歩く下までは届いていない。
「イグサ 暗いな。」
「GON、壁を右手で触って歩けば 迷ってももどってこられるで」
「洞窟探検やないんやから そこまでしなくてもええやろ。明かりのあるほうへ いけばええんや」
2匹は武道場へ抜けるろうかの曲がり角に来た。
「あっち行くか、GON?」
「やめとこ イグサ、あっちへいこう。広間とかいったほう」
「まて GON、誰か来る」
2匹が暗がりに隠れると 若い使用人と年配の使用人と思われる人間がイグアナがそこに居るとも知らず ひそひそ話し始めた。
「今夜 だんなさん お籠りするの?」
「そりゃそうだわ。毎年のことだから。供養しないとタタリが来るちゅうからさ」
「本当にタタリってあるの」と若い方が聞いた。
「あるって家に爺さんいってたわ。ずいぶん前だけど先代のだんなさんが ばかばかしい迷信だとか言って やめたことあったんだって。そしたらすぐに建築中の工事現場の足場が崩れて大勢の人が死んで そんで調べたら郷原建築が基礎工事を手抜きしてたってたたかれて 損害賠償とかいろいろあった挙句 先代のだんなさんが列車に飛び込んで自殺したんだって。」
「それって偶然じゃないの」
「あんた、その自殺直前にホームに居た人が言うのに、郷原の先代さんうわごとのように 許してくれ、密告したのは悪かった・・・ってつぶやいていたって言ううわさよ」
「うわっ、やっぱり井澤文左衛門の呪い?」
「そういう話よ。そのとき倒産寸前の郷原の家を助けたのが
操様のご実家よ。」
「それなのにおかわいそう」と若い方が言った。
「まったくね。あんなあばずれが奥様気取りなんだから」

『イグサ、呪いやて。はよ帰ろう、恐いわ』
『GON 動くな』
「キャー 何!何か居る!」
「だれかー!」2人は仰天して人をよびに言った。

『こっちや、GON!』
イグサとGONは一目散で逃げたがあわてたので 間違って武道場のほうへの廊下を走っていってしまった。
「GON 道間違うたで。こっちじゃない」
「イグサ でも今もどると人おるかもしれんよ。少ししてからもどらんとうちらが 出歩いたことばれて みんなに迷惑かかるで」
「そやな・・・」
「イグサ さむないか?」
「まだ 大丈夫や。ここが道場か」
2匹は 廊下の突き当たりに広間に出た。そこは板敷きの
いわゆる剣道やなぎなたの道場であった。
「うわーっ!」
「なんやイグサ!」
「あっ あっ あれっ・・・」
「キャー!!」
雪明りが武道場に差込み 床の間を照らした。そこには 口ひげをつけた 鎧かぶとが 飾ってあった。
「あー びっくりした。だれか座ってるみたい」
GONとイグサが 一息ついたのもつかの間
廊下がギシッギシッとなった。

「イグサ・・なんか来るんやない・・」
「わいらを追いかけてきた人かな」
「違う、だって反対の方から 聞こえるで・・・」
武道場から 母屋へ行く反対側に さらに廊下が伸びていた。その先は 電燈もない闇である。
「ん? 今なんかあっちボーっとした明かりが見えるで」
「だれか おるんか?懐中電灯か」とGONが聞いた
「・・・・・・・」
「イグサ?!」
「ぎゃーーーーーー、鬼やーーーー!!!」 

GONもイグサも後も見ず、無我夢中でその場を逃げた。
どのように逃げたかも記憶に無いほど あわてて走って走って気がつくと、心配して探しに出た エラリーとハリーとうりゅりゅにしがみついていた。

[5235] 操様 投稿者:ジュラ 投稿日:2005/05/13(Fri) 18:18

ワーワー泣き喚く子イグをエラリーたちは部屋に連れ帰り カレンはじめメスイグが必死になだめると、やがてイグサとGONは落ち着いてきた。
「なにがあったん?泣いてるばかりじゃわからんで」
とエラリーが聞くとイグサが答えた。
「あっちの武道場に迷いこんだねん。そしたら向こうの廊下から白い着物を着た鬼がきたんや」
GONも可愛い顔にできた涙の跡を手でぬぐいながら言った。
「手にろうそくみたいもん持って まっすぐ来るんや。恐かったで」
「何かの見間違いとか、ないか? ほら浴衣かなんか干してあったとか、なんや浴衣やったんか、ゆかった!とか」
とハリーがくだらない駄洒落を言って2匹の緊張をほぐした。
「ううん、浴衣やない。だって鬼だったもん」
「その鬼ゆうのはどんなんや?」とエラリーが聞いた。
「角があって恐い目をしてた。」
「口もガッと開いてた」と恐怖を語る子イグをカレンとさりゃりゃがなでてやる。
「よし、恐いのによく見てたな。それでこそエラリーの少年探偵団や。みんなこの屋敷には なにかあるでー」と
うれしそうである。
「エラリーさん、おかんたちにメールしますか」とうりゅりゅが聞いた。
「そやな、じゃワイがおかんにメールするわ。」とエラリーはくしゃみでメールを送った。

「あっつ」広間で睦美がつぶやいた。
そばに居た神谷が 振り返ると
「エラリーから、そっちの様子はどうだ・・・人間関係を把握しろ・・・そしたら早く帰ってこお・・・鬼が出るぞ。だって。よくわかんない。・・」
「詳しい人間関係はわからないな。だって僕たち今来たばかりだし、他人のうちのことだからね・・・」と
言ってるとき突然中央の武治郎氏の罵声が響いた。

「ばかもん!どあほ!くだらない投資をしおって。だから
外資に手を出すな言っただろ。そんなことで郷原交通が敵の手に渡ったらどうするんだ」
どうやら次男の武充氏に向かって怒りを爆発させているようだった。
「オヤジは古すぎる。今までみたいに法すれすれで 乗っ取りやってる時代じゃないんだ。外資を使って ホテル経営に乗り出すときなんだよ。」
「いいな 郷原交通はわしと産業が大株主なんだ。かってなことはさせんぞ!まさか契約したわけじゃないだろうな」
「・・・・・」
「武充!」
「頼むよ。オヤジ 俺に株を譲って経営権を渡してほしいんだ」
「だめだ、お前に社長はまだ早かったみたいだな!」
「父さん!」と
長女と紹介された女が食ってかかった。
「武充だって 郷原産業全体のことを考えてリゾート産業に乗り出そうとしているんだから 少し認めてやったら・・
それよりも うちの田辺に郷原建設土木の株少ーしいただけないかな。うちは不動産だし私も経営に参加したいのよね。
とくに正武さんは おとなしくていらっしゃるから・・・」
すると武治郎のそばでシナを作っていた美千代が口を出した。
「祥子さん、あんまり欲だしたら いかんよ。うちの武昭や
麗美も まだ中学生だけど郷原の可愛い子供なんよ。
学校の成績もいいから、将来楽しみだわ・・ほほほ」
「なにいってんの、この色ボケ女!!」祥子がいきり立ったそのとき ふすまが開いて一人の年配の女性が現れた。

