《インフルエンザの予防の基本は流行前のワクチン接種!!》

インフルエンザの流行は毎年訪れます。

例年インフルエンザの流行の兆しは早ければ11月頃から現れます。
診療所を受診する患者さんは12月頃から徐々に増加しはじめます。
流行の規模には大小がありますが毎年必ず膨大な数の人が
インフルエンザに罹ることになります。
たとえば中規模の流行だと罹患率は人口の10%前後、
つまり約1000万人の人が罹患することになります。


ほとんどのインフルエンザは安静によって回復し
生命にかかわることは少ないと考えられている疾患です。
しかし高齢者や基礎疾患を有する患者さんでは
肺炎など重篤な合併症を引き起こしたり、
重症化する可能性が高く死の転帰をたどることもあります。

厚生労働省「人口動態統計」によると、
小規模の流行が見られた昨年は600人以上、
中規模流行の一昨年では約1200人がインフルエンザによって死亡しており、
そのほとんどを65歳以上の高齢者が占めています。


インフルエンザワクチン接種の意義は発症・重症化・死亡リスクを減らすことです。

インフルエンザにははしかやポリオのワクチンのように、
発病をほぼ完全に阻止するほどの効果は期待できませんが、
高熱などの症状を軽くし、肺炎などの合併症による入院や死亡を減らすことができます。
65歳以上の高齢者を対象に行われた、
インフルエンザワクチンの有効性に関する調査では、
発病リスクを34〜55%、死亡リスクを82%減少させることがわかっています。
これはワクチンを接種せずに亡くなった患者さん
5人のうち4人を救命できることを意味します。


インフルエンザワクチン接種に当たって重要なことは、
流行規模予測にかかわらずインフルエンザシーズン前にワクチンを接種し、
流行の前に抗体を作っておくことです。
具体的には12月上旬までには接種を済ませます。
ワクチン接種を勧める対象としては65歳以上の方や
基礎疾患(気管支喘息などの呼吸器疾患など)をもつ方があげられます。

近年、インフルエンザの診断・治療にはめざましい進歩が見られ、
インフルエンザ抗体を検出する迅速診断キットや抗ウイルス剤が使えるようになりました。
しかし、感染を未然に防ぐ手段として、また高リスクの患者さんの重篤な合併症を予防し
重症化による死亡を防ぐために、インフルエンザワクチンはきわめて有効な第一の防衛手段なのです。