「2人ともみっともない!おやめなさい。今日は何の日だと
思っているのです。一族こぞって 9人の御方の冥福を祈る日じゃありませんか。」
「操様・・・」広間でささやきがもれた。
「あなた、今日は大切なお籠もりの日なのにそのように お酒を召し上がってよろしいのですか、」
リンとした言葉遣いと気品のある顔立ちに睦美も 見とれて
しまった。
しかし武治郎はじめ操を見る目は困惑やあからさまに忌々しいという感情を表わしていたのにも睦美は驚いた。

校長が そばに来てささやいた。
「ここは 退散して向こうでゆっくり話そう・・・」

[5238] 遺産相続 投稿者:ジュラ 投稿日:2005/05/18(Wed) 18:10

「操 今までどこにおった」と竹治郎が聞いた。
「ここのところ 体の具合が悪くて部屋で休んでいましたよ。でもお集まりの皆さんにご挨拶しなければねえ・・
村長さん いろいろお世話になります。村議会の皆様もようこそ。 まあ、弁護士の片貝先生・・おめずらしいこと」
と数人に挨拶した。
片貝と言われた紳士が 操に礼をかえし
「いやー 奥様、武治郎君も遺言をしたためる年になったんですねー、あっいや こりゃ私も同じ年ですがどうも同級生だといつまでも若い時のままのような気がして・・ははは・・」と笑った。
「まあ、遺言を?」と操は始めて聞いた顔をした。
「はあ、まだ聞いておられなかった・・」
片貝は武治郎の苦虫を噛み潰したような顔と操の顔を交互に見ながら 言った。
それに対して操は 涼しい顔で言った。
「いえ、まあ 私などももうそろそろ人生の整理の時期に入っていますからねえ、郷原がそのように考えても驚きませんよ。お願いします。」

「ねえ、父さん・・」と長女で先ほどすごい剣幕で美千代にくってかかった祥子が聞いた。
「それじゃ 今はどうなっているの」
武治郎は片貝の方を見た。
「えー今はまだ遺言はできていませんから、法廷相続ということになりますね。つまり法律上の妻である・・・」と言ってからあわてたように 咳払いをした。
「操さんに 財産の半分、そして5人のお子様方に 残りの5分の1ずつとなります。」
「それじゃ 美千代さんの取り分は無いわけね」と祥子は薄ら笑いを浮かべて言った。

それに対して美千代が口を開いた。
「まあ、そうやって笑っていられるのは 今のうちよ。パパ
は ちゃーんと私や 可愛い武昭や麗美によくしてくださるわよねー。どのくらいよくして下さるのかしら、ふふふ・・」
「おとーさん、まさか武昭に郷原の財産を継がせるなんてこと考えてないでしょうね。片貝さん そんなことさせないでちょうだいよ」
祥子は 美千代をにらみながら言った。
弟の武充も姉の顔色を伺いながら うなづいている。
「今から推測してもはじまらんじゃろ」
と村長が 皆をなだめた。

どうにも座敷を辞すタイミングが見つからず困っていたを神谷たちがその言葉で それではと挨拶をした。
そのとき沙和が寄ってきて
「お見苦しいとこ 見せちゃって ごめんなさいね。
お部屋でなにか足りないものありますか・・・それでは
ごゆっくりお休みください」と言った。

一行は 同じように腰を上げた沖山校長とともに広間を辞した。

[5245] 郷原家の子供たち 投稿者:ジュラ 投稿日:2005/05/23(Mon) 18:34

「郷原の子供たちは それぞれ母親がちがうんじゃ・・」
と部屋にはいるなり校長が言った。
「どうりで なんか仲が悪いと思った」
と妹さんと仲のよいTOMOさんがうなづいて言った。
「武治郎さんは 女にだらしないところがあってな。操さんというのが本妻さんなのだが、操さんと結婚したときには
別の女との間にもう 祥子さんという子供がおったんじゃ。」
『へーそんな ええ男には見えへんかったで。なーなーところでおかん、僕とGONがなーさっき・・・』とイグサがジュラのひざに上りながら言ったのだが
「えっ、なぜイグサ武治郎さんのこと知ってるの。まさかふらふら出歩いたりしなかったよねー」
『ふらふら出歩いたり せーへんで 探検したんや』とGONが言った
「まったくー・・・・あれっ」とジュラはあたりを見回し
校長先生の視線と遭遇した。
「どなたとお話かな?」
「・・・あやっ・・・」
「ぼっ僕です。どうも武治郎さんってどっかで見たことあるって言ったもんですから・・僕 勉強もしないで盛り場ふらふら歩いてたことあったので・・・」と冬彦があわてて言いながらジュラをにらんだ。

「ハハハ、まあ武治郎さんは郷原産業のオーナーでもあるし
名士だから大方 新聞や雑誌あたりで写真を見たんじゃないかな。さてどこまでいったかな・・そうそう、操さんとの結婚は先代の親同士のいわば政略結婚なんだが、その昔は藩の
重役だった家柄の出で 新潟市で造船業でずいぶん景気もよかったんじゃ。それで先代が 頭を擦り付けるようにして
操さんを郷原の嫁にもらったんじゃ。」

「そういえば 操さんってきりっとしててなぎなたなんかできそう」と睦美が感想を言った。
「その通り。操さんはなぎなたの有段者なんだよ。まあ郷原のうちも道場があるくらいだから先代は武芸に熱心じゃったが 武治郎さんはそんな親に反発したのかのー」
「それだから わしらからみて申し分ないような嫁の操さんじゃったが、武治郎さんとの生活は甘いもんではなかった。
もちろん 親や操さんの実家の手前大切にしてるようだったが 何しろ祥子さんの母親とも切れずに なんと操さんが
長男の正武さんを生んだのと前後して 武充さんが生まれとるんじゃ。」
「そうすると・・」神谷が確かめるように言った。
「祥子さんと武充さんは 実の兄弟でその女の人の子供、
長男の正武さんは操さんの子供、それで武治郎さんの隣に座ってた人が美千代さんで その子が 武昭さんと麗美さん・・・美千代さんは奥さんではないのですね・・」

「そうじゃな、祥子さんの母親は12年前ぐらいに 癌で無くなった。操さんも可愛そうな人だが その人えーと香苗さんといったかな、亡くなる2年ほどの前に武治郎さんに新しい愛人 つまり今の道千代さんができて日陰の身のまま
さびしく死んでいったようじゃ。一時は祥子さんが 武治郎さんを殺してやると怒鳴り込んできたこともあったんじゃよ。あの人の気性は激しいからのー」

「するってーと、操さんて常に武治郎を独り占めすることできなかったんだ」とTOMOさんがうなづくと うりゅりゅとさりゃりゃも同じようにボビボビとうなづいた。
「独り占めどころか ずいぶん長い間 いっしょの屋根の下でもくらしとらんぞ」
「えー操さんどこで暮らしてるんですか?」
「いや 操さんはこの屋敷で暮らしとるがな。武治郎さんのほうが 長岡市内に住んでるんじゃ。表向きは会社経営に便利なためじゃが 市内の豪邸に美千代さんと2人のお子さんと暮らしとる。じゃから会社の従業員も皆 美千代さんを奥さんだと思っとるようじゃ。それに年とってからの子供は可愛いのか それとも美千代さんにぞっこんなのか、武昭君のことを溺愛しとってこのままだと 郷原産業の財産はすべて武昭君が継ぐことになるというものもおるんじゃよ。」

「それじゃ 他の子供たち とりわけ祥子さんが黙ってないでしょ・・」
「まあそうじゃが、わしとしては 沙和さんのご主人の正武さんも可愛そうなきがするんじゃ」
「そういえば 正武さんておとなしそう。」と睦美が言った。

[5247] お篭り 投稿者:ジュラ 投稿日:2005/05/27(Fri) 18:52


「それじゃ 他の子供たち とりわけ祥子さんが黙ってないでしょ・・」
「まあそうじゃが、わしとしては 沙和さんのご主人の正武さんも可愛そうなきがするんじゃ」
「そういえば 正武さんておとなしそう。」と睦美が言った。

校長は出されたお茶で口を湿らし また話始めた。
「沙和さんは 前にも話したことあったがこの村の小学校の先生だったんじゃ。沙和さんから聞いた話だと 正武さんとは大学の先輩、後輩になるらしく、大学時代に同じ地方の出身とわかって親しくなって結婚の約束をしたらしい。
正武さんは工学部の建築科で おとなしい技術者タイプの人物じゃが、武治郎さんの郷原建築土木で新しい工法の研究を
したいという希望じゃったらしい。 しかし認められず経営陣に座ったのだが、武充さんや祥子さんのだんなは 社長になってる中で正武さんは専務で社長は一応 武治郎さんの弟の武芳さんになっとる。」
「どうしてですか?」と神谷が聞いた。
「よくわからんが 操さんの子供だからじゃろうか・・・」

「おお、こんな時間か皆さんお疲れなのに長居してしまった。」
見上げた時計は10時になっていた。
「それじゃ ゆっくり休んでください。悦子ももう仕事おわっとるじゃろ。家まで送っていくか」
と校長は腰を上げた。
「すみません。もうひとつ・・・」と珍しく冬彦が言った。
「なんか この村に伝説があるんですか。さっき お篭りとか言ってたし・・・」

「そうじゃな。あす温泉にいくんじゃろ。そのときにゆっくり話すが、幕末の内戦のとき戦いに敗れた幕府軍の武士達をこの村にかくまったんじゃが、
郷原の男が新政府に密告したんじゃ。なんでも村の美しい娘がその中の一人と恋に落ちたのを ねたんだらしい。
彼らはそれを知って 郷原を呪い山に入ったまま行方知れずとなった。
それから その日郷原の当主は 一人お堂に篭って武士たちの冥福をいのることになったというはなしじゃ。」
「へー、そうなんだ・・・」と皆 うなづいた。

そのとき悦子が部屋をのぞいた。
「校長先生、終わった。あー疲れた。明日あたしも温泉行こう。久しぶりでイグアナ3姉妹ちゃんにも会って来たいし」
「悦子ちゃん イグアナ好き?」とTOMOさんが聞いた。
「うん、はじめは恐かったけど 結構 あたまいいし性格もおもしろいし気に入ってんだ。わーこの子可愛い。」と
悦子がGONを抱き上げた。
『そやろ、いつもお父んに言われとるで。』
『GONちゃん 小さな僕の天使!そのアーモンドのようなつぶらな瞳で世の中の幸せすべてを見ているのだろうね。僕もその瞳の先に入れてもらえるかな』
『ハリー、お前いつからロリコンになったんだ』
『なにいってん、エラリー NOMUさんがこんなこと言ってんのやないか思うてな』
『アホ、お父ん ハリー兄ちゃんみたいな色男やないで・・ 』
『GONちゃん それってほめてるの?』さりゃりゃが聞いた。

・・・・・・・・・
そのころ 笹雪荘でNOBUさんはくしゃみをしていた。
「あぁー、クシュ、やっぱり冷えとるんかな。温泉はいって体は 温かいのに変だね」
「NOBUさん、まだ酔いがたらんのじゃないか。」
「師匠様 私はもう酔いつぶれそうぅぅ うぃ・・」
「しかし、あの人らは何しとるかのー」
・・・・・・・・・・

「うんGONちゃんは 顔も丸くて目もくりっとしてるしかわいいよね」と神谷も言った。
それを聞いた睦美がおかしそうに
「でもね悦子ちゃん、彼は今では平気だけど もう最初は爬虫類恐怖症だったのよ」と話を始めたので 神谷が咳払いをして
「まあ、その話はあとでゆっくりと。今日のところはもう休もう。」
校長と悦子が部屋を出て行くと、冬彦がひそひそ言った。
「ねえ、金持ちのうちって外見では判断できないんだね」
「あっ でもさ私達関係ないから 早くねよ。TOMOさん運転で疲れてるから寝不足はつらいでしょ」
とジュラがいうとTOMOも大あくびをした。
「もぉぁーー、眠いわ」
神谷と冬彦は入り口に近い部屋、睦美、TOMOさん、ジュラは奥の部屋でそれぞれ床に入り、イグアナたちはコタツの中で休むことになった。
疲れていた一行はすぐに深い眠りに着いた。
しかしそれから4時間後、人々のわめき叫ぶ声で心地よい眠りから無理やり引きずりだされることになった。

[5275] 笹雪荘到着 投稿者:ジュラ 投稿日:2005/06/06(Mon) 17:59

しかしそれから4時間後、人々のわめき叫ぶ声で心地よい眠りから無理やり引きずりだされることになった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ほう、それで武治郎ゆう人が殺されておったんか・・」
セントラルヒーティングが気持ちよくきいた 笹雪荘の部屋で 朝風呂から帰ってきたHaitamanさん、NOBUさん、まさよしさんのどてら姿の前に まだ興奮が冷めやらぬ顔をしたTOMOさんたちがまだ 旅装も解かず座っていた。
「そりゃまあ、難儀なことやしたなぁ、エラリーはんの行くところ事件ありでんな」とマットがエラリーをねぎらった。
「どうも、さっきから皆様興奮されていて今ひとつ要領得ませんです。どなたか順番にお話ねがえませんか。」と
まさよしさんが 皆の顔を見回した。

「それもええですが まあ皆にちょっと風呂でも入ってきて
落ち着いてもらったらいかがでしょう。そうしないとこちらも落ち着きません。」とNOBUさんが言った。
NOBUさんも肩にはGONがうれしそうに 抱きついている。
「おとん、うちイグサと調査したんやで、なあ事件解決できるやろか。うちは祥子ゆう恐いおばはんが犯人おもうんや」
「こらこら、GONまだわかってないやろ・・」とGONちゃんを
たしなめながらもNOBUさんうれしそうである。

「そうですね。体を温めて少しリラックスしないと話がまとまりそうもないです。そのうち警察がここへも 話を聞きに来ますから。我々は旅行者で直接関係ないし、行き先が笹雪荘とわかってたから 郷原家から出られたんです。
それに私の高校の同級生に偶然であったんですよ。ほらこの旅行のことを企画してたとき友達の実家から送ってきた酒をのんでたでしょ。そいつが新潟県警に居るっていったけど 今朝来た警察官の中にいたんですよ。たぶん彼が事情聴取に来ると思いますから、先に風呂に入ってきます。」
「それがええ、だいたい えろう心配させたからに・・」とHaitamanさんが笑った。
神谷たちは それぞれ名物の温泉に行った。

真夜中、殺人事件がおきたとの通報を受けた県警が日の出とともにヘリコプターでやってきて現場保全を行った。また大至急なだれの除去が行われ、神谷たちは身元を確認されたあと笹雪荘にたどり着いたのである。

「エラリー、その・・美イグ3姉妹はまだかいな」とハリーがキョロキョロしながら言った。
「ああ、深雪はんたちですか。女将の部屋にいるんとちがいますか。ワイたちに遊びにきてもええ ゆうてくれました。」
とワサビが言った。
「ワサビ、チビちゃんはええ女房やないか」
「へえ、もちろんです。」
ハリーが念を押すように言うのに対して ワサビは何言ってるのだろうという顔をしていった。
「まあ、若い 美イグが目の前にきたらグッくるのはしゃーないが チビちゃんはワサビにはもったいないぐらいのええ女房やで」とさらにハリーが念をおした。
「若い美イグって だれのこと?うち?」とあゆみがハリーの前に出てきた。
「あゆちゃん、もちろん君もかわいいよ。穢れを知らぬ可憐なノバラのイメージだよ。しかしね大人の僕としては 時々
ふっと憂いを帯びた大人のメスイグに心引かれるときがあるんよ。シクラメンのかほりというイメージだろうか。」

「ふーん、ハリーってジュラさんみたいなイグが好きなんだ」と奈々子が言った。
「なんや、なんでワイが おしゃべりなおばちゃん趣味なんや・・・」といってあわててジュラが聞いてないことを確かめ
「それで エラリーなにか分かったか」と話題を変えた。
「まだ、なにもわからへん。神谷のにいちゃんが帰ってきて話を組み立てていくうちにヒントがわかるかもしれんな。」
「イグサは何を見たの?」とカレンちゃんが聞いた。
「何も見た!」とイグサが胸を張った。
「ちょっとその日本語変やないの。」とさりゃりゃが言った。
「変やないで。わいがイグサとGONにいったんや。自分の目をカメラにしてあるものをそのまま見て来いゆうて」
「そうや、雪の上には武治郎はんの足跡しかついてなかったわ」とGONも仲間に加わっていった。

[5276] 女風呂にて 投稿者:TOMO 投稿日:2005/06/11(Sat) 15:03

 温泉はジュラさん、睦美、TOMOの貸し切り状態である。それをいいことに(?)3人は堂々とゆうべの話をしている。
「それにしても、こんなサスペンスドラマとか『家政婦は見た!』を地でいく事態が目の前で起こるなんてびっくりだわね」
とジュラさんが話の口火を切ると、文系だったために高校3年の時45人中35人が女子、というクラスにいて女だらけの世界に懲りているTOMOが
「あんなドロドロな世界が現実にあるっていうのもね。私だったらあんなところ耐えられないっすよ。でも、やっぱり温泉はいいですね。寝不足と運転の疲れも吹っ飛ぶって感じ」
と、ハーッ、と大きく息をついた。
 事件自体には興味はあるが、郷原家のドロドロにはうんざりしたようだ。
 睦美も、
「GONちゃんは祥子さんが犯人だと思うって言ってましたけどね。実際のところどうなんでしょう?エラリーも何かわかったふうではなかったし。でも、あの一族を見てたらみんながみんないがみ合ってて、誰が犯人でもおかしくない気がするんですよ」
とため息をついた。

[5292] 朝ごはん 投稿者:ジュラ 投稿日:2005/06/16(Thu) 19:10

風呂は広くて清潔でちょうど良い湯加減だった。
露天風呂もあり 周りの雪景色を見ながらの雪見風呂もしゃれているが
今は とりあえず内風呂にして部屋に戻った。
男風呂に行っていた神谷、冬彦も戻ってきていた。
「おう、3人とも湯上り美人ですな」とHaitamanさんが上手をいうと
「いい風呂ですね。ストレスが取れるから 顔も柔和になって美人に見えるんですね」
と神谷が言った。
「ねえ、見えるってどういうこと・・」と睦美がちょっと膨れて言い返したのも
神谷だからである。
部屋には暖かい朝食が用意されていた。
越後コシヒカリの真っ白なごはん、信州味噌の香りがよい湯気の上がった油揚げの
味噌汁のほか 新潟寺泊漁港に上がった寒ぶりの照り焼き、ほうれん草のおひたし
かまぼこの梅肉あえetc、ビジネスホテルなどの手のかからない朝食とちがい
やはり日本旅館ならではの凝った 朝食だった。
「このぶんなら 夕食はどんなに豪華かな はーおいひい はふはふ・・・」と
ジュラが 舌鼓をうつ。
食べ盛りの冬彦はもう3杯目のご飯のお代わりだ。
「飯が チョーうまい。やっぱり越後は米どころなんすね」
「いいわねー。もう毎日いそがしいのが ウソみたい。」
そろそろおなかも満足して雪見障子から見える雪景色をみながらTOMOさんが言ったとき
現実は厳しいという状況がやってきた。

「ごめんください。」と女将が入り口で声をかけた。
「皆様 ようこそお越しくださいました。大変でございましたね。
ほんとうにごゆっくりなさっていらっしゃるとき申し訳ないのですが
警察の方がお見えになりまして お話を伺いたいとお待ちになって
おられるのですが・・・」
「はい、もう食べ終わりましたし 私たちがロビーかどこかへ出ましょうか」
と神谷が言った。
「いえ、そんな堅苦しいものじゃないそうです。神谷様のお友達だといってられて
沖山校長先生や 悦子さんもごいっしょなんです。それで近くの部屋を用意いたしました。
ご都合がよろしければ、ご足労お願いいたします。」
「わかりました。すぐ行くと伝えてください」
「私たちも話きけますかね」
とNOBUさんが聞いた。
「もちろんよ。」とジュラが言った。
「だって 遅刻した言い訳まだ言ってないし・・・」とTOMOさんもウインクしながら
言った。それで 一同もちろんエラリーはじめイグアナ面々も引き連れて教えられた部屋へ行った。

「よーっ、神谷!ほんどに久しぶり 大変だったなぁす」とかなりの東北なまりの男が一同が入ってきたそうそう立ち上がり神谷に握手した。
「仙波ー いやー 今朝お前を見たときびっくりしたぞ。まさかこんな時あうとはな。
お前には久しぶりかもしれないが お前のおやじさんにはしょっちゅう世話になってるよ。」
「はっはは・・、酒っこだっぺ。オヤジさ酒づくりがえぎがいだから。神谷さにおぐるのも楽しみだっぺよ。」
「お二人は親友なんですね」とその様子をニコニコしながら見ていた 由衣が言った。
「そうです。こんくらいのわらしっ子のころから 遊んでました。そのころは神谷のやつ
弱虫でよーぐおらが たすげたもんです。」
「えー本当ですか。考えられないな。」と克也もびっくりしたようにいった。
「神谷さん 男らしいっすよ」と神谷にあこがれ 神谷と同じ大学に入った冬彦もいった。
「本当だよ。近所にガキ大将がいて・・・」
「そう、今 ここにいっぱいいるでしょ。なんというのがな。そうイグアナ、笹雪荘の女将がたくさん
飼ってるけど また今日は豪勢な数で・・・そう 神谷が ここで こんな風に平気な顔してるのが
すんずられねえんだ。蛇やとかげの爬虫類みると 卒倒しかねなかったもんな」
そのとき ニコニコしながら聞いていてもう一人の男が仙波巡査長に言った。
「まあ、仙波君、話を始めよう。みなさんも早く済ませてゆっくりされたいだろう。」
「はっ そうでした。みなさん こちらは畑中警部補です。これから2名でお話を伺います」
と仙波巡査長は なまりのない言葉で紹介し早速本題に入った。

[5302] 真夜中の事件 投稿者:ジュラ 投稿日:2005/06/17(Fri) 17:47

「では、えーっとその前に 神谷さんというともしかしたら 警視庁の黄金のイグアナ窃盗事件
を解決したという方ですか。」と畑中が聞いた。
『ちゃうでー 解決したのはワイやで』という エラリーを制して睦美が言った。
「まあ、そんな感じで・・・」
「そうですか。それなら 少し前の東北の殺人事件も解決されたんですよね。イグアナでわかりましたよ」
『おかーん、あれもワイが・・・・』
神谷がなにか言う前に 仙波が大げさな身振りで言った。
「そうがー神谷! おめえちっこいころから びんた(頭)だけはよがったからなー。
よーぐ宿題さ うづさしてもらったべ。そのがわりーといっちゃなんだが、おれが悪がきから
おめーをまもってやったべ。」
コホン、と警部補が咳きをした。
「そうですか。それならいろいろ助けていただけるわけだ。まあ民間の方に 困ったというのは警察の
面子にかかわるんですが、本当に困っているんですよ。このままだと自殺ってことになります。
まあ、自殺でも状況はいいのですけど・・・・」
「自殺ではいけない条件とは・・・」神谷がたずねた。
「先ず、自殺する動機がないんです。郷原武治郎はおこもりがすんだら、自分の財産の配分を弁護士と相談するつもりだったと 弁護士が言ってます。また、内妻とその子供たちの将来を悲観することもない。
まあ、正妻の操とは他人でしたが、それを気に留めるような男じゃありません。」
「それじゃ、他殺といえなとは・・・・」
「山刀みたいな 柄と刃がまっすぐな刃物が胸につきささっていてほぼ即死だったと思います。
心臓部ですから 自分で刃をつきたてることも可能ですし、近づいた相手が心臓につきたてることも可能です。しかし、現場はなんというか、一種の密室・・・われわれはこんな言葉あまり使いたくないのですが その密室に近いのです。」
「密室・・・」この言葉をその場にいる皆がつぶやいた。
『密室やてー、神谷のにいちゃん詳しくきいてや』
「はじめから 詳しく話してください。」
「分かりました・・今までわかったことをお話します。」どっちが取り調べか分からなくなってきた。
「郷原家の使用人の山本が異常に気づいたのは 午前2時ごろで便所に起きた時きな臭い匂いがしてどこか火事だと思ったのだそうです。
火事を知らせて廊下を走ったのですが あいにく皆前日の宴会つかれかぐっすり眠っていて、それでも
女中頭の吉野が起きてきて すぐに火元をさがしたそうです。火元が念仏堂とわかり駆けつけるとちゅうで そこの部屋に一番ちかい操さんの部屋に入ると 操さんはもう起きていて2人といっしょに念仏堂へ
向かいました。」
「念仏堂は武治郎さんが篭って念仏を捧げている最中ですからね」と仙波。
「念仏堂はご存知かな あの屋敷の道場の長い廊下の先にあります。廊下が途切れると庭におりるように
なっていて まあわずか3mぐらいなのですがその間に小さな小川の流れがあってその向こうにあるんです。その念仏堂から煙がでていた。」
「3人は廊下で武治郎さんの名前を叫んだのですが、応答なし。そのとき山本が懐中電灯で雪の上を照らしたのを見ると 1組の足跡が雪の上を念仏堂に向かっていましたが、それ以外ありませんでした。
3人がなぜ一瞬躊躇したかというと 雪の上にでていくのに履物がなかったからで、しかしそこは
別居中といっても操さんは妻ですね。雪の上をはだしで駆けていって入り口の戸を開けようとしたけど
あかなかったそうです。」
「操さんが 早く合鍵をといったので 吉野がすぐ台所に向かいました。そこには屋敷の合鍵の束が保管してあって もっとも金庫のような合鍵入れに入っていてその鍵は吉野が肌身離さず持っているのだそうです。その間も操さんはドアをたたきながら 武次郎さんの名前をよんでいて山本もすぐ履物を持ってくるとそこに向かおうとしましたが、注意して足跡を消さないように迂回したので助かりました。
吉野が持ってきた鍵で操さんが開けようとしたけどぶるぶる震えて開けられずにいた。あんなに冷たい夫婦と思っていたけど、操様やはりご主人のこと想ってらっしゃったんだと吉野が涙ぐんでいましたよ。」
「それで吉野が鍵を開けて中に入ってみると、武治郎さんが血まみれになって倒れているのが発見されたんです。」
「すると、鍵は確かに閉まっていたのですね」と神谷が聞いた。
「ええ、吉野がウソをついていなければ、それに確かに雪の上には 武治郎さんの足跡と今ついた 操さんの足跡しかなかったのです。」
「中には 武治郎さん以外だれも居なかった・・・」
「そのとおり、そうそれで仏壇にあったろうそくが倒れて
周りに燃えうつって煙がでていたので 3人で前の小川の水をくんで火を消したそうで、我々が入ったときはびしょびしょでした。」
「もうそのころには 皆騒ぎを聞きつけて廊下にやってきて
懐中電灯の光で照らしていましたから、もし犯人が逃げようったって、逃げられませんよ」
畑中は乾いた喉をお茶で潤した。

[5313] 2tu 投稿者:ジュラ 投稿日:2005/06/21(Tue) 18:40

「それで吉野が鍵を開けて中に入ってみると、武治郎さんが血まみれになって倒れているのが発見されたんです。」

「どのように倒れていたのですか」
「念仏堂は扉が外側に 観音開きになっています。中にはいると板張りがありそこで履物を脱ぎ 一段高い座敷にあがるようになっています。扉から直接中をみることはできません。間についたてが立っているのですが、被害者は扉の正面で座敷に腰掛けるようについたてといっしょに仰向けに倒れていました。」
「それで先ほどお聞きしましたが 凶器は山刀みたいなものだとか」
「そうです。柄には麻縄がまかれているもので細身ですが またぎが熊相手に戦うぐらい鋭くて 一突きで致命傷をあたえるようなものです。それが心臓に突き刺さっていました。」
『神谷のにいちゃん。こりゃぜったい自殺じゃないわ。自殺するのに入り口ですますゆう横着な人間そうおらんやろ。武治郎のおっさん 夜中に誰か尋ねてきたので 入り口を開けたんじゃ。そうしたら中に入ってきた犯人がその場で ブスッと突き立てたんやで。刃物が入ってる深さやて仰向けにたおれた自殺やったらそう深くない。深く入れるにはうつぶせで体重を刃物にあづけのうてはあかん』
とエラリーがいったので神谷が そう訳した。
「さすが 神谷や!」と仙波が感心した。
「い、いやちがうんだ」
「いや 確かにそうで、我々も被害者が だれか来たので入り口を開けたと思うのです。そしてその場で
さされたと考えるのが妥当でしょう。しかしここからなのですが、その扉の鍵は閉まっていたのです。」
「だから、犯人が犯行後 鍵を閉めて逃げたんじゃないんですか」
一生懸命聞いていた TOMOさんがきいた。
「ところが 鍵は仏壇の近くにおいてあったんです。その鍵は普段は操さんが保管してその日は準備のため、一時沙和さんに預けたのち武次郎に渡しただけというのです。そこの鍵は その鍵と先ほどいいました、鍵束についている鍵の2つだけです。」
「それじゃ、沙和さんが合鍵つくったとか。」
とジュラが聞いた。
「その日は沙和さん いろいろ準備で外にでることは無かったようですし、万一出れても 合鍵を作ってくれるところは村にはありません。ふもとの温泉街に行けばありますが そんな時間ないし夕方からは
ご存知のように道路がふさがってましたからね。」
「じゃあ、犯人は中に篭っていたか、別の出口から出た?・・・・」
と由衣がポツリといった。彼女は自身が関係する事件で身内が殺されている。
先ほどから 顔が一番青ざめていて 夫の克也の腕にすがるようにしていた。
「まあ、とりあえず鍵の問題は後にしても、不思議なのは念仏堂に誰も尋ねてきた跡がないことです。」
と畑中が言い、皆を見回した。
「先ほども言いましたが、雪は夜の10時以降降っていません。そして、我々が通報でかけつけ現場を
保存しましたが、母屋から念仏堂に向かう道には 被害者武治郎が生前歩いていった靴の跡のほか、発見時に操が駆けつけたはだしの足跡以外付いていないのです。もちろん吉野と山本のがありますがそれははっきり区別できます。もし 被害者が誰か尋ねてきて扉を開けたなら そこに加害者の足跡がつかなくてはならない。また帰りの足跡も無いのです。」
『やーん、幽霊みたい!』とさりゃりゃが言うと、奈々子もあゆみも首をすくめた。
『もしかしたら、吉野はんか山本はんあやしくない?前につけた自分の足跡ごまかすために 発見時に重複して歩いてごまかしたとか』
『さすが カレンちゃん 可愛いだけでなく かしこいわ』とエラリーがぐずぐずになった。
『神谷のにいちゃん、わいらに現場見せてもらえないか頼んでくれないか、それから質問にも立ち会えんか』
「そんなずうずうしいこと 言えるかな。」と神谷が答えると
『それならひとつ 教えてやり、火元となったのはろうそくやないか。ろうそくはきちんとろうそくたてに刺して立てとくもんやで。風もないのに何でころがったんや』
神谷がそのことを話すと 2人の警察官は感心したようにうなづき 現場検証と聞き取りに立ち合わせて
くれることになった。
「僕だけでなく エラリーもいいかな。」と神谷が言うと仙波が感心したように
「神谷、おめえいつの間に爬虫類好きになったんだ。ほら小学生のころガキ大将の元太のやつ
通学路に蛇の死骸置いといて お前学校に行くことできなくて家に戻ってないてたことあったべ」
「うん、そういうことあったな。そのときお前が学校から引き返して迎えに来てくれたんだよな。お前もあの時いっしょに遅刻させてしまった。」と神谷が懐かしそうに言った。
「それでその イグアナとか言うヤツ 何でいっしょに連れていくんだ?」
「あっいや、 僕のお守りというか守り神というか、まあこいつと居ると落ち着いて推理できるように
なるんだよ」
「へー、やっぱり神谷かわったべ。誰かに感化されたか」
と仙波が何気なく聞くと 神谷は真っ赤になった。
「まあ、仙波くん、このイグアナたちみてると さっきからおとなしくしてるし、いいんじゃないかな」ということで神谷とエラリーがまた 郷原家に向かうことになった。
行くとき エラリーがハリーを誘ったのだが
『まあ、せいぜいがんばってきてくれや。僕のほうは 3姉妹ちゃんとのデートがあるさかい。
さあ どうくるか。僕が温泉に入ってたら、湯けむりのむこうから『あら、だれか入ってるみたい。』って3姉妹が入ってきて『まあ、お客様のハリー様だわ』『その落ち着いたしっとりした声は深雪さんだね』
『ハリー様って黄金のイグアナ事件で大活躍なさったんでしょ』『その華やいだ声は卯月さんか?まあ最後に致命傷をおわせたのは僕ってことになってるね』『あーんでも お顔みたいわ』『かわいい声は夏生ちゃん、こっちへおいで、それとも僕のほうがいこうか』『だめよ、夏生、メスのたしなみわすれちゃ、ハリー様にきらわれるわよ』なんて うーーどうしたらええんやエラリー・・・」
イグアナ全員口を 開いて唖然としていた。
ボビボビをしたエラリー
『まあ、勝ってにやってくれや』と言い残して 神谷といっしょに出て行った。

[5317] ハリー、両手に花? 投稿者:TOMO 投稿日:2005/06/23(Thu) 20:48

 エラリーが神谷と一緒に出ていったあと、イグサとGONは
「僕も行きたーい」
「うちら少年探偵団やしー!」
と騒いで、ジュラさんとNOBUさんに
「だめ!あんたたちが好き勝手に動き回ると他の人とイグに迷惑がかかるでしょ」
「おまえたち、夕べも二人で歩き回って恐い目に遭ってきたんやろ?また恐い目に遭っても知らんで」
と止められてしょげていた。
 
 そこへ3匹のメスイグがやってきた。噂をすればの深雪、卯月、夏生だった。
「あらー、かわいい子イグちゃんたち!」
と子ども好きの深雪。
「名前は何ていうの?」
「…イグサ」
「GONだよー」
 イグサは普段に似合わず少し照れ気味に、そして、GONは元気に答えた。
 それを横目で見たハリー、
『おかしいな、わいの魅力が通じないとは…』
 すると、卯月がメガネをかけたハリーを見て、
「あら、ヨン様みたいにステキなイグさん!」
と声をかけた。
「僕のことかい?」
 ちょっとメガネをずらし、自意識過剰なセリフを吐くハリーに、あゆ、奈々子が乾いた笑みを浮かべた。

[5324] 3姉妹 投稿者:ジュラ 投稿日:2005/06/30(Thu) 16:33

「あら、ヨン様みたいにステキなイグさん!」
と声をかけた。
「僕のことかい?」
 ちょっとメガネをずらし、自意識過剰なセリフを吐くハリーに、あゆ、奈々子が乾いた笑みを浮かべた。

「ちょっと おねーちゃん わー仰山イグさん来てはるで。
おかん イグアナ観光の協定旅館にしおったんか?」と
夏生が尻尾ふりふり アイソ振りまきながら言った。
「昨日から来てはる男前のイグさんのほかに かわいい子イグはんまで泊まってくれてうちうれしわー。卯月、あんた
さっき 調理場からメロン一切れもらったんとちゃうの。
かくしてないでこの子らにもってきはったらどうえ」
「いやや、あれうちの おやつにとっておくんや」
「おねえちゃん、いつもそうやって食ってるから太るんやで」
「いらんこと ゆーな。ヨン様の前で。うちは残り物のきれっぱしをもらったんやで。捨てるのもったいないやんか。夏生かて 悦ちゃんがパン食べてたら いつももらってるやないか」
「そやかて 悦っちゃんが持ってるパン おいしいんやもん。どこのパンやさんのかわかる。おねえちゃん」
「そんな 話ばかりしてからに、お客さん笑ってはるで。」
「笑ってると思えへんな。」
「あの兄ちゃん 口あんぐりあけてめがねがずり落ちてるで」と夏生が ハリーを指差して言った。
見ていたワサビが こらえきれずプッ噴出した。
それほどハリーがモロにがっかりしていたのである。

「そんな お客様に対して失礼やで。
こんにちは ようこそいらっしゃいました。皆さん お友達ですか。よろしいなー仲よろしくて。イグ用の温泉も うちのおかん いえ女将が作ってくれてますから入ってみてください。」
「温泉はいってええんですか」とうりゅりゅが聞いた。
「うちら昨日は ずっと車の中とあの屋敷に動かずにいたから 体のばしたかったんです」とさりゃりゃもいった。
「ここの温泉きもちええで」とちゃこちゃんも首を振ってうなづいた。

「なんかイグアナたち話しているみたい」と悦子は喜んでいる。
「ところで」とジュラが言った。
「校長先生、この村に伝わる戊辰戦争のときの怨念って、武治郎さんが篭って祈っていたといういわれって、なんですか」と聞くと皆 ひざを乗り出した。
女将がお茶を入れなおし お菓子も薦めてくれた。

「それじゃよ。」校長が居住まいを正すと、話始めた。
「慶応4年 1868年、鳥羽伏見の戦いで勝利した新政府軍は
江戸開城とともに賊軍になった会津、桑名藩を掃討するために軍を北に向けた。長州は山形有朋、薩摩は黒田清隆 両参謀、名前ぐらいは聞いたことあるじゃろ。越後長岡藩は家老河合継之助を中心に会津、桑名と奥州の各藩と反政府の奥羽列藩同盟を結び戦ったんじゃが装備にまさる新政府軍にはかなわず降伏した。そのとき徹底抗戦を叫ぶ一部の武士が会津軍に合流するためこの村のふもとの街道を会津に抜けようとしたが交戦になり 9人の武士がこの村に逃げ込んできた。
この村は 前にも話してあったが長岡藩の隠れ本陣として作られ村人も普段は山仕事を営んでおっても、いざとなると武器を持って戦に参加する決め事があったんじゃ。
そして山深い村であったため、政府軍の注意を引くことも無かった。」
校長はここでお茶をおいしそうに飲んだ。

[5870] 覆面パトかーで 投稿者:ジュラ 投稿日:2006/01/26(Thu) 18:44

神谷とエラリーを乗せた覆面パトカーはまた山道を竹越村へ向かった。
「これが覆面パトか・・・」と中を見回す神谷に
「そう、外見は普通だけどいざというときは 黒白パトと同じなんだ。」
と仙波がまるで愛車を自慢するように言った。
「後部座席は内からは開くことができないようになってる。ここに回転灯
があってこうやって屋根につけると・・・」
と窓から屋根の上にポンと置き、スイッチをつけると赤いランプが回転をはじめ
サイレンがなり、そのままパトカーはスピードをあげ現場へと向かう。
郷原家の門には黄色い警察のテープが張られ 警察官が警備をしている。新聞記者という感じの
男たちが 中を覗こうと必死になっていたり、村人をつかまえていろいろインタビューを試みている。
車が門の前に止まり中から出てきたのが 畑中警部補とわかると記者はいっせいに駆け出して警部補を
取り囲んだ。
「ちょっと通してくれ、まだ何もわかってないから。発表は警察署でやるからそのとき質問してくれ」
と警部補がつかまっている間に仙波に促され神谷とえラリーは黄色いロープをくぐって門の中に入った。
そのとき警備をしていた警官が軽く敬礼をするのを見てエラリーは
「気持ちええもんじゃのー。ワイド・サスペンス劇場見てるようやな」と悦にいってる。
「エラリーそんなこと言ってる場合じゃないぞ。無理に頼んで現場に入らせてもらうんだから
なにか見つけないことには ただの野次馬ってことになるぞ」と神谷は少し弱気になってきたようである。
玄関先に入ると白いビニールの足カバーのようなものをはかされ 今朝退去したばかりの廊下を奥へ向かった。
神谷たちが泊まった離れへ向かう廊下の手前を右に折れると 広い板敷きの道場があった。
「ここが昨日イグサたちが鬼にあった道場か・・やや、神谷のにいちゃんあれなんや」
とエラリーが道場の正面に飾ってある 武具を指差した。神谷もエラリーを肩にのせ近寄ってみた。
「武具一揃えだね。実践的な武具だから戦国から江戸期のものみたいだ。」
顔の部分には白いひげの黒い面がつけられている。薄暗い道場をうつろになった黒い面の眼裂から
怨念が覗いているような気がして神谷は身震いした。
「神谷の兄ちゃん、あの棒は槍か?」とエラリーが壁にかかっている武器をさした。
「いや 槍もあるがこれは長刀だな。そういえば操さんが長刀の名手だっていってたから これつかうのかな。まさかこれが凶器ってことないかな」
「へん、にいちゃん何聞いとったんや。被害者の胸に刃物ささっとるゆうてたやんか。長刀やったら刃が残ってないやろ」とエラリーに言われ 一瞬 操が犯人ではないかと考えていた神谷は 頭をかいた。
「神谷 現場はこっちだ」
仙波巡査長の声で 神谷とエラリーは道場から長く続く廊下へ出た。そこは2から3度曲がって 最後にまっすぐつながった先に 小さなお堂のような建物が見えて そこに青い出動服を着た鑑識課員が忙しそうに働いていた。

[5876] イグサ悪だくみ 投稿者:ジュラ 投稿日:2006/01/27(Fri) 18:50

「小池主任、行ってきました」仙波は鑑識課員から何事か説明を聞いている 太った亀さんのような
人物に神谷を紹介した。
この事件の主任を務める新潟県警の小池警部は まるで商店のだんなのように腰が低い人物で部外者の
神谷と他から見れば変なお供のイグアナエラリーをうなづいて迎てくれた。
「神谷さんですか。警視庁の大和田警部とはちょっとした知り合いで・・・」と竿を持ち上げる動作をした。

警視庁の大和田警部は黄金のイグアナ事件や前の事件から神谷たちの知り合いであったが、この小池警部と警察会議のとき知り合い どちらも釣が趣味ということで意気投合し 大和田警部は暇ができると新潟県まで出かけいっしょに日本海の幸を挙げたり反対に2人伊豆の海まで行ったりしているとのこと、名前のごとく大小コンビといわれているらしい。
「いやー、仙波が神谷さんと幼馴染とは 世間はせまいですなー。ま、こんなとこでお茶もでませんが・・」
『あたりまえやがな、おっさん、殺しの現場で他人の家やがな・・・』エラリーが苦笑した。
「しかし いくら神谷さんでも首ひねりますよ。さっぱりわからん」と小池は言いながら 廊下の端まで歩いていった。
渡り廊下はまっすぐ5mほど伸びてきれる。その先端に数段の石の段がありそれを下りると、そこから道が堂のほうにややカーブを切ってつながっていた。

「道は 昨夜のため除雪されてその後に雪が降りましたが 5cmぐらい積もっただけでやみました。」
除雪された雪は庭の空き地や廊下と堂の間を流れる小川に捨てられた。
『この小川は凍らんのやろか』とエラリーが神谷の懐でつぶやいた。
さすがにエラリー寒くなって 神谷のコートの下に入り込んだのである。
神谷が聞くと、そばにいた鑑識課員が
「庭に湧き水があってそこの水が流れてきているので 冬でも凍らないらしいですわ」
と答えた。
『そういやジュラのおばちゃんも 冬は庭で仕事するとき井戸水で手を温めるとかゆうてたな』
「なにか本件と関係でも・・」と仙波が神谷に聞いたが まさかイグアナが興味を持ったもので
とは言えず、
「アッ か火事になったとき この水で消火したんだよね」などとどうでもいいことをいってごまかしたが、仙波はまじめに
「そうだ、周りは雪だらけだから雪もぶっかけみたいだ」と答えた。
「それじゃ神谷さん その履物はいてお堂へ行ってみましょう。死体は解剖にいってしまいましたが
現場はそのままですよ」小池はそういうと警察がよういした長靴を履いて石段を降りた。

その頃笹雪荘では宿の仲居さんが女将を呼んだ。
「おかみさん 宮田屋さんが見えてますけど・・・これから竹腰に仕入れにいくとかで・・・」
「あ、はい 今行くわ」可愛い可愛い?イグアナ3姉妹をなでながら居酒屋仲間とイグアナ談義を
していた女将はそれではと挨拶しながら
「お土産やさんなんですよ。宮田屋さんというのは、皆さんが昨夜いらした竹越村というのはいい竹
の産地でそこで作った竹細工や竹篭なんかを うちでも置いてみやげ物で買っていただいているんですよ。
よかったら見てください。」と言い残して出て行った。
『GON、GON、こっちこいよ』イグサがGONちゃんを呼んだ。
GONちゃんは校長先生の話をさりゃりゃちゃんのそばで 聞いていたのである。
『なんやの、もう温泉でシンクロの練習なんかせえへんよ。』とやってきたGONちゃんの耳に
『竹腰村に行けるぞ。何とか言う土産物屋の車に忍び込んでエラリーにいちゃんやにわとりのにいちゃん
のとこ行こうぜ!きっと向こうも少年探偵団の助けをほしがってるに決まってるよ。』

